3-04 移住生活4
時が流れ、夏の上月3週目。
1回目に撒いた分の成長が早い物から順に収穫しつつ、広場で店を開いて販売している。お隣さんとの関係は良好だ。
お隣さんは作物の関係でまだほとんど収穫物が無く、店の方をメインにしてもらっている。逆にうちの方の収穫が少なくなる頃からあちらの収穫が多くなるので店の方がこちらがメインとなる。ほとんど母とあちらの奥さんが店を取り仕切ってるので収穫物の運搬とたまに店番をするくらいで一応親睦は深まってるが、奥様間が突出して深まってる感じだ。
あちらの2人の子どもはどちらも男の子で、上がラックと俺の間、下が俺と幼児2人の間という年齢で、2人とも父親について農作業を手伝っている。
畑が互いに真逆なので作業しているところはあまり見た事ないがな。
店の売り上げはそこそこだ。俺のもラックのもどちらも定番な作物なので一定の需要は見込めるが、大儲けできるものではないためだ。
毎日のように余るが、余った分は干しして干し野菜にするので問題ない。干し野菜は秋から冬にかけて需要があるので、その時売っても良いし、保存食にもなるので余すことなく使える。
そして夏の上月3週目になってようやく交易団が到着し、交易祭が開かれた。
うちがある区は西区にはなるが交易祭の会場である場所的に西会場に行こうが南会場に行こうが大した差がないため今年は行き慣れた南会場に行くことにした。運が良ければ前アパートメントの者に会えるかもしれないしな。
店も閉めるわけにはいかないのでお隣さんと日数を調整して交互に行くことになった。
そして交易団が到着したことで、昨年は流れてこなかったトュベリアンの奪還作戦の結果が流れてきた。
結果は都市2つを奪還成功だそうだ。
これでこの国は約10都市の奪還に成功したため合計14都市まで人の生存域を増やしたことになる。
これからまた数十年間は人口が増加するまで奪還作戦は発動されないと思うが、勢いがあるのもまた事実、意外と10年とせずまた発動されるかもしれない。
俺が息災だったら生きてるうちにまた発動されるのは間違いないだろう。そして次は参加者かそれともじーさんになってて免除されるかは分からないが。
今日はいつもより朝早くから収穫作業をしている。今日はうちが交易祭に向かう日だ。
今年から家が広くなったのでいろいろ買い足すものがあるためリヤカーを引いて向かう予定だ。他都市産のモノは交易祭で仕入れるのが1番安いからな。特に海産物はこの都市で代用できるものがないため1番欲しい物だ。あとは何かしら代用がきくモノばかりだから気に入ったモノがなければ見送るだけだ。
「うーん、・・・今日出荷できそうなのはこれくらいかな」
もう1度畑を見回ったが多分こんなもんだろう。
あとはラックの方と一緒にリヤカーに載せて運搬するだけだ。
土とかは前日雨とかでひどい泥はねした物以外は特に洗う習慣はないからその分楽だ。
自分側の収穫も終わり、ラック側を手伝う。
ラックの方は1束から売れるものから量り売りするものまであるので積載が俺の方に比べて煩雑なのだ。収穫と選別はラックがして俺が積載作業をするのがここ最近の流れだ。
本日の収穫を終え収穫物をお隣さんの家に運んでいく。普段は店まで運ぶのだが今日は特別だ。
運ぶのは基本ラックに任せているので俺は畑の世話に戻った。
ラック側の葉菜にはいくつか多湿を好むものがあって雨だけじゃ足りないためそいつ等の水やりをする。水路が深いから下り口から下りるか桶にロープをつけて汲む必要があり、この区では少し作るくらいが限界な作物だ。
揚水設備が欲しい。
ラックが運搬を終えてから帰って来たため、自分側の世話に移る。
大体のことは昨日のうちに終わらせてるから今日はすぐに終わった。
農作業を終え、家族全員で交易祭会場へ向かい、そして交易祭南会場に到着した。
会場を見まわしてみると規模は昨年と同じくらいと思われる。昨年の懸念はまだ先のようだ。
見回って分かったのだが今年は品揃えが少し偏っていた。
戦後処理品なのだろう、魔石と革などの魔物由来品を売ってる店が例年より多い。
こちら側も魔物由来品は作戦後大量に余っているそうだが、山向こうとでは魔物の傾向が違うらしく色合いや広さが違う革を売っていた。こちらでは革がとれる大型生物は希少らしく俺も見たことがない。もっとも買える様な値段ではなかったが。
例年通り海産物を買い漁ったのち、いくつかの製品と魔石、革を購入して帰った。
途中、前アパートメントの住民とも会いはしたが俺とは関係が希薄な者だった。残念。
交易祭を終えてからまた農作業の日々が始まった。
こちらは2回目の種まきした分が収穫できるようになってきた。
農作業をしていると、
カーン、カーン、・・・・
と小さいが鐘の音が聞こえた来た。
警鐘だ。
つまり魔物がやって来たと言うわけだ。こっちに移住してきてからたまに聞くようになった、一般市民は避難しろという合図だ。
もっとも、この区の者は避難せず作業を続ける者もいるし、避難するにしてもゆったりだ。
