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episode0033

 学園生活 第十話


 ナレンスの言葉を受け俺達は息を殺し身を潜めた。

 現在はナレンスガ探知結界を張っている状態で犯人の動きを完璧に把握できてる状況にある。

 今ここにいる三人は冒険者としての知識を有しているということもありハンドサインでやり取りが可能だ。

 冒険者四級で年長の範囲結界で犯人の動きを把握できているナレンスをリーダーに俺達は出る機会を伺っていた。

 この水場からでて、クレアの居る部屋までは多少時間がかかる。出るタイミングを間違えると犯人に逃げられる可能性が高い。

 なので俺達はナレンスの指示が出るのを待ち続けた。

「犯人が動きを止めた。おそらく今あさっている最中だと思う。行くなら今がチャンスだと思うよ」

 小声でナレンスが言ったので、なるべく物音を立てずに、扉を開きクレアのいる部屋へと向かう。

 扉を出た後は声は一切出さずハンドサインだけのやり取りなる。

 何度も立ち止まり、ナレンスが内部の気配をさぐっているようだ。

 そして出るゴーサイン。

 俺達は勢い良く部屋へと侵入した。

 部屋には明かりなどなかったが空いた窓から差し込む月明かりで薄っすらとだが明るさがある。

 俺はこの部屋に入るまでのやり取りで、敵の逃げ道をまず塞ぐため部屋に入ってすぐ窓まで走る。

 犯人は物音に気づいて窓に向けて走ったようだが、そこに立ちふさがるのは敵の動きを把握できるナレンスだった。

 この作戦はうまく言ったようで犯人の突進をくらい少しなレンスが唸りを上げたがなんとか俺は犯人が逃げ出す前に窓を占めることに成功する。

 ザムドはもう一つの逃げ道である扉を死守している。

 これで完璧に逃げ道は塞いだはずだ。

 あとは逃げ道を塞がれた犯人が暴れないように取り押さえるのみである。

 俺は無詠唱でライトの魔術を発動させる。この際だ範囲はこの部屋全体を明るくさせるくらいでいいだろう。

 俺の思い描いたとおりのライトが部屋にあかりを灯す。

 そこで俺は見てしまったのだ。

 クレアがこの騒ぎで眠たそうな目をこすりながら立ち上がる瞬間を。

 昼間に聞いていたとおり、一糸まとわぬ姿で立ち上がるその瞬間を。

 透き通るような肌色が俺の目に焼き付く。

 犯人を取り押さえないといけない状況の中、だめだと自分自身に言い聞かせても見てしまうのは仕方のないことだと思う。いや俺は大人だ、こんな子供の裸を見てもなんとも思わない。だが見てしまう。これは何か呪いを受けたのだろうか?

 いや違う、クレアが年齢の割には大人っぽいのが行けないのだ。そうに違いない。

 やがて、意識を完全に覚醒させるクレア。

 俺と目があった瞬間それは起きた。

「きゃぁぁぁぁぁっ」

 クレアの悲鳴により俺もなんとか気を取り直すことが出来た。ナレンスは犯人と対峙していることにより残念なことにクレアの一糸まとわぬ裸体を拝むことはできなかったようだが、俺と、きっとザムドはクレアの裸体を脳裏に焼き付けたことだろう。

 クレアの悲鳴を聞きつけたのか、アンともう一人クレアの使用人モヘヤへと駆けつける。

「クレア様大丈夫でございますか?」

「み、みら、みら、みられた……」

 クレアはなんか、うん、今はそっとしておくほうがいいだろう。

 俺はナレンスの横に立ち犯人に視線を向ける。

 こいつが犯…… 獣?

 獣というのも何か違う気がするがおそらくは何かの獣、もしくは魔物なのだろう。

 そこには毛むくじゃらの丸い生き物が転がっていた。

 大きさはバスケットボール程度といえばいいだろうか?

 おそらくナレンスが逃げ道に立ちふさがった際にぶつかり気絶してしまったのだろう。この毛むくじゃらの下にはこれまたおそらくクレアの下着であろう白い布が散らばっていた。

 と言うかこいつどうやって持っていくつもりだったのか……


 犯人確保は、特に問題ないようで、恐る恐るではあるがナレンスがこの謎な物体に縄をかけている。毛むくじゃらな謎物体はその殆どが体毛のようで縄をけるとものすごく食い込んでいた。

