番外編4 あの頃の二人
二十九話です。
今回は一度、本編を離れ、ある二人のお話をお送りしたいと思います。
あの頃、二人はこうやって出会いました。
では、お楽しみください。
あのお泊り会(?)から三日が経った。
それは、そのお泊り以来、仲がさらに良くなった女子三人のお昼休みの会話だった。
「ねぇ、奏君ってどういう子供だったの?」
突然の質問。しかしそれは奏にぶつけているのではない。
「あ、それ私も気になる。どうなの、『ゆっきー』。」
気づいたら、名前の呼び方も変わってる。
ごちゃごちゃになりそうなので、ここでまとめておこう。
志帆は、雅のことは『雅ちゃん』、友紀のことは、『友紀ちゃん』と呼んでいる。
雅は、志帆のことは『志帆りん』、友紀のことは『ゆっきー』と呼んでいる。
友紀は、志帆のことは『志帆』、雅のことは『雅』と呼んでいる。
それでは、先ほどの続き…。
「あ、それ私も気になる。どうなの、『ゆっきー』。」
「え?奏君?どうだったって言われても…。というか志帆、それさ、本人聞けば良いんじゃないの?」
「それが………。」
昨日の放課後。
『奏君ってさ、どういう子供だったの?』
『ん?どうしたのいきなり?』
『ただ気になっただけだよ。奏君が子供の時どうやって過ごしてきたのか。そして今に至ったのか。』
『スケールがでかいな…。んー、そうだな…。』
『ねぇ、教えてよぉー!』
『うん、いいよ。』
『え!?やった……』
『また今度ね?』
『ええぇ!!?』
現在
「ということが……。」
「奏君、意外とSな部分あるんだね……。」
「だから私に聞きに来たと…。」
「うん、雅ちゃんと友紀ちゃんとお昼食べるって言ってきたから余裕でこの時間に聞ける!」
「おぉ、聞く気満々だね。」
「んー、じゃあ、私の知ってる限りのことだけど教えてあげるよ。」
「本当!?ありがとう!!」
「それ、私も、聞いていいやつ?ちょっと、興味ある。」
「うん、もちろん!」
「それじゃあ、どこから、話そうかな………。」
十二年前。
私が奏君にあった日、両親は奏君の家族をもてなすのにとバーベキューの用意をしてた。
「ママぁ?何でごちそーの準備してるの?」
「今日ね、ママのお友達が家に遊びに来るの。そうだ!友紀とね同じ年の男の子も来るのよ。」
「ふーん。」
「あれ?興味ない?」
まだ、この時は幼稚園のお友達くらいしか知らない私にとって他の所から来る、しかも男の子なんてあまり親近感がわく感じが無かった。
「おーい、花。来たみたいだぞ。」
「はーい!友紀、行きましょう。」
「うん。」
ちなみに、この時はまだ、パパとママは仲が良かった。いつからあぁなってしまったのだろうか。正直な所、あの頃に戻りたいとは思ったことはないのだが…。
「いらっしゃい、美優!よく、仕事休み取れたわね。」
「久しぶり、花!最近、大きな仕事が終わったところでね。花こそ、学校の先生って大変なんじゃないの?」
「大変だけど、今年は当たりよ。生徒もいい子ばかりだし、親もクレームいう人がゼロ!」
「あら、良かったじゃない!あ、そうだ、奏!」
「ん?」
「ほら、挨拶。」
「雪白奏です。はじめまして。」
「あらら、ご丁寧に!友紀、おいで。」
「え?」
あの子の挨拶の後で呼ばれてしまうと、挨拶するのが怖い…。
「あ、あぅ…桃瀬友紀……です…。」
「よろしくね、友紀ちゃん。うちの奏と仲良くしてあげてね。」
「う、うん………。」
その子、奏君の第一印象は……。
「…………………。」
物静かな子だなぁー。という感じだ。だからと言って、別に怖いというイメージもない。今となって思えばそれは絶対、奏君のお父さんの遺伝だと思う。奏君のお父さんは常に優しく、笑顔が固まって人間になった、そのような人だった。
その後、お母さんに「お肉が焼けるまで二人で遊んでおいで。」と言われた。
言われたが、実際、どうしたらいいのか。遊ぶと言われても、この子、さっきから一人でなにからやってるし…。第一、私は幼稚園のお友達、それも女の子だけとしか遊んだことがない。それなのに、いきなり今会ったばかりの男の子と遊べと言われても何をすればいいのか悩むのは当然じゃないだろうか。
そういえば、さっきからあの子……奏君?は、何をやってるんだろう?
