第20話 練習会を続けるぜ
よし、簡単な立ち回りで、ダンが受け身を上手く取れないとなると、敢えてシン=芯=主役をやらせて、ゼンとリュミリエにはカラミ=絡み=やられ役をやってもらおう。
「まずは手本だな。メル、カーラがカラミで俺がシンだ」
「了解」
「はぁ、結局やらされるんだ」
愚痴は無視する。
「メル、俺の右側から先手、カーラは左側から後手」
メルとカーラが配置につく。
「メル、山切って、山切って、俺の足刀で吹っ飛ぶ」
山切るってのは、まぁ、斜めに刀で切るようにチョップを内と外に向けて2回。
足刀は足を真横に突き出してのキック。
「わかった」
「ゆっくりやるぞ、来い!」
3弟子にもわかりやすいように、ゆっくりと動く。
メルもそんなに上手いわけじゃないしな。司会のお姉さんだし。
「次、カーラ。殴りかかって来たのを受け止められて、ボディとアッパー食らって吹っ飛ぶ」
「いいよぉ」
「よし、来い!」
殴ると言ってもストレートに打ち込むんじゃなく、横から。フックに近いか?
それを俺が左腕で受け止めて、空いた右手でボディを殴り、斜め左に振り抜く感じでアッパー攻撃。
「ゼン、リュミリエ、ダン、何をやろうとしてるかはわかったか?」
「「「はい!」」」
「そんじゃ、本気のスピードでやるとどうなるかも見てもらおう。メル、カーラ、いいか?」
うなづく二人。
シンをやるに当たって必要なのは気合だ。決して負けないというヒーローの気迫。
「はぁぁぁぁぁ……来い!」
シャッシャッバシッ!(心の中の擬音)
吹っ飛ぶメル。
ダッビシッガンガン!(心の中の擬音2)
吹っ飛ぶカーラ。
「シャアッ」
と適当な決めポーズっと。
10秒に満たない短い殺陣だ。
さて、俺はマットレスを引きずり、俺の左右に一つずつ配置した。
「よし、まずは一人ずつだ。リュミリエ」
「はい」
「おまえには、メルがやった手をやってもらう」
「はい」
「まずは俺相手にやってもらおう。焦る必要はない、ゆっくりでいい。よし、来い!」
身長が違いすぎるんで、俺は膝をついて構えた。
フニャッフニャッって感じの動き。
「そこに俺のキックを食らった感じで、マットレスに吹っ飛べ。受け身を忘れるな」
リュミリエは一瞬迷う仕草をし、マットレスに駆け寄って、ポスンと前回り受け身。
そうだよな、普通の人間はやられるリアクションとか、困るよな。
前回り受け身しか教えてないし。
「うん、リアクションもきちんと教えないとな。俺が悪かった」
とリュミリエの頭を撫でる。
何かカーラが怖い目で俺を見るのがウザい。
子供に妬くな、めんどくさい。
「ゼンもダンも聞いてくれ。主役をかっこよく見せるのはやられ役のやられ方が大事なんだ」
「やられ方?」
ダンが不思議そうに俺を見る。
「そうだ。カーラ、さっきの手、もう一度いいか」
「うん」
「それじゃ、最初はさっきやったとおりに」
ダッビシッガンガン!
「今のが、上手いやられ方」
何かカーラが誇らしげに胸を張っているのがムカつく。
「んじゃ、カーラ、次はやられ方を初期のアロンみたいにやってくれ」
「アロンの最初……あぁ、うん、わかった」
これで通じるのが良いのか悪いのか。
「よし、来い!」
ダッビシッフラフラバタン!