 猫をお風呂に淹れたときのことを思い出してしまった。


 こうしてこの騒ぎの現況となったと思われる謎な毛むくじゃらの確保は完了したのだが、問題はここからが本番だったのだ。


 まず現況を報告しようと思う。

 俺とザムドは冷たい床の上に正座させられている。

 何故かって? そんなこと言わせんなよ。クレアの裸を見てしまったからさ。

 クレアは部屋の隅で毛布を頭から被り何かをぶつくさつぶやいている。

 俺らを正座させているのはクレアの使用人であるルダと言う女性である。

 ルダはぱっと見た感じは二十歳に言ってないような感じ。身長は割と高くアンより頭一つ分ほど高い高身長といって良い身長だった。そのせいで威圧感が半端ない。

 そのルダは右手で長めの髪を払い俺とザムドに詰問口調で問うてきた。

「クレアお嬢様のあられもない姿を見たという事、これがどういうことかわかりますか?」

 前髪が払われたため見えたルダの瞳は俺達を蔑むような目だ。

 この部屋にお邪魔する時に会ったときは長めの髪をポニーテールにしていたが今はねていたこともあるのか髪は降ろされていた。

 アンが俺達を見る目もなんか冷たく感じてしまうのは気のせいだろうか?

 だが待ってほしい。俺達がいるという状況で更には犯人を捉えるために部屋に入ってくることを予想できたはずなのに裸で居るクレアが悪いとお漏れは思うんだ。

 ザムドも同じことを思ったようで、俺より勇気があったのだろうそのことをルダに向かって言った。

「いや、待ってほしい。俺達は今回の騒ぎである犯人、底に転がっている毛むくじゃらを捉えるための作戦でこの部屋に来ていた。そんな中で裸で寝ているクレア殿が悪いと思うのだが……」

「そんなことは関係ありません。あなた達がクレアお嬢様の裸を見てしまったことが問題なのです」

「か、関係ないって、それはおかしいであろう」

「関係ないものは関係ありません。この責任どう取るおつもりですか?」

 責任を取るも何も、同しようもないと思う。

 俺達がいることを知っていながら裸で居るクレアも悪いと思うし、まあそれをまじまじと見て脳裏に焼き付けてしまった俺達も悪いとは思うが。これは横暴だと叫びたい。

 そんなことを考えているとルダはいいことを思いついたとでも言うようにニヤリと凶悪な笑みを浮かべ俺たちに選択肢を与えてきたのだ。

「見てしまったものを忘れろと言ってもそれは不可能ですよね。ならばこうしましょう。お二人には死んでもらいます。それが嫌ならばお嬢様の婚約者になることですね。でもそうなってしまうとお二人と婚約することになってしまいますね。これは世間体が悪いのでやはり片方には死んでもらう他ないでしょうか?」

 なんという無条理な選択肢なのだろうか? 死かクレアとの結婚の二択しか用意されていないのだ。ほかの平和的解決方法はないのであろうか?

 流石にこの発言にはアンも驚いたようで、やっとアンが物申してくれた。

「ルダ流石にそれは横暴なのでは?」

「アン、貴女の主が相手だとしてもこれは引けないのです……」

 いつの間にか呼び捨てで呼び合う中になっていたようだ。

 少し演技の入ったやり取りを始めるルダ。

「スルグレイント家では裸を見せた者には今のような二択が与えられます。私は使用人のみですからスルグレイントの掟に対して何かを言うことは出来ません。なのでこれが最良の方法なのですよ」

 切なそうに言っはいるが、なんかこの人絶対楽しんでいるだろうという感じで変な一人芝居をしばらく続けた。

 さすがのアンもやや疲れた表情でルダの一人芝居を聞いてル状況だ。

 そんな時だった。気を取り直した毛布をすっぽりとかぶったクレアが立ち上がりこの最悪な状況を打開する提案をしてくれた。

「待つのですルダ。一級貴族であるエレク様をそのようにしてしまったら家がなんと言われるかわかりません。下手をすればフォールダイン家と争うことになりますよ。フォールダイン家はエレク様のように優秀な方が育つ家です。スルグレイント家もそうなるとどうなるかわかったものではありません。スルグレイントの掟を破るのは心苦しくはありますが、今回は私の失態も大きいことは確かです。ここは平和的にお互いこの事については忘れる。ここに居るもの皆がそれを秘密にすれば外に漏れ出ることはないはずです」

