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第141項「整理」

告白されたあとの俊明の気持ちの整理回

風車のある見晴台で打ち上げ花火を見て満悦したのと同時に一緒にその場に居た和装姿だった華南さんから気持ちを伝えられ更に恋人として付き合ってほしいと言われてから早くも2日が経過した。


あの花火大会のあと俺らは自分の実家に泊まること無く一人暮らししているヤマドリマンションの部屋に帰った。


帰り道、最終列車の1本前の電車を乗り継ぎ家に着いた時には既に1時を過ぎていて当然空は真っ暗でさっきまで自分達が見ていた美しい花束なんていうものは深夜の空には映っていなかった。


帰り道の電車の車内では華南さんとの会話は無く2人とも扉の近くに立ってその窓から時々映り込んでくる既に眠りに入っている街から少しだけ漏れる電灯の光を目で追っていただけだった。


マンションの3階の廊下に着き華南さんは口を開く。


「せ、先輩…。高島さん…。今日は一日かどうか分かりませんけど、仕事と花火大会デートも合わせてとても楽しかったです。ありがとうございました」


本来なら天井に吊るされている電灯の光が微妙に薄暗くて華南さんの表情までは見えないけど、声を聞く限りだと普段と何も変わらない話し方だ。


でもそう聞こえるだけなのかもしれない…。


「ああ。こちらこそ楽しかったよ。ありがとうな…」


さっきから動揺が収まらなくて典型的なメール文章のような返答しかしていなくてもっとましなこと言えないのかと自分自身が恨めしい。


「私が言うのはおこがましいかもしれませんけど、さっきの告白の返事、私との旅行の時までには返事すると先輩おっしゃって居ましたけど、難しければその時までに必ず返事をしなくても良いですよ?先輩らしく慌てずにゆっくり冷静に考えてください。例えどんな返事が来ても私は先輩の考えを尊重しますから。」


自分が好きだという相手に気持ちを勇気をふり絞って伝えてきた人にこちらもそれなりの返事をした方が良いのだろうけど、今その立場に居る俺にそんな芸当ができるのだろうか。


不安でしかないけど、華南さんが俺にとって大事な人であるという認識はあるのでしっかり気持ちの整理をして告白の返事をしたいと思う。


「う、うん…」


「それではおやすみなさい。先輩。明日というか今日は朝起こしに来なくて大丈夫ですよ。明日の朝からまたよろしくお願いしますね?」


起こしに来なくて良いというのは一時的な退避という事なのか単に精神的に疲れがあるという事だろうか…。


「承知した。おやすみ」


数往復会話をして俺らはそれぞれの自室に籠ったのだった。


俺は彼女が俺に想う気持ちを整理するのには多大な時間がかかると思ったので俺は一旦この件を考える事を止めてシャワーを浴びて寝る事を決めたのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ジリジリジリジリジリジリ~~~」


スマホのアラームが点滅しデジタル時計は4:30を表示している。

結論を言うと色んな事を考えてしまってほとんど寝られなかった。


かけ布団を剥ぎ窓の外には既に太陽が構えていた。


その光が俺の目を覚まそうとしているのは感じるが、今まで1時間だけの睡眠なんてしたことが無いので体調を崩したりしないか少し心配だが、何とかなるだろう…。


最近やっていなかった近くの公園の周りの早朝ランニングに行くために動きやすい服装に着替え外に出る。


3時間前に華南さんとの会話を交わしたこのマンションの廊下の天井にはめ込まれている電灯は既に日の出を迎えているからなのか消灯している。


公園に着くと既に走ったり犬の散歩をしている人がちらほら居た。


靴紐を強く結び直し7㎞ランニングを始める。


走りながら俺は華南さんの事はどう思っているのかを考える。


華南さんは最初大学の授業が始まる初日に正門でぶつかったのが一番最初の出会いだと思う。


ぶつかってしまった時は、赤縁のメガネ姿が似合う黒髪セミロングの美人だなとというのが最初の印象だと思う。


1週間経過して、その人が水曜日の1限の教養科目の授業の履修が同じでしかも席が隣というのは中々出来た奇跡だし普通こういうのってラノベか映画といった作られた理想の世界で起きる出来事だと思っていた。


更に驚きだったのは華南さんが俺の推しの作家さんである”新島みなみ先生”であった事も加えられる。


だって、まさか推しの先生が自分が通っている大学に居るとは思わないじゃん?

しかも本格的に小説家として活動するために北の国からわざわざ大学に編入してまでして来るのだから彼女が夢に向かって出来る事をしているという行動力は本当に尊敬する部分だ。


そして、新島みなみを仕事名として活動している華南さんが自分の両親が経営しているボディーガードの会社を訪れて話し合いの結果俺が彼女のボディーガードをする事になるというのが驚きでしかない。


そしてビジネスパートナーとして長期期間の契約を結んでから3カ月くらいが経ち彼女の周りで仕事を初めて自分が20年以上生きてきた中で自分が経験したこと無い事をこの短い期間で経験することができたのは華南さんとの出会いが一番大きい。


プライベートの方も女性とどこかに出掛ける経験が無かった俺に優しく手を指し伸ばしてくれて最初は楽しいのかどうか分からないというか不信感を覚えていたが、華南さんをはじめお節介焼きの幼馴染の親子や少しブラコン気質がある妹のお陰で学生が勉強の次に楽しんでいる休日の過ごし方が分かった気がする。


華南さんと出会ってから過去3カ月ほどのを振り返ると仕事面では大変な事もあったけど、楽しかったという気持ちの方が断然大きいのは言える。


じゃあ、俺は自身に再び問う。


“華南さんの事をどう思っているのか”


幼馴染や家族以上に大切な人であることは間違いない。

これは言える。


ただ、世間で人気な作家さんの事を恋愛的な意味で好きになっていいのだろうか…。


彼女の仕事面を一番側で支えあくまでビジネスパートナー兼アシスタントマネージャーとして契りを結んだ関係が崩れてしまうのが怖いというのが欠点だ。


それを考慮しなければたぶん華南さんを好きなのかなと思う。


完全に断定できるかは分からないけど、好きという気持ちは芽生えている気がする。


でも具体的にどこの部分が好きなのだろうか…。


顔?髪型?髪色?メガネ姿?性格?価値観?


項目は他にもあるとは思うが、どれも俺が思う恋人に必然的に求めることはしないけどあったら良いなという項目をどれも満たしていると思う。



俺はどの部分を見て感じて彼女の事を好きだといえるのだろうか…。

そしてどう返事をするのが良いのか、模索はまだまだ続きそうだ。


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