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狐の嫁入り逃亡記  作者: カラネコ
第2章 聖からの脱出
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第22話 修行を開始せよ!


《…すいません、ハル。止めきれなかったようです。》


 勇者が部屋に入ってる事に気付いた白露は、窓から戻ってくるなり俺に謝罪して来た。

 よほど勇者に侵入を許したのが嫌なのか、悔しいという字が出てると思えるくらいの顔だ。


 いや、大丈夫だ。白露は精一杯やってくれたよ。

 あんだけやって倒れなかった、もといぶっ飛ばされなかった勇者の頑丈さを褒めるしかないね。

 俺も止められなくてすまんかったな、むしろ謝るのは俺の方だったわ。


《いえ、元はと言えば私が最後油断して見過ごしたのが原因ですから…、これ以上は後にしましょう。今はこの状況の整理をするのが先決ですね。》


 そうだな、と俺が白露に返事を返しながら再度部屋の中を見回してみると…そこには小さなカオスな空間が生まれていた。

 窓から部屋に入って俺に質問に答えた後、勇者はベッドの方に高速で移動して寝ているアミアを見てなんか感動に撃ち震えています的雰囲気を漂わせている。

 そしてその勇者の背後でなんか呪詛のようにブツブツしゃべり、血走る目を向けているリーファ。そんなリーファをビビリながら見ているリンク。

 最後にそれを少し遠い目で見ている俺とどうしようかと真剣に考えている白露。


 一種のカオスがこの部屋と言う空間を満たしているがそろそろ解決していかにゃぁならんな。

 まぁ、勇者の場合は念願の姫様に眠っているとはいえ会えたんだから感動するのには問題ない。

 だがどんだけ時間かけたらその感動は治まるんだ?もう君が不法侵入してから20分くらい経ってんだけど…。

 リーファの場合は完全に嫉妬だな。勇者がアミアにゾッコンってことも知ってるみたいだし…やっぱりリーファは勇者パーティの一人だな、そもそもアミアの情報を持ってた時点で気付くべきだったか。アミアの情報は意図的に消されてるんだから知ってるのは極少数、なら勇者から聞いたと言うのが妥当な線だろう。

 リンクは完全なとばっちりだな、ドンマイ。


 で、俺の隣に居る白露は何かこの状況の打開案を頭を悩ませながら考えてる。

 正直白露よ、こう言うカオスな空間の事を真剣に考える必要はないんだ。

 一人ずつ当たって行けば自然と崩れて行くもんなんだよ。

 

 じゃあ、まずは身近な所から崩して行きましょうかね。


 お〜い、白ーーーー露!


《……いや、やはりそれではまとまらない…しかしこれ以上…、》


 やはり考え込んで自分の世界に入り込んでる。

 端から見たら、なんかブツブツ言ってる危ない人だ。

 幸い声が聞こえるのは俺だけだからその心配はないが。

 ま、白露の目を覚まさせる言葉なんて一つだろ。


 おやつに油揚げのアイス添えが、


《え?!油揚げ?!!アイスはいりませんが油揚げは何処に??!!!》


 ……食いつくのが早すぎて若干引きそうになったじゃないか。

 というかアイスがいらんとは失礼なやつだな、油揚げとアイスでシュークリームみたいに出来るって聞いた事があるぞ。

 …まぁ、その話は今度するとして白露は終了。


 さて、今度はリンク辺りでも…、


 と、次のターゲットに移行しようとした所で白露が視界を遮った。


《ハル!油揚げは?!油揚げはどうしたんですか??!!》


 この状況で俺が油揚げなんて持ってるわけないでしょうが。

 …なんで白露はここまで油揚げが出ると性格が変わるんだろうか?

 はぁ、とため息を吐いてさっき思い出した事を言う。


 さっき君とアミアが行った買い出しの時にどうせ君は油揚げを買って来たんだろ?