アロンのやつ、最初は謎の芝居っ気を出して、やられた後に謎の苦しみ演技をして、その場に昏倒するかのような倒れ方をしやがった。
カーラも良く覚えてたな、そっくりそのままだ。さすが姉弟。
「な?カッコ悪いだろ?」
頷きまくる3弟子。
「んじゃ、後ろ受け身も教えよう。見るのが早いかな。……こうだ!」
マットレスの上に背中から倒れる。その際に両手でマットレスを叩き、衝撃を逃がす。
「リュミリエ、やってみろ」
「はい」
「俺が軽く押すから、そのまま後ろに倒れて、両手でバン!だ」
「はい」
「ちゃんと俺が見てる。怖がらずに行け。よし!」
俺はトンとリュミリエの額を押してやった。
見事、思い切りよく後ろに倒れて、衝撃も逃して成功。
「上手いぞ。勇気もある。よくやった」
「えへへ」
褒めたら照れた。
また、カーラの視線を感じたが無視。
ゼンもダンも後ろ受け身は上手く行った。おそらく、普段からベッドに飛び込んでるんだろう。
お行儀の話になるんで、指摘はしないが。
「よし、今のを踏まえて、リュミリエ、最初からだ。腕を振っての攻撃は、剣を持っているような感覚で振るんだ、いいな」
「わかりました」
「よし、お前のスピードで来い。はぁぁぁ、来い!」
「やあ!」
シャッ、シャッ、バシッ!
俺の足刀でやられるリアクション、ちょいテンポは遅いがきちんと出来ている。
「よし、声も出せたな。いいぞ。そんじゃ、ゼン、次はお前だ」
「はい」
「リュミリエとの大きな違いは、俺の攻撃を2回受けるってことだ。なので、カーラ」
「はいはい」
かったるそうに返事しやがって。リュミリエを褒めすぎたか?めんどくせえ。
「ほら、やるぞ、カーラ」
さっきと同じ。カーラがゆっくりと横殴りで攻撃してくる。それを左腕でガード。そこに俺がボディに一発。そのダメージで少し屈んだところに、斜めに振り抜くようにアッパーパンチ。
吹っ飛ぶカーラ。
「よし、今の流れだ。ゼン、ゆっくりでいいからやってみろ」
「行きます」
最初のパンチ。リュミリエに比べて腰が入っている。いいね。
そして俺からのボディ。なるほど、きちんと見てるな。攻撃を受けたリアクションが出来ている。そしてアッパーで吹っ飛んで、見事、マットレスに背中から着地。
「うまいぞ!次はスピードを上げてこい」
「はい!」
ダッビシッガンガン!
ちゃんとしたスピードでも出来ている。
「ゼン、上手いじゃないか。さぁ、次はダンだ。今までの俺の動き、見ていたな」
「は、はい」
「変に格好をつけるな。スムーズに出来れば、それが格好いいんだ」
頷くダン。緊張しているのが判る。
「よし、最初の方、行くぞ」
俺がゆっくりと山を切る。少々怖がっているようだが、俺の腕の動きは目で追えている。
「そこで俺にキック!……おっと」
足刀ではなく、下から蹴り上げる動きになっているため、危うく金的を入れられそうに。
「ご、ごめんなさい!」
「当たっていないし、気にするな。よし、キックだけやってみよう。蹴り上げるんじゃなくて、突き出す感じで、こう!」
と、俺は足を突き出したキックの状態のまま止まる。
「いいか、こんな風に脇のラインから足の先まで、一直線に近いのが、格好いい」
「かっこいい」
「そう。だから、ダン、蹴りだけやってみろ」
「はい。やっ」
体幹が未熟なせいか、上半身の安定がいまいちだが、体が柔らかいので、足は真っすぐ伸びている。
それでいい。やっていくうちに、もっと、かっこよく決められる。
「いいぞ。今のを意識して、もう一度最初からだ」
力強く頷くダン。
シャッシャッ、バッ、な感じだし、間合いの取り方も遠いが、今はそれでいい。
「よし、次、反対側からの攻撃だ。動きを一つ一つやっていくぞ」
ゼンとリュミリエも自分の動きを繰り返しつつ、ダンを見守っている。
「まずは、俺が殴りかかるのを左腕で受け止める」
ダッ、ペシくらいな感じだが、動きは覚えているから良し。
「そのまま、右手でボディーにパンチ!」
パンッくらいか。
「右手を一旦引いてアッパー!」
ペンッくらい。
ちなみに俺はずっと膝をついているので、派手に吹っ飛ぶのは無理。
「よし、受け止めて、ボディー、アッパーを止めずにやるぞ」
「はい」
「そこは気合いを入れろ。来い!って叫べ」
「は、……来い!」
ダッパンパンくらいになった。
「よし、本番行ってみよう。3人とも、やってみせろ。各々声を出すのを忘れるな」
「「「はい」」」
アロンをこいつらの弟子にしたくなった。




