1-11 幼児プレイ10 実用品完成
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春の伐採も終わり、今日から夏の上月。俺は4歳になりました。
春に始めた魔術の応用技術の習得は遅々として進んでいません。応用技術全般に対して言えることだが、魔力を感じることこそ技術習得の近道らしく、感じるよう鋭意努力を続けているが一向に感じない。初めて魔術を使った頃はけっこう魔力を感じてたんだが、木工を始めたあたりから魔闘技の方ばかりにかまけていたせいで魔力を感じる力が落ちているようだ。あっちが立てばこっちが立たず、バランスを取るのは難しい。
だが魔力の件は1つの秘策を思いついているので暇になるのと覚悟ができたとき実行しようと思い今は置いておく。
気の滅入ることはここまでにして、ようやく春の伐採が終わったので木の在庫が市場に流れ始めた。今回も市は立たなかったが、俺がいろいろ作れるぐらいの木は確保できた。普段の行いのおかげだな。(ぐへへ)
シューッ、シューッ
俺の新作のカンナは中々の一品に仕上がった。刃だけ先に作っておいてようやく木が手に入ったので台を作り刃を取り付け完成した。調整がちょっと難しいが頼もしい相棒だ。そして俺のせいでご臨終してしまったナイフは刃をさらに削り小ナイフぐらいにしていつも持ち歩いている。2代目を拝命した新生ナイフは俺の背も大きくなっていることもあり1代目より1回りほど大きく作った。
今現在、魔闘技を使いながら木を削っている。
・ハンドルとなる棒にはめ込み用穴をあけ、穴の表面を出来るだけ平らに
・シャフト部分は刃を差し込むための細工を施し
・シャフトを覆う外装は板材を曲げやすくなるまで水につけ、曲げながらどうにか重ね合わせて木クギで接合。上部の投入口を残して全てカバーで覆い、下部は斜めに目の狭いスノコをつけ水分は下に、固形物は流れるように
・外装が嵌るように台を取り付け、その台に足を引っ付ける。立たせてみるとちょっとガタガタするが見てくれは二の次なためバランスを取るため足の一部を大胆にカット
全体の流れはこんな感じだが、刃はいろいろ調整しないといけないため大量生産中だ。
ふー疲れた。ここまで何日もかかったがようやくあと刃を取り付ければ一応完成だ。日に日に出来上がるfp(仮)は部屋の片隅に陣取っていたためラックにいろいろ聞かれたが、できるからのお楽しみっと言ってある。まぁ俺がいない間になんかするかもしれんが。
取り付けるのは明日にして、そして奴を使って検証だ・・・・奴あったっけ?いやまて、その前に部屋の中じゃ水浸しになるから使えん。井戸がある広場まで持っていくとして、扉は・・・ふー。足さえ外せば扉は通りそうだ。よしあとは奴があるか母に聞いてみないとな。
「ママー、フーホーあるー?実験に使いたいんだけど」
「フーホー?ないわよ。それに実験って何をするつもりなの?」
「ふっふっふー。ついに完成した道具の性能を試すんだ」
「ウィルたちの部屋の隅に置いてあったあれのこと?」
「そうそれ。去年秋の収穫作業のときちょっと思うことがあって作ってたんだ」
「まぁまぁ、今度は何を作ったのかしら。楽しみだわ。フーホーね。ちょっと貰ってくるけどどれくらいいる?」
「実験するのは明日だよ。数は分かんないけどけっこう欲しい」
「分かったわ。ちょっとお留守番しててね」
というと出かけて行った。母が実験に乗り気で助かった。そうそう、春の市のとき出品したボタンは最終日にはほとんど売れてた。市が終わって母から50ゼン貰った。俺の作ったものの売り上げの一部らしい。初お小遣いゲットー。
お小遣い何に使おうかな?50ゼンならええーと、加工品はとても高くなるので手を出せないが、加工前ならいろいろ買えるぐらいだな。
