ハワイ三日目~すれ違う心〔後編〕
三十九話です。
今回は前回の続きで三日目の続きをお送りします。
いなくなった志帆を探す奏たち。奏のために行動を起こす志帆。
二人の思いはどう交差していくのか……。
それでは、お楽しみください。
志帆……!どこに行ったんだ……。志帆……。
志帆がいなくなってから一時間が経過した。最初はビーチ周辺を隈無く探していたのだが、見つからなかった。もしかしたら、ホテルの方に戻ったのかもという友紀ちゃんの予想を信じ、僕らは『奏、友紀ペア』、『太一、雅ペア』の二手に分かれホテル周辺の町、ホテル内を探すことにした。
「志帆……志帆……志帆……!!」
「奏君、落ち着いて!冷静になって探さないとたとえ志帆がいたとしても見落としちゃうでしょ?」
「そ、それは……。」
「焦る気持ちは分かるよ。でも、それは奏君だけじゃないんだよ?それだけは覚えておいて。」
いつもは周りを巻き込んでただうるさいだけにも感じる彼女なのに、いざという時には本当に頼りになる。さすがというしかない。本当、自分のダメさがわかってしまう……。
「ありがとう……。」
「うん!じゃあ、志帆の捜索再開しよっか。」
「うん。」
「おい、奏!!」
「太一!雅さん!志帆は!?」
「いや、見つかってない…。」
「そっか。」
あれから、三時間。現在時刻十三時半。未だに志帆は見つからない。
「志帆……。どこに行っちゃったんだ……。」
「奏君!!」
向こうで聞き込みをしていた友紀ちゃんが大慌てで戻ってきた。
「良かった…。二人もいた……。」
「おい、どうしたんだよ友紀。一回落ち着いて説明しろよ。」
「そ、そうだね……。」
友紀ちゃんは大きく深呼吸をした。そして、僕たちに衝撃の事実を告げた。
「志帆、今もしかしたらこのオアフ島にいないかも知れない!!」
「は…?」
「「はぁぁぁぁ!!!??」」 「ええぇぇぇぇ!!??」
「お、おい!それ、どういうことなんだよ!?し、志帆がこの島にいないって…!はっ!?まさか、一人で日本に帰っちゃったとか…!?」
「落ち着け、奏!友紀ちゃんとどういうことか説明しろ。」
「うん、さっきそこにいる人に話聞いたら、志帆、詳しい理由は分からないんだけど、『カンラン石』を探していたみたいでそれを採りにハワイ島のキラウエア山に行っちゃったかもしれないの。」
「しれないって……そんな曖昧な情報な…!!」
「奏!!!」
「っ!?」
混乱していて周りが見えなくなっていた僕に太一は声を張り上げ正気を取り戻させてくれた。分かってはいる。心では焦っても何も解決しないって。けど、志帆に何かあったらと思うと無意識に体が反応して焦りが出てしまう。
「友紀、ハワイ島へはどうやって行くんだ?」
「えっと………飛行機で大体一時間くらいだと思う。」
「よし、ならすぐに準備して行こう。」
「いや、飛行機は無理だ。」
僕らの会話に入ってきたのは、眼鏡をかけた四十代くらいの男性だ。
「あ、この人だよ。さっき、志帆のこと教えてくれたの。」
「あぁ、申し訳ない事をした。あの子は君たちの友達だったんだね。」
「志帆のこと知ってるんですか!?」
「あのお嬢ちゃんにカンラン石が採れる場所を教えたのは私なんだ。だけど、俺はとんでもないミスをしてしまった…。」
「何なのですか…?」
「キラウエア山は今噴火時期で立ち入り禁止になっているのだ。」
「そ、そんな……。」
「あ、あんた……!そんなところに志帆を!!」
「やめろ奏!!この人も志帆ちゃんのためにやってくた事なんだ!俺らに責める資格はないはずだ!!」
「けど……!!」
「いや、俺も申し訳ないことを思ってる。だから、私なりにできることを君たちにしようと思う。」
今、僕は僕たちのために協力しようとしてくれる人を責めようとしていたのか。本当に今の僕はどうにかしている。穴があったら入りたいという言葉があるが、それでは足りないな…。入った後、拘束をして出てこれないようにして落ち着きたい……。
「そういえば、さっき飛行機は無理だって言ってましたけど……。」
「あぁ、飛行機はさっき、一時間前に飛んでしまったから次は五時間後だよ。」
「五時間後!?」
「俺もさっきあの子の事が気になって見に行ったんだが、その時にはもう出発していたんだ。」
今から五時間。さらに向こうに着くのに一時間。その頃には二十時くらいだ。もし入れ違いになったり、その間に志帆の身に何かあったりしたら……。
「そこでだ、俺に案がある。」
「案?」
「俺は船を持ってる。飛行機と違って少し時間はかかってしまうが、準備すればすぐに出発できるぞ?」
