3-43 ラック成人
老人との会合からしばらく経ち、秋の上月1日。
今日でラックは16歳の節目という事で昨日から家族全員で祖父母宅に泊まりに来ていた。
この国では、成人に際し区役所に当事者達が集まり、ありがたーい長話を聞き、その後名前の変更が行われる。
昔の日本であったような幼名と元服名みたいな制度だ。ただし、あれとは違い幼名が愛称となる様な名が付けられる。
この名付けは、成人をすると他所へ行く者も多いので親から送る最後のプレゼントという意味合いもある。
「ラック、はぁこれが最後のラックかぁ。とりあえず似合ってるよ」
「何か含みのある言い方だな」
「そんな事ないヨ。行ってらっしゃーい」
ラックと祖父、父が区役所へ出掛けていった。ラックは普段着ないような上等な服を着ていた。
服に着られていなかったのが少し残念だったなんてことはもちろんない。
3人が出掛けている間、俺達居残り組は宴会の準備だ。慣習的に近場の人や親交のある者を呼んでの席が設けられるためだ。
食材などは昨日までに祝いの品として頂いてるので、不足分を調達しての調理だ。
宴会は昼からなので朝から台所は大忙し、外には仮設の竈が作られ、時間がかかる煮物はそちらで調理をされている。
俺もせっせと手伝い、皆が集まる昼前には調理も終わり、祖父母宅の一室には大皿に盛りつけられた料理と酒がたくさん並んだ。
盛り付けが終わるとまるではかったかの様に客が集まりだした。
主賓はまだ帰って来ていないため祖母と母がお客の対応に回り、俺とリュート、フェリは裏で道具の片付け等をしていた。
昔住んでた母ならまだしも、俺はフーホー粉砕装置1号の件で回った程度で顔見知り位しかいないため顔を出していない。
そうそう、フーホー粉砕装置1号だが俺はもう作っていない。そう言うのも都市奪還作戦が終わり、職人連中の特需景気が無くなった辺りから依頼すれば前より随分安い値段で製造されるようになったからだ。
ただアレは水場が使い易い区を中心に展開されており、うちがある区ではまだ見たことが無い。
丁度昼頃、主賓であるラックが帰って来た。
そして帰って来るなり祖父の司会の元、厳かな雰囲気の中新成人ことラックの挨拶が始まった。
ラックはこの度、成人として名前がライラックとなった。ただ俺はこれからもラックと呼ぶから3日もすると忘れそうだがな。
そしてその厳かな雰囲気もここで終わり、そのあとはアル中達の宴会が始まった。
主賓は逃げられん、頑張っ!ラック。
俺達は途中からアル中達の中から退避してきた者等と一緒に庭に設置された椅子に座っている。大半は連れられてきた次世代組、つまりラックと同じ位から下の子達だ。
あのアル中達の宴会は基本的に新成人と家長である上の世代が占めているため、若者には中々ついていけないのだ。
「ウィル、お前は成人したときの名前が何になるか知ってるか?」
今俺に話し掛けているのは、昔フーホー粉砕装置1号を壊したイヴァ。フーホー農家であるネルヴァイスさんの長兄であるためこの場に来ている。弟のイースは来ていない。
年に1度は祖父母宅へ来ているので、この2人ともか細いが交流が続いている。
「3年後の楽しみしている」
「聞いてもいないのか。俺は聞いても答えてくれなかったぞ」
「それは残念だったね、ただ成人後に付き合う名だ。そうそう突飛な名をつけられることはないはずさ」
「それだよ。俺なんかもうそれこそありきたりなイヴァンスとかつけられそうでさ。たまったもんじゃない」
「イヴァンスでいいんじゃない?」
「よくあるか!めちゃその辺にいる名前じゃん」
イヴァンスと言う名は王国建国時代に活躍した人の名前で、それに肖って比較的多い名前だ。実際にその名前が付くかは未知数だがな。
他に類をみない名前もありきたりな名前も、名前と言うのはいかんともしがたいものだな。
次の日。
昨日夕方前には最後の客も帰り、その後片付けをしてる間に1日が終わった。
俺達もラックの成人を見届けもう少しゆっくりしていきたいが、如何せん畑の収穫時期なので長居は出来ない。
「じゃあまたラック。いや、昨日からライラック殿だったかな」
「ぬかせ」
こうしてラックの成人に関することは何事も無く無事に終了した。
俺も3年後にあのウザったい酔っ払い共の相手をさせられるのか。
はぁ




