あなたの寝顔が悩ましい
夜。いつものように千歳に巻き付かれて布団で寝ている。ここ最近で少し違うようになったのは、千歳に体温を感じること。
ほんのちょっとの温度の違いなのに。人間の本能なのだろうか、千歳のぬくもりがとても大事なものに思えてきている。あったかくて弾力がある相手に、全力で信頼されてくっつかれてるのは、なんとも……いいものだと思う。
千歳はなんのてらいもなく俺に抱きついていてるわけだが、俺は千歳を抱きしめたことがない。なんというか……千歳と抱き合ってしまったら、もう、他の人と抱き合ってもそれほど……と思いそうな気がして。
千歳の望みを叶えるためなら、俺は結婚して子供を作らなくちゃいけない。で、まだ会ったことはないけど、人間的に好感を持てる相手、咲さんを、どうか?と紹介されている。
たぶん、何も考えないで、そっちに身を任せたほうが千歳の望みを叶えることになるんだ。それが千歳の望みなんだ。
でも。
俺は、千歳(黒い一反木綿のすがた)の寝顔を見た。安心しきって寝てる。
もし咲さんとある程度深い仲になったら、こんなに距離が近い相手が他にいるなんて、絶対に嫌がられる。少し、千歳と離れたほうがいいのかもしれない。
でも、こんなに安心しきって俺にくっついてきてくれる相手を、突き放すなんて。
俺には、とてもできない。




