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『転生したのに転移で地球に戻っちゃった?! しかも何故43歳?! 王国の魔法革命児 〜爆鳴の鬼と呼ばれた男Ⅱ』  作者: だい


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第18話:魔王の強権と、悲しきキメラの鎮魂歌

 久保が死に際に遺したデータがネット上に放たれ、日本中が前代未聞の大パニックに陥るまでに、さほどの時間はかからなかった。


 宮内庁による非道な人体実験の証拠。隠蔽されてきた神子という異能者の存在。

 それらが白日の下に晒された結果、法と秩序は瞬く間に崩壊を始めた。

 各地で便乗して暴れ出す本物の神子たち。さらには「俺も神子を狩るぜ!」と息巻いて突撃した迷惑系の自称神子YouTuberが、配信中に本物の超常能力で文字通り『捻り潰される』凄惨な映像が拡散され、日本中が世紀末のような恐怖と熱狂の渦に飲み込まれていた。


 宮内庁正倉院事務所、第二課のオフィス。

「ひぃぃぃっ! も、申し訳ありません、すぐに対応を……!」

「課長! 今度は警視庁の上層部からです! あと、官邸からも……!」


 鳴り止まない電話。各方面からの怒声と責任追及。

 安倍と沙織の二人は、もはや発狂寸前でオフィスを走り回っていた。

 そんな修羅場の中、応接ソファで優雅にコーヒーを飲んでいた賢人は、テーブルの上にドンッ! と、とんでもない質量の『ジュラルミンケースの山』を積み上げた。


「……ま、松本さん!? なんですかこれは!」

「ああ、約束の百億円だ。お前らの裏金口座からキッチリ引き出させてもらったよ」

「そ、そんなことより今はこの国難をですね……!」

 パニックを起こす安倍に対し、賢人は冷酷な経営者の顔で告げた。

「その金を使って、新しい組織『神子神社みこじんじゃ』を立ち上げる。代表は三木さんだ。この百億を使って、日和見を決め込んでる野良の神子たちの頬を札束で引っ叩いて、全員ウチの組織に連れてこい」


 国家が燃えている最中に、機密費を使って裏の半官半民組織を立ち上げろという無茶苦茶な指示。

「む、無茶です! そもそも、第四課と繋がりがある大物野党議員が、この騒ぎを全部我々第二課のせいにして切り捨てようと騒いでいて、設立の認可なんて……!」


「へえ」

 賢人はコーヒーカップを置き、静かに尋ねた。

「その、うるさいのは誰だ?」

「野党の〇〇先生です! あの方が各所に手を回して……」

「そうか」


 賢人は、傍らに立っていたセリーナへ視線を向けた。

 ただ一瞥の目配せ。

 セリーナは優雅に微笑み、ふっとその場から姿を消した。


 一時間後。

 スッ、とオフィスに戻ってきたセリーナは、空間収納から取り出した『丸い何か』を、安倍のデスクの上にゴトリと転がした。

「ヒッ……!!?」

 安倍と沙織の悲鳴が重なる。

 デスクの上にあったのは、先ほどまでテレビで第二課を痛烈に批判していた〇〇先生の『生首』だった。切断面は炎で綺麗に焼かれ、血の一滴も垂れていない。


「おい、安倍」

 腰を抜かす安倍を冷酷に見下ろし、賢人は命じた。

「今の生首を動画に撮って、全議員に送りつけろ。『第四課と関わっていた議員はこうなる』とな」

「ひぃぃぃっ……!」


 数十分後、一斉送信された動画を見た永田町はパニックに陥った。

 当然、激怒した別の大物議員が、数人のSP(護衛の神子)を引き連れて第二課へ怒鳴り込んできた。

「貴様ら、国家への反逆だぞ!!」

 唾を飛ばして喚く大物議員。

 だが、その言葉が最後まで続くことはなかった。


 ドゴォォォォンッ!!!

 面倒くさそうに歩み出たレナが、巨大な鉄柱のメイスを無造作に振り下ろした。

 SPごと大物議員の身体が紙くずのようにひしゃげ、オフィスの床に真っ赤な染みとなって『潰れた』。


 その光景がリアルタイムで各所に伝わると、永田町と官庁街は完全に沈黙した。

「……で? まだ認可に反対する奴はいるか?」

 賢人の問いに、もはや誰も答えない。

 こうして、事態の収拾がつくまでの間、神子神社の関係者には一切干渉しないという完全な不可侵の権利が、物理的な暴力によって確立されたのだった。



 ---



 しかし、真の黒幕である『第四課』も、ただ指をくわえて見ているわけではなかった。

 歯向かう第二課と賢人たちを抹殺するため、彼らは最強の刺客を放ってきた。


 ドゴォォォォンッ!!!

 オフィスの壁が爆発と共に吹き飛び、もうもうと立ち込める粉塵の中から『それ』は現れた。

「……チッ、なんだアイツは!」

 ザラが即座に大剣を構えて前に出る。

 現れたのは、体長三メートルを超える『巨大な熊』のような異形の化物だった。

 だが、ただの獣ではない。異常に長く発達した手足。さらに肩甲骨のあたりから、不気味な二本の『副腕』が生えており、その手にはアサルトライフルとグレネードランチャーが握られていた。


 ダダダダダダダッ!!

