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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第3章 少年期移住生活編
72/93

3-23 ある少年のある日々2

 春。雪が溶け、今年も農作業の日々が始まった。


昨年お披露目した小型管理機を今年は初っ端から使う事態になりました。

いやー、また畑増えちゃったのよ。それも2つも。


新たに手に入れた6、7個目の畑は、まず一家総出で草刈りをしてあとの工程は俺に投げられた。

だが俺は雲行きが怪しくなった頃から準備はしていた。

それがこれだ。


「今までの耕作部の横幅を3倍にしたことにより、より高効率を実現したこの形式。やはりモノが違う」


そう、耕作部の横幅を3倍にしたタイプを製作したのだ。昨年のデフォルトタイプは大人1人分といったところだったが、約3倍だ。消費魔力も差し引き約3倍と言ったところだが、まだ許容範囲内だ。

昨年の試作時には一応5倍までは作った。だが5倍は材料強度と操作性に難があり実験早々取りやめるという不本意な結果だった。

あれも魔力的には何とかいけそうだったから部品の一部に金属を用いるか、構造を見直せればいけるとは思う。

硬化の魔術という手もあるが2つの魔術を同時に操るのは精神的疲労が大きいため農作業時にする予定はない。


そしてこの周辺では何とこの小型管理機のパチモンが登場した。こちらも2台だ。

1台は数少ない魔闘技技能保持者だった人が使用していて、小型管理機を大人サイズ用に背丈を合わせた物だった。他にも耕作部の刃を金属にしていてうらやましいと思いはした。

もう1台は小型管理機を簡略化した感じで、ああいうのも有りだなっと思ったが、故障したらしくすぐ見なくなった。まぁそのうちまた出てくるだろうが。



 昼までに2つの畑の根切り作業が終わった。

午後からは耕起作業が待っているとはいえ、今日だけでそれも終わりそうだ。



 午後から耕起作業を始めその途中、畑のそばで休憩していると他の畑で作業していた母たちが家路についてるのが見えた。

あっちは今日の作業が終わったのだろう。

俺もあと少し作業をすれば耕起作業が終わるってところまで来ている。きりも良いので今日はそこまでして帰ろう。



 畑2つの耕起作業を終え、倉庫に小型管理機を収め家に帰って来た。


「あら、おかえりなさい」

「ただいまー」

「今日はいつもより遅かったわね」

「きりの良いところまでっと思ってたら意外と時間掛かっちゃってね」

「そおう、お疲れさま。じゃあ明日から植え付けできるかしら」

「もちろん大丈夫だよ」

フーホーってやっぱり凄まじいよな。普通の作物ならもう数回耕起作業を繰り返して雑草除去率を高めたり、肥料とか土壌改良材を鋤き込んだりで時間がかかるんだが、奴なら問題ない。

