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三章~地獄ヨリ来タル者-後編-~
―よく聞こえなかったんだけど、今死ねって言いました?
そんな俺の心情を酌みもせず、スケアクロウは再び跳ねながら説明する。コイツ、ジッとしてられないのか?
『僕は地獄の門番。今から君を地獄に連れて行く為に、¨黄泉渡し¨と呼ばれる門を開く。そして、この門をくぐると死人と化す。生者は地獄に行けないからね。ケケケ』
でも安心して、とスケアクロウは続ける。
『死人になっても、そのまま死ぬ訳じゃあない。向こうで¨黄泉帰り¨っていう門をくぐればこっちに帰ってこれる』
「つまり、門くぐって願い叶えてまた門をくぐるだけの簡単なお仕事ですね。なんだ、楽勝じゃねぇか」
『そう上手くはいかないよ。ケケケ』
スケアクロウは何故か嬉しそうに笑い声をあげる。つーか、説明長ぇ。
『向こうでしなければならない事がある。それは―』
ドンッ、と。
右腕に強い衝撃が走り、俺はそのまま10メートルくらい吹っ飛んだ。アスファルトの上を滑りながら、さっきまで自分が立っていたであろう場所を見る。
―そこには、大きな棍棒を持った白い巨人が、俺のことを睨みながら立っていた。