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ボクの異世界侵略記  作者: チカさん
第1章 幼少期編
21/93

1-20 幼児プレイ19 4歳春市

 冬も終わり雪解けの季節がやってきました。前世の日本ではサクこほんっ。・・のどの調子が悪いな。気を取り直して、

前世の日本ではソメイヨシノ様の季節です。こちらは壁に囲まれているため西の山脈の山肌しか見えませんが特に色鮮やかな花は見当たりません。

冬の間ずっと木ノコギリの刃の検証して過ごした結果、少々切れ味が落ちましたが、丈夫な刃の形状を見つけることができ、その形状でもう1本木ノコギリを製作しました。



「そう言えばママ、今まで聞いてなかったけどフーホー粉砕装置1号って春市に出品するの?」

「そうねぇ、一応出しときましょ。あれくらいの大きさなら出してる家庭もあるし、邪魔にはならないからね。もしかしたら春市でも売れるかもしれないしね」


まぁ春市でこの辺に来る人は基本的に第3層南区の人達だからフーホーなんて作ってないだろうから春市では売れないと思っているのだろう。まあでも、


「わかった出しとくよ。あれのおかげで部屋がちょっと手狭になったから1台でも外に出せたらうれしいよ」

出品イコール倉庫扱いだが別にいいだろう。それにしても冬の間に家具なんて作ってる家庭も狭いんだろうな。


 現在1階には各家庭で作られたいろいろな品がお目見えしていた。俺もここに粉砕装置を運ばなくてはな。

「おっ、ボタンがある」

そこには俺が去年作ったボタンと似たボタンが出されていた。

「ふっふっふっ、どうだウィル俺の腕もなかなかのモノだろ」


その声に振り向くとライルがいた。どうやらこのボタンを作ったのはライルのようだ。

「去年そこそこ売れてたの見たからな、冬の間空いた時間にちょくちょく作ってたんだよ。小さくて作り易いしな」

著さく・・・・まあいい。別に今回は作らなかったから競合しないからな。


「ちょっと拝見」

ライルが作ったボタンを手にとって見てみると、円と言うより角を落とした四角形タイプのボタンだった。どういうのが流行るか分からないからこういう試みもありなのかもしれない。


「左右のバランスもいいね。ライルって木工得意だったんだ」

「まあな。それより今年はお前けっこうデカいやつ作ったそうだなフーホーふんなんとかとか聞いたけどそれは出さないのか?」

「この後降ろして来る予定。まあ春市では買う人いないと思うけど、売れなくても気にしないことにしてるよ」

「そうかあ?俺は売れると思うぞ。フーホーは粉にした方が貯蔵しやすいからな。最近土地が高い高いって俺の奉公先のおっさんがよく言ってるんだよ」

「ライルの奉公先って穀物商じゃなかったけ?フーホー穀物じゃないだろ」

「いや粉から粒状までの食材を扱ってる店だから粉にしたフーホーも置いてるぞ」

「へーそうなんだ。粉ってことは1回潰して乾燥させて次は臼で挽くってこと?」

「まあそうだな。他のに比べて手間がかかるからあんまり置いてないがな」

「なるほどね。じゃあ買ってくれる人がいることを願って俺は件の装置を降ろしてくるとするよ」


そう言って俺は家に戻った。


 家に入ると丁度母が刺繍した布を持って出掛けようとしているところだった。俺はライルとの会話の話をしてもしかしたら春市でも売れるかもしれないと言ってみた。


「そうなの?ならもっと作ってもらってもよかったかしらね?」

「あれ以上部屋が狭くなるのはちょっと。それに秋に北区で木材商が襲撃された事件でこっちまで影響あったじゃん」

「そうよねいつもに比べて高くなってたわね」


そうなのだ木材がいつもに比べて高かったのだ、あの木材商襲撃事件は秋に西区に詰めてた父に聞いてみると、どうやらあの誤報が流れたせいで起こったらしい。こっちの南区ではすぐに失敗は誤報という情報が流れてきたけど、北区では誤報という情報が届くのが遅く、木材商が伐採の先行きが不透明と言うことで在庫を出し渋ったのを怒った一部の市民によって起こされた事件だったそうだ。その影響がこっちまで波及したということだ。

低度情報化社会と言うのも考え物だな。



 ラックに台座を持たせて俺は粉砕装置本体を持って降りていくと、到着を待っていたライルが、

「おっ、それがそうなのか?」

「そうだよ」

「にしてもラックはもうウィルに顎で使われてるのか」

「ちげぇよ、こいつのせいで部屋が狭かったから自主的に手伝っただけだ」

「そうだよ、兄ちゃんが自主的に手伝ってくれたんだよ」

「「おいその発言やめろ。お前(ウィル)の兄ちゃん(その)発言は嫌な予感(悪意)しか感じない」」


おっかしーなー?事実を言っただけなのに。それにライルもそんな認識なんだ。


「ボクは悲しめばいいの?それとも喜べばいいの?」

「何でそこで喜ぶ発言が出てくるんだよ。お前たまに怖いんだよ」

ふむ、これは久々に『許すまじラック帳 ライルの章』に記帳することがあるかもしれん。


 出店のまとめ役であるアーレイさんが各家庭を回って出品物の価格などの話をしているが、うちらの家庭の番はまだなので母の近くに粉砕装置を置いてラックとライルと出品物を見物しつつ自分たちの家庭が呼ばれるのを待っていると、