普通の畑ならまだしも、休耕地からそこまで1度に作業するのは大変だから、やっぱり奴は休耕地や開拓地の必需品だな。



 次の日、種イモ?の準備をしていると、


「あら?私たちで植え付けするからもう1つの畑を耕してていいわよ」

うん?・・・・ああ。そういや大人1人分のデフォルトタイプしか見せてないな。


「もう1つも何も昨日で2つとも耕し終えてるよ」

「・・えっ。・・あら、・・・そうなの」

「うん」


母が足早に昨日耕した畑の方へ向かって行った。俺はそのまま作業を続けて、少し経って母が帰って来た。


「本当だったのね」

ひどいなぁ、そんなに信用無いのかねぇ俺は。


「こほん。ねぇウィル、お願いがあるんだけどいいかしら」

「・・・こほん。こほん、こほん、あーあーあー、うん、なんか今日は調子がわるいなぁ、今日は大事を取って休むとするか」

いやー今日は肌寒いなー。


「あのね、あと2つくらい畑を借りても大丈夫よね」

やはり無視か、それにそれはお願いじゃなくて確認だよね。


「・・・安易に借りないでね。耕せても世話と収穫はその分大変になるんだから」

「そうねぇ。でも忙しいときだけ人を雇えばいいだけよ」

ちっ。


畑さらに増えるの確定しましたー。



 数日が経ち、今日は6つ目の畑で農作業とは違う作業をしている。

追加の畑はまだだ。

今日作業しているのは堆肥場作りだ。今までも堆肥作りはしていたが、畑も増えてきたのでそれを一元管理することになったのだ。

作業員はまた俺だけだ。

俺の中では今までにない大物だが雨を凌げる程度の粗末な建屋なので1人でも大丈夫だろう、と、決まった。


そして今は土を盛ったり固める作業をしている。

行き当たりばったりなんだよな、せっかく耕したばかりなのに。

まぁ作業できるのは追加の畑が用意されるまでだから、今回はこの床部分の下準備と精々柱を立てる位しか時間はないだろう。


更に数日が経ち、柱用に穴あけ作業をしている途中で新たな休耕地を手に入れた。

タイミングわるっ。



 再び農作業の日々が始まった。

今回も草刈りだけ一家総出であとは俺に投げられた。なぜだ?


そして今回も1日掛かりで2つの畑の耕起作業まで終えた。



 次の日は朝から雨だった。今は特に急ぐような時期ではないので畑作業は休みだ。

そして今日はここ最近酷使した小型管理機の点検作業をしている。


耕作部や各継手の摩耗状況の点検が主だ。幸い今まで大きな破損をしたことはないが(試験未含)、耕作部の刃とかはいつか折れるのは間違いないため、普段から経過を見ることが大切だ。


「ふー、改めて見るとけっこうちびてるなぁ」


股グワ状の方はそうでもないが、休耕地の根切り用の刃を並べた形状の方は交換を視野にいれなければならないほど摩耗していた。刃の部分はどうしても薄くせざるおえないから仕方ないと言えば仕方ないが。


次使うのは夏だから、それまでに部品を作っておこうかな。



 またしばらく日が経ち春の上月も中頃、ようやく移住見学者が減って来た。今年も残念ながらうちの家屋群には人が入ってこなかった。

お隣さんB家が入って来てもうまる2年移住者はいない。別に勧誘する気はないが、人口密度が過疎ってるので少し寂しい気もする。多分過密時には今の3、4倍の人が居ただろうって場所だからかな。


そして最近、この周辺では密かな魔術ブームが起こっている。

原因はやはり小型管理機だと思う。

春の初め頃は例年通り~って感じだったが、うちと魔闘技技能保持者の人の家庭が畑の数を増やしたのを知ると皆こぞって魔術訓練に打ち込みだしたのだから間違いないだろう。

うちなんて今年計4つも増えたからな。


特に顕著なのが畑に子どもを見なくなったことだ。年齢にもよるが子どもの労働力なんて高が知れている。そのため少しでも余裕がある家庭は畑作業をさせるでなく、魔術訓練をさせているのだ。

後年を見据えてるねぇ。


うちでもリュートとフェリの魔術訓練に少し重きを置きだした。

現在の2人の目標は自分を体を魔術で浮かすこととしている。

俺の経験から言ってそこまで魔力量を増やすにはきっちり魔術訓練をして2年はかかると思うので、気長といえば気長な目標だ。



 今日の農作業が終わり、短くなった授業の時間を終え魔術訓練の時間がやって来た。


「今日は勝つ」

「負けない」


今日も2人はやる気満々だ。

そう言うのも2人との魔術訓練だが、藁ボールを使った雪合戦ならぬ藁合戦というゲーム方式を採用している。

藁ボールは外側に筵を縫い合わせ、内側に藁を詰めたボールで、大きさは玉入れの玉位でそれよりちょっと硬い仕上がりのボールだ。

藁合戦のルールはオリジナルで、対戦形式という以外は雪合戦とは別物だ。


まず人にぶつける競技ではなく、フィールドに設定された点数を取り合う競技で、攻城戦を模している。

イメージとしては投石器による施設破壊で、重要度によりポイントが異なる。


始める前に互いにフィールド内に点数を割り振り、サイコロを5回振り互いの持ち球数決めて、作戦会議の後、合図と共にゲーム開始だ。

フィールドは毎回書き直すのが面倒なので最近は固定気味で、サイコロを振るのは軍事力の差を表している。


魔術訓練だからボールはもちろん魔術でしか飛ばしてはいけない。さらに互いの位置が分からない様に間には簾を立てている。つまり簾以上の高さまでは最低でも打ち上げないといけない。簾は2枚重ねてあるので、よほど近づかないと向こうが見えないようにしてある。

