第158項「幼馴染との会話②」
「じゃあ。もう1度聞くぞ?お前はどっちを選ぶんだ?どっちを愛おしく思っているんだ?どっちとこれから一緒に過ごしたいんだ?」
「決まっているじゃないか?」
そう、推しの作家であり俺の唯一の後輩であるあの人しかいないだろ…。
「お前の推しの作家で、ビジネスパートナーだけど大学では後輩に当たる人か?」
「ああ。あの人と話している時が一番楽しい。」
「俺とこうして一緒に話している時よりもか?」
「ああ。WEB小説やアニメの話しできるし。何といっても自分が好きな作品の原作者と幸運にもお近づきになれたんだからな。」
「俺よりその人と話している時の方が楽しいと言われて幼馴染としては、ちょっと悔しいというか嫉妬心が生まれてるけど、憎めないなぁ。そういえば、この間の大宮の花火大会に訪れて少しは関係は進んだのか?」
「ああ。まぁな。おかげさまでな…。」
「一応俺もトシの恋に関与しているんだからどうなっているか聞いても良いよな?」
「あんまり教えたくないけど、打ち上げ花火を何も遮るものがない中で綺麗に見える秘密な場所を教えてもらった恩があるし今回は教えても良いけど?」
「なんか、その上から目線なのが腹立つけど、教えて。本当に幼馴染の恋愛模様を聞くのが俺の長年の夢だったからな。」
「もっとそれ以外の事に夢を持てば良いのに。丈瑠と宮山と別れた後に、あの見晴らし台に行って花火を眺めながら告白された。」
「おお!!遂にそこまで行ったのか…。やばいこの時点で涙が出そうだわ…。それで、それにどういう感じで告白されたの?」
「その時に丈瑠のお節介で頂いた休みをどう使うかという話をしていてね。それで、華南さんの方が2日くらいを私に貸して欲しいと言われて、つまり次回作を書くために舞台にしたいと考えている場所を実際に目で見る為に調査旅行に行きたいから一緒に行きませんかという始まりだったのよ?」
「それで、それで?」
「それに誘った理由を聞いた時に俺の事がアシマネとしてでは無くて一人の人間として好きだから、恋愛的に好きだから伝えられたんだ。」
「いや、話を聞いているだけなのに何か感動する恋愛映画を見ている気持ちだわ。それでどう返事したの、即OKをしたの?」
「いや、告白されて驚いた点があったのと、俺と華南さん。いや、新島先生はビジネスパートナーだから仮に今すごい人気な作家さんとその端くれが恋人として付き合っているとかスキャンダル撮られたりすると先生の将来に傷が付くじゃん?だから、俺も彼女の事を好きでという気持ちはあるんだけど、どうすれば良いのかなと思って。」
俺は一度告白の返事をする。
華南さんの事が好きであの返事をしないと思ったのに、何をくよくよしているのだろう。
「なるほど。別に恋をするのにそんな弊害なんて2人が両想いであればそんなのすぐに飛び越えられるだろ?相手が有名な作家さんといっても普段は女子大学生なんだし、それに、トシが初めて好きだと思う大切にしたい人なんだろ?だったら、そこでくよくよするなよ?仮に世間がなんか言われても適当に聞き流せば良いさ。一つ物を遂げるのに批判は付きものさ。」
「ああ。そうかもしれないなぁ…。やっぱ幼馴染に本当の気持ちをアウトプットのが一番気を使わなくて良いなぁ。機会を伺って告白の返事してみるわ。」
「ああ。結果を聞かなくても分かりそうだけど、あとで一応教えてなぁ。仮に世間的にスキャンダルが原因で叩かれて何か言われても決して味方が1人もいないということは無いからなぁ。俺達がすぐに助けてやるから。」
「美男子にイケボで良い言葉を言われるから高校時代にお前のファンは多かったんだろうな。やっと今になって丈瑠の男としてのかっこよさというか惚れてしまう点が見えたよ。」
「そんなに持ち上げるな。俺達は幼馴染なんだから対等に行こうぜ。それで、告白の返事はそのさっき言っていた2人で行く旅行の時とかに告白する予定なのか?」
「ああ。いま、華南さんと旅行についてどこを訪ねるかとか日程とか細かい部分を話し合っているところ。」
「良いね!!好意に思っている女の子と泊りでデートとかぜったい楽しいだろうなぁ。俺も彩乃に提案してみようかな?」
