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住めば都の異世界生活  作者: ヤチマチ
9/13

第8話 ヒロの体質

「はぁ結局ギルドを選んだんですね……まぁなんだかんだと言いましたがあなた達のところでしたら心配はないです……いや逆に心配、すごく心配です」

「なんだなんだこの期に及んでまだ難癖か? 説教属性に嫌味まで付け足す気か?」


朝食も食べ終わりってエミリーは騎士団に戻る準備を始める。


「とりあえず私はこれで失礼させてもらいます」

「ああ、わざわざギルドまで見送りご苦労だったな」

「仕事ですから……それに姫衣さんのご飯を頂けましたのでむしろ役得でしたので」


腰に剣を帯刀し一通り身だしなみを整える。

その様子を見てたナディアは。


「騎士団の連中が聞いたら目を丸くしそうな発言だな」

「私だってたまにはこれ位の息抜きがあってもいいと思いません?」

「こっちからすればそれでも働きすぎだと思うがな」


背後では皿をを洗ったり机を拭いたりと、それぞれの作業にいそんでる光景が映し出されてる。


「それよりウチのギルマスとその補佐知らないか?」

「知らないかって自分達のギルドマスターの事じゃないですか……まぁ知ってますけど、一昨日の今朝方位から騎士団本部に出席してます、ですが要件までは知らないですよ?」

「悪いな、それだけ聞ければ充分だ」

「そうですか、……それよりも彼のことなんですが」


今はアリシアと姫衣と一緒に皿洗いを手伝っているヒロを見やる。


「ホントにギルドに入れて大丈夫なんですか?」

「今更だな、お前も。見ただろ……タイショウがアイツに懐いてるの」


そのタイショウはというと今は椅子の上で寝ていた。

その光景を見ながらまぁ、とすでに確信はしていたが口にせずにはいられなかったことを言うと。


「あんまウチに肩入れすると騎士団が泣くぞ?」


なはは、とナディアが笑いかけてきた。

その変わらない友人に対して。


「別に肩入れしてませんよ、付き合いが長いなりの心配です」

「わかってる」


ホントですか、などと疑問を挟み込みながら時間も来たので騎士団に向かおうとするがその前に。


「では、今度こそ失礼します。ご飯ご馳走様でした、いってきます」


前半はナディアに、後半はみんなに向けて言った。

不思議とこの習慣だけは変わりませんね。

内心の想いに苦笑しながらエミリーはいってらしゃいの声に背を押され仕事に向かったのだった。





エミリーが出ていってすぐのことキッチンでは姫衣とアリシアが食器を洗い、ヒロとスミレは洗い終わった木の食器を布で拭いてるところだった。


「ヒロさんすみません、手伝って頂いて」

「むしろこれくらいやらせてください、昨日からお世話になりっぱなしなので」


そう返しながらアリシアから食器を向け取り、綺麗に拭いていく。

それに家でも何かと姉にこき使われていたので長年家の手伝いをしてたから割とこういった事は好きなのだ。

鼻歌でも歌いたいな、なんて考えていたら。


「ヒロは真面目なんだね〜」

「あなた達が適当なだけですけどね……そこっまだ濡れていますよ」


横からそんなやり取りが聞こえてきた。

姫衣から拭き残しを指摘されていたスミレはは〜いと気の抜けた返事を返している。

そんな中アリシアが食器を洗いながら姫衣にとある質問をした。


「姫衣、ヒロのギルド登録、いつやるの?」

「それがちょっと待たないといけなくて」

「えっなんで?」

「……なんでって……二人とも登録するときの手続き覚えていないのですか?」

「「うん!(コクッ)」」


そんな二人の返事にため息をつきながら返事をする姫衣を見て思った。

何というかさっきから感じてはいたがこの人は母親みたいな人だな、そんなに歳離れてなさそうなのに。

そして姫衣は洗う手を止めづに続ける。


「ヒロさんも聞いてもらえますか? そのウチのといいますかギルド全体で統一されていますけど、ギルドの登録の仕方は簡単な書面方式なんですね、それでその書類にサインをしてギルドの代表が判子を押すことで登録が終了するんですけど」