使う魔術は物体移動の魔術だ。この魔術は物体浮遊の魔術の様な非物理的性質をあまり示さず、手で物を投げるのを魔力で行っているような魔術だ。使い道はあまりない。小さい物なら普通に投げた方が早いからだ。


打ち上がったボールはそのまま相手側のフィールドに落ちれば得点を得る。ただし、選手は盾を装備しており空中なら弾いても良い。本当は魔術で弾きたかったが、視認してから魔術で弾くのはかなり難しく、2人にはまず無理だったからだ。俺でも2つ同時に来たらまず無理だ。盾以外での接触は被弾扱いでデスペナが発生する。



「じゃあ今日も昨日と同じ条件で良い?」

「「うん」」


このゲームのルールはまだ発展途上なのだ。

今日もいつも通り、俺バーサスリュートフェリペアでの対戦だ。

今日使うフィールドはここ最近お馴染みの父監修都市ネマールバーサス父監修都市ネマールだ。

この都市ネマールを小さく再現したフィールドで各層区に点数を割り振ってある。まぁ小さい区はくっ付けているのでそこまで再現度が高いわけではないが。

このフィールドの特徴としては第1、2層はくっ付け、この都市の頭であるため最高得点を割り振ってあったり、最外区は破壊されると魔物が侵入してくるためここも点数高めの設定だ。


相手側のフィールドも父監修都市ネマールで、最外区南門同士が1番近い原点対称のフィールドだ。


「じゃあサイコロ振って」


サイコロを振った結果、俺が持ち球12個、2人が持ち球14個となった。

決して出目がわるいわけではないよ、用意してるボールの総数から4面サイコロを使用しているだけなのだから。


「ふむ、こんなもんか。じゃあ作戦会議が終わったら言ってね」

「ふふん、今日はもう考えてあるんだ。だから今すぐ始めてもいいよ」


ほほー。どんな手かな。

最初の頃は俺がボロ勝ちしてたけど、最近は2人で攻防を分ける戦略で最終的には勝つがセットを落とすこともあるんだよな。


「分かったよ。じゃあ位置について」

俺たちは各フィールドに散った。初期位置は戦略上重要だ。


「もう着いたー?」

「大丈夫ー」


「では、・・・はじめ!」

ゲーム開始だ。


おっと、早速2球飛んできたな。最近小癪なことに、こっちのはじめ!のタイミングを読んで同時に飛ばして来るんだよな。

飛んでくるボールはそれぞれ全く別方向で片方を諦めるしかない。狙いは得点の高い最外区(以下、フィールド上での各層区表現)だろうから、運よくフィールド外に落ちてくれるのを祈ろう。


立ち位置から近かった、東側に落ちるボールを盾で弾いた。


ガッ!

ベチャ


とりあえず失点か。

反撃に移るか。


ボールを2つ手に持ち、呪文を2回唱えた。最初の方は魔力操作で発動を遅らせている。そして2回目の詠唱を終え、同時に魔術を発動し発射。落ちる地点は今までの経験上、第4層南区の東と西の最外区辺りに落ちる同時攻撃だ。


俺のが相手側に行って見えなくなるとほぼ同時にまた2球飛んできた。今2人は固まってるのかな?

ほぼ同じ地点から発射した感じでそしてほぼ同じ場所へ向かっている。落下予測地点は低得点エリアがひしめく第4層南区中央ってところか。


一応弾いて・・ちがう!!