「お前が誘えばすぐに向こうも了承してくれそうだけどなぁ。完全に丈瑠だけしか見ていないし。」
「本当にありがたい話だよなぁ。ちなみに具体的に行先は決まっているのか?」
「う~ん、たぶん長野県だと思う。善光寺とか上田城とか歴史的な史跡を主に見に行きたいって言っていたからな。」
「丈瑠はどこか行きたい場所とか無いのか?」
「俺が大学2年生の時に仕事を依頼された人が長野県に住んでいる人でその人に有名な観光地は案内してもらったからなぁ。どこに行きたいというより、さっきの話に少し戻るかもしれないけどどこで告白の返事をするかを悩んでいるんだよ。前に丈瑠が俺に伝授してくれた時、告白は暗い場所ですると良いって聞いたからさ、どこか良い場所無いかなぁ…。」
「そうだなぁ。俺も行ったことは無いんだけど、綺麗な景色が見れる場所は知っているぜ?」
「ほう~そこはどういう場所なのか?出来れば贅沢な話かもしれないがあまり駅から行きづらい場所はちょっと嫌だからなぁ。」
「いや、俺も詳しくは無いんだけど、千曲市に住んでいる同級生から教えてもらったんだけど、長野県の塩尻駅から篠ノ井までを走る篠ノ井線という路線があるんだけど、その途中の駅に姨捨駅という駅かがあるんだ。」
「姨捨って確か高校生くらいの古典の授業で”おばすて山”という文章をやったよな?その時に出てきた”おばすて”かな?」
「高校時代にやった授業をきっかけに思い出す当たりがトシの記憶力のすごさに驚くけど、その”おばすて”だ。姨捨駅は”日本三大車窓”という日本でも3本の指に入るくらいの美しい景色が見える駅の一つみたいだ。ほら、この画像を見てみろよ?」
そこにはホームから眼下に広がる棚田の写真があった。
丈瑠はスクロールしながら四季折々の駅から見える景色の様子を見せてくれた。
「うわ~。これは固唾を飲む(息を飲む?呼吸を忘れる?)ほどの美を極めた景色が見られる景色だな。夜景とかも綺麗だな。」
「ああ。特に冬の良く晴れた日に行くのが一番美しく見れるみたいだなぁ。あくまで例だけど、この駅で告白の返事をするというのもありなんじゃね?」
「ああ。告白された時に一緒に居た場所が見晴らし台だったから、これだったら対等だわ。」
「それに、彼女は小説家なんだからもし上手く行けば、告白した場所が先生の作品に使われたりするかもよ?」
「う~ん。それは分からないけど、気にいってくれたら良いなとは思うな。この写真だけでも充分に声をあげてしまうくらいだもんな。」
「じゃあさ、俺がこの場所を教えた代わりにこの場所が恋人と過ごすのに向いている場所か見てきてくれよ?これは旅行の後に俺と会うまでの宿題という事でさ?」
「ああ、分かった。教えてくれたことに感謝する。丈瑠もその場所に行って何か伝える事あるのか?」
「将来的にあるかもしれないだろ?プロポーズとかさ?」
「すっかりあの人の色に染まっているなぁ。あの人がお前しか見ていないというよりはお前の方があの人に惚れまくっているんだな。」
「し、しょうがないだろ?好きになったらその恋のブレーキは急には踏めないんだよ?トシにも付き合ってから分かるようになるさ?」
「どうだろうな…。それにしても俺と話している間にどれだけクサい名言が出たんだろ…。」
「そうだ。話変わるんだけどさ、トシが貰っている仕事の休みが1週間あってその内の2日、3日くらいは彼女さんとデート旅行だとすると、残りの4日は空いているんだよな?学生生活最後の夏休みなんだし、俺とも遊ぼうよ?出来れば彼女さんとの旅行後の方が良いなぁ。色々な話が聞けるだろうし。」
旅行であったことを根掘り葉掘り聞かれそうだけど、それもそれでありかもな。
「ああ。分かった。スケジュールに入れておくわ。細かい予定とかはあとで決める感じでよろしく~」
「おっけー。よっしゃー!これでトシとの楽しみな時間をゲットできたぜ。」
「じゃあ、俺そろそろ華南さんの元に戻るよ?」
「ああ。がんばれよ!アシマネさんよ?ビジネス関係を突破して恋人の契りを結んで来い!じゃあな。気を付けて!」
俺はお節介だけどすごく頼りになる幼馴染に背中を押されて推しの作家さんがいる部屋に向かったのだった。
俺の気分はだいぶ良くなったのは間違いないな。