「あたしたちそんなことしたっけ?」

「……知らない」


二人が同時に頭を傾げた。

それに対して姫衣は。


「そういえば皆さんの書類は私がやったんでしたね」

「へーそうだったんだ、というか入ったこと自体昔過ぎてあんま覚えてないよね」

「うん」

「まったく……とりあえず話し戻しまね。それで今現在その団長…ギルマスとも呼びますけど代表が騎士団に呼ばれていて不在なので判子が押せない状況なんですよ、なのでヒロさんの登録はいったん保留となるんです」

「あ~さっきから姿見えないと思ってたけど騎士団にいるんだね~、なら仕方ないか」

「ヒロさんも勧誘しておいてすみません、そういった理由で登録の方はもう少し待っていただけますか?」


っとそう姫衣は話しを終えた。

黙ってはいたけどなんとなく状況は理解した。

それでまぁそんなに急いでることではないので気長に待とうかなっと割とのんきに状況に流されることにした。

そんな風に結論づけるとアリシアが思い出したかのように姫衣に問いかけた。


「そう言えば、……姫衣に聞きたいことあるんだけど」

「……聞きたいことですか……なんです?」


小首を傾げながらもその手は器用に食器を隅々まで洗っていく。

もしかして魔法の事かな? そう思っていると見事予感は的中したらしく。


「ヒロの、ね。魔法調べたんだけど、条件未達成で使えないって出たの……なんでか分かる?」

「調べたって、『妖精のお告げ』を使ったんですか?」

「そう、だけど……ダメだった?」

「ダメではないですが、ギルド(ウチ)にまだありましたっけ?」

「私の……使ったから」

「ああ、アリシア持っていたんですね……それで、ええと魔法が使えない理由でしたっけ?」


気づけば匠領域にまで速度を上げた手腕で汚れを落とす姫衣、そこにアリシアも負けず劣らず並行して作業を進めていく。

目の前に洗い終わった食器が積まれていく。

その光景に昔見た某テレビ番組のなんちゃらチャンピオンを思い出した。

レゴや大食いの回は好きだったんだよね、まぁなぜか毎回、番組が終わると姉さんが俺の茶碗だけ物凄い量に盛るんだけどね。

そんな記憶に浸っている中姫衣が質問に答えた。


「……そうですね、簡単な理由ですと魔力が足りないとかじゃないですか?」


そう言うと姫衣はいったん洗い物を止めてヒロの前にやってくる。

なんだろう?と思ったがそれに答えるように自分も手に持ってたものを置いて姫衣の方に向き直る。

すると、


「右手お借りしてもいいですか?」


首を動かして答えると姫衣は左の手でヒロの右手を握り掌を上にした、次に姫衣は自分の右手の人差し指を立てると宙に一本、線を描くように残光を乗せて指を降るう、そこからその光線を開くように掌を広げると掌数センチの場所に少し大きめの魔法陣が展開する。

な、なにそれ! ストレ○ジ! スト〇ンジなの!?

内心で物凄く興奮していたら。


「どうかしましたか……ってああこれですか? ただ魔法陣を組んだだけなんですけど、それよりも少しじっとしていて下さいね? 今からヒロさんの魔力を測りますので」


隠しているつもりだったけどバレバレだったらしい、は、恥ずかしい。

そして姫衣はそのままヒロの掌に自分の手を重ね始める。

アリシアは洗い物を続けスミレは姫衣の代わりに食器を洗う中、その光景に魅入っていたら、しばらくして姫衣が口を開いた。


「これは……魔力がない?」


な、なんですと!


