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狐の嫁入り逃亡記  作者: カラネコ
第2章 聖からの脱出
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第21話 勇者との対面


「いや〜、お騒がせして申し訳ないです。」


「あたしもつい興奮してしまって、ご迷惑をおかけしました。」


 あれからとりあえずは二人とも治まって、話し合いが出来る状態になった。

 リーファの口調が少し丁寧になってるのはアミアがいるからみたいだな。


 とアミアが。


「ハルさん、果物を切ったのですが食欲はおありですか?」


《はぁはぁふぅぅぅ、見事なスルースキルですねアミアさん…。》


 俺にさっき行った買い物で買ったリンゴ(らしきもの)を切って皿に盛って差し出してくるアミア。ジト目でそれを見る白露。

 どうして白露が珍しくアミアにそういった目を向けるのかと言うと、さっきまでもみくちゃ…触れないからどうとも言えないがとりあえずリンクとリーファの二人に絡まれてる時、意外な事にアミアが止めに入らなかったのだ。

 というかむしろ横でリンゴを剥いていた。


 で、白露は俺が止めきるまでの20分ずっと質問とか訳の分からない賛辞とかを聞いていたわけだ。

 …今見てみると赤狐の時より疲弊して見える、あまり慣れていないのだろう。疲れない筈の霊体でかなりグッタリしているように見える。


 まぁ、せっかくだしアミアの剥いたリンゴを頂きますかね。


 そう考えた俺は、笑顔をアミアに見せ皿に置いてあるリンゴの一つを手に取り食べた。

 シャクっといい音が口の中で聞こえる。果物の新鮮さがうかがえるな、ん?この場合瑞々しさか?

 でもま、何にしろ感想は、


「美味しいですね、ありがとうございますアミア。」


 俺がそう言うとアミアはよかったですといって白露に向き直った。

 白露、依然としてジト目である。


「白露様、貴方と言う…精霊と言う存在はこの国では神に値します。そこの二人は憧れのものを見た子供のようなもの、どうか許して下され。」


 そうして頭を下げた。

 どうやらジト目の意味を違う方向に勘違いしてらっしゃるようだ。

 しかし白露も頭を下げられ、まぁ収まりがついたようだ。


 う〜ん、と頭を悩ませながら俺にだけにしか聞こえない声で語りかけてくる白露。


《何か私の視線はこの二人を責めていたのでしょうか?私はアミアさんに何故助けてくれなかったのかと伝えたかったのですが…。》


 うん、俺には伝わってたけどアミアには勘違いされたようだね。

 まぁ、一応謝られてるわけだから許してあげたら?


《…そうですね。このまま不貞腐れていても大人げないだけです、実際アミアさんは悪い事はしていませんし。》


 どうやら解決したようだ。

 白露の頷く姿に喜ぶアミア、うん、微笑ましい限りだよ。

 さて、では元凶の二人は…、


「あ、この果物美味しいですね。どこで買ったものなんでしょうか?リーファさん知ってます?」


 シャクっと音を鳴らしながらアミアが切った果物を食べるリンク。


 食ってんじゃないよ。

 リンク君、本当に勘弁してくれよ。君と居ると俺の頭に思い描く理想の聖職者が理想の聖職者(笑)になるじゃないか!もっと遠慮と慎みを持て!!


「あら本当、美味しいわね。どこかで食べた事があるんだけど…この国ではないわ。まぁ、商人が新しく持ち込んだものでしょ。」


 君も食うんじゃないよ!?

 一応君ってアミアを敬ってたよな?!それならせめてアミアに一言ことわって食べるのがマナーではないのか!

 つかどんだけ他人事なの?!今アミアが謝ってんのは君らの事よ!!


 と俺は頭の中で激しいツッコミをしたわけだが外に出すわけにはいかない。

 白露のイメージを崩さないため、絶対にだ!

 だから頭の中のわだかまりを封じ込め二人に笑顔で、


「でぇ?貴方達は、何故白露にいきなり突進したのでしょうぉ?」


 と言った。

 おっと、なんか最初と最後が変な事になったがちゃんと言い切れたな。

 あれ?どうして二人は正座になってるんだ?まぁ、反省してるって言うんならいいんですけど。

 しかしどうして震えてるんだ?

