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61話 新たな提案

『キリエ、ドラゴンに柵が出来る前に害意を持った俺等以外の人間が近づいたら殺していいって伝えといた』

 急なオルカからのテレパシー。

 まあ、そうでもしないとドラゴン達も平穏に暮らせないものね。

「という事は、王国魔導院は雷撃への完全耐性の魔道具は所持していないという事ですか」

 続けてオルカが口を開く。

「そうなるだろう。アダム先生の技術力があってこその品だ」

 そうよね。もしかしたらこのブローチであのドラゴンの雷属性のブレスすら無効になっていたのかもしれないわ。

 魔導院と仲が悪いアダム先生だから、この技術を渡すことは絶対に無いだろう事はわかる。

「報告書にはブローチの事を書いても良いですか?」

「アダム先生の名前を記載してくれたらそれで向こうも理解するだろうから、それでやってくれたら」

 オルカの質問に、苦笑しながら学院長先生は答えた。

 学院長先生も、アダム先生と魔導員の揉め事を見てきたのだろう。


「君達の今回の貢献によってなにか王国から褒章が出る可能性もある。それと……少し考えていたのだが、前にイレーネ先生から聞かされた、君達がモンスターを助けて宝石を貰ったという話と今回の話を踏まえて、生態学研究にも携わって貰えないかと。まだこの世界のモンスターについて分かっていない事が多くてね。君達の応用魔力学研究室での研究の一環として組み込めないだろうか」

 私とオルカは、学院長先生の言葉に顔を見合わせる。

 やってやれなくもないけれど、なんだかまたする事が増えてきたわ。

「学業との間で忙しくなってしまうのは心苦しい。出来たらで良いよ」

「俺達も分身出来るわけじゃないですからね。手が空いた時で良ければ」

「私も、暇ができたらやってみたいです」

 たとえその生態学研究によってモンスターが倒され易くなることになったとしても、それはそれで仕方ないと思う。

 相手を知る事は大事だもの。

「そういえば、この前植物の生育を助ける魔法を思いついたのですけど……」


 話が少し長引いて、昼食時になってしまった。

 私とオルカは、昼食をとった後、引き続き学院長室で調査報告書をまとめる事になった。

 三人で昼食を囲みながら、先程の私の魔法の話に話題が戻る。

「植物の特性を生かした魔法は今までにまだ無い。本当にキリエ君独自の魔法だ。その魔法が完成すれば、応用魔力学研究室の存在が世に出る事になるかもしれない」

 そうなるよなあ、とぼんやりと思う。

 私たちの中だけで使っていくにはもったいない魔法だもの。

「公式な研究機関としての登録を魔導院から要請されるかもしれないが、その辺りは二人はどう考える?」

「俺は別にいいですけど……」

 そう言いながらオルカは私の方を見た。

「その方が都合が良いなら……と思いますけど、秘匿すべき研究までは表に出せないです」

「大丈夫だよ。一応アダム先生の叡智の歯車舎も登録されている公式な研究機関でもある。そのアダム先生が魔導院に技術を渡していないところを見れば君達も納得するはずだ」

 それはたしかに。学院長先生の話を聞いて、納得と安心を得た。

「それに、学院が君達を守るというのは我々の義務としてこれからも徹底する。万が一のことがあったら、ドラゴンの権威も借りて良いと思う」

「ああ、たしかに。学院長先生が来る前に、もし仮に契約の証が奪われたらどうなるかドラゴンに尋ねたら、その時は奪った奴等を殺すって言ってましたし」

 不穏な言葉を平然と言うオルカ。

 その言葉に、学院長先生の表情が若干曇る。

「それだけの守りがあるのなら君達の身は絶対に安全だろう。……とりあえず、もしもの話だ。実際に要請が出たらまたその時に一緒に考えよう」

 学院長先生の言葉に、私とオルカは頷いた。


 昼食をとり終えた午後、私とオルカは学院長室の応接テーブルで、調査報告書を一緒に書いていた。

 途中でイレーネ先生も加わって、お仕事をしながら私達の様子を見守っていた。

 生徒達はもう解散したらしい。明日からはまた普通に授業が始まるという話だった。


 調査報告書には、学院長先生から依頼を受けた事、アダム先生の魔道具の事、死体を見つけた事、帯電の原因、ドラゴンとの対話内容、私の魔法で解決の見通しが立った事、等を丁寧に書いていった。

 最後に私とオルカの署名をして、学院長先生に提出する。

 学院長先生はそれに目を通すと、イレーネ先生にも確認して貰っていた。

「それじゃあ、改めて確認するよ。ドラゴンの巣の周り、特に帯電している周囲に、生物自然保護区域に指定する旨の柵と看板を設置する。そこへの出入りはオルカ君とキリエ君のみ許可される。これは学生証を提示すれば通れるようにしてもらうつもりだ。王国には君達がドラゴンとの契約をしたことも伝える。そしてそのドラゴンとの協力関係である事も伝える。これで大丈夫かな?」

「はい。それで問題ありません」

 オルカの返答に、学院長先生は頷く。

 学院長先生は、最初に私達に渡した調査依頼書を回収して調査報告書を封筒にまとめると、魔法でどこかへ転送した。多分あて先は王国の主要部のどこかだろう。

「それじゃあ、本当にお疲れ様。あとは君達の自由に過ごしてくれたら良い。ここで引き続き研究を進めるもよし、帰ってゆっくり休むもよしだ」

 学院長先生の言葉を受けて、私とオルカはとりあえずまた応接テーブルのソファーに座って今後の事をどうするか考え始めた。

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