「ほ、本当ですか!?」
「どうする?」
どうすると投げかけられても答えは一つに決まっている。
「お願いします!!」
およそ三時間後。現在時刻四時半。
僕らがオアフ島で志帆捜索中にあった男性、『ロバート・マレー』さんの航海のおかげで飛行機の半分くらいの時間でハワイ島に着くことができた。
「ありがとうございました、ロバートさん。」
「礼を言うには早いぞ。それはここにお嬢ちゃんを連れてから言ってもらうぜカナデ。」
「はい!わかりました!」
「おっと、来た来た。おーい!ニック!!」
振り返るとオープンカーを運転してきた結構ファンキーそうな男性がやってきた。」
「ロバート、この子らが電話で言っていたこらかい?」
「あぁ、そうだ。皆紹介するよ。ニックだ。ニック。右から、ユキ、カナデ、タイチ、ミヤビだ。」
「ニック・グレムだ。気軽にニックって呼んでくれ。」
「よろしくお願いします。」
なんか、狩猟をやってそうな感じの人だな……。凄いファンキーなんだけどどこか男らしくかっこいい…。
「で、電話で言ってたことは本当なのかい?女の子がキラウエア山に向かったかもって。」
「あぁ、俺の注意不足だ。」
「ったく…。それで、俺に車を出してこの子らをその子と再開させる。そして無事帰還してハッピーエンドって事な?」
「話が早くて助かる。」
「オッケー。そういうことなら、四人とも早く乗りな!」
「あ、はい!!」
これは、日本人とアメリカ人の差なのか。それともただ僕が車に慣れてないだけなのか。ニックさんの車は僕が思っていた以上にスピードが速かった。これなら早めに着くのではないだろうか。
ただ、車酔い止めの薬が欲しい……。
「ほい!着いたぜ!車で行けるのはここまでだ。」
「ふぁ…はい…。ありがとう……ございます……。」
「ん?どうした皆?」
「いえ、何でもないですよ……?」
酔って吐きそう何て今この状況で言えない……。
「それにしても、これがキラウエア山か。」
「予想以上の迫力だねー。」
ここに志帆がいるかもしれない。どうか無事でいますように……。
「Hey,guys!」(おい、お前たち!)
突然後ろから来たのは軍服と思わしき装いをした人が二人。
「やばい!これ怒られるやつ…?」
「安心しな。ちゃんと、俺が説明してやるから。」
やっぱり、大人。ロバートさんもだがニックさんもかっこいい……。
話す事、二分。
「オッケー、交渉成立だ。」
「おー!カッケー、ニックさん!」
「だろ?ただ、キラウエア山はやっぱり立ち入り禁止区域になっているからお前らだけでは行かせられないから俺とこの人たちも同伴になるからな?」
それは逆に心強い。
山に入って三十分くらいした頃。
軍の人が近隣の人に話を聞きに行ってくれた結果、若い女の子が山に入っていったとの証言が取れた。たぶんそれは志帆だろう。
「奏!!」
友紀ちゃんが何かを見つけたのか僕を呼び叫んだ。
「何か見つけた!?」
「これって、志帆のじゃ……。」
そう、友紀の示した物は間違いなく志帆のだろう。だってそれは、この間僕が志帆にあげた『猫のフェルトのぬいぐるみ』だったのだから。
「志帆………。」
「皆!!志帆は間違いなくここにいるわ!!」
まさか、あの時にあげたこいつがこんな時に役に立つ時がこようとはな……。
「絶対に見つけてやるからな。志帆…。」
それからさらに三十分後。現在時刻、六時ちょっと過ぎ。
未だに志帆は見つからない。ここにいるのは明白なのに……。
「カナデ。」
「ニックさん?」
「悪いが、一般人の俺らはこっから上は入れない。」
「そんな!?」
「気持ちは分からないでもないが後は軍の人に任せろ。」
志帆…。いるのは分かってる……。後は見つけるだけなのに……。
ねぇ、出てきてよ……。いつものあの笑顔を僕の前で見せてよ………。ナイフだとか、スタンガンだとか、大砲だとかぶっ放してもいい。だから………。
お願いだよ………………………………………………。
……………………………キ………ィ…………ィン……………。
「はっ!!?」
「どうした奏?」
「奏君?」
「今、何か……?」
…………………………………キィ……ィィ……ン…………。
どこからだ……。どこからか音が…。何かを叩く音……?
…………キィィ………ィィィ………ィィン………。
「あっちだ!!」
「奏!?」
もう直感なのかも知れない。だけど、この直感は合ってる自信がある。
……キィィィ……ィィィ………キィィィィン……。
近い。確実に近づいている。絶対この先にいる。
そして………。
キィィィン!! キィィィィィン!!
