表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第10シーズン

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

532/1105

引き受けたからがんばりたい

 家族連れが何組も来て、受付を済ませた女の子たちが巫女服の着付けに社務所に入っていった。受付にいた人たちの何人かも、着付けの手伝いに入っていく。


『あの、ワシ着付けも手伝えるけど手伝おうか?』


 千歳が手伝いらしい女性に聞いた。


「えーと、それより、水香さんに今日の段取りを聞いて打ち合わせしておいて欲しいです。着付けに多少時間かかりますんで、その間に」

『はーい』


 千歳は受付の奥にいる水香さんのところへ向かった。俺も、今日やることは聞いておいたほうがいいと思ったのでついて行った。

 水香さんは猫背でパイプ椅子に座っていて、確かにあんまり元気ないみたいだった。


『大丈夫か?』

「すみません、立ち歩くのは後でちゃんとやりますので……」

『えっと、着付けの間に今日やることをちゃんと聞いてきてって言われたんだ。ワシも案内の手伝いするから教えてほしい』


 俺も言い添えた。


「来た子たちの写真取るタイミングもありますんで、私もお聞きしたいです」

「すみません……ええと、まずあっちの手水舎でお清めの案内をします」


 水香さんは受付の向かいのお手水を指さした。


「小さい子たちばかりですし、感染症の危険もありますので、ひしゃくに口をつけて口をゆすがないように、口から出す水は排水口に捨てるように、最初に注意します」

『うん、わかった』

「その後は神社をぐるっと回って、社殿の中に案内して玉串拝礼をします。普通のオーソドックスなやり方でやりますが、一人ひとりにスポット当たりやすいときなので、この時には絶対に来た子一人一人全員を撮ってください」

「すみません、玉串拝礼ってどんな事するんですか?」


 俺は水香さんに質問した。神社の儀式にはまるで疎くて、やることの名前を聞いてもさっぱり絵が浮かばないのだ。


「榊に、紙垂をつけたものを玉串として奉納して祈るんです」

「はあ……」


 さっぱりわからん。榊からして何かわからない。さっき水香さんが持ってたやつ?

 困っていると、千歳が追加説明してくれた。


『榊っていうのは神道でよく使う木だ。その枝に、しめ縄につけてあるような紙つけたのが玉串。で、拝礼は、玉串を持って念じて、台に乗っけて神様に渡して、最後に二拝二拍手一拝すんだ。一人一人やるやつだから、一人一人撮りやすいと思う』

「なるほど、ありがとう」


 やっとなんとなくわかった。

 着付けを終えた女の子たちが社務所から出てきた。


『どこで待ってるか案内したほうがいいか?』


 千歳が水香さんに聞いた。


「手水舎に案内してください、私も行きます」


 水香さんは、きつそうながら椅子から立ち上がった。

 それから水香さんと千歳の案内による巫女体験が始まったのだが、千歳はずいぶんよくやっていた。


『こんにちは! 手伝いの金谷千歳って言います! 今日は神社の水香お姉さんがあんまり大きな声出せないので、私がお手伝いの案内します!』


 千歳は水香さんの隣でにっこり笑った。う、うそだろ、保育士さん並みの貫禄がある……。

 千歳は大きな声を張り上げてお手水の作法を説明し、俺は千歳の声を聞きつつ、小さな巫女見習いさんたちの写真を撮った。

 神社を回ってから、社殿に行って玉串拝礼をやる。千歳は玉串の持ち方の作法を自分でやりながら説明して、なかなか様になっていた。小さな女の子たちは見様見真似のおぼつかない手つきで玉串を奉納し、俺はその辺もしっかり写真に収めた。多分親的には、こういうおぼつかないあたりが何とも言えずかわいいんだろう。

 その後、女の子たちの集合写真を撮り、とりあえず巫女体験は一段落した。

 手伝いの女性が声を張り上げた。


「では、お着替えをまた社務所でしていただきます!」


 女の子たちはきゃいきゃい言いながら社務所に向かい、俺はとりあえず撮影任務が終わったことにホッとした。


『おう、お疲れ』


 千歳が俺のところに来た。


「あ、千歳もお疲れさま。すごくよく案内できてたじゃん」

『水香さんに聞きながらやっただけだ』


 千歳は照れ笑いしたが、まんざらでもなさそうだった。


『あとさ、水香さんが写真データほしいって。受付に行こう』

「うん、わかった」


 受付に行くと水香さんがノートパソコンを開いていて、俺は「お疲れ様です」と言ってデジカメを渡した。水香さんは頭を下げた。


「本日は本当にありがとうございます、大変助かりました……」

「いえ、大丈夫ですよ、お役に立ててよかったです」

『あんま無理すんなよ』


 写真データは写真共有アプリに入れて、今日の参加者だけダウンロードできる状態にしておくとのことだ。千歳の写真データがほしかったので、俺も参加者に入れてもらった。

 そして、俺も千歳も礼金をもらってしまった。え、この封筒結構入ってない!?

 水香さんはまた頭を下げた。


「本当にありがとうございました、手伝いは呼んでいたんですけれも、初めてでバタバタしてしまって、私も体調不良で……」

『いいって、仕方ないことなんだからさ』


 千歳は水香さんを慰めるように言った。そう言えば、千歳が水香さんの体調不良に気づいて手伝う流れになった理由をさっぱり聞いてなかった。どういうことなんだろう?

 2人で水香さんにお礼を言って帰る途中、俺は千歳に「なんで今日いきなり手伝う流れになったの?」と聞いてみた。


『あー……その、なんつーか、言いにくいんだけどさ……』


 千歳は何故かもじもじし、それから言った。


『水香さん、月のもので調子悪そうだったから』

「え、そうなの!?」


 全然わかんなかった! え、千歳は女の人も内包してる存在だけども、女の人同士だとその辺わかるもんなの!?


「なんでわかったの?」

『まあ、水香さん胸元に榊入れてたからさ』

「生理だとそうするもんなの?」

『んー、ちょっとした歴史がある』


 千歳は説明してくれた。神道は血を穢れとするので、昔は生理中の女性は神事に関わるのを避けるべきとされてたそうだ。


『でも戦時中とか、男手ない時にそんなこと言ってられないだろ? だから、月のものの時は榊を身に着けておけばOKってことになったんだ』

「へえー」

『で、水香さん榊胸元に入れてたし、なんか調子悪そうだったから、ワシ手伝えるけど? って言ってみたら手伝ってくれって言われたわけだ』

「はあー、そうだったんだ、なるほど……」


 世の中知らないことたくさんあるなあ、そうか、だから千歳は『仕方ないこと』なんて言ってたのか……。


「千歳、めちゃくちゃえらいじゃん……俺何もわかんなかったよ……」

『まあ、男はわかりにくいだろうな。でもお前も手伝ってくれたじゃないか』

「まあね、でも二回目があるなら専門のカメラマン雇ってほしいな」


 俺素人だもん、下手な写真とっても責任取れないよ。

 ……とは言え、後でダウンロードした千歳の巫女写真はかわいかった。スマホの専用フォルダに入れて取っとこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