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episode0024

 学園生活 第一話


 入学試験を難なく合格した俺は今王立魔術学院の講堂、日本の学校で言う体育館のようなところに来ている。入学試験である魔術の試験で合格を貰った者達が今日ここに集まっていると思う。昨日の伝言鳥に気が付かなかったもの以外は……

 メルも無事に合格できたようで、今俺の隣にいる。

 メルの所にも夜合格通知が届いたらしい。鳥ではなかったそうだ。何はともあれちゃんと今日これて良かった。

 シェリルとはまだ顔を合わせていないが、おそらくあの試験内容であるなら落ちているという事は無いと思うのでそのうち顔を合わすだろう。

 ざわめくこの会場にはおおよそ三百人ほどの子供達、中には結構年上の人もいるようだが多いのは子供達である。一応十二歳以上が一つの入学条件であるのでそれ以上上は何歳でも問題はないようだ。これだけの人数がいるとなると全員がちゃんと気づいたって事なのかな? まあどうでもいいか。

 その後、しばらくメルと雑談をしつつ過ごしていると、会場に声が響き渡った。

「この場に集まった諸君、まず初めに合格おめでとうと言っておこう。まあ大した試験ではないので受けた者の大半は合格しているのだけどね」

 突然響く声に今までざわついていた会場は急にしんと静まり返った。

「しかし、この学院は入学の門は広く開いているが、卒業の門はかなり狭いものとなっている事は、ここにいる諸君は聞き及んでいる事だろう。そして、今日集まってもらったのは言うまでもなく諸君のこれからに関する事だ」

 誰が大声で話しているのか解らないが、話に間が出来ると少し辺りがざわつく。

「静粛に!! これから諸君らは案内の者に従って移動をしてもらう。そこでは諸君の実力をはかるための試験が行われ、その結果を見て今後の諸君のクラス分けが行われるので本気で挑むように。なに、安心したまえ、この実力試験で退学になるなどは無いからね。それでは諸君がんばってくれたまえ」

 話が終わると、会場が今までにない程にざわめきだす。

 隣にいるメルも試験と聞いて何だかやるせない表情をしているきがする。いつもは少し眠そうな表情なのに今は何と言うか魂が抜けかかっているとでもいう評な表情だ。

 そんなメルを慰めていると、入り口の方で誰かの受験番号と名前が次々と呼ばれだす。

 ちゃんと数えてはいなかったが凡そ二十人位が呼ばれただろうか?

 受験番号が順番ではなかったところが気になるところだ? まさかくじで順番を決めたとかではないと思いたいところだ。

 二十人くらいが呼ばれ終わった後はまた少し時間を置く事となった。

 その間もメルを慰めてみたもののその効果は表れる事がなかった。

 やがてまた入口の方で受験番号と名前が呼ばれだす。

 その中にメルの名前が入っていた。名前を呼ばれたメルはビクンとして死にそうな顔をしながら俺に「いってきます……」と告げ小さい背中をさらに縮こまらせて歩いて行った。

 今回も二十人位呼ばれたようだが俺の名を呼ばれる事は無かった。

 最初に出て行った者達も戻ってきている様子は見受けられない事から、まだ実力試験というものが続いているのか、その場で解散となっているのかというところだろう。

 その後も同じように名前を呼ばれては二十人位がこの場から消えていくというのが続く。

 途中で聞き覚えのある名前が呼ばれた時には少し安心したりした。

 ちゃんとシェリルも受かっていたのだ。一安心である。


―――


 あれから随分と時間がたった気がする。

 今この会場に残ってるのは数えていないが凡そ二十人くらいだろう。

 数えてもいいのだが別に数える必要もないので数えていない。

 そして、今までと同じように入り口の方から声が上がり名前が呼ばれだす。


 今回も俺呼ばれなかった。

 今この場に残っているのはとうとう三人だけになってしまった。

 人がたくさん集まっていた最初とは違い、広い会場に三人だけ残されると少しさび差を感じてしまう。そんな中残っている者の一人が声を掛けてきた。

 それはこの世界に来てから初めて見る髪の色、緑色だ。その緑色の髪は肩甲骨程の長さで特に癖などは無くまっすぐでつややかだ。それをハーフアップにまとめている、ぱっと見だけで言うと少し弱気な感じもしないでもない女子だった。

