02もちろん霧状のシャワーが出る
本日2作目、短いです。
「落ち着け俺、落ち着け俺」
寒いはずだ、なんで俺はこんな森の中にいるんだ。
足元では落ち葉の上にさっきまで俺が使っていたシャワーのお湯と泡が水たまりを作っていて、頭の上では生い茂った木の隙間からうっすら明かりが見える。
その様子から今が夜ではないことは分かるのだが…。
「ここ、どこだよ?」
そう、そうなのだ。
さっきまで日本で、バイト終わりの夜11時だったのに。
今は森の中で、太陽が出ているのだ。
「しかも寒いし」
シャワーヘッドを持ったまま、両手で体を抱える。裸で森の中にいる不安と、外気の寒さでなんだか涙が出てきそうだ。本当夢なら覚めて欲しい。
「あのー…
誰かー!」
勇気を出して大きな声を出してみる。
「もしもーし」
こんな時もしもしなんて言ってしまうのは、日本人の悪い癖ではないだろうか。
スマホの時代になってももしもし言ってるなんて、しかもスマホも受話器も持ってないのに。おかしくて笑いそうだよ。いや、頭がおかしくなっているのは間違いないんだけどさ。
そして、手に持っているシャワーヘッドに目をやる。俺の持ち物って、これ一つだから。お前だけが頼りだから。
そんな情けなくて、頭おかしいことを考えながらおもむろにボタンを戻す。すると、
「ッ!!」
シャワーが出た。
「え?」
いや、シャワーが出るわけないでしょ?ヘッドだけだよ?
そっとヘッドの、本来ホースと接続されているはずの部分を見ると、なんか黒くなってて奥が見れない感じ。指を突っ込むのは怖いから今はやめておこう。
もう一度ボタンを戻してみる。
やっぱりシャワーが出る。
今度はヘッドのメモリを変えて、霧状のシャワーを選択してボタンを戻してみる。
もちろん霧状のシャワーが出る。
「いや、もちろんじゃねーし!
シャワー出るのがおかしいんだって!」
俺は途方に暮れて空を仰ぐ。鬱蒼と茂る木々に阻まれて空は見えないんだけど。
「水道に繋がってないのにシャワーが出るとか、おかしすぎるだろ…
ここ、もしかして地球じゃない?」
そう思うと急にこの森が怖く感じられ…
「いや、裸で森にいるとか、ここが地球でも日本でも恐ろしいわ!」
お読みいただきありがとうございます。