 …え?ゴゴゴゴゴゴッ!って効果音?背後から聞こえたって…外も特にそんな音はしてないし中もそんな音はしてないが。聞き間違いだろう。



 それで改めて何故この二人が白露に群がったのか理由を聞いてみたところ、この国では精霊が神聖化されているわりに精霊自体を見る事が出来るのはごく稀なそうな。周期で言うなら5〜10年の間に一度くらい。

 しかもその大体がよそから来る混血に憑く祖先の精霊らしい。天然の精霊はまず見る事がないと言う。


 ん?と俺は二人の話を聞いて途中疑問に思った。


「あの、質問よろしいでしょうか?」


「「はい、何なりと。」」



《…何がこのお二方にあったのでしょう?》


「…私が白露様と対話している間にどんな会話をしたらあんなことになるのか…?」


 小声で言いながら状況が飲み込めない白露とアミアの二人。

 それに気付かない俺。



 …被りましたね見事に。

 でも反省はちゃんとしているようだな。俺を見る二人の視線はまっすぐだ……少し目が見開かれ過ぎて怖いが。


「では、先程天然の精霊と言いましたがこの国にはいるのですか?」


 いるなら白露が言ってた精霊が分かるかもしれない。

 俺の質問にリンクが、


「はい居ます。と言っても文献にも載っていないし見たものが誰もいないのでおそらくとしか答えようがありませんが。」

「ちなみに今まだ居るとされている精霊様は一体だけです。」


 なるほど、白露が言ってたアミアに憑いてる精霊ってその一体のことだろうな。

 てか二人の口ぶりだと昔は何体かいたような感じだな。聞いとくかな。


「昔は精霊は複数存在していたのですか?」

 

「はい、昔この国には4体の精霊様が居たと伝えられております。」

「そして時が経つにつれ居なくなったとも言われております。」


 ……昔でも4体しかいなかったのな。

 でも4体ってなんか守護神って感じがする数だよな。

 俺のイメージで言うなら白虎とか青龍みたいな感じだ。


「話に割り込んで申し訳ないが今残っている精霊と言うのはムジャパティと言う名前ですか?」


 お、アミアがいつの間にか白露と話を終えてたみたいだな。

 ムジャパティって確かあの忘れられた広場に祭られてた精霊の名前だったよな。

 ……詳しい事聞いてまた倒れられたら駄目だし、聞き手に回るかね。


「?……あぁ、いえ違いますよ。残っていると言われている精霊様はバナスバティラジャという名前です。ムジャパティとは確か…、」

「…居なくなったとされてる3精霊の一体ですよ。しかし何故アミア様はその名前をご存知で?文献などには載っていない筈ですが。」


 そうリーファが言うとアミアは固まった。

 そして徐々に顔が青ざめていき、後ろに倒れ込んだ。


 ってヤバイ!


《アミアさん!?》


「え?!どうしたんですか?!!」


「…あれ?あたし不味い事言った?」


 倒れる前にアミアの背中を支える事に成功した。

 半ば予想が当たったがやはり実際に起こると焦るね。

 白露に関しては予想外って感じの顔だな。まぁ、さっきまでの雰囲気でこうなるとは思わなかったんだろうな。

 というかリーファさん、君は何故焦らない?


 とりあえずアミアを俺が今まで寝ていたベッドに寝かせて俺が立った。

 うん、右足は麻痺して感覚ねーし左足は重いしと完全に病気な気分だ。足だけだが。

 

 さて、一応事情説明しておくか。










「…………………というわけでアミアにこの話題はNGということでお願いします。」


《そうですね。》


「なるほど、そんな理由が…分かりました!」


「……分かりました。」


 うん、分かってくれたみたいだね。一人以外は。


「リーファ、お願いしますねぇ?」


「……………はい。」


 何故プルプル震えるんだ。

 こちらは誠心誠意オネガイしてるんだからその反応は失礼だろう。


 さて、アミアの方は大丈夫かな。少しの間放置しちゃったけど。


 そうしてアミアの様子を確認しようと俺がベッドの方を見ると…。


 …。



「白露…。」


《はい?なんでしょ……わかりました。》


 俺は反射的に白露にベッドではなくその横の窓を指差し見させた。

 白露も察してくれたようだ。


「?」


「…?」


 俺達の突然の行動に疑問の視線を投げ掛けてくるリンクとリーファ。

 何故なら彼らの目には特に何も変わったところはないように見えるから。


 …確かに普通に見れば何の変哲もない窓で、そこから見えるのは町の景色だろう。

 俺も人間時ならそう思ったはずだ。

 ……だがなぁ、見えてしまうんだよ今の俺には。

 まぁ、説明するより証明した方が早いよな。


 俺はその考えに至ると、無言で窓(押して開くタイプ)を開ける。

 開けた所、すぐに何か遠くから聞こえてくる。

 

 ーーーーーーーーーーーーぇぇぇぇぇ!!!