「エレク様のことはわかりました。ですがプーアルーア家やそこの庶民程度でしたら何も問題はお汚いと思われすよ?」

「ルダ、私は言いましたよ。今日のことは忘れることにしようと。それにザムドもナレンスも私の大切な仲間なのですよ」

「かしこまりました。お嬢様がそうおっしゃるなら私はもう何も言うことはございません」

「解ってくれればいいのです。ルダくれぐれもこのことがお父様の耳に入らないよう気をつけてくださいね。貴女は口が軽いですから特に気をつけるように」

「かしこまりました」

 なんとか納得してくれたルダさん。

 最後に俺たち二人と蚊帳の外に置かれていたナレンスを順番に見た後、舌打ちをして「命拾いしましたね」と小声でつぶやいてアンを連れて部屋を出ていってしまった。

 思うに、これまでクレアの評判を下げてきたのはあのルダという使用人なのではないか。そんなことを少し考えてしまったのだった。

 その後はクレアの厚意もありそのままクレアの部屋で休ませてもらうこととなった。

 もちろん今度はちゃんと服を着ている。

 そして話に上がるのはやはりと言うかなんというか毛むくじゃらのことだった。

「こ、この、可愛らしい生き物は一体何なのでしょう?」

 なんというかいつもと少し様子が違うのはやはり裸を見られてしまったからなのだろうか?

 いや違う、クレアはこの毛むくじゃらをきっとほんとうに可愛いと思っているのだ。

 その証拠に表情が恍惚としている。

「可愛いってこの毛むくじゃらですか?」

 そんなクレアに物申したのは恐れを知らないナレンスであった。

「可愛いじゃありませんか。私この子がほしいですわ!! たしかこの学院使い魔を許されていましたわよね?」

「許可が必要だけど許されていますね。でもこいつを使い魔にするおつもりですか?」

「何か問題があるかしら?」

「一応部屋荒らし、下着泥棒の現況ですよ? その、よろしいのですか?」

「そうね、そのあたりは女子棟の皆に聞いてからの方がいいでしょうね。ですが皆に認めてもらった上でなら使い魔にしても大丈夫ということですよね」

「まあ、僕としてはクレアさんがそれでいいと言うなら何も言うことはないですけど」

「エレク様とザムドはそれでよろしくて?」

「ん? 俺はかまわないよ」

「俺もそれで特に問題はない……」

 ザムドはまだクレアと視線を合わせられないようで横を向きつつ返事をしていた。

 まあ俺もたまにクレアと視線があうとどうしていいのかわからなくなってしまうが…… しかしそれはクレアも同じようでそうなった時しばしの沈黙がその場を支配してしまうことになる。

 まあいつもと違うクレアなので少し可愛いと思ってしまうのはしょうが無いことだろう。


 毛むくじゃらは意識を取り戻した後、特に暴れる様子もなかったので縄をほどいてみた。

 これだけの人数、そして逃げ道のない状況なので暴れたとしても取り押さえることも可能ということもあったが、解いた後も特に暴れる様子は見せなかった。

 触りたそうにしているクレアに毛むくじゃらをおもむろにつかみ手渡してみる。

 慌てて取り落としそうになるもなんとかキャッチできたクレアは「モフモフ♪」とご満悦のようだ。

 それにしてもこの毛むくじゃらは一体何で女性の下着を集めていたのだろうか?

 謎である。

 毛むくじゃらの事などを話しつつ、雑談に花を咲かせているも時間は深夜である。やがてずっと黙り込んでいたザムドが寝落ち、ナレンス、毛むくじゃらにじゃれついていたクレアと順番に寝落ちていった。

 俺は日本にいた頃から徹夜に慣れていたとは言えこっちの世界ではまだ子供と言ってもいい年齢。静かになった部屋に一人だけ取り残されれば眠気というのはすぐに襲ってくる。

 そしていつの間にか夢の中へと旅立っていた。


 顔に何かフサフサなものが覆いかぶさっている気がする。そんなことを思って目を覚ました。

 フサフサの犯人は今回の事件の元凶である毛むくじゃらだった。まあそれ以外に考えられないのだが。

窓からは朝日が差し込み部屋も明るく照らされている。

眠い目をこすりながらあたりを見回すと他の者達は寝ているようだった。

女子の部屋で夜を明かしてしまったわけだが、これは大丈夫なのだろうか? まあ扉を二枚挟んですぐに折れの使用人のアン、クレアの使用人であるルダが居るので間違いが起こることなどないが……

一番近くにいたナレンスを揺すって起こすとその音に気づいたのかザムドも目を覚ます。

一応クレアに気を使い小声で喋っていると、クレアも目を覚ました。

寝起きはあまり良いようではなくボーっとした様子で左右を見回している。

やがて覚醒したのか、俺達を認識したクレアは「おはようございます」と微笑んだ。

少し寝癖でかみがハネているがその笑顔はとても愛らしいものだった。

ザムドはポカーンと見惚れてしまっている。

俺は人が恋に落ちる瞬間というのを今はっきりと見てしまった気がする。

しばらくして鳴るドアのノック音。それにクレアが答えて俺達は解散となった。


これで休日の事件終了です。

思った以上に長くなってしまいました。

本当はもっとぱぱっと終わるはずだったんですけど。


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