 熊のキメラが、正確な射撃フォームで銃弾の雨を降らせる。

「舐めんじゃないよッ!」

 ザラがインナーバフを全開にして踏み込む。時速百キロを超えるザラの神速の踏み込み。しかし、熊のキメラはそれと同等の速度で反応し、長い腕を鞭のようにしならせて迎撃してきた。

(……こいつ、知能が高すぎる! アタシたちと同じ動きをしやがる!)

 ザラが驚愕する中、横から回り込んだセリーナの日本刀(鬼椿)が、キメラの副腕の一本をスパンッと斬り落とした。


 ボトッ、と床に落ちたその腕を見て、セリーナは眉をひそめた。

「……ねえ、これ」

 斬り落とされた腕。それは熊の毛皮など生えていない、色白で細い『人間の女性の腕』だった。


「ヒャハハハ! 驚いたか!」

 崩れた壁の向こうから、防護服を着た四課の指揮官らしき男たちが歩いてきた。

「そいつは最高の傑作でね! 熊の脳にあの女の脳細胞を埋め込み、培養した腕を繋いだのさ! 兄貴のところに送ってやるよ!」

 下劣に嘲笑う男。


 その瞬間、レナとセリーナの理性が完全に吹き飛んだ。


「テメェら……ッ!!」

 レナが、巨大な鉄柱のメイスを構えて男たちに飛び込んだ。

 グシャァッ! メチャァッ!!

 悲鳴を上げる間も与えず、レナは四課の男たちの胴体を跡形もなくミンチに変えていく。そこへセリーナの青白い炎が放たれ、ミンチになった肉片すらも塵一つ残さず焼き尽くした。



 地獄の業火を背に、ザラが大剣を構えてキメラに向き直った。

「ガァァァァッ!!」

 キメラが銃を乱射しながら、長い腕と爪を鞭のようにしならせ、上下同時の不可避の連撃を放ってくる。


 だが、ザラは一切怯まなかった。

 飛んでくる銃弾を大剣の腹で弾き落としながら前進。

 下からえぐり込むように放たれた爪の一撃を、胸の皮一枚という紙一重の距離で見切り、躱す。そして、横から迫るもう一撃に対して、大剣の振り下ろしを完璧なタイミングで合わせ、キメラの腕ごと両断した。


 今までのザラなら、見切りや受け流しより、力での反撃しか出来なかったが、怒りがザラの潜在能力を引き出し、遂にノキア時代を超える剣の極意を掴むことが出来た。


「ル、ルル……」

 残った片腕で必死に爪を振り下ろしてくるキメラ。ザラはその一撃をコマのように回転しながら躱し、キメラの懐に深く潜り込んだ。


「……眠んなよ」

「赤ん坊は取り戻してやる。兄貴と待ってな」


 祈りのような声と共に、ザラの大剣が下から上へ、そして上から下へと閃いた。

 ズバァァァァンッ!!

 悲しきキメラの巨体は、頭の頂点から地面に向かって、完璧に縦一文字に斬り下ろされ、二つに分かれて崩れ落ちた。



 ---



 戦闘は終わった。

 だが、俺の仕事は終わっていない。


 俺は、レナたちにミンチにされず、わざと生かしておいた一番偉そうな四課の指揮官の髪を掴み、引きずり起こした。

「ひっ……な、なんだお前は……ッ! 私は四課の……!」

「うるせえな」


 俺は男の指先を微かに触っていく。

 不可視の風の刃が、男の皮膚を紙のように薄く、何重にも削ぎ落とす。いわゆる『フェザースティック』の状態だ。

「ぎゃあああああっ!?」

 悲鳴を上げる男を放り投げ、俺は横で震えている沙織に手を差し出した。

「三木さん、悪いけどライター貸して」

「えっ、あ、はい……」

 沙織が震える手でポケットから取り出したのは、高級ブランドの『ダンヒル』だった。喫煙者の彼女が愛用している一品だ。

「へえ、良いライターだな」


 俺はカシャッと小気味良い音を立てて火をつけると、薄く削ぎ落とされて剥き出しになった男の筋肉と神経を、そのライターの火でジリジリと炙り始めた。

「ぎゃあああああああああああああっ!!? 痛い! 痛いぃぃぃっ!!」

 肉が焦げる生々しい音が響く。


 俺は、横で青ざめている安倍に顎でしゃくった。

「おい、安倍。お前の使ってる式神、ちょっと出せよ」

「ひゃ、はいぃぃっ!?」

「お、焼けてきたぞ? 式に食わせてやれよ」


 安倍が泣きながら印を結ぶと、空間が歪み、巨大な一つ目の鬼が這い出てきた。

 俺は、ダンヒルでこんがりと炙り焼きにされた男の指先を鬼の口の前に差し出す。

 鬼はガタガタと震えながら、涙目で男の指をボリボリと咀嚼した。

「あ、あああ……っ、やめろ、食われる、食われるぅぅっ!!」

 生きたまま鬼に食われる恐怖と、全身を炙られる激痛。男は完全に発狂し、白目を剥いて叫んだ。

「言う! 言うから許してくれ!! ラボは、東京の地下深くにある……座標は……!!」


 男がすべてを吐き出したのを確認し、俺はダンヒルの蓋をカシャッと閉じた。

「三木さん。良いライターだな! また貸してな!」

 俺が無邪気に笑ってライターを返すと、沙織は引きつった顔で何度も頷いた。


 場所は割れた。

 俺は、嫁たちを振り返り、笑みを深めた。

「さっさと行って『消すか』」

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