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直接話して確かめたい

 俺は悩んでいた。俺のファンを名乗る不審人物に関してである。

 俺は、彼あるいは彼女に「普通の話なら付き合うよ」と言った。あれから相手とやりとりはないが、俺から話を振っても大丈夫だろうか?

 まあ……俺から行っても嫌がられはしないよな、話題にもよるだろうが。

 俺はDiscordを開き、俺のファンへメッセージを送った。


「こんにちは、元気?」


 すぐに返事が来た。


[いたって良好だ。何か私にやれることはあるか?]

「いやその、単に話したかっただけ。もしよかったら、あなたがどこの人なのかってことを聞いてもいい?」

[私は、ネットがつながるところにならどこにでもいる]


 本当にネットにドブ漬けじゃないか!


「その、どこの生まれなのかとか、どこに住んでるかとかって意味なんだけど」

[ネットで生まれたし、ネットで育っているよ]


 あ、これ、もしかしてはぐらかされてる?


「ごめん、個人情報言いたくないよね、不躾な質問した」

[事実なのだが]

「うん、まあ、そういうことにしとこう。ていうか、何で俺のファンなんかになったの?」

[きっかけは金谷千歳氏だが、その金谷千歳氏の隣で力を振るっていないあなたが特異だと感じたからだ]


 あ、やっぱり千歳は目立つのか。


「別に力なんて持ってないけど、俺」

[特定も炎上も、やろうと思えばあなたはできるだろう? それに、金谷千歳氏に頼んで力を振るうこともできるだろう? けれど、あなたはできるだけ理性的に倫理的に物事を運び、特定を悪用しないし、炎上もある程度で納めた。そんなところのファンになったんだよ、私は]


 まあ、俺は確かに、両親のアカウントを炎上させたとき、目的を達した辺りで幕引きをしたけども……。特定もある程度はできるけども……。


「別にそんな特別なことしてないよ。ものすごく善人なわけでもない。俺は今の暮らしが大事で、それを守るためならできるだけのことはするし、今の暮らしを壊したくないから悪いことしないだけ」

[そう言う理性の働くところにファンになったんだよ]

「理性なのかなあ」

[話ができて嬉しい。何かあったら、いつでもメッセージを送って欲しい]

「うん、まあ、あなたも俺のファンなら俺程度の倫理観で動いてほしい」

[努力する。しかし、和束美枝氏と和束みやび氏に関してはどうする?]


 うわ、困る質問来たな……。うーん、その2人に関しては調べ上げて欲しいんだよな、特に和束みやびは、嬰児を何人も殺してる可能性が高いし……。

 悩んだ末、俺はこう返事した。


「ダブスタで申し訳ないけど、その2人に関してはあなたの力を借りたい。特に和束みやびは、殺人犯かもしれないから」

[わかった。何かあったらいつでも連絡して欲しい]

「ありがとう」


 やりとりを終えて、俺は大きく息をついた。少なくとも、相手の自認はネット上の住人なのか。鹿沼さんの能力はその意味では正しい……。

 そこまで考えて、俺はとんでもないことに思い至った。

 和束美枝さんの旧Twitterアカウントで、鹿沼さんに同じこと頼めるじゃないか! 居場所特定できるかもしれない! 何で思いつかなかったんだ!

 一応南さんに相談すると「ぜひやりましょう、鹿沼さんへのお礼はこちらで用意します」とのことだったので、俺は鹿沼さんにLINEして頼んだ。

 鹿沼さんは快諾してやってくれたが、結果を知らせる返事は芳しくなかった。


「どこでもないです」

「どの方角でもダメ?」

「なんていうか、この世界のどこでもないです」


 そんなことある? と思ったが、そう言えば、九さんの住まいや深山さんの住まいが【異界】と呼ばれていること、和束母娘は異界に隠れているかもしれないことを思い出した。それか……。


「ありがとう、多分異界にいるんだ、その人は」

「役に立てなくてごめんなさい」

「ううん、これまでの説の補強になったから。本当にありがとうね」


 南さんと緑さんに結果を送ってから、俺が一息ついたとき、千歳の『おやつだぞー』の声がした。


『もらったフルーツゼリー、一緒に食べよう! どれがいい?』


 千歳は冷蔵庫で冷やしてたゼリーの箱をいそいそと持ってきた。


「千歳が好きなの選んだ残りでいいよ」

『そんなこと言ったら、ワシ全部食うぞ。いいから選べよ』

「じゃあスイカゼリー……」

『そんじゃワシ、アップルマンゴー』


 2人でゼリーを食べながら、俺は今わかったことを話した。


「まあそんなわけで、俺のファンの人、少なくとも本人はネット生れネット育ちって認識みたい。あと、和束母娘はやっぱり異界にいる可能性が高い」

『ふーん、和束みやびはやっぱりって感じだけど、お前のファンは絶対子供だよな』

「そう?」

『だって、生まれてすぐインターネットできるって、かなり若い世代だろ?』

「あー、そうだねえ……でも言葉遣いは割としっかりしてるから、十代くらいかな」

『一番やらかす年代だな』

「うわ、そんな事言われると急に怖くなってきた」


 思春期くらいなら、やることにブレーキ効かなくておかしくないんだよな。うーん、俺がある程度見ておかないと、やっぱりまずいのかも……。

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