なぜならこの区ではなく隣の区の警鐘が聞こえてるのだ。
この区は都市の最外区ではないため魔物がここまで来るには外壁を2つ超えて来るか外壁上を伝ってくるという事で、どちらにしても兵の壁を越えて来た魔物なためその辺の建物への避難程度気安めや時間稼ぎに過ぎず開き直ってる者が多いのだ。
避難するなら内側の区へ避難するのが鉄則だ。
うちの場合は父が兵士をしている関係か、鐘の鳴らし方を細かいところまで教わっているのでそれによって対応を変えている。
「今回は・・・・大したことないな。一応家で待機安定だね」
「そうだな。まあ心配なさそうだけどな」
俺とラックは一応家に避難する事を決定した。バラバラに行動しないのが大事だ。危険度が上昇すれば金銭を持ってそのまま内側の区へ避難する。
「リュート、フェリ、こっち来てー」
畑で遊んでいた弟のリュートと妹のフェリを呼び寄せた。店を出すようになってから幼児2人の面倒は俺とラックが農作業しつつ見ていた。いまの時期は朝の収穫が終われば余裕があるのだ。
たまに2人が作物を踏み荒らすがフーホーの方なので問題はない。奴はそんなに軟弱な植物ではないのは検証済みだ。一月では地上部に実をつけないので落果の心配もない。
一応常態化しないように叱ってはいる。
「にぃにんー?」
「2人とも家に帰るよ」
そう言うと2人の手を引いて連れて帰る。
慎重にだ。1度手を引いてて脱臼させたからな、あの時は焦ったよ。農具はラックにぽいしてるので特に問題ない。
世話の途中だが、もう今日はこのまま家で過ごそうか。
家に帰って来た。お隣さんはあまり警戒を払っていないのか特に畑から帰ってきたりはしない派だ。
1度危険度高めな警鐘で上空を大型の鳥が飛んでいた時にはさすがに避難したが。遠くてサイズが分からなかったが大人ですらたまにさらわれることもあるくらい大型な鳥だそうだ。
鳥類には外壁は関係ないからな。
ちなみにモグラとかミミズなどの地面を掘ってくるやつ等に人を襲うやつはいない。ただしモグラ穴を通ってくる危険な生物はいるためモグラは害獣だ。穴を見つけたら通報もので農家泣かせな生物だ。
家の扉をしっかり閉めて避難完了だ。
あとは危険が去ればまた鐘が鳴るのでそれまで待ってればいい。
カコン カコン・・・・
しばらくすると危険が去ったという鐘が鳴った。
今回も特に何も起こらなかったなっと窓を開け放ち換気する。
夏の家の中は暑すぎる。
今日はもう農作業に戻る気がないので、井戸水を汲んで水浴びしたりして過ごした。
残念ながらここの井戸にはまだ手押しポンプがついてないため滑車だ。
手押しポンプは昨年夏の品評会後にあのあたりの大家さん連合が本業が不調な者達を集めて売り出した。
品評会を見に来ていた人も多くいたらしく第3層南区ではあっという間に普及した。ただしそれなりの失敗もあったそうだ。
売り出して1週間もする頃には模造品も出始めたそうだが、その時点で生産を止めたそうだ。
生産に関わってたノクンペンさんはホクホク顔だったから相当荒稼ぎしたのだろう。ただし彼は夏の上月の終わりごろにあった奪還した都市の整備の出稼ぎに行ってしまったから、早々にギャンブルですったみたいだ。
おかげで帰って来た時奪還した都市の内情を聞けたのが良かったが。
そしてここの井戸もそれなりの失敗原因の1つ、手押しポンプの性能限界に類する井戸だ。
端的に言うと深い井戸なのだ。
売り出されたときにも、一概には言えないが第3層南区では西側ほど井戸が深い傾向にあるそうで、西区との境界辺りでは水を汲めなかったそうだ。そのあとどうなったかは俺は関知してないが。
西区まで行くと上水道があるので関係ないし、東側は河が近いせいか浅い井戸ばかりで問題なかったそうだ。他の区は模造品が出始めたころまでには到達してなかったので他の区がどれくらい普及してるかの情報はない。
農作業がひと段落したらこの井戸に導入しようと思う。1戸建てになって使う水の量が増えたから水汲みが大変なのだ。
そして今回は給水管も木製にして、上から吊るすタイプにしようと思う。土管タイプは地面に置く必要があるため改修工事が必要だからな。
いや、今年なら金属管が手に入る可能性が、・・・ないな。昨年は大家さん連合ですら手がでないほど希少品だったが、奪還作戦が終わったのでほぼ例年並みの水準に戻っている。今ならあるいはっと思ったがこの井戸は今のところ2家庭しか使ってない井戸だ。それにどちらも移住してきたばかりで積立金もないしな。
ちなみに水浴びをしつつ構想を練った次の日には風邪をひかなかった。
この世には水浴びして風邪を引く体質の者(恋愛系に特に)がいるらしいが一体何割がそう言う者なのだろう?
俺は雨に降られて遊んでも農作業しても特に風邪を引いた覚えはないし、前世でも特に覚えはない。
とりあえず今のところ俺には関係の無い話だということは間違いない。
まったく、かわいそうな体質な者もいるものだ。と遠くを見つつ思う7歳夏の中頃の事でした。




