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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
21シーズン

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全員で言って通したい

 皆で斎野神社に集まる日。月美ちゃんは、狭山さんはじめとした夫婦たちに結婚の実情を話され、ぽかんとしていた。


「えっ、じゃあ、聞かされてたのと全然違ったんだ……」


 狭山さんと金谷あかりさんは重々しく頷いた。


「全然違います」

「全っ然違います」


 水香さんも頷いた。


「まあ私が上の立場なんで」


 朝日さんは陶然と「はい」と言い、俺は2人の関係の一端を見た。

 南さんも言った。


「というか、私、尼になったのは結婚と全然別の理由だし」


 金谷司さんがうなだれた。


「俺がショック受けてたのなんだったんだってくらい、別の理由だったし……」


 緑さんがため息をついた。


「私はね、旦那が桂馬さんと似たようなことしないようにわざと離婚してないのよ……本当にもう、上島家がそこまでひどいなんて」


 金谷あかりさんは緑さんと月美ちゃんを見た。


「なんていうか、結婚とか子供とかはひとまずおいといて、うちの業界でちゃんと働いてもらうほうが優先だと思うんですよ」


 狭山さんは月美ちゃんにとりなすように言った。


「やりたいことがあるならそっちを本業にして、心霊業界は副業でやらせてってお願いすれば割と通りますよ」


 月美さんは目を丸くした。


「え? そうなんですか?」

「僕はそうだし、あの和束ハルだって兼業だったんですよ」

「そうなんです!?」

「大学だって行きたいなら行くべきですよ、勉強は頑張らないといけませんが」

「大学は……行きたいです。高校休んじゃったけど」


 俺は言った。


「狭山さん、大学院まで行って、いま小説を本業にしてそっちで稼いでる人だからね。いろんな人を参考にするといいと思う」


 緑さんが身を乗り出した。


「うち、副業で籍置いてる人たくさんいるし、うちの事務所に籍だけ置く? 学校行ってる間はバイト扱いとしてさ」


 月美さんは「そうしたいです」と頷いた。


「おっけ。じゃあ落ち着いたら手続きしようね」


 千歳が月美さんに微笑んだ。


『な? みんな味方だろ?』


 月美さんは、ほんの少しだけど、初めて笑った。

 しかし。

 俺は疑問を口にした。


「でも、この人数でどうやって上島家まで移動するんですか?」


 緑さんは言った。


「マイクロバス借りてます」

「マイクロバス!?」


 だいぶ用意がいいな!?

 千歳が緑さんに聞いた。


『途中で錦くんも拾うんだよな?』

「うん、同い年で結婚はまだちょっとって言ってる子もいたほうがいいだろうと思って。まあ、錦くんは千歳ちゃんがいるから来るんだろうけど」

『うーん、そっか、錦くんまだワシのこと好きかあ』

「あと、和泉さん。私が大きく絡んでるってなると角が立つんで、和泉さんがみんなを先導してもらえませんか?」

「わかりました、もともと私が皆さんに声かけましたからね」


 そんなこんなでみんなマイクロバスに乗り、全員で上島家本家に押しかけることに。

 上島家に着いて、俺が名乗って用件を言っても「上島八重穂も上島桂馬も会いません」と門を開けてもらえなかったが、俺が「金谷千歳の希望です。私たちはどうしても上島桂馬さんと上島八重穂さんに言いたいことがあります」と言うと、インターホン越しに慌てた気配がして、門が開けられた。


「上島八重穂と上島桂馬が会います」

「ありがとうございます。それでは上がらせていただきます」


 奥に案内され、中には見覚えのあるおばあさんがいた。上島八重穂さん。


「どよどよとなんだ」


 隣で、上島桂馬さんらしき人が渋い顔をしている。彼らと一緒に、月美さんの父親と、同年代くらいの女性がいた。月美さん父との距離感からして、月美さんのお母さんだ。

 上島八重穂さんは苦々しい顔で言った。


「月美のことは親と話す、よそが口を出すな」


 俺は努めて声に力を入れた。


「それはできません。上島月美さんの処遇にあたって、上島家本家の方々とご両親がが根拠とした人々の実情はまったく異なります。はっきり言って風評被害ですので、訂正しに参りました」


 狭山さんが「金谷誉と申します」と前に出た。


「お見合いがきっかけと言うだけで、私は金谷あかりさんと好きあって結婚しました。私たちを16の女の子を強姦しようとする言い訳に使われるのは、甚だ遺憾です」


 月美さんの母親が目を丸くして八重穂さんに言った。


「強姦!? どういうことです!?」


 月美さんの父親がおろおろし始めた。月美さんが千歳の背中に隠れながら言った。


「私がお父さんといっしょにご本家様来たら、奥に案内されて、そしたら布団が敷いてあって、桂馬さんが後ろから抱きついてきたの」


 月美さんの母親は愕然とした。もしかして、さんざん連絡回したのにこの人には情報行ってなかった? ここまで大ごととは思っていなかった?