「ふぅぅ…。採れた…。これだけ集めれば良いかな?」
彼女の姿を見た瞬間、もう涙が止まらなかった。だって、もうあえないかも知れないとも思ったのだもの。
「よし、じゃあ、すぐに帰ろ……え?奏君……?」
「志帆ちゃん!良かった見つかったんだ!」
「志帆!良かったぁ……無事で……。」
「本当だよ……志帆りんが無事で何よりだよ……。」
「え、えへへ……。皆本当にごめん……ね?」
僕はこの時、彼女に何をやったのか半分くらい覚えていない。それくらい自分でも衝撃的だった。
パアァァァァン!!!!!!
僕は彼女の左頬を右手で思いっきりビンタした。
「奏!お前何を!?」
「奏君!?」
「奏……君?どういうこと?」
後ろの三人は当然ながら困惑している。だが一番困惑しているのは当事者だろう。
「かな…で…くん………?」
「どれだけ!!どれだけ皆探したと思ってるんだ!!どれだけ皆心配したと思ってるんだ!!」
「そ、それは……。」
「ここが、今どんなとこか知ってるのか!!?今、このキラウエア山はな、立ち入り禁止なんだぞ!?そんな危険な場所にまで入って……。少しは自分の身のことを考えろよ!!」
「………………。」
彼女が黙った時、僕も言い過ぎたかな。そう思った時だった。
「私だって……私だって色々考えてここに来たんだから!!」
「色々って……。」
「もうやめなよ二人とも!」
「待った、雅!」」
「でも…!」
「今、下手に介入したら余計にややこしくなる。」
「太一君の言う通りね。ここは『危険な状況』になるまで様子を見ましょう。」
彼女が言っている色々の意味が分からない。そもそも、彼女は何をしにここへ来たのだ?そうだった。確か、カンラン石を採りに来たとか言って。
「なぁ、そもそもなんでカンラン石が必要だったんだ?」
「それは……。」
「ただ、石が綺麗だから欲しいとかの理由だったらもう一発ぶん殴るからな。」
「そんな理由じゃない!!」
強めの否定…。本当に違うみたいだ。
「誕生日……。」
「誕生日…?」
「もうすぐ、奏君誕生日でしょう?だからプレゼントあげたくて…。そしたら、有名なハンドメイドのお店があって……。」
ハンドメイド?手作りって言うこと?
「私、奏君からもらった猫のぬいぐるみ凄く大好きで、だから私も手作りでプレゼントをあげれたらと思ってたら、『カンラン石のブレスレット』っていう初心者でも作れる物があったからそれにして……。」
「そのためにここに……?」
「うん……。」
もうこの時には何を言ってたんだろう。自分なのに自分じゃないとはこのことなのだろうな。
「ふっざけるなぁぁ!!!」
「っ!?」
「そのために志帆に何かあったら本末転倒だろ!?もっと先のこと見通して行動しろよ!!」
「でも、私は……奏君の………ために……。」
「周りを心配させたり、自分の事を考えず傷つけるかもしれなかった。そんなプレゼント……『俺』は嬉しくない……。」
「っ……。」
「おい、奏!!それはいくら何でもないぞ!!撤回しろ!!」
「奏君、それはさすが酷いよ!!」
「奏君……。」
「…………………………………………。」
この時の僕は周りの声がまともに入って来てなかった。
「うぅ………。」
「志帆……?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
何か溜まっていた物が爆発したかのように彼女は大声……いや、雄叫びを上げた。
「あああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
そして、彼女は無我夢中にナイフを一本を投げた。
でも。いつもと聞こえる音が違う。
グチュア!!! プシュアァァ!!!
そこにいた全員が動くことができなかった。いつもは避けるはずの僕が一歩も動かず、ナイフに直撃し他のだから。
「え……嘘……。私………そんな………。」
「か、かなでえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!」
もう、朦朧とした意識の中、『目』に刺さったナイフを無理矢理抜き取り、僕は最後に彼女に言い放った。
「あん……しん……な…。き…みは……わ……くない…から……ね?」
そこから、僕の記憶はない。そのまま三日目は終わってしまった。
いかがでしたでしょうか。
皆様、明けましておめでとうございます!本年も皆様に楽しんでいただけるような作品を作っていけるように頑張っていきます!
そして、本編です。
始めてと言っていいのではないでしょうか。奏が志帆に向かって声を張り上げ、手を上げました。
その行いは彼女の身を案じてのことだったのだが、それが伝わらなかったのかすれ違ってしまい、結果的に一つの事故が起きてしまいました。
二人の関係が次回以降どうなっていくのか。どうぞ注目してみてください。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