私は気になったので、彼の後ろに回り、何をやっているのか、ひょこっと覗いてみた。
「……………木?」
「うわぁ!?いたの!?」
「あっ!ご、ごめん……。何やってるのか気になって……。」
「ううん、いいよ。気にしてないから。これはね、ただの木じゃないんだよ。ヒバっていう種類の木なんだ。」
「ヒバ…?」
「そう、ヒバ。水に強いんだ。それを考えて作ったのがこれだよ。」
彼が私に見せてくれたのは、形は不格好ではあったけど、それは間違いなくスプーンだった。
「す、すごい!スプーン!すごい!これ作ったの!?」
「うん、北海道にいるおじさんに教えてもらったんだ。」
「すごーい!!スプーン!スプーン!!」
ただの木製のスプーンなのだが、まだ五歳の私にとってはこれがとても素晴らしいものに見えたのだ。
「そうだ!ちょっと、待ってて!」
そう言うと、彼は車に戻り、何か袋のようなものと箱を持ってきた。後、新聞紙。
「そのスプーン完成させるところ見してあげるよ。」
「本当!?」
彼は頷くと、袋の中から彫刻刀を取り出した。そして、新聞紙を地面に引き、その上に座って作業を開始した。」
「今度は後ろから見てなくてもいいけど、真正面はダメだよ。彫刻刀使ってるから。」
「わ、わかった。」
その後、彼は黙々と掘っているだけで、周りの声が聞こえてるとは思えなかった。
そして、開始から五分後。
「よし、仕上げに…。」
彼は、先ほどの袋から、今度はやすりを取り出した。そのやすりで磨かれていくスプーンはみるみる艶が出てきた。
「はい、出来上がり。」
「おぉ!!」
さっきの不格好なものとは違い、自分の知ってる整った形のものが出来上がった。これが五歳が作るものなのかと思ってしまうくらいの物だ。
「すごい!すごい!スプーン!本当にスプーンだ!」
「それ、あげるよ。」
「え?いいの!?」
「うん。だから……その…。」
彼はさっきまでと違って急に口ごもってしまった。すると次に発した言葉は思いもよらない言葉だった。
「その…これで、仲良くしてくれたらいいなと……思い……ます…。」
「………。」
彼も私と一緒で相手とどう関わっていいのかわからなかったのだろう。それで思いついたのが、自分の得意分野。木工細工だったということだった。
「………ぷっ。」
「ん?」
「ぷははは!!」
「な!?何で笑うのさ!?」
「ご、ごめん!何でもないよ!えっと、こちらこそ仲良くしようね!えっと……かなで……くん?」
「うん。えーっと………ゆき……ちゃん?」
現在
「で、その後、貰った木スプーンをパパやママに自慢して回ったねぇー。」
「ふむふむ…。」
「昔の奏君って意外とシャイボーイだったんだね。」
「そうなの!昔は私の方がどっちかっていうと活発的でね?奏君を色々な所に連れまわしてたよ。」
「そうだったんだ。」
「あ、なんかイメージ沸くわ。ゆっきーなら何でもやりそうだし。」
「えー?ソカナ?」
「そう言えば、その木のスプーンってまだ持ってるの?」
「うーん……。持ってる筈…。とても大事にしてたからな…。」
「そっか、見てみたいな、思い出スプーン。」
「私も見てみたいなー。」
「この話してたら、私もあのスプーンに会いたくなっちゃった…。」
「うん、とりあえず、ありがとう!色々と参考になったよ!」
「はいはーい。お役に立てて何よりですよ。私も自分で話しててなんだか懐かしかったし。」
「私もなんだか新鮮だったなー。」
昼休みが終わる五分前になり、各々教室に戻った。
「ねぇ、奏君?」
「ん…?」
席が隣の友紀は、うつ伏せになっていて今まで寝てましたという状態の奏に声をかけた。
「私たちの会話、『途中から聞いてた』でしょ?」
「……………………。」
奏はうつ伏せの状態から動かない。
「ガールズトークを盗み聞きするなんて最低だなー。」
「……………………。」
奏はうつぶせの状態から動かない。動かないが大きなため息を吐いた。
「いつから気づいていた……?」
「結構序盤の方かな?奏君、丁度私たちが子供の頃の話をする時に来たよね。それで恥ずかしくなったのか途中で退散。合ってる?」
「もう黙っててくれ…。」
「はーい!ふふふ!」
あれから十二年。
二人は相変わらず、仲良くやっている。
立場は変わらないが………。
いかがでしたでしょうか?
今回の番外編では、奏と友紀の出会いを描きました。
二人は一つの木のスプーンがきっかけで仲良くなったのですね。
一つのスプーンが繋ぐ絆。かっこいいですね。見つかるといいですね…。
次回は本編に戻ります。
今回も見ていただきありがとうございます。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