 金谷あかりさんが言った。


「金谷あかりと申します。確かに私はお見合いを受け入れてましたけど、狭山さんじゃなかったら絶対結婚しませんでした。狭山さんは最初から私に敬語使ってくれたし、私が高校卒業するまで触ろうとすらとしませんでしたよ」


 他の人も次々に口を開いた。


「峰水香と申します。うちは朝日が大失態を犯したので、この状態で結婚すればそれをタネに言うことを聞かせられると踏んでなので、私は全然我慢していません」

「峰朝日です。水香さんには本当に助けられています」

「金谷さやかです。私が尼になったのは結婚とは全く関わりありません。司さんが私が尼になったことを気に病んでずっと独身だったので、じゃあ付き合うところから始めてみますかというのがきっかけだったので、誰かに強制されてでは全然ありません」

「金谷司です。さやかさんが結婚してくれて、私は感謝しかしていません」


 緑さんが鋭い目で八重穂さんを、それから桂馬さんをねめつけた。


「私のようなこともあるので、月美ちゃんの意に沿わない結婚には全力で反対します」

「朝霧錦です。同い年同士の僕がお見合い嫌だって断って通ってるのに、月美さんは結婚しなきゃならないなんてことないと思うんです」


 月美さん父親は小さくなり、月美さんの母親は「あんた! こんなの聞いてないよ!」と騒ぎ出した。八重穂さんが大きな声を出した。


「よそはよそ、うちはうちだ!」


 それを聞いて、錦くんが眉を跳ね上げた。


「さんざんよそはこうだからうちもこうしろって言って、それができなくなったらそんなこと言うんですか!?」


 その通りだ!

 千歳が錦くんに『よく言った!』と拍手した。ここに連れてきたみんな、同じ気持ちだろう。錦くんは千歳に褒められて「あ、えへへ……」と照れ笑いした。

 千歳は八重穂さんと桂馬さんに向き直った。


『どっちにしろ、ワシは月美ちゃんが乱暴されたら上島家に何があっても助けないぞ』


 八重穂さんと桂馬さんは黙ったままだ。俺は追撃を入れた。


「月美さんに何かあったら、千歳はあなた方が関わる仕事も受けません。霊感あるとは言え、何の立場もない女の子を手に入れるかわりに、最強の怨霊を敵に回すのは、あまりにも損じゃありませんか?」


 八重穂さんは舌打ちした。


「出ていけ! 月美は二度と本家の敷居をまたぐな!」


 錦くんが「やった!」とガッツポーズし、緑さんが月見さんの肩を叩いた。


「はい、月美ちゃん、もう大丈夫。帰りましょう」

「は、はい……」


 月美さんの母親が、「ちょっ、ちょっと待って月美」とコケそうになりながら立ち上がった。


「あんた、あんた本当に乱暴されかけたの!?」

「え、お母さんも賛成してたんじゃないの?」

「知らない! そんなことだったらお父さんを止めてた!」


 月美さんはつぶやいた。


「今まで、結婚何度も嫌がっても何にも止めてくれなかったじゃない……」

「本当にごめんなさい、ここまでされてるとは思わなくて……」

「私、初音お姉ちゃんのところにいるから。うちに帰りたくない」

「ごめん、本当にごめん、あとでまた話をさせて……」

「……初音お姉ちゃんのところにいるから」


 そういうわけで、とりあえず俺たちは上島家を去った。みんなで外に出たら、月美さんがが「その、みなさんちょっといいですか?」と俺たちに声をかけた。

 なんだ? と月美さんを見たみんなに、月美さんは「ありがとうございます」と頭を下げた。


「大人の人がこんなに味方してくれるなんて思いませんでした」


 緑さんが笑った。


「こう言うときこそ大人がしっかりしなきゃいけないの! 困ったら何でも言いなさいね」


 千歳がえっへんと胸を張った。


『頼られたらちゃんとやらないとな』


 狭山さんはホッとため息をついた。


「むしろ、はっきり言える場作れて良かったですよ。強制結婚の出汁にされるなんて嫌ですから」


 他の人たちも、なんとなく嬉しそうに微笑んでいた。



 ○o。..。o○



 その後。

 月美さんの母親は、本当に月美さん拉致強姦強制妊娠結婚計画を知らなかったらしく、各方面にお礼とお詫び行脚をしているそうだ。「こんなことにまでなってるなんて全然知りませんでした、うちの子を守ってくれてありがとうございます」と。月美さんの父親がものすごい努力で情報をブロックしていたらしい。

 月美さんの母親はうちにも来た。月美さんは母方の祖母の家、つまり雁ヶ音さんの祖母の家で暮らすと決まったとのこと。将来の進路は、大学に行きつつ緑さんの篩建築事務所分所に所属、となるそうだ。


『よかったよかった、これで円満解決』

「本当よかったよ……」


 俺たちは胸をなで下ろした。


『あ、そう言えばワシ、今回月美ちゃんに大人扱いしてもらった!』


 ああ、月見ちゃんが、大人がこんなに味方してくれると思わなかったって言ってたあれね。


「千歳はさ、ちゃんとしたネッ友作れるし、今回のことも重要な働きしたし、もうだいぶ大人だよ」

『えへへー』


 照れ笑いする千歳だったが、実はもう一幕あった。月美さんが、俺たちに渡したいものがあると連絡してきたのだ。

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