2-13 冬の日々1
「であるからにして、これがこうなるってわけさ。みんな分かったかな?」
「「「はーい」」」
・・・おかしい。
冬の上月が始まり、雪が降り始めて数日経った頃から夏の臨時学校の生徒たちがたまに訪ねてきて宿題を出してとせがむ不思議な現象が起こった。初めは、雪で外に遊びに行けないから勉強の復習でもしたいのかと思い宿題を出した。復習は大事だからな。
それがいつの間にか人数がだんだん増えていき、宿題の周期も定期化し、毎回別々に答え合わせするのが面倒になり、ある日1階で朝食後に数人の答え合わせしていたとき、
「うーん、答え合わせをするための広い場所ってないかなー?」
と呟いてしまったのが運の尽きだ。
この呟きは波及しいつの間にか1階の片隅に臨時学校が完成した。確かに冬の間は1階が住民に開放され、大体の住民が降りてきて大人たちは個人や共同で作業をしたり駄弁ったり、子守りが行われるのが常だ。
だが俺ぐらいの年齢の子どもは雪で外で遊べない場合や奉公に行けない場合には子守りを押し付けられる存在だ。ゆえに俺は基本的に家で過ごす数少ない1人だ。そんないたいけな少年を1階に引っ張り出す鬼畜なやつは誰なんだよまったく。
臨時学校は3日に1度開いて、主に宿題の答え合わせと、質問を受け付け、また宿題を出すパターンとなっている。四則演算は既に教えているし、それ以上は知る必要も活かせる場所もないから応用問題だけだ。
だが困ったことが1つ。ある日の質問で、
「せんせー、サイコロってどうやったら勝てるの?」
と宿題には関係ない質問を受けた。ここで俺が、
「知らん」
とか、
「運次第だから祈っとけば」
とテキトーに返せばよかったんだ。だがあろうことか俺は真面目に答えて、確率の話に大脱線した。3回続けて同じ目が出る確率やら、2つのサイコロを振ったとき同じ目がでる確率。そして周りからサイコロを借りたり家から持ってこさせたりして実際に振らせて統計を取らし確かめさせた。
実際に振らせ始めたあたりから一部のやつらの真剣さが上がってきたときには、はーこのギャンブラーどもめーっと半笑い気味に思っていたが、こいつ等そのあと人の話をまったく聞かなくて、延々とサイコロ振って統計を取るグループと遊び始めるグループができてその後の授業が潰された。
「こんの遊び人どもがー!!」
俺はプンプンだ。最後まで注意してもやめなかった数人は授業を出禁にした。ちなみにその数人は俺と同じか上のやつらで、俺に質問してきた子は早々に止めたため出禁にしてない。
俺も別にただサイコロ振って俺の話を聞かないくらいならそこまで注意も罰しもしない。だがサイコロは木製か石製だ。つまり、ころころころころうるさいんだよ。
真面目に聞いてる子の迷惑だろ、他人の勉学の邪魔すんじゃねー。
サイコロはこちらにもあって、ポピュラーな道具だ。主にギャンブル目的で使われるが、俺も宿題を作るときに重宝する一品で問題の数字を毎回考えるのも意外と面倒だから振って決めている。おかげで4、6、8、10、12面まで揃えている。そう、別にサイコロ自体がわるいわけじゃないんだ、要は使いようさ。
授業の最後に宿題をだし、早々に家に帰った俺は、幼児2人にこの荒んだ心を癒してもらった。
ここでこの話は終わらず、3日後の授業のときには一部駄弁り組の大人の位置がこちらに近づいていたのを目ざとくも見つけた。
おい・・・。
授業が始まっていつも通り宿題の答え合わせも終わり、質疑応答の時間のこと、
「せんせー今日はサイコロのこと教えてくれないのー?」
・・・子どもってすげー。前回俺を怒らせた出来事を堂々と聞いてきたよ。出禁をぎりぎり免れた連中がビクッっとなったのを目の端で捉えたが、あれは前回のことだからもう怒ってはいない。
「サイコロかー。どうしようかなー?」
確かに前回は俺1人で計算して数字を言って、それを確かめる作業をみんなでしたため詳細や計算はさせていない。
今まで教えてきたのは全て整数で行ってきたため、分数や小数をまだ教えていないのが原因だ。ニックやトリアには既に教えているため、皆も理解はできると思う。
半分、そのまた半分とか、ちょっと多いから減らしてとかで大体のことが目分量で終わるから、使う機会があるかは分からないから教えてないんだけど。
まあ次の段階へ行くのもまた一興か。
「そうだね、前回変なところで終わったからもう質問がなかったらあとの時間はサイコロの勉強にしようか。他に質問がある人いる?」
あっれー、さっきまであと数人いたはずなんだけど。
「・・・いないね。じゃあみんなサイコロの勉強始めるよ」
みんなサイコロ好きだね。
こうして臨時学校の勉強レベルが少し上がった。
授業も終わり、子守りが行われている場所へ行くと、
「お待たせ2人とも」
「ん、待ってた」
「・・・・・・・」
今日はニックとトリアの2人が俺が授業をしている間子守りをしていた。
今日の2人への教育は木工と裁縫だ。
俺の癒したる2人の幼児には今日は母がついているため今日は2人にかかりきりでいるつもりだ。
「じゃあ行こうか。それじゃあユーグ、トラス、トリスあとは任せたよ」
この3人は前回の授業時に出禁をくらわせたやつらの一部で1つ上のユーグ、同じ年のトラス、トリス兄弟だ。俺の罰の償い方は冬の間は基本的に子守りで償わすことにしている。さすがに出禁をくらわせたのは初めてだが、たまにやんちゃしちゃう子がいるので罰則を設けている。もちろん授業の出禁だから償い終えるまで出席は許さない。もっとも、軽い罰の場合は償いつつ出席も許可している。
「分かってるよ。お前の授業に出ろってババアがうるせーからしかたなくだ」
この口のわるさは弟のトリスだな。トラスとトリスの双子は口さえ開かなければ俺は2分の1の確率で間違う厄介な兄弟だ。
「そうそれでいいんだ」
俺の臨時学校は奥様方に人気がある。
曰く、手のかからない子になったとか、お利口になったとか、ウィル君の言うことだけは聞くんだからうちの子は、とかだ。最後のは少し違う気がするが結果オーライだ。
奥様方を味方につけた俺の勝利?だ。




