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情報の対価・2

 許攸を無理矢理に連れ出し酒盛りしていた郭図。


 もちろん、その後に待ち惚けを喰らっていた郭嘉にカミナリを落とされたのは言うまでもない。


 まあ、洛陽内部に許攸が独自の情報網を構築しており、所在の分からなくなっている鍾繇の行方を追ってくれる事を知り直ぐに溜飲を下げたのだが。



「朱の方ですか。待っている間、女官や文官の方々に色々と話を聞いていたのですが、恐らくその方は朱霊どのでしょう。字は文博。袁紹どのに協力している冀州の人物の中でも中心的な位置にあると思われる方ですね」


「『朱霊』ねぇ?都では聞かなかった名だな。顔と文の両名は都でもそれなりに名を聞いてたから、朱の御仁は都には顔を出してなかったって事か」


「恐らくは。田家や沮家と比べると小さな家系ですが、民衆や下級役人、下位武官らからの信任は厚い人物の様です。

 その周囲には路招、張郃、高覧がいるとの事です。


 反面、それなりの地位にいる者からは疎まれているみたいですね。

『朱』と言う姓から元々揚州辺りのは南方から移住した一族なのかもしれません。

 袁紹どのに協力的なのは朱家が他所から流れて来た一族であるからと言う可能性はあります」


「なるほどなぁ。同じ余所者であれば話はしやすいだろうけど、朱の御仁に近付けば冀州閥の大半に睨まれる事になるか……」



 郭図が許攸を連れ回している間、郭嘉は郭嘉で情報収集に励んでいた様である。


 郭図の付き添い人と言う立場でしかない郭嘉だが、この短期間で冀州の内部事情に切り込んでいるのだからやはり相当な切れ者である事が窺える。



「それは今更なのでは?袁紹どのに謁見した際に相当やらかしたみたいですし。許攸どのを連れ出した時点で手遅れだと思いますが」


「あ、あはは……。ホントそれな。もう開き直って直接会いに行った方が早いか」



 未だ袁紹に反抗的な冀州豪族との関係を危惧する郭図であったが、郭嘉の指摘に苦笑いを浮かべる。


 袁紹と郭図が対面した際の事は既に郭嘉の耳にも入っていたらしい。


 仕える相手(袁紹)をそっちのけで許攸と話し込み、更には周囲を威圧するほどの気勢を放ってみたりとやらかした自覚はあった。


 許攸との会話、袁紹の言葉。


 どれを取っても今の郭図が袁紹に否定的な冀州豪族らと良い関係を結ぶ切っ掛けとはならないだろう。


 むしろ既に警戒する対象になってしまっている可能性の方が高い。



「菓子折りでも持って行けばなんとかなるか」


「そんな物が無くとも先方は従兄どのの事を歓迎するでしょうけどね」


「かなぁ?嘉はどうする?ついてくるか?」



 朱家を訪ねる事にした郭図が郭嘉を誘うが、



「いえ、私は知り合いが出来たのでその方たちと少し話をしてみようかと思っています」



 郭嘉はその誘いを断った。



「へぇ?袁紹殿の配下か?」


「話を聞いた限りでは客分だと言う事です。程立と趙雲と言う人物なのですが、従兄どのは聞いた事はおありで?」


「いや、聞いたことないな。嘉の目に留まるって事はそれなり以上の人物なんだろうとは思うけど」


「機会があれば紹介しますよ。尤も、お二人は冀州に留まるつもりが無さそうですが……」


「そっか。民心は掴んでるが、袁家の内部はゴタゴタしてるからなぁ……。派閥争いに巻き込まれるのが嫌なら冀州から離れるよなー」


「ええ。程昱どのは文官志望で、趙雲どのは武官志望との事でしたが、滞在している間に何度も言い寄られたらしいです。……主に袁紹どのを快く思っていない者たちに、ですが」


「うへぇ……、そりゃあ嫌になるわな」


「ですね。実際、私も何度か声を掛けられましたし」



 面倒だと肩を竦める郭図の姿に郭嘉が小さく笑った。


 荀攸や鍾繇を救う為にも郭図は袁紹の冀州統治を磐石なものとしなければならない。


 それはこの先、多くの困難に郭図が頭を悩ませる事になると言う事でもある。


 尤も、郭嘉はそんな状況に郭図が陥ると分かっていても笑う。


 笑えるだけの余裕が郭嘉にはあった。


『郭図』と言う人物を深く知るからこその余裕だ。


 きっと、なんだかんだとブツクサ言いながらもなんとかしてしまうんだろうと確信していた。


 冀州を統べる袁家に人は多い。


 しかし、郭嘉の基準からすればその殆どが小物に過ぎなかった。


 あの程度の手合いであれば郭図と言う存在の障害にはなり得ない。


 そう判断したからこそ、郭嘉は笑っていられた。


 当の郭図からすれば面倒臭くて仕方ないだろうが。



「では、私は約束があるのでもう行きます」


「ああ。わかった。気を付けて行って来いよ。それと程と趙の御仁にも宜しくな」


「分かりました。それでは」



 新しく出来た知人たちに会いに行く為、郭嘉が去って行く。


 その後ろ姿を見送りながら郭図は小さくゴチた。



「そういや、朱の御仁の家ってドコだ……」



 行き当たりばったり過ぎて朱家を訪ねるどころでは無い郭図であった。


 まあ、この男らしいと言えばらしいのだが。


 郭図は無事、朱霊に会えるのだろうか?


 この時の郭図はまだ知らなかった。


 朱霊を訪ねる前に、自身にとっての不倶戴天の敵が現れる事を。


 郭図の敵となる人物。




 その名は『審配』。字を『正南』と言う。


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