落ちていくボールから目を離し、簾上に目を向けると、もう1球飛んできていた。

そして最低でも第3層の高得点エリアには落ちるって軌道だ。


急いで南区へ行くを止め、第3層方面へ走った。


とどけー!・・・・・成功だ。



にゃあろう。


今度はボール3つ持って、同時攻撃を行った。

場所は第4層南区中央、第3層南区、第3層北区辺りに落ちるようにした。

そしてすかさず東区の方へ走り、相手の東区へ対角線攻撃。

更に南下して、相手の西区を最短距離攻撃を行った。


攻撃の間に1球飛んできたが、多分第4層の東区辺りなので無視した。


この攻撃を最後に膠着状態になった。攻撃と防御がほぼターン制に移行し、多分互いに高得点エリアは防衛に成功しただろう。


俺の持ち球は既に無い。2人も精々あって2球なので高得点の方を死守すればこのセットは終わりだ。


「・・・・・・」

「・・・・・・」


「兄ちゃん終わったー?」

「ああ終わったー」


持ち球もうどちらもなかったみたいです。


3人でやると審判がいないんだよな。たまにユルトとヨークも参加してくることがあり、その時には2対2で行って1人審判に回るんだけど。



 ゲームが終わり、そして結果発表。


「はい、ボクのかちー」


勝ちました。というのもリュートが被弾してデスペナがくらってた。手の甲に装備してる盾が小さいため弾くのも難しいだよな。1球ならまだしも2球同じ場所に来た時には片方を弾いてもう片方は避けるっていうのが1番安定だと思う。


「くぅ、今回はいけると思ったのに、当たるとは」

「でもほら、お兄ちゃんの方のあそこ等辺には落ちてないよ」

「うっそー、会心の作戦だと思ったのにーー」


「いや、危なかったよ。あの2つ同時に飛ばしてきたのはどっち?」

「フェリの方」


「なるほど、じゃあフェリ、どうやって飛ばしたか教えてくれるかな?」


フェリのボールを2つ飛ばした方法。それは応用技術で早遅法と連発法による方法(俺が複数同時にボールを飛ばした方法)ではなく、多分、応用技術には数えられていないが魔術を使う上では立派な技能の1つ、『認識再定義』だ。


この技能は簡単に言うと、物体1個をボール1個とするか、物体1個をボール2個にするかと言う事だ。

魔術の対象範囲選択にはアバウトなところがあり、認識によって範囲を変えることが可能なのだ。

つまりフェリは飛ばす物体1個をボール2個と認識し直して飛ばしてきたということだ。


俺には無理だ。この技能は本質的には魔術とは関係なく、認識を変える、つまり洗脳行為に当たる。俺だったら連結してる部品ならまだしもあれほど個として確立している2個を1個とは認識できん。

頭が固いと言われようがこればっかりは性分だ、定義を大事にしてるとも言いかえてもかまわない。


フェリの場合は飛ばして来るボールの数が1個の時と2個の時があったからゲーム中に瞬時に認識し直してるってことだ。頭が柔らかいにも程がある。

将来が楽しみでもあり、また末恐ろしくもある。



 そしてフェリがボールを2つ飛ばした方法を教えてくれた。


「・・・・・・なるほどね。よく頑張ってるね」


ナデナデ


ナデナデ


「お兄ちゃん?」


「う、うん、一旦休憩しよう。ちょっと喉乾いちゃったから水でも飲んで来るよ」



 家に戻ってきた。そして、


・・・・・・・恥ずかしい。


あれほど堂々と推論を垂れた(頭の中で)のに、間違っていたことがだ。フェリの2つボールを飛ばした方法。それはそもそもの認識が俺と違っていた。

俺は藁ボールをボールとして認識して飛ばしていた。だが、フェリの場合藁ボールを藁の塊として認識して飛ばしていたのだ。

ボールと塊。これは全く違う認識だ。フェリにとっては持てる物がひと塊、つまり藁ボール1個だろうと2個だろうとそれ以上だろうと関係ないと言う事だ。


自分の認識のみが唯一だと信じていた不甲斐無いあんちゃんだったということだ。


末恐ろしいなんて思ってごめんよぉ。ただあんちゃんの頭が残念だっただけなのに・・・・・・・・・・・・




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