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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第2章 少年期編
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2-26 都市奪還作戦の痕

 夏の都市奪還作戦開始からもうすぐ半年が経ち冬が目前に迫った。

俺は今貯木室の前にポツンと立っている。なぜこうなったのかと1人物思いにふける。



 奪還作戦自体は既に終わりおおむね成功を収めた。ノインテールおよびトトニアムは奪還に成功し、ムイルは予定数より少ないがいくつかの区の奪還に成功した。

そのためかつてその都市に住んでいた住民の子孫や移住希望者が既に移住したり来年移住するなど、都市全体があわただしい。移住も既に夏の下月に第1陣、秋の収穫後には第2陣、さらに例年夏の下月に来る交易団が秋の収穫目前に来たりとそちら方面でも慌ただしかった。


その交易団が王都方面の情報をもたらした。

情報によると、

王都オルタントは3つ、サルハルスも2つの奪還に成功したようだ。更にこの2都市間の都市が奪還されたため王都―サルハルス間の交易が活発になるだろうという話だ。これはここネマールにとっても喜ばしいことだ。その2都市間の都市は一部王都―ネマール間の交易路と重なっているため、これまでより交易の難度が下がったそうなのだ。

最後のトュベリアンは交易団が出発した段階では情報が無いそうだ。あそこもネマール程ではないが王都から遠いらしいから仕方がない。


交易団は例年よりずいぶん人数も品数も少なかったが塩だけは実質例年並みだったようだ。この都市人口の絶対数が減ってるし、既にムイル、トトニアム、ノインテールによった後だからな。

そして来年から交易団がここまで来るか分からないそうだ。ムイルが奪還できたから上の判断次第だな。


だがネマールとムイルは仲が良くないから心配だ。

このネマールは成立上複数の者達によって分割統治されているのだ。

第1から第3層と第4層北区の約半分を治めるネマールの領主とそれ以外の区を統治する準領主と呼ばれる者達だ。

準領主というのはかつてこの国が立て籠もり作戦に舵を切ったときに放棄された都市の領主の現在の呼称で、正確かは分からないがネマールの領主から区を間借りしてる感じで、統治と領軍保有が認められている者達だ。準領主の領民はかつて共に避難してきた住民の子孫が多く、区が変われば生活様式が変わることもあるそうだ。


ムイルは最後に合流した。そう最後に。つまり良い場所は既に無かったのだ。

ネマールは元々最辺境の都市で北と西は山に囲まれ、東の森は魔物のレベルが高く、残されたのが南の湿地帯だけだったのだ。人数も多すぎて他の区に入れる余地はなかった。

ゆえに今までにない大規模工事が行われたそうだがその工事は難事だった。更に工事が終わってからも湿地帯だ、住みやすい場所ではない。

ゆえにムイルの者は代々こちらを恨んでる者が多い。逆恨みだが厄介なことに人数だけは多く始末に負えないと言うわけだ。

今は確かにネマール側が強いが将来ムイルがどんな手を打ってくるか分からない。それが気がかりだ。

他にもムイルと同じようなところもあるが、ムイルに比べて小さいし、それに見た目上だが親派が多い。

移住が容易らしいからな。仲がわるいと互いに移住もできないからな1発で分かる領主及び準領主間友好度診断法だ。


ここまでは秋の上月までの状況だ。



 そしてここからが重要だ。

この戦いで多くの者が死傷した。だが時間は俺達を待ってはくれない。

秋の伐採に行ける者が少ないのだ。

木自体は都市政府が数年来貯め続けた貯木があるし、自分たちでも貯めてる者も多い。

だが伐らないと減るばかりなのだ。


秋の伐採には普段他の応援に行くためめったに行かない父や若者から年寄り、さらに一部女性まで参加して漸く実質的に軽い失敗程度の伐採量だったようだ。


つまり今までより更に木が手に入らなくなったのだ。

不謹慎だが俺の収入は主に木工製品なのだ、俺が木工職人なら破産してるよ。


破産した者は奴隷になる。借金奴隷だ。

借金奴隷は財産管理能力欠如者として様々な制限がかかる。

奴隷商の商品として売られ、買い主に奉仕する存在だ。一応人権があり、あまり無体なことはされないし、ある額を納めると借金奴隷ではなくなるが数年間幾つかの制限も残ったままだ。

ある額と言うのは借金総額の4倍だ。更に通常の者と同じ業務でも最大3分の1まで給与を下げてよいことになっており、買い主によっては実質12倍の額を返さないといけない。ただし、買い主は衣食住を提供する義務が発生する。

そこそこ良心的な制度だと思う。最大12倍だとしても給与のほぼ全額を借金返済に当てれるんだからな。まあ借金総額と従事する業務次第でかなり変動があるがな。


奴隷は他に犯罪者がなる犯罪奴隷がある。犯罪奴隷軽と犯罪奴隷重の2種類だ。

こちらは一応人権がないこともない扱いを受ける。特に犯罪奴隷重は最高刑の1つ手前扱いだからそれなりだ。

ちなみに最高刑は実質死刑だ。生き残る可能性は軽微とだけ言っておこう。


ちなみに俺が住む第3層には人口の割に奴隷は少ないそうだ。大体が第4層と第2層、鉱山村辺りが多いと聞いている。


脱線したな、話しを戻そう。


つまり自転車操業で父が木工職人だったり、俺が10年ほど早く生まれて木工職人にでもなってたらアウトだったという、ちょっと危なかったという話さ。

ん?今思えば他の職人も燃料用に使う業種があるから更に上方修正が必要だな。



 でも木が手元に無いということは本当だ。俺は木工をするためお小遣いをはたいて自分用を確保していたのだが、今年はこのアパートメントの大家さんに買って行かれた。

このアパートメントの賃貸に木を買うための燃料費が含まれていて木は大家さんが用意しているんだが今年は現物が暖房分しか手に入らなかったらしく、煮炊き分が足りないことを定例会で告げられ、貯木してる者は買い取らせてくれと言う話だった。


売るしか選択肢がないだろう。売らなきゃ住人総スカンだよ。


つまり。


ぺたぺた


「貯木室の床ってこんなんだったっけ・・・久しぶりに見たよ・・・・・・」



今年の冬、俺、なにしよう。



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