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子々孫々まで祟りたい 〜転んで祠を壊しちゃったら怨霊が子々孫々まで祟りに来たけど「俺で末代」と言ったら怨霊が困り始めて子孫を残させようと奮闘しだした件について〜  作者: zingibercolor・種・がくじゅつてきあかげ
第25シーズン

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愛とか義務とかわからない

 千歳は梅の実の収穫手伝いで、星野さんの旦那さんの実家に行って留守。夕飯まで帰ってこないので、俺は大人しく仕事をしている。

 3時間の仕事が終わって、俺は伸びをした。もうお昼だ、千歳が作っといてくれたご飯、温めて食べるか。

 親子丼とサラダと、びわのコンポート入りヨーグルトの食事を済ませ、麦茶を飲みながら一息ついているとスマホが震えた。Discordの通知だ、俺のファンからじゃん。なんだろう。


[もし時間があったら、相談に乗ってくれないだろうか?]


 なんだなんだ?


「午後空いてるよ、急ぐ?」

[緊急ではないが、今日VRChatで会えると嬉しい]

「じゃあ、少ししたらログインするよ」

[ありがとう]


 そそくさと食器を洗い、2階に行ってVRChatに入れるパソコンでログイン。俺のファンのインスタンスに行くと、前と変わらぬモニタまみれの部屋で俺のファンが迎えてくれた。


[すぐ来てくれて嬉しい]

「たまたま空いてたからね、どうしたの?」

[前に、愛すべき人を見つけたいと話したと思う]

「言ってたね」

[ある人に抱いているこの気持ちが、義務感なのか愛なのか困っているんだ]

「え、そんな人いるの?」


 まあ、俺の知らない付き合い広いみたいだし、そんな人がいてもおかしくないか。でも義務感?


「義務感って、どうして義務感なんて持つの?」

[彼女に手を差し伸べられるのが、私しかいないんだ。彼女は孤立していて、時が来たら、悲惨な末路をたどるしかない。助けになれるのは、私しかいないんだ]

「どんな人なの?」

[ちゃんとしたことはまだ言えない。本決まりでないし、相手の気持も確かめていないから]

「そっか」


 雄弁は銀、沈黙は金。まだ言うべきでないと言うなら、その判断は尊重すべきだろう。

 俺のファンは難しい顔をした。


[だが、これは愛というより義務感なのではないかと思う。しかし、義務感というにはいつもこの事を考えている気もする]


 いつも考えている、か……少なくとも、心の多くを占める人ではあるんだろうな。しかし、なんか困ってる人ということなら。


「うーん、まあでもとりあえず、助けてあげてから考えなよ。君しか助けられる人いないんだろ?」

[それは、確かにそうだ。しかし、愛なしで最後まで面倒を見切れるだろうかとも思っている]


 そんなに困ってる人なの? まあ、愛がないとずっと世話するのは厳しいと思うが。


「相手の人となりがよく分からないけど、好きになれそうな性格の人なの?」

[そうだな……]


 俺のファンは、考え深げに顎に手を当てた。


[困難を抱える中、自分にできることを精一杯こなしているところには好感を抱いている。ただ、彼女は自分なりのこだわりが強くて、言葉の裏の意味を読んだり空気を読んだりが苦手なようなので、付き合い方は工夫が必要だとも感じている]

「なるほどねえ」


 俺は、少し考えた。何も考えずに付き合える人ではないってことか……。


「そうだな、君しか助けられないなら助けてあげてほしいけど、自分が無理してる気がするなら、無理して最後まで面倒見なくてもいいと思うよ」

[無理を通せるのが愛ではないか?]


 俺は苦笑した。


「通せなかったら、愛は抱けてないってことだね。君の欲しいものじゃない」

[では、もう少しよく考えてみる]

「それがいいよ」


 それからは、お互い近況を話した。俺のファンは、ホワイトハッカーしてお金を貯めつつ、義務感もしくは愛を抱いている人との付き合い方を勉強しているんだと。


「どうやって勉強してるの?」

[似たような人とVRChatで会って、後は本だな]

「人付き合いの本?」

[というより、特定の人が持つ特性を学ぶ本だ]

「特性……あー、なるほど」


 お医者さんじゃないと判断しちゃいけないけど、傾向がありそう、となったらそういう本は役立つのかもしれない。そうか、こだわりが強くて言葉の裏を読むのが苦手、そういうことか。

 俺が順調に仕事を再開していると話すと、俺のファンは大いに喜んでくれた。


[あなたがよくなって本当によかった]

「おかげさまで」


 そんなこんなで話を終え、千歳が帰ってきた。夕飯の時、俺は千歳に何があったかを話した。


『その人のことばっかり考えてるってのは、惚れてるんじゃないかあ〜?』


 千歳はナスのしぎ焼きを頬張りつつ言った。


「確かに、俺もだいたい千歳のこと考えてるけど」

『お前、ワシのこと好き過ぎだろ……』


 あきれた顔をする千歳。俺は言葉を続けた。


「でも俺のファンの人、まだそんなに成熟してる感じがしないし、無理はしないでほしいんだよね」

『そんなに大人じゃないか、あいつ』

「最近は割と大人になったと思うけど、孤立無援の誰かを助けてあげて最後まで面倒見るってことは、大人でも難しいから」

『それはそうだ』


 千歳は頷いた。


「だから、じっくり考えて、それから答え出してほしいかな」


 しかし、インターネット付喪神がそんなに心を傾ける人って、いったいどんな人なんだろう?

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