ハワイ四日目〜スッキリしない心。そして、帰国
四十話です。
今回はハワイ編最後です。
喧嘩という形になった二人。そしてナイフが刺さってしまった奏。
その後、二人はどうなったのか……。
では、お楽しみください。
あの時、色々と起きすぎて最終的に何があったのかもう分からない。ただ、顔の方に衝撃が走り痛み……いや、痛みより何か温かい何かが流れた気がした。痛みはその後だ。だけど、痛みが来てる頃にはもう意識がどこかへ行ってしまった。
そういえば、僕はなんで顔に痛みが来たのだっけ?そもそも、僕はあの時何をしていたのだっけ?他の皆は?
志帆………。
「…………んの…………は…?」
「……や………を…………ない…。」
誰だろう……。誰かの話し声が聞こえる…。
「……で?……なで!?」
「……なで……ん……!」
誰が叫んでる?まだ途切れ途切れだけど、もしかして僕の名前を呼んでいるのではないだろうか…?」
「…い!……なでの…しきが…もどり……けて…る!……やびと……ほちゃん……でこい……!」
「…ん!……った!」
「…い!……っかり…ろ!……で…!かなで!かなで!」
まだ、はっきりと意識がもとったわけではないが、今僕の目の前にいるのが『太一』であるというのはわかる。
「よ…ぅ…。太一……。」
「奏!!良かった……。心配かけさせやがって……。」
「ここ……?」
「ホテルだ。ロバートさんとニックさんがここまで連れてきてくれたんだ。」
「そっか……なぁ……『僕』どうしてたんだ……?」
「……。お前、どこまで記憶あるんだ……?」
「あぁ………。確か、志帆を探しに四人でキラウエア山まで行ったのは覚えてるんだけど……。」
「オッケー」。そっからのこと説明してやるよ。」
太一は、キラウエア山で怒ったことを事細かに教えてくれた。志帆を見つけた僕が彼女を叩いたこと。彼女と口喧嘩したこと。そして……目にナイフが刺さったこと。
「なるほど…。だからさっきから視界が悪かったのか……。」
「認識の仕方おかしいだろ…。」
そして彼は一回、息を呑んでから「なぁ。」と僕に投げかけてきた。
「お前、なんでいつも自分のこと『僕』って使って呼ぶんだ?」
「は?どうした急に?」
「志帆ちゃんと喧嘩になったときのお前は人が変わったように怒ってた。それはあの子の事を思っての事だと思うだけど、いくら何でもいき過ぎていたんじゃないかとも思った。だって、あの時のお前、口調が『僕』から『俺』になっていたんだよ。」
「そ、そんなまさか……。」
「それは本当の事よ。」
その声は部屋の入り口から聞こえてきた。
「来たか。雅……と友紀だけか?志帆ちゃんは?」
「行きたくないって。まだ、奏君には会いたくないのかもしれないわね。」
「志帆……。」
あの時、自分の事なのに志帆に何を言ったのかは正直あまり覚えていない。だから……だからこそ、今、彼女に会って話さなきゃいけない気がする。
「行こっ…うぎぃ!?あぁぁ!!」
なんだか、もの凄く顔面が痛い。いや、もっと細かく言えば右目。右目がもの凄く痛い。
「アホか!!何時間か前にナイフが刺さって、やっと治療が終わった段階なんだぞ!!安静にしてろアホ!!」
「二回もアホ言うな!!!あぁぁぁl!!!!」
今が深夜の一時くらいなのでもうハワイ四日目ではある。
ということは最終日。いやな最終日だ。
そして、朝の六時くらい。とりあえず立ち歩くくらいには回復した。
………嘘です。本当は痛いの我慢してます。
昨日、あの場にいた太一たちやニックさんがすぐに医者を呼んでくれてすぐに治療してくれたおかげで大事には至らなかったそうだ。
しかし、少し傷が深かったらしく、失明は避けられないとのこと。まぁ、命があったから良しとしましょう。
