二章~地獄ヨリ来タル者-前編-~
『こんばんは、お兄さん。ケケケ』
まるで十字架に子供を貼り付けたような感じのかかしが、そこに佇んでいた。ボロボロの布切れを纏い、ボロボロの三角帽子を被っている。
「…此処は畑じゃねぇぞ」
驚きで声は掠れていたが、とりあえずツッコんでみた。
『ケケ。僕が喋るとか、突然現れたこととか、そーゆうことは聞かないのかい?面白いお兄さんだ』
誉められたのか、馬鹿にされたのか判らない台詞を言いながら、かかしはピョンピョンと跳ねて俺に近づく。
『さて、僕が来たのは他でもない。お兄さん、君には、地獄に行ってまで叶えたい願い事ってあるかい?ケケケ』
「なっ…」
先日の千鶴の声がフラッシュバックする。
(なぁ。大河には、地獄に行ってまで叶えたい願い事ってある?)
あれは、単なる噂じゃなかったのか?
「…ある、と言えば地獄に連れて行ってくれるのか?」
『連れて行くよ。願いを叶えられるかどうかは君次第だけどね。ケケケ』
耳障りな笑い声を残してかかしは俺の回りを跳ね続ける。
―俺はアイツに、秋羅に何もしてやれてない。だから、今度は俺がアイツを助ける番だ。
意を決してかかしに答える。
「連れて行ってくれ。地獄でもどこでも。俺には叶えたい願いがある」
『…そう』
それまで跳ねていたかかしは俺の目の前で跳ねるのを止め、つり上がった目で俺を見据える。
『自己紹介が遅れたね。僕は地獄の門番、磔のスケアクロウ。ではこれからお兄さんには―』
そこで一旦喋るのを止め、スケアクロウは口の端をつり上げて意地の悪い笑顔を見せた。
『―1回、死んでもらいます。ケケケ』




