41話 支払い
「それじゃあ帰ったらさっそく制作を始めさせていただくわね。他の宝石はしまってくださって結構よ」
エレナさんに言われ、オルカは巾着に宝石を戻していく。
宝石を納め終わるのを確認すると、トレーは重ねて鞄にしまわれた。
「指輪の代金を魔力鉱石で払えるって学院長先生から聞いたんですけど」
「それね。いくつかお持ちよね、見せていただける?」
エレナさんの視線がオルカの鞄に移る。鉱石の魔力をその目で感知しているみたいだった。
オルカは鞄から持ってきた魔力鉱石を取り出して並べていく。
「あらこれは……なるほどなるほど。それじゃあ指輪のお代金はこれをいただいていくわね。それとお願いなんだけど、いくつか買い取らせていただけない?」
いただいていく、と言ってエレナさんが手に取ったのは、一番魔力量の少なくて小さな鉱石だった。
「え、いいんですか?」
「ええ。学院長先生からもご許可をいただいてるわ。魔法のアクセサリーを作るのに質の良い魔力鉱石が必要だったのよ。オルカさんが持ってきてくださったもの、だいぶ質が良いわ」
エレナさんが魔法のアクセサリーと呼んでいるのは、彼女がつけているアクセサリーを見る限り、魔道具の事みたい。
「良いかしら?ごめんなさいだけどちょっとどちらか、学院長先生を呼んできてくださる?」
「あ、それじゃあ私が行くわ」
「うん、頼んだ」
交渉をオルカに任せて、私は会議室を出て学院長室に向かう。
学院長室の扉をノックして開くと、学院長先生はお茶を飲んでゆっくりしていた。
「おかえり、キリエ君。なにかあったのかい?」
「エレナさんが魔力鉱石を買い取りたいから学院長先生を呼んできて欲しいって」
「なるほど。話が進んだのだね。わかった。一緒に行こうか」
私は先生と一緒に学院長室を出て、会議室に戻る。
「お帰りキリエ。学院長先生もおかえりなさい」
「ただいま」
私達が会議室に入るなり、エレナさんは学院長先生とやり取りを始めた。
「学院長先生、ちょっと大きなお金が動くものだからオルカさんだけじゃあれかと思ってお呼びしましたわ」
「キリエ君から聞いていますよ。魔力鉱石を買い取りたいそうで。オルカ君からの承諾は得られましたか?」
「ええ、もうバッチリ。何個でも買い取って良いって言ってくださったわ」
学院長先生を呼びに行った短時間に話はだいぶ進んだみたいだった。
「なるほど。そうだね、オルカ君、お金の管理は出来るかい?」
「あー……ちょっと大金ってなると寮の部屋に置いとくのは不安ですね。どっか預けられたらいいんですけど」
それはそう。学院のセキュリティが万全とはいえ、大金を留守にしがちな学生寮の部屋に置いておくのは不安がある。
「そうだね……不安なら学院に一度預ける事も出来るが、どうする?私がきちんと管理をしておくから、盗まれる心配は無いよ。万が一盗まれたとしても私が全額保証する」
「本当ですか?それじゃあお願いしても……」
「ああ。責任をもって預からせていただくよ」
オルカがお礼を言うと、学院長先生はエレナさんに向き合った。
「それじゃあ、魔力鉱石は全て買い取りで良いですかな?」
「ええ、それでお願いしたいですわ。ちょっとお待ちくださいね」
そう言うと、エレナさんは大きさ順に鉱石を並べ替えて、メモ帳に値段を書き込んでいく。
このくらいかしら、と言って、学院長先生にメモ帳を見せた。
「これは……だいぶ相場より高いのでは」
「これだけ質の良い魔力鉱石がこんなにたくさん手に入るんですもの。色を付けて当然ですわ」
「なるほど。オルカ君、この値段になるけれど良いかな?」
オルカに確認を取るけれど、額が高すぎていまいちよくわかっていないようだった。
「あ、はい。大丈夫です」
「それじゃあお支払いしますわね」
エレナさんは鞄から白い袋を取り出す。中から、いくつかのお金袋が出てきた。次々出てくるお金袋は、白い袋の見た目の容量より多く見えた。この白い袋も魔道具なのだろう。
「ごめんなさいねたくさんあって。全部で150万コインですわ」
確かにこれは額が高すぎてどれくらいのものなのかよくわからない。
学院の食堂が一食10コインな事を考えると、だいぶ大金だわ。
校長先生も白い袋を取り出して、お金袋をしまっていく。そして、すべてしまうと、袋の表を確認する。そこには150万コインの表示が浮かび上がっていた。
「たしかに、預からせていただくよ」
「オルカさんも学院長先生もありがとうね。キリエさんも完成楽しみに待ってて。三日くらいで仕上げてお持ちしますわね」
「ありがとうございます。よろしくお願いします」
エレナさんは持ってきた鞄の中から青色の袋を取り出すと、魔力鉱石をその中にしまっていく。
すべてしまい終えると、「それではごきげんよう」と言って職員玄関の方へと歩いて行った。
私達はエレナさんを見送ると、会議室を出て学院長室に戻った。