しばらく経って母がカゴいっぱいのフーホーを持ってきてくれた。
「はいウィル、これぐらいでいいかしら?」
「うん、ありがと。実験がうまく行ったらこれで十分だよ」
次の日、いつも通りに手伝いを終え、井戸のある広場まで何とか部品を持っていき、シャフトに刃を嵌め、外装にシャフトをしっかり固定、下に受取り用のカゴもセットし、ついに完成した。
早速空で回転させてみるとまあまあ固いが、子どもの俺でも回せるので大人ならいけるだろうと良しとした。次にフーホーを投入。
ころころころ
ぽてん
底から出てきた。刃を回してないと落ちる仕組みだ。欠陥ともいう。要改良だな。やはり回しながら投入するか、回す人と投入する人が別にいるようだ。そんなことを考えつつfp(仮)を見ていると、
「ノーー!」
重大な欠陥を見つけてしまい奇声をあげてしまった。それはハンドルと投入口の位置だ。ハンドルと投入口はどっちも上についているため回しながら投入するのが至難だ。はぁこれも要改良か。
投入口を外装側面上部にあける。安全のためあとで投入口をカバーで覆うとして、バージョン1.10が完成した。
試運転を開始した。回し始め、そしてフーホーを1つ投入。
ザクッ
シーン
?回転時の音しか聞こえない。一旦止めて中を覗き見ると、あーなるほど、フーホーは切れてるが、刃にペタッと張り付いていた。
ふむ、これは軽微な問題だな。対応策は刃に少し凹凸を付けるのと、フーホーを大量に投入すれば互いに衝突して何とかなるだろう。
そんな感じで刃を替え数を替え、少しずつバージョンアップしながら夕方にはそこそこの出来になった。あとは急造でいろいろやったからそれを整えたら完成だ。水を汲みに井戸に来た人たちには変な目で見られたが目的のため羞恥心は封印してきている。
家に帰るため、分解して刃に付いた細かくなったフーホーを洗い流し(もちろん食べ物ですのでざるで受け止めています)、まずは部品を持って帰った。その後、切れてそこそこ細かくなったフーホーが入ったカゴの水が切れるまで待って家に持ち帰った。
家に帰って、今日の成果を報告する
「ママこれを見て、あの道具使って加工したの」
カゴに入った切り刻まれて泥のようになったフーホーの山を見て
「食べ物を粗末にしてはいけません!ウィルはフーホーが嫌いだからってこんなことのために道具を作ってたの」
怒られた。
「つまりウィルは、鶏の飼料にするためフーホーをつぶす作業をもっと楽にするためあの道具を作ったってことでいいの」
「そういうこと」
あのあといろいろこれの意味や目的、過程などを説明して何とか納得してもらえた。・・・・疲れた
「それでウィルは効率がどうとかよく言ってるけど、結果はどうだったの?」
「うーんまだちゃんと完成してないから何とも言えないけど、作業時の速度は棒でたたくのとあまり変わらないと思う」
「あらそうなの残念ね。聞いてると楽できそうだと思ったんだけど」
「まぁ待って、つぶす作業速度自体は変わらないけど、叩くのに比べて力が要らないから結果的に休憩を少なくすることができるし、これなら俺でも使うことができるからつぶす作業ができる人数が増えるし、つぶしたフーホーの破片は散らばらないから後で集めるのも楽になる、だから全体の効率は上がるはずさ」
「・・・ウィルちゃんの頭はどうなってるのかしら。まさか私たちからこんな子が生まれるなんて」
方向修正を、
「そう?ママも裁縫とか魔術とかいろいろ知ってるじゃない。ボクはたまたまこっち方面に才能があったんだと思う」
「うーん、そう・・なのかしら?」
「そうだと思うよ。ボクは家にいることが好きだからいろいろ考えちゃうんだ。他にも作ってみたいものもあるし」