 バッグから少しはみ出ていたぞ。


 俺がそういうと白露は、なにやら思い出したような顔をして目線を上にし次に俺の顔を見る時にはなんか満面の笑みで言った。

 

《あ〜、そうでした!?帰って来てから騒がしかったので忘れてましたよ。ささ、ハルにはたんと食して頂かないと!!》


 どうやらいますぐにでも俺に油揚げを食べさせようと言う魂胆なようだが、今の状態で油揚げなんぞ食ったら前の油揚げ尽づくしの事を思い出してしまいそうだ…ただでさえ体はそこまで万全じゃないのに。

 ここは話術で乗り切るしかないな。


 白露、今はそんなことを言っている場合でないよ!俺達の娘が起きる前にこの空気だけでも正常にしておかなくて何が保護者か!!アミアが起きて来た時快適な気持ちになるよう心がけようよ!!!


 なんか途中から何を言ってるんだと言う感じになってしまったうえにアミアをダシに使ってしまった…。

 しかも趣旨がアミアの快適になってしまった……まぁ、そこはいいや。

 白露の反応はいかに?


《油あg……え、私達の娘………そ、そうですね!アミアさんの為、こんな空気ささっと取り払ってしまいましょう!!なんたって私達の娘の為ですから!!!》 


 ?……なんか娘をかなり強調するなぁ。

 なんだ、白露って子供好きだったんだな。

 まぁ、アミアの歳を考えると実際は娘と言うより妹といったところだろうが…白露には言わないけどね。

 せっかくの母親気分を害する必要はないし、そういえば言いだしたの俺だしな。


 なにはともあれ、白露が自分の世界から戻って来てよかった。協力ももちろんしてくれるようだから助かるな。

 よし、気を取り直してリンクの元に向かうかな。


 白露、最初はリンクの所に行ってみよう。


《そうですね、怖がってるようですし早く助けて上げましょう。》


 そう決まった俺達はすぐにリンクのもとに歩いて行った。

 

 リンクのそばに行くと隣にいるリーファが未だに目が血走った状態でブツブツ言っている。

 さすがに勇者はもう見ていないようだが、しかし下を向きながらまだ何かを言ってる姿はかなり怖い。

 リンクはそんなリーファを見ていたが俺達が近づいて来たのがわかったのかこちらにこの状況の説明を求めるような目を今は向けている。


《これはかなり混乱しているようですね…。》


 まぁ、混乱するよね。

 部屋に知らない人が入って来ていきなりこんな状態になったら…。


 白露が言い、俺がこの状況の感想を思っているとリンクが、


「あ、あのぉ。リーファさんどうしたんでしょう?そ、それに勇者様もなんで窓から?!」


《おや?勇者さんとリンクはお知り合いだったんでしょうか?》


 ……そういえばリンクって俺がカルネさんに会った時”勇者”って言ってたな。

 なら、リンクからして自分の知ってる偉人が窓から突然入って来てさらに女の子の寝ているベッドに高速で移動した、という光景を見た状況なわけだ。

 さらに隣に居た人物の突然の豹変……災難だなぁリンクよ。


 んー、しかしこの場合リンクに何と言えば良いのか…。

 アミアの素性をバラすわけにもいかんし、適当に嘘を言っておいた方が良いかな。


「えぇっと、勇者はアミアに恋をしていましてそれで…、」


 しまったぁぁぁぁぁ!?100%真実じゃないかぁぁぁぁぁぁぁ!!?


 咄嗟の事だった全然思いつかなかった…。

 別に教えても特に問題のない情報であるがここでそれを言う意味が欠片もない。

 リンクの質問にも答えた事にはならんし…やばいな、リンクに変なやつ扱いされてないだろうか?


「あ、そうだったんですか。へ〜勇者様の好きな方ってさっき気を失われた女性の方だったのですね、しかし年齢に問題がありますね。」


 むしろなんか納得されてた。

 ……あれ?もしかして勇者って好きな人明言でもしてたのか?


