プロローグ
これは、俺が夏休みに体験した、高校2年生にしてはやたらハードな物語。
事の発端は、期末テストが終わり、明日から夏休みだからどこかに行こうと親友の峰宮 秋羅、女にしては性格がアグレッシブな神楽岳 千鶴、ただの変態の高見寺 平助と俺―稲崎 大河の4人で計画を立てていた時だった。
「なぁ。大河には、地獄に行ってまで叶えたい願いってある?」
器用にペン回しをしながら、千鶴が俺に聞いてきた。
「は?何だよ、いきなり」
「いやぁ、そんな感じの噂、耳にしたからさ。『地獄に行けば、どんな願いでも必ず1つ叶う』」
「その前に地獄への行き方を教えて欲しいもんだな」
気怠そうに、向かいに座っている秋羅が呟いた。
「とりあえず、僕は服が透けて見える眼鏡を―」
「「「黙れクズ」」」
平助の願いをシャットアウトし、俺らは夏休みの計画を立てていく。
この時、俺には特別叶えたいことなんて無かった。このままでも十分楽しかったし、不自由もしてなかったから。いつまでも幸せな時が続くもんだと、勝手に信じこんでいたから。願いなんて無かった。
―その帰り道、秋羅がトラックに轢かれて死ぬまでは。