まだ、同じ部屋の太一はまだぐっすり。多分、僕のことをずっと看ててくれたんだろうな。
「いつもありがとうな、親友よ。」
結局、やることもなかったのでロビーに出てみた。すると…。
「志帆…。」
「きゃ!?奏……君……。」
「ぷっ…!きゃって……。」
「……………………………。」
「ね、ねぇ…せめて笑ってよ?なんか、僕がスベったみたいじゃん……。」
「え、あ……そう…だね……。」
これは昨日、雅さんや友紀ちゃんが言ってたとおり、何か会いたくない、むしろ会うのが気まずいだから避けたいみたいなオーラが全開ですね……。
「……ねぇ、志帆。少し話さない?」
「え?」
それでも僕は……。
「あの時、僕ね。志帆の事ばっか考えて周りのこと、自分の事を見失ってたんだよね。だから、志帆に酷いこと言っちゃったんだよね。ぶっちゃけ、何言ったか覚えてないんだけど……。」
「私も…。奏君の事ばかりで周りや自分の事考えてなかった……。奏君に喜んでもらいたい。奏君が笑顔になってくれたら…。そんなことを考えてたらいつの間にかあぁなってて……。」
「てことは僕たちお互い様だね。」
「お互い様じゃないよ!だって、私…奏君の目を……目を………。」
そのまま志帆は膝から崩れ落ちていった。うっすらだけど、涙とともに聞こえる「ごめんなさい」の声。そして、涙の粒は止まることなく床に落ちていく。
「何も謝る事なんてないよ……。」
「でも……!」
「だって、いつもの僕なら志帆の攻撃避けてるでしょ?それを避けなかった。自業自得だよ。それに、この程度で僕は志帆を嫌いになったりはしない。」
「ひっきゅ…!っく…!本当に…?でも、目は…?」
「目はもう仕方ないさ。こうなっちゃったんだから。ならさ、僕が見れない右の視界は志帆が見て僕に教えてよ。そうしたら問題解決でしょ?」
「っぐ…!ひっぎゅ……!うわぁぁぁぁん!!!!ああぁぁぁぁん!!!!」
志帆は僕の胸に飛び込んできた。そして……。
「ごめんなさい!!ごめぇんなさぁいぃ!!!!」
ただひたすらに謝り続けた。僕はそんな志帆の頭を優しく撫でてあげる。
のだが……。
どうしよう……。ここロビー……。おぉ…、フロントの人や他のお客さんすっごい見てる……。後で謝っとこう……。
朝食……。
「というか、お前らも見てたのかよ…。」
「いやぁ、だってさ?あんなにイチャイチャラブラブされてたらそれは入っていきづらいよー。ねぇ?」
「まったくです。しかも、ロビーの真ん中で。」
「うぐっ…!!」
「他のお客さんやホテルの人にまで迷惑かけて…。」
「がはぁ…!!」
アニメで見る矢印で刺されるあれ。絶対あれ刺さったよ……。二本くらい…。
「あれ?ところで志帆ちゃんは?」
「あぁ。泣き疲れて寝た。だから今は俺と太一の部屋。」
「志帆りん、赤ちゃんみたいだね。」
「ところでさ、気になったんだけどさ。多分、『今回の騒動の発端』なんじゃないかと思うんだけど、僕さ、志帆に『誕生日』を教えてないんだよね…。だけど、志帆は知っててそのプレゼントを作るために山に行ったじゃん?」なんかおかしくない?」
「そうなの?なんかそれはおかしいわね?」
「どういうことなんだろう……。」
「………………………………………。」
「太一?」
「オウ、ドウシタ?」
ここまで、嘘を隠すのが下手なのが分かりやすいのは彼か漫画の雑魚キャラとかじゃないか?
「お前……何か知ってるな?」
「シラナイッス。」
逆に凄いのだが、目が三百六十度もの凄いスピードで回転している。
けど、こうしていても埒が明かないので『奥の手』を使うことにした。
「お前……。この写真、雅さんに見せて良いのか?」
「あれは二日目の夜。俺と志帆ちゃんが同室だった時の事でした。」
話し出すの早くない!?