「確かにほとんど家にいるわね。・・・だとしたら魔術以外にもいろいろ詰め込んだらどうなっちゃうのかしら」
おっと、何を詰め込まれるのかな?裁縫とかはやめてくれよ糸車くらいなら作ってみせるが、俺的には学問なら大歓迎なんだがな。
「まぁその話は今度にしましょうか」
方向修正もうまくいったし、今度からなんか他のことも教えて貰えそうだし結果オーライだ。
後日、さらにいろいろ修正を加えfp(仮)は完成した。バージョンは1.33だ。
そして今日は母を交えて完成試運会だ。
「じゃあまずボクが動かしてみるね」
ハンドルを握って勢いよく回し始める。
「回しながらフーホーをと・・う・にゅうーする」
回しながら入れるのけっこう難しいんだよな。やっぱり2人作業にするか、投入方法も考えないといけないな。
そしてそこそこ細かくなって懸濁状態のフーホーが底から排出される。
「まぁまぁ話には聞いてたけど見るとまたすごいわねーこれは」
これはお手柄ねとっと言ってさらに、
「私にも使わせてくれる?」
「もちろん」
母が回しながらフーホーを器用に投入していく。腕の長さか腕の長さが悪いのかー!
しばらく使用してみて母が、
「これはすごいわね、とても楽だわ。ねぇーウィルちゃんこれあと何台か作れない?」
ん?売るつもりか?
「作ろうと思えば作れると思うけど、何するつもり?」
「もちろん売るわ」
「でも商業許可証がないと売っちゃいけないんじゃなかったけ?」
犯罪者にはならないでー。
「正確には店を開いて一般市民を対象に売ったらダメって話よ。じゃないと去年私の実家で貰ってきたフーホーをどうやってお金に変えたっていうのよ」
そう言われればそうだな。
「商業許可証を持っている人には売ってもいいの。それにこれが適用されるのは第3層から上の層だけだから、第4層では普通に売り買いしてもいいのよ」
穴だらけだな商業許可証制度。
「そんなんで商業許可証って意味があるの?やりようはいくらでもありそうに聞こえるけど」
「それはもちろん信用ね。品質に嘘偽りがあってそのまま売ったのがばれたらその店はつぶれてしまうし、壁に囲まれてるから逃げることもできないから許可証を提示している店は品質に自信を持ってるって目安になるからね、私は生ものと衛生用品は許可証を提示している店でしか買わないようにしているし」
やはり客商売は信用が1番なのか。それにこの都市は人の行き来が少ない閉鎖空間だから1度悪いことしてしまうとずっとその肩書きがついて回るからもう客商売は無理って話だな。
でもこの言い方は、違法で売ってる店が普通にあるみたいだな。
「そうなんだ。じゃあママは誰に?それとも春市で売るの?」
まぁ腐りものじゃないし、でも口に入る物に使うなら衛生管理は徹底してもらいたいからな、母の話次第でこれの製造数を決める腹積もりだ。
「それなんだけど、私の実家でそれを作ることができる?」
「これを持っていくつもりだったけど、なんで?」
「今年は私とラックで収穫の手伝いをするからその間に作れないかと思ってね。これを使えばウィルがいなくても去年と同じ以上の収穫が見込めそうなのよね」
ふむ、役立たず宣言を頂戴したか。
「それはできるけど、作ったやつはどうするの?」
「まずは実家と周辺の家に試してもらってから評判が良ければこっちの家の近くで売るって話よ」
なるほど、そういう腹積もりか。
「あっちでも使える木を確保してくれれば大丈夫だけど、いくつ作れるかは分かんないよ」
「まぁそれは仕方がないわよ。でもできるだけ多く欲しいわね」
「頑張ってみるよ」
お小遣いのために
秋の手伝いに行くまでまだけっこう期間がある。その間は魔術の練習に集中するつもりである。