「……いえ、違いますね。元々なかったといえばいいのでしょうか……もしかてヒロさんの世界には魔力は存在してなかったのですか?」

「全くって言っていいほどには」


というか空想上のものなだけどね。

そんなヒロの答えにフムフム興味深いですねと姫衣は呟きながら。


「簡単にですけど今のヒロさんは魔力がほぼゼロの状態なんですね、しかも小指の爪程しかない魔力も自身のでなくたぶんですが先ほどの食事で取れたものだと思います」

「要するにヒロヒロは魔力ゼロって事? え! それってかなり不味くない?」

「そうですね……通常なら立っているのもやっとというはずなんですけど……」

「ヒロ、平気?」


スミレやアリシアも一旦手を止め始めた。

2人が大丈夫なの? と首を傾げる中。


「うーん、特には、あ! でもなんか少し体が重くは……感じるかな?」

「なんで疑問系なの?」

「え、何となく?」

「不思議と異常はなさそうですね」


フームと唸る。

いや、ほんとにこれといって体調が悪いって感じもしないんだけどね。

ヒロ自身もわからない状態だったがそれよりも。


「もしかして俺魔法使えないんですか?」

「あ、それは大丈夫です。さっきも言いましたが魔力がほぼ空の状態と言うだけで、0では無いんです」

「ん? つまり溜まれば使えるってことなの?」

「はい、スミレの言うとおり魔力が回復すれば普通に使えます、ただヒロさんの場合その自然回復に少し問題がありまして、本来ならば1晩寝れば大体の人は魔力を回復するんですが」

「回復、してないね」

「そうなんですよね……すみませんもう少しいいですか」


姫衣が手を繋いだまま更に魔法陣を重ねる。

そうしたら横から。


「ヒロヒロ顔赤くない?」


わざとらしくスミレが顔をニヤつかせてた。


「そ、そんなことないよ?」


これはアレだ、アレがこうしてそうなったわけなのだ

……すみませんさっきからドキドキしっぱなしです。

自分で心に言い訳して反省していると、アリシア純粋に心配してきた。


「あつい、の?」


痛い、その純粋な目が心に突き刺さる。

っとそんなやり取りが交わされる中。

姫衣がヒロの手を離した。


「アレ? 姪ちんおわったの?」

「はい」

「原因、なんだったの?」


アリシアが姫衣に疑問をかけるのにヒロ自身は緊張する中。


「たぶん……これはヒロさんが異世界人だからだと思うのですけど、ヒロさんの体には魔力を自然回復する機能が動いてないみたいです」

「動いてない? 止まってるってこと?」

「いえ、そうですね、休眠状態っと言った方が合ってますかね、とまぁそういう訳でヒロさんは自分で魔力の回復するすべを持ってない状態になります」

「え、じゃあやっぱヒロヒロは魔法使えないんじゃないの?」

「いえ、これについては対処方を知っていますので何とかなりますよ」

「そう、なんだ……良かったねヒロ」


最初雲行き怪しくなりかけたがどうにかなりそうみたいだ。

アリシアの声に安堵のため息を吐く。

といいますか、三人が話してる間もう生きた心地がしなかった。

だってようはゲームソフト買ったのにハードが壊れてますよ~みたいになるところだったのだから。

だけどその問題もなんとかなりそうらしいので一息心の中で安どのため息をつく。


「ですので洗い物が終わりましたらヒロさんのち……」

「じゃあさ今からヒロヒロの……体質? 治さない?」

「そう、だね。ヒロもその方がいいよね?」


そう二人が提案してきたのだけど。


「いや、洗い物終わってないような」


気のせいか姫衣さんも何か言いかけてたような?

しかし二人はとまらずに。


「もぉヒロヒロはまじめだな、そうゆうのは後でやれば大丈夫だって」

「ヒロも、昨日早く使てみたいって、いってなかった?」

「いや、ですから二人とも洗いも……」

「なんだヒロヒロも楽しみなんじゃん」

「ねぇスミレ待って!、姫衣さんなんか言っ……」


確かに耳に届いた言葉にヒロが慌てて止めようとしたが。

2人の後ろから覗く目をみて固まる。

蛇に睨まれた蛙ってこうゆうことを言うのかな?


「……3人共」

『……ヒっ!』

「……聞いてました? まだ洗い物終わってませんよね?」

『……はぃ』

「…終わって、ませんよね?」

『は、はい!』


姫衣の声にそれはもう馬車馬のごとく働いたと、その光景を見ていたものは後に語ったそうだ。

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