「なるほどな……。僕の誕生日が近いというのを志帆に伝えたと…。」
「あぁ。でもまさか俺もこんなになるとは思ってもいなかったんだよ。」
いや、僕だってその話の内容からは思わないわ……。
「まぁ、そういうことなら仕方……なくもないが、ひとまず理由は分かったわけだよしとしよう。」
「そうね。それはそれとしましょう。だからね、奏君?私に見せちゃいけない写真って何なの…?」
「んー?どうしようかなー?ねー、太一くーん?」
「うぐっ…!?」
まぁ、睨み付けてはいるんだが彼の顔はよく見えてない。だって、太一は僕の横にいる。今、右目が見えてないから全体を見ようと思ったら右にいる彼のことはうまく見れない。だから見えないなりに圧をかけてみる。
「何でもするから、マジ勘弁……。」
「何でも……ねぇ…。日本に帰ったら覚悟しときなよ…?」
たっぷりこき使ってやる……。
九時半。
志帆を起こし空港へ向かう準備を整えた。
僕と太一は一足先に準備を済ませロビーへ向かった。
「お、やっと来たか。」
「元気そうだな。」
ロビーで僕らに声をかけてくれたのは、ロバートさんとニックさんだった。
「ロバートさん!ニックさん!」
「もう何ともないのかい?」
「いや、正直痛いですけど、まぁ、一応大丈夫です。ご心配かけました。」
「いやなに、カナデが無事だったんだ。それだけで十分さ。」
「ロバートさん……。」
「この後出発するんだろ?俺とロバートが空港まで送ってくよ。」
「本当っすか!?」
「あぁ。今のうちにお前らの荷物、俺とロバートの車に積んどきな。」
「はい、分かりました!」
車に荷物を積み終わった辺りで女子三人がロビーに来てロバートさんたちの車に荷物を積んだ。
ホテルのチェックアウトを済ませ空港へと快適な運転………とはいえないスピードを出している車もあったけどそのまま向かった。
「さぁ、着いたぞお前たち。」
「はい、ありがとうございました。」
「お、おしぇわ……になりました……。」
僕はロバートさんの運転でここまで来たのだがなんか車を降りた太一がなんか吐きそうになってる…。いや、太一だけでない。ニックさんの車になった友紀ちゃん、雅さんもダウンしてる……。雅さん大丈夫なのか?これから飛行機に乗るというのにこんなんで……。
「これで、お別れだな。」
「元気でやれよ。」
「はい。本当に色々とお世話になりました。」
「カナデ。」
ロバートさんたちに別れを告げ空港内に入ろうとしたとき、僕だけが二人に呼び止められた。
「カナデ。これから先、お前は様々な困難に直面していくと思うが負けるなよ。」
「体験談ですか?」
「生意気なことを…。まぁ、目を失ったから苦労するだろうからっと思って言ってやったのによ…。」
「そういうことですね。ありがとうございます。」
分かってましたけどね。
「カナデ、多分シホのやつはまだ精神的に傷ついてるから立ち直るのにはしばらくかかるんじゃないかと思うんだ。」
「はい…僕もそう思います。」
空港に向かってるときも志帆は僕やロバートさんが話しかけてもどこか上の空だったしロバートさんたちの心配はおそらく間違いのないものだろう。
「はい…任せてください……。」
「ところで、二人とも何でそんなに日本語が上手いんですか?」
「ん?あぁ、それはな俺らが昔に日本への留学経験があるからだよ。」
「懐かしいなぁ、もう十五年くらい前か?」
「になるな。」
それこそまさかの経験談だった……。
ロバートさん、ニックさんに別れを告げ、皆の待つ所へと向かった。
「さぁ、皆日本へ帰るよ!」
色々ありすぎて長く感じていた短かったハワイ旅行。すべてが楽しくとは言い切れなかったが全員が無事日本へと帰ることはできることはできた。
こうして、僕らのハワイ旅行が終わった。だが、僕と志帆にとって、このハワイ旅行で起きた出来事が引き金となり後に最悪の事態を迎えることになることを今はまだ知る筈もない。
いかがでしたでしょうか。
全員が無事にとはいったものの、結局奏は失明、志帆は精神的にダメージを負ってしまう。他の三人も楽しい旅行だった筈なのに最後の最後でこんな結果になってしまった。
これが日本に帰った時にどう影響していくのか……。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