「あの、勇者が好意を向けている相手がいるというのは有名なのですか?」


「いえ、そういう訳ではないですよ。確かにいつも姫ぇ姫ぇと叫んでは居ますが実際好きな方が居ると知っているのは教会では剣士様と交流のある私だけです。」


 交流関係が特殊だなリンクは……。

 もうちょっと話を聞きたい所だが他にも周らねばならんから一回話を終わらして…どうした、白露?さっきから黙ってるけど。


《いえ、愛とは素敵な物だと思いまして…。》


 白露は現在アミアと勇者がいる方に目線がいっている。

 俺もその目線を追ってその方向を見てみると。


 そこには普段とは別の慈しみのある顔をした勇者の姿があった。

 静かに寝ているアミアにそれを慈しむ勇者、見る物が見るなら芸術的に見える光景のように思える。


 俺はさっき見た顔との違いにかなり驚き目を見開いた。

 白露に関してはその光景に見惚れているようだ。

 リンクは気付いていない。

 俺にはあまり芸術的感性はないからそこまでではないが、白露には効果的だったようだな。


 本当は赤壁を完全覚醒してでも勇者をアミアから引き離すつもりだったがあの様子なら手を出す事はないだろう。

 一応勇者は今まであった変人・変態の中で唯一人の話を聞くやつだったからな。

 ひとまず信頼してもいいか…赤狐ならこうはいかんが。

 ん?…………これでアミアは安心な訳で、俺や白露が守らなくてもこの場なら勇者がいるから大丈夫…。


 なら、


 白露。


《……え?!はい、なんですか?》


 とりあえず勇者の所に行くぞ。

 アミアの無事を勇者に約束させなければならんからな。

 

《え?それってもしかして勇者さんにアミアさんを任せると言う事ですか?!》


 おぉ、話が早くて助かるね!…まぁ、そうなるな。

 若干心配ではあるがアミアを放っておく訳にはいかないし。頼むしかないだろ。


《そ、それはそうですが!だからって…私達が守るって…!!》


 何かをこらえるような顔で白露は言う。涙を堪えているようにも見える。


 そこまで言うなよ。

 修行をしてる間の見張りを頼むだけじゃないか…。


《…え?》

 

 ところ変わってポカーンという顔をする白露。


 え?


《え〜と、すいません。話を整理するとハルはこれからおそらくですが意識に潜って修行をするからその間アミアを勇者さんに預けると言っているのですね?》


 最初からそう言っているのだが。

 他にどうやったら勇者にアミアを預けるなんて選択しになるんだよ。


《…い、いえ、私の勘違いでした。では勇者の所に行きましょう!早く修行を始めましょう!!》


 ?…な、なんかいきなりテンションが上がってるな、なんかあったのか?

 まぁ、よくわからんが白露の疑問も解消されたみたいだし行こうかな勇者のとこに。


 そうして俺は勇者の所、正確にはアミアが眠るベッドの横に移動した。


「勇者、少し良いですか?」


「なんだ?僕は姫の寝顔を見るので忙しいんだが。」


 激しくこいつにアミアを任せていいのか心配になったが背に腹は代えられない。


「貴方は寝ているアミアに何もしませんよね?」


 そう俺がいうと殺気に近い何かが俺を襲った。


「貴様は、僕が寝ている姫に下卑た事をするとでも?」


《ハル、さがって下さい。》


 殺気に反応して白露が俺の前に出て来たが俺はそれを抜けて言う。


「大丈夫なようですね。なら少しの間アミアの事をよろしくお願いします。」


 一方的に俺はそう言い放つと床に胡坐をかき、目を瞑った。

 

 白露、頼むよ。


《わかりました。…………………………………………。》


 何か話してるようだが良く聞こえない。

 やがてパチンッという音が聞こえると俺に意識は現実から離れて行った。


「……言われるまでもないさ。」


 最後に勇者のそんな声が聞こえた気がした。







「私達の存在忘れられてますね、リーファさん。」


「ブツブツ(そうね。)」





修行開始!

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