陽光の終わり
アサルトライフルを持った警官たちが、白煙を上げて沈黙するマシンに向かって発砲を繰り返していた。穴が開いたシートは赤い液体を吐き出していた。急傾斜にもかかわらず、液体はゆっくりと、シートの凹凸を一つずつ乗り越えて流れ下って行った。また車内に入って、刷毛を手に赤い液体を塗ったり、霧吹きを手に吹き付けたりしている者もいた。
「こういうのは面白いね」
ドローンが現場の上空から撮影している映像は、「犯人射殺」というスーパーが付けられて、画面を流れていった。
「面白いか。寒い思いをしただけじゃないの」
先ほどの雨でシャツはすっかり濡れてしまい、肌に張り付いていた。時折吹き込んでくる風が冷たいので、震えながら、膝を抱え込んで座っていた。対する彼女は画面を眺めては腹を抱えて笑っていた。
しばらく待っても、彼女から返事は返ってこなかった。不気味な間が流れて、果たして彼女は誰に向かって、面白いね、と語りかけていたのかわからなくなった。
「なあ、どこか暖かいところに行かない。ものすごく寒いんだけど」
彼女は一度手を止めたものの、振り向くことなく鑑賞作業を続けた。立ち上がって、その場を立ち去ろうとすると、後ろから腕を掴まれた。刺されるような視線で睨みつけられていた。構わず彼女を引きずっていくことにした。
ビルの一階にある駐車場は、日陰になっていて、日陰者になったような気がした。抵抗を続ける彼女を引きずって、ゆっくりと駐車場の出口まで歩を進めると、雨上がりの明るいとも暗いとも言えない、不気味な陽光が差していた。彼女の腕を引く力が強くなった。
「ちょっと待って」
彼女の声が震える。
「太陽が怖い。刺される気がする」
彼女まで震え始める。今度は鑑賞者になり、彼女が座り込む番だった。
「刺される気がしない」
「しないね」
気付けば、駐車場の内側にまで食い込んだ日向の部分に座り、彼女は日陰の部分に座っていた。境界線を挟んで手をつないだ。弱いながらも日差しがあったので、服は熱を帯びて、少しずつ乾いていった。しかし彼女の手はコンクリートの列柱廊同様冷たかった。
「いつも太陽が怖いの」
「いつも怖いけど、今日はいつもより怖い。そういう日ってない」
「ないね。そもそも普段から怖くないから。皮膚を何かで覆って太陽が当たらないようにしたら、怖くなくなるの」
「わからない」
「じゃあやってみる」
「やらなくていいよ。多分今日はもう必要ないから」
境界線は建物の外側に向かって前進していて、座っているところはとっくに日陰になっていた。彼女が頭ごと胸に飛び込んできた。胸を日陰が満たしていった。男を一人日陰に染め抜いて満足したのか、彼女は手を取って、駐車場の外へと引っ張っていった。
光を帯びているのはもはや高層建築群の輪郭のみで、夜の闇までの秒読みを彼女は堂々と始めていた。
「もうすぐだよ。もうすぐだから」




