番外編 金谷千歳と意外さ
次の日、和束ハルからLINEが来た。
「かりんシロップいらん? 高千穂さんが病院の職員さんにやたらかりんもらって、シロップにはしたけど余っとるんよ」
『欲しい! そっち行く!』
お湯で割っても氷水で割っても、きっとおいしい!
「じゃ待っとるわ」
そういうわけでワシは和束ハルんちに行った。和束ハルは普通に出迎えてくれて、かりんが浮かんだでかい瓶をくれた。
「味見してみるか?」
『するする』
和束ハルは家にあげてくれて、かりんシロップを炭酸で割ってくれて、ワシはまたごちそうになってしまった。
和束ハルもかりんサイダーを飲んで、「最近どうや」と聞いてきた。とたんにワシは悲しい気持ちになった。
『最近、その……悩みがあって……』
「なんや?」
『和泉はさ、ワシがコブで好きな人とくっつけないのかって……』
「コブ?」
『金谷安吉さんに言われたんだ、ワシがいるから和泉は結婚なんてしないって』
「はーん……」
和束ハルは、なぜかワシを眺め回し、そして言った。
「それはちゃうで」
『ほ、本当か!?』
ワシは藁にもすがりたい思いだった。でも、和束ハルが言ったのはもっと重いことだった。
「多分な、その好きな人は子供でけへんのや。だからあんたに言いたがらないし、くっつくのも避けとるんやと思うで」
『えっ……』
ワシはものすごくびっくりした。そんな可能性、全然考えてなかった!
『い、和泉子供いなくてもいいのか!? そんなにその人が好きなのか!?』
「そうやない?」
『だ、だって、自分の子供ってすごく大事なものでみんな欲しいものじゃないのか!?』
「あんたはそうやろうけど、別に和泉豊はそうやないんと違う?」
『え、えええ……』
ワシは呆然としてしまった。
「まあ聞いても口割らんと思うけどな」
『でっ、でも聞いてみる!』
ワシは急いでかりんサイダーを飲んで、一目散に家に帰った。和泉は仕事してたけど「お帰り」と出迎えてくれた。
「和束さんとおしゃべりしてた?」
『う、うん……その、和束ハルに聞いたんだけどさ……』
「何?」
『お、お前の好きな人って……子供できないのか?』
「え!?」
和泉は目を丸くし、それから「あっ」と言って黙りこくってしまった。
『そうなのか!?』
「も、黙秘! 黙秘する!」
和泉は自分の口を押さえた。
『教えろ! 教えろよ!』
ワシは和泉を揺さぶったが、効果はなかった。
「言わない! 絶対言わない!」
『…………』
和泉の反応からして、多分好きな人とは子供できないんだろう。やっぱり、ワシがいるから……和泉は好きな人とくっつけないのか?