「えーと次は、……う室だから、ドルネットさんのところかい」

ライルの家庭が呼ばれるのが聞こえた。


「ライル、お前んちの番だぞ」

「ん、そうかじゃあ行ってくる」

ライルは俺達から離れ家族の元へ行った。


またしばらく出品物の見物していると、アーレイさんが母のところへ向かって行ったのが見えたため、見物をやめ母のところへ向かった。


「こんにちはエアリスさん。今年出品する品を見せてもらってもいいかい?」


母は隣の奥様との会話を終え、

「こんにちわアーレイさん。今年はこれらの品を出品します」


母とアーレイさんがこれはいくらで売るつもりかの価格の話をしながら順番に粉砕装置の方へ近づいてきた。


「次はこれだね。・・・・これは、・・今年も変な物作ったもんだね、ウィルだろうこんなもの作ったのは」

いやいやそれは。変な物イコール俺って、アーレイさんの頭ではそんな等式が成り立ってるのか。確かにちょくちょく井戸のある広場で実験とかしてたけどさ・・・


俺は粉砕装置の前へ躍り出て装置を説明を始めた。

「こほん。ご紹介します、こちらは変な物です。奴をこの投入口から入れこちらのハンドルをぐるぐる回すだけで奴を切り刻み、ミンチ状にするために作られたれた装置です。さらに・・・


この後も説明を続けたが、徹底的に固有名詞を回避し続けた。ヘンナモノジャナイカラナコレハ、ベツニオコッテルワケジャナイヨ。


「ほうそうかいそうかい、フーホーをそんなふうにするために作ったのかい」

・・・なぜだ、なぜばれた。

よく見るとラックが時々アーレイさんに耳打ちしていた。

裏切ったなラーーーク。これは『許すまじラック帳 絶対に忘れません章』に記帳確実な案件だぞ、覚えてろよ。


こうして説明を終え、その後母とアーレイさんが価格の話とかをしていたが俺はラックに気をとられていたためアウトオブ眼中だった。



 そんなことがあった翌日、今年は初日の午後が店番の当番になった。今年もライルの家庭とペアでの店番だ。そして俺はボタン説明係からフーホー粉砕装置1号説明係へ昇進?した。といってもこんな装置にひっきりなしに客が来るわけもなく閑古鳥が鳴くのは必至だ。


 午前中にいくつかの商店や出店を見て回ったが、代わり映えのしない光景に北区の事件の影響はやはり限定的なものだと改めて思いつつ、去年には見なかったタイプの物を物色しつつ午後の当番までゆったり過ごした。


 午後になり店番の開始だ。

ふむ、ライルのボタンは既にいくつか売れてやがる。他の出店でも少ないが置いていたところを見てきたしもっと前衛的なデザインの物もあった。去年たった800個から始まったこちらでは新しいタイプのボタンも、もうこれは市民権を得るのは時間の問題だな。まあ初めは全く売れなかったから誰か火付け人がいるのだろう。



それにしてもまったく売れないな。

フーホー粉砕装置1号はまだ1台も売れていない。ライルが言っていたようなことをしている人はこの辺にはいないのかもしれないな。そんなこんなで道行く人を眺めていると、母とお客らしき人が共にこっちにやってきた。


「こちらでその装置です」

「おおたしかに。ランドリアスさんのところに行ったがもう本体の在庫は無いと言われてな。こっちまで足をのばしたかいがあったのう」

ランドリアス?それって祖父の名だ。つまりこのお客さんは北区の人か?


「こんにちは。こちらの装置の製作者のウィルです」

「おおボウズがウィルか、エミリーさんから聞いとるよ。この装置はすごいな、前に見せてもらった時は次の秋にでも作って貰おうかと思っておったが、他のところが使ってるのを見てるとどうしても欲しくなってのう」

やはりこの人は北区の人のようだ。それはまた遠くから来たもんだ。そのお客は母の方へ振り返り、


「して、ここに在る1台しかないのかのう?」

「あと数台ございますが、もしかして複数台ご入り用ですか?」

「3台欲しい。あと予備の刃も同じ分だけ用意してくれ」

おいおい、冬の間に準備した量の半分だぞ。予備の刃だけは大量に用意してあるが、売れるときには売れるもんだな。


「ウィル、こっちであとの話はしておくからラックも連れて3台運んできてちょうだい」

「分かった」


俺はラックに声をかけて、ともに家に帰った。

帰ってる途中、

「それにしても売れるもんだな」

「そうだね兄ちゃん」

ツカツカ・・・ポコン。イタイ

展開があったのは言うまでもない。ぼうりょくはんたーい。



「よしと、これで最後」

今3台目の荷をお客がもってきていたリヤカーに乗せ、荷運び完了だ。


「おおありがとなボウズ達、じゃああとのことも頑張ってくれよ」

そう言って連れてきていた人にリヤカーを牽かせ帰って行った。

あとのこと?それってなんだ?と母を見ると、俺を手招きしていた。

あっ、嫌な予感。


「ねえぇウィルちゃん」

嫌な予感的中。


「なぁに?ボクは忙しいからちょっと家に帰るよ」

踵を返すと家の方にかえ・・・れなかった。肩には母の手が


「今店番中でしょ。他にどんな用事があるの?」

ちっ、忘れ物の方が勝率が高かったか。


「・・・・」

「ウソをつくなんて、ウィルちゃんは悪い子ねー。悪い子にはたくさん反省(製作)してもらわなくちゃねー」



何か副音声が聞こえたが、

「ゆ、ゆるちてくだちゃい」

「だーめ」


俺に一体何を反省(製作)さす気だ。




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