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ショートストーリー(11) 不穏な動き

ショートストーリー(11) 不穏な動き


(そうだ、わたしは、あなたにな――)


ヴェロニカは思いを振り切るように首を振った。


その時だった。


「――見違えたね。あの子が、あんなふうになるとは、私の目も衰えたものだ」


凍りつくような低い声が、背後から差し込んだ。


ヴェロニカは弾かれたように振り向く。

そこにいたのは、実父、エルドレイン侯爵だった。


父の言葉がヴェロニカに、あの断罪の場面を思い出させた。


「お父様……。まさか、断罪の件は、お父様が――」


「終わったことだ。それより、学園祭だ」


侯爵は、ヴェロニカの動揺を愉しむように薄く笑った。


「おまえにも、手伝いを頼みたい」


ヴェロニカは、その声に身震いしながらも、うなずくしかなかった。

だが、


(私は、お父様の駒ではない。見定めさせていただきますわ)




生徒会の劇は、ユリウスの思いとは関係なく進んでいった。


「こんなものを、俺が書くなんて、堕落だ、大衆への迎合だ!」


「なにいってるのよ。あんたはこれがお似合いよ」


嘆くユリウスに、アリシアは容赦ない。ユリウスは膝から崩れ落ちた。


「ユリウス、大丈夫」


サイラスが心配そうに言う


「大丈夫じゃない」

「アリシア嬢は褒めてるんだよ。よく出来てるって」


「な、何言ってるのよ。あんた、いい加減なこと言わないで」


アリシアは慌てて、その場を離れる。


「サイラスくん、その辺の話を詳しく」


ユリウスはサイラスの肩をがっしりつかみ、顔を寄せる。サイラスは引き気味だ。


「まったく、なにをやってるんだ」


あきれたようにアレクシスが、離れたところから見ながらため息をつく。


その横を、大きな柱を肩に担ぎヴォイドが通り過ぎる

その表情は、水を得た魚のように生き生きしている。


「殿下、聞いておられます?」


もどかしげに聞いてくるのは、リリアーナ。

いつもは見られない、表情と声に、にやけそうになるのを内心に隠し

おだやかに諭す。


「聞いてるよ、リリアーナ。でも、これはみんなが望んでるんだ。

 上に立つ者として、その声を無視する訳には――」


そこまで言って、後が声にならない。パクパクと口だけうごいている。


リリアーナの靴先がかすかに足にあたる。

うつむいたまま、もう一度。


それだけだったが、アレクシスの意識はすべて足下に沈下した。



「失礼しまーす。セシリーでーす。今日から参加することになりました」


明るい声とともに少女が入ってきた。

その背後には、ヴェロニカがいる。


レイナードが眉をひそめる。


少女はアレクシスの前に立ち、にこりと笑った。


「殿下、よろしくお願いしますね。殿下?」


「はいはい、話は、俺とユリウスで聞くから」

依然思考停止のアレクシスにかわり、レイナードが少女の前に立つ。


「ヴェロニカ様も、お願い致します」


ユリウスを促しながら、二人をアレクシスからは、離れた場所に案内する。


レイナードは小声で、ヴェロニカに尋ねる。


「ヴェロニカ様のお知り合いですか?」


「ええ、遠縁の子なの」


ヴェロニカは表情を変えない。


「あからさまですね」


わずかに視線をそらした。


「なるほど、わざとですか」


「どうとでも」


「悩みますね」


「何がですの?」


「あなたの立ち位置ですよ。コウモリは失礼ですね」


「ずいぶんね」


「いえ、もっと高尚なものに例えたいのですが、

 あいにくユリウスのような才能はないもので」


「ご謙遜を」


「俺がなんだって?」


自分の名前が聞こえたユリウスが聞く


「なんでもない。さて……お話を聞かせていただきましょうか。

 本音ではないでしょうが」


お互いの思惑を感じながら、二人はおだやかに微笑みあった。

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