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文化祭の前日

私は高校一年生の女子。明日から文化祭なので、学校は準備で賑わっていた。私たちのクラスでは喫茶店をやることになっている。教室の飾りつけはほぼ完了していた。教室ではクラスメイトと文化祭実行委員が、明日の予定を話し合っている。午前と午後二つのグループに分かれ、ローテーションして喫茶店をやることになっていた。私は事前に文化祭実行委員の子に頼んで、午前中のグループからはずしてもらっていた。午前中は、軽音部のライブがあるのだ。私は軽音部に所属していて、明日に文化祭でのライブを控えている。憂鬱だった。西日が差しこみ、飾り付けられた教室はオレンジ色に染まっている。準備に使った道具も片づけられ、文化祭本番がいよいよ明日に迫っていることを思い知らされる。ふと後ろから、私の名前が呼ばれた。

「薫~、何深刻そうな顔してるの」

「あ、野田ちゃん。だ、だって明日だよ、明日…」

「薫の演奏、ちゃんと見に行くからね。ローテーション午前中に組まれちゃったけど、そんなの知るもんか。こっそり抜け出してやる!あぁ、楽しみだ」

彼女は激しい身振り手振りとともにそう言い切った。

私は黙ってしまった。

「何をそんなに嫌がってるのさ。綺麗な歌声してんだからもっと自信を持ちなさい」

野田ちゃんが励ましてくれる。野田ちゃんは私がこのクラスで唯一友達と呼べる存在だ。私が軽音部だとクラスで知っている人は、ほぼいないのではないか。実際、文化祭実行委員の子に、ローテーションを午後にしてほしいと頼んだ時も、私が軽音部だということに驚いていた。

ローテーションのグループ分けが終わったらしく、委員の人がクラスに解散を告げた。すぐに帰る人もいれば、教室でまだしゃべっている人達もいる。私と野田ちゃんは話しながら一緒に帰ることにした。

「ねぇ、そういえば。薫ってなんでギター始めたの?」

「私?」

唐突に聞かれて、少し驚いた。

言おうか言わまいか迷ったけど、野田ちゃんに言い寄られて根負けした。

「中学校の時、憧れてたアーティストがいて…」

「それって千歳のこと?」

野田ちゃんのぱちくりとした目が私を覗き込んでる。

「そう…だね」

「やっぱり!彼女かっこいいよね。」

千歳はプロの女性シンガーソングライターだった。彼女は迫力と繊細さを兼ね備えた歌声を持っている。アコースティックギターとその歌声が織りなす音色は人々を感動させるそれを持っていた。また歌詞には人々を動かすだけの説得力がある。彼女の堂々たる立ち振る舞いをみれば誰だって振り向く。そんな千歳に私は憧れたのだった。そんな私の演奏スタイルももちろんアコースティックギターでの弾き語りだった。

「じゃあ、前演奏してくれた曲って?」

「うん、千歳の『change』って曲」

明日文化祭で演奏するのもこの「change」の予定だった。そうだ、そうだった。明日、私は体育館の舞台で、弾き語るのだ。そのことを思い出し私はうつむく。そんな私を見て野田ちゃんが不思議そうな顔をする。

「私に演奏してくれた時はそんなに嫌がってなかったじゃん。なんでそんなに嫌なの?」

「なんでって…。」

親しい友達や全く知らない人に歌を聞かれるのは平気なんだ。けれど、中途半端に知り合いの人にはどうしても気まずいっていうかなんというか、嫌なの。クラスに上手い具合に溶け込める野田ちゃんにはわからないことかもしれない。私はまた黙りこんでしまった。そのまま、駅に着いたので野田ちゃんと別れることになった。電車の方向が逆なのだ。

「まぁ、案ずるより産むが易しって言うし、大丈夫でしょ」

野田ちゃんは楽観的な発言を残してホームへと向かって行った。








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