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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第8シーズン

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お前の名前を呼んでみたい

『花散らしの雨だなあ』


 窓の外を見て千歳(黒い一反木綿のすがた)がぼやく。やっと桜が咲いてきたのに、天候は容赦ない。


「お花見、出来るかねえ」

『土曜なら雨振らないらしいんだけどな』

「曇りでも、桜見ながら外でお昼食べたいな」


 千歳と花見というだけで、俺はなんとなく心が浮き立ってしまう。雨さえ降らなければ、ベストコンディションの桜じゃなくても行きたい。


『じゃ、とりあえず土曜は昼に弁当作るな』


 千歳は笑った。それから、なぜか真剣な顔で俺を見て、なにか口を動かした。


『……うーん、だめか……』

「ん? 何がダメ? 土曜日のお花見、まずい?」

『いや、花見じゃないんだ。ちょっと……昨日からうまく行かないことがあって……』


 千歳はうつむいてうなり、それからまた俺を見た。


『お前さあ、人の唇読んで、何言ってるか分かるか?』

「へ?」


 読唇術ってこと? 


「いや、読唇術の心得はないな……どうしたの?」

『あのさ、ダメ元で、ワシの唇読んでみてくれないか? はっきりゆっくり言うから』

「え、うん……」


 千歳の口を見る。千歳の口は大きくゆっくり動き、何かを言った。声は聞こえないけど。

 うーん、母音だけなら、わからなくもないかな? 最初は【い】、次は【う】、最後はまた【い】?


「えーと、母音だけなら、なんか「いうい」って言ってるのは分かるんだけど……」

『うーん、それなら、口はちゃんと動いてるんだよなあ……』


 千歳は考えに沈んでしまった。一体、何なんだろう?


「何か、唇でしか言えない言葉があるの?」


 千歳は一応怨霊だし、霊能力関係の呪文とか?


『うーん……その……そういうわけじゃないんだが……』


 千歳は困った顔をし、それから言った。


『えっと、言おうとしても言えない言葉があるんだ。で、独り言なら言えるんだけど、なんか……独り言じゃなくなると、言えなくなるんだ』

「ど、どういう言葉?」


 なんかやばい呪文?


『呪文じゃない、普通の言葉だ』

「どんな言葉……あ、言えないのか」


 バカな質問しちゃったな。

 けれど、千歳はきちんとした回答をくれた。


『お前の名前が言えない』

「へ?」

「独り言とか、お前の方向を向いてないときなら、お前の名前言えるんだ。でも、お前を呼ぼうとして言うと、声が出なくて言えないんだ」

「へ?」


 ど、どういうこと?

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