「あれ?何か聞こえませんか?」


「え?そう?…あら、なにかしら嫌な予感。」


 リンクとリーファも気付き始めたようだ。

 そしてそんな中俺は無言で赤壁を発動する。



 ーーーーーーーーぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!


 また、声が聞こえる。

 そして声がしている方向に目を向けると何か黒い点のようなものをが見える。


「白露、セットです。」


《了解ですよ。》


 俺の言葉に応えたあと、白露の体からは光のオーラが出て存在感が増したように思える。

 着々と俺達の撃退準備が整っている。


「あれ?なんかヤバそうな雰囲気ですよ?」


「………みたいね。仕方ないからリンク、あたしの後ろに隠れてなさい。防壁を張るわ。」


 ……大丈夫だと思うけど、まぁ、備えが多いに越した事はないな。

 しかし防壁って…リーファが魔法使いの可能性がかなり上がった。

 まぁ、考えるのは後にしようか。

 とりあえずは、


「白露、アミアのため、一瞬で終わらせますよ!貴方が前衛、私が後衛です。」


《そうですね!すぐ終わらせましょう!!さすがにこんな町中で妖術は使いたくありませんし。》


 よし、準備完了。

 お、もう普通の人も見える範囲まで近づいてるな。

 まぁ、もう大体の人がわかるかもしれないけど黒い点の正体は…。



「姫ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!」



 ものすごい速度で飛んでくる勇者です。

 さて…行きましょうか。



 3、2、1、白露Goー!!!!!



 俺の掛け声で外に浮遊して出て行く白露。

 そしてまだ何もない空間に拳を勢いよく突き出した。


「ぐるぁっ!!!?????」


 そうするとその時ちょうど飛んで来た勇者の顔面に直撃。

 なにぶん早かったので俺は目で追いきれなかったのだが、タイミングも合わせて…さすが白露だな。

 しかし勇者は獣みたいな声を上げながら体勢を立て直しまた突進してくる。


《…む、やはりこのくらいでは倒れませんか。腐っても勇者ですね。》


 白露か賛辞か侮蔑か分からない言葉を言いながら今度は自身から突っ込んで行く。


《オラッ!!!》


 白露は拳を勢いよく勇者に放つ。

 だが勇者もさっきより冷静になったのか体をずらしそれを避ける。


《!?…オラッ!!!!》


 さらに連続で放つ白露だがそれも紙一重で避けられる。


 …というか白露、そのオラッ!!!って掛け声なんだよ。

 男ならともかく女の子がそれでいいのか…。


 それから白露が攻撃を仕掛け、勇者がそれを避け通り抜けようとするのを白露が止めを繰り返した。


 ……さっきから思ってたのだが、何故勇者はナチュラルに空中に浮いてんだ?

 アミアみたいに背中に魔方陣があるようには見えないが…まさか勇者特有の能力とか?

 ありそうだなー、なんか他にチート能力とかも持ってそうだなぁ。イメージ的に。


《!?…………らちがあきませんね。………ハル。》


 ん?なんだい?手伝おうか?


 俺なんもしてないから気まずいんだよなぁ。

 というか勇者、話してる最中に抜けようとするなよ。


《いえ、少し妖力の消費が激しくなるとっと、思うのでぇ!一応備えといてくださ、い!!》


《では、やります!勇者さん、覚悟!!》


 白露がそう言うと光のオーラの輝きが上がった。

 それと同時に俺は少し疲労感を覚える。

 そして次の瞬間には…、


《オラララララララララララララララララララッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!》


「あがががががががががががががががががががっ!!!!!!!!?????????????」」


 勇者の顔面がボコボコに…なんか恨みでもあんのかな?イケメンに。

 ……あ、赤狐か。


 ま、とりあえずは勇者退治終了。

 あんだけくらったらかなり遠くに飛ばされ……え?


 そんな考えをしている俺の横を何か蛇みたいな動きの物体が通り過ぎた。

 動きがキショイ!!??


《あれ?!勇者さん、どこに行きました?!!》


 …あの白露の狼狽えよう、もしかして今通り過ぎたのって!?


 俺は危険を感じ後ろを振り向くと、そこにはこちらに背を向け片膝をついた状態の勇者が居た。

 とりあえず俺は、


「あー、勇者。赤狐と日護さん…赤い髪の男と風を操る女はどうしました?」


 と、聞いた。


「…僕の仲間に丸投げしてきた。」


 …カルネさん、生きてて下さいよ。





 こうして勇者と俺は事実上初めて会い、勇者は姫(気を失っているけど)と再会した。




勇者降臨!

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