↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
21/61

21話 遺跡にて

 受付に鍵を預け、外出する旨を告げる。

 部屋を出た瞬間から、またあの不快な流れを感じていた。

 その流れが収束していく方向を地図で確認すると、遺跡のある方向に向かっているようだった。

「遺跡、か」

 カズノ遺跡。何があるのか分からないけれど、イレーネ先生から出来れば近付かないようにと言われていた場所。

「行くしかないかしら……」

 この不快さを何とかしないと、まともに実習が出来そうにない。

 私とオルカは視線を合わせると、地図をしまって遺跡の方へと歩き始めた。



 遺跡に近づくにつれて不快さが増していく。

 どんどん周囲から色が失われていくような錯覚に陥った。

「大丈夫か?キリエ」

「ええ、平気」

「……ちょっと待ってろ」

 オルカが立ち止まり、それに合わせて私も立ち止まる。

 そして彼は目を閉じ、私達の周囲を囲むように結界を作った。

「これでいくらかマシだろう。行こうか」

 オルカの結界で、私達の周囲1メートルくらいの範囲が清浄な空間になっていた。

 結界の中からでも、周囲から色が失われているような感じは変わらない。魔力を吸い出されてしまっているのだろう。

 と、その時。周辺のモンスターが大きく鳴き始める。

 その鳴き声と共に、こちらに鋭い敵意を向けてきた。一歩でも動いたら襲い掛かってきそうだ。


 けれどオルカは構わず遺跡の方へと歩みを進めた。

「オルカ……」

 そのオルカの様子を見て、案の定モンスター達は襲い掛かってきた。

 とっさに私は、「思いついた」魔法を放つ。

 魔力を込めた右手を空へ掲げ、振り下ろす。

「ホーリーレイン!」

 私の呪文に呼応して、まばゆい光の雨が辺り一帯のモンスターを一瞬で消滅させた。

 この嫌な不快さが闇の属性を持っていたから、試しに光の属性魔法を使ってみた。

 見事に不快さは打ち消され、平穏が戻った。でもそれも一時的なものだろう。放っておいたらまた不快な流れは戻りそう。

 周辺にモンスター達の所持品が散らばっている。

「いくつか拾ってくか」

 木の実とか小さな宝石とか、透明な丸い球体とかいろいろ落ちている。

 私達は適当に見繕っていくつかを鞄に入れ、また遺跡の方へと進む。どうせまた襲われるからと、今度はオルカも学院で教わった範囲の魔法で目に付いたモンスター達を蹴散らしていった。


 そして遺跡のすぐ前で私達は立ち止まる。

 だいぶ、闇の気配が強い。

「キリエ、中に向かって適当に光魔法撃てるか?」

「出来るわ。ん-と……ヘヴンリィエクスプロージョン!」

 私の指先から放たれた光線が遺跡の中へ突き進み、中に広がる空間内で光の大爆発を起こした。

 少しだけ中に入って様子をうかがう。

「見えんな……ライト」

 オルカの魔法で生み出された光源が入り口から広がる空間を照らす。

 この部屋だけ闇の気配が消え去り、清浄な空気が満ちている。

 辺りにはモンスターの所持品が色々落ちていた。その中に光る小石がいくつか落ちている。魔力が宿っている鉱石のようで、私達はそれを拾い集めて鞄にしまった。

 次の部屋も同じように入り口から魔法を打ち込む。それを繰り返して、何が居るか分からない遺跡を適当に進んでいく。



 最奥の部屋に「男」は居た。

 私達に背を向けて何かに集中しているようだ。

 その前方には暗いオーラを纏った闇の球が浮かんでいる。不快感の原因はそれのようだった。

『あれか。潰せ』

 シンに言われるままに、私は右手に魔力を込める。そして小声で呪文を唱えた。

「……ホーリーレイ」

 小声で唱えたものの鋭い閃光が私の手の指先から放たれ、一直線に闇の球へと進む。光線が着弾した瞬間、闇の球はまばゆい光を放って消滅した。

「何者だ!」

 慌てて男は振り返る。けれど、私達の姿を認めると、厭らしい笑みを浮かべる。

「何だ、ヴィルトゥス魔法学院の生徒か。何用だ?我が根城に」

 男の目前にまた、闇の気配が集中しだす。

 また闇の球が生成され、周囲から魔力を吸収し始めた。

「貴方こそここで何してるんですか?」

 目的をはっきりさせておこうと思って私は問いかける。

「見て解らぬか。魔力を集めている。この集めた魔力を吸収して我が力とするのよ」

「それで、何をするんですか?」

 答えるか分からないけど、続けて聞いてみる。

「貴様等に答える義理は無い」

 私はじっと彼の目を見た。そして、視線が合った瞬間、呪文を唱える。

「チャーム」

 途端、闇の球は掻き消え、男はその場に膝をついた。

 相手を魅了して言う事を聞かせる魔法。相手を無力化するのに一番手っ取り早そうなのはこれかなと思って使ってみた。


「魔力を集めて、何をするんですか?」

 もう一度問いかける。

「世界征服をな、考えておった。手始めにこの地域から制圧してやろうかと、こうして魔力を集めていたのだ」

 私はオルカと顔を見合わせる。

「随分と壮大な夢だな」

「そうね。止めましょうか」

 オルカが頷く。

「あのね、人に迷惑をかけちゃいけませんよ。貴方のせいで、世界中のみんなが迷惑してるんです。やめてくださいね?」

 わざと主語を大きくして男に話しかける。

「そうだったのだな、すまなかった。もうやめよう……」

 男の言葉を確認すると、オルカが動いた。

 男に向かって人差し指を向け、集中する。

「スリープ」

 男の脳髄の奥にまで届くよう呪文を唱えるオルカ。

 ゆっくりと男の体が床に倒れこむ。そして、いびきをかいて眠り始めた。

「これで多分俺等が解除しない限りこいつはずっと眠り続けるだろう」

「モンスターに食われなければいいけどね……」

「そうだな……。予定外の事が起きたから一旦先生に連絡しよう」

 そう言いながら、オルカはイレーネ先生宛にマジックレターを飛ばす。その内容はシンがテレパシーで送ってきた。


 カズノ遺跡に世界征服を企む魔導師がいました。鎮圧しました。

 

 少ししてすぐ返信が来た。

「……すぐ学院に戻れってさ」

「あら。そうなの?」

 頷くオルカ。私達は鞄から転移呪文書を取り出し、開いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。