 身長は俺と同じくらいか少し高いくらいといったところで、服装はおそらく貴族なのだろう、身なりの良い恰好と言えた。

「あのぅ、ひょっとして私達合格してないとかってないですよね?」

「はははっ、そんな訳ないじゃないか、この僕が合格していないなんてことはありえないのだから」

 それに返事をしたのは燃えるような赤髪のこれまた俺と同じような身長の少年だった。

「それにこのルードリッヒ・フラウレインス・メイフォードランが受からずして他の者が受かるという道理はないからね」

 自己紹介をしないでも勝手に名乗ってくれたようだ。

 しかし俺は別に話しに混ざる気もないので腕を組みつつ目を閉じ話を聞いていた。

 だがそんな俺に今勝手に名乗ったルードリッヒという少年が声を掛けてくる。

「君もそう思うだろう?」

「…… いや、そんなこと聞かれても解らないとしか、俺君のこと知らないし」

「ん? 俺? 駄目だよ女の子がそんな言い方をしちゃ」

 こいつもか、こいつも俺を女子と間違えるのか……

「あのさ、俺男だから……」

「「えっ?」」

 緑髪の少女もだった。ここに残った俺以外の二人はどうやら俺を女子と思っていたらしい。

 結構ある事なので流石にもう慣れてはいるが、十二歳になっても間違われるのは何だか釈然としないものがある。

「男だから……」

「そ、そうだったのか、それは失礼した」

「ごめんなさい、私もてっきり女の子かと……」

「いや、もう何度も言われてる事だから慣れてるよ」

「それにしても僕たちは何故呼ばれないのだろうね?」

「さあ? そのうち説明されるんじゃないの? ルードリッヒだっけ? 自信あるんだろ?」

「それは勿論さ、なんせ僕はこの歳で上級魔術を扱えるんだからね。そんな僕が合格できないなら他の者達の大半が合格できないという事になってしまうよ」

 へぇ、このルードリッヒってのは上級魔術を使えるのか…… という事は俺やルシオと同レベルって事だよな。

「あのぅ…… 私も上級術は修めていますよ」

 緑髪の少女も上級魔術を使えるようだ。どうやらここに残ってる俺を含めた三人は上級魔術を使えるものという事が解った。けどだからと言って呼ばれない理由が解ったわけではない。

 そんな事を思っていると

「あっ、私まだ名乗っていませんでしたね。私はタチアナシスタ・エルフランテと申します」

「エルフランテといえば、キュールヴァリスの魔女が有名なところだね、君もきいたことがあるだろう? 名前から察するに君も領主に連なる家系の者の様だね」

「はい、父がエルフランテ領の領主になります」

「そうなのか、それじゃあひょっとするとここにいるのは領主に連なる家系の者が残っているという事なのかな? 君はどうなんだい?」

「俺? 俺はエレクレール・フォールダイン、まあ予想の通り父親が領主だよ」

「なるほど、やっぱりね!! でもだからってなんで僕たちは残されているんだろうね?」

「「さぁ」」

 どうやらここに残されている物は上級魔術を扱えるうえ、領主家の者という事らしい。

 これはひょっとすると資金援助とかそういう話になってくるのか? そんなこと言われたとしても一銭も払う事できないんだけどなぁ……

 その後も暫く雑談は続いた。


 やがてと入り口の扉が開き、三人してやっとかと入り口に視線を送ると、こちらに向かいゆっくりと歩いてくる者がいた。

 それは不思議な感じをまとった、ショートカットで黒髪の少し幼さを残しているが少女とは言えないそんな人物、ぱっと見だけでいえば何だか懐かしい感じがする顔の作り、いわゆる日本人顔の女性だった。この世界の人間は系統で言えばイタリア系とか、そっち系の顔の作りが多い世界なので珍しいともいえる。まあ俺が知らないだけでこの世界の何処かには日本人とかみたいなアジア系の住む地域があるのかもしれないが……

 やがてその女性が俺達の間で立ち止まると、ゆっくりと俺達を見た後口を開いた。

「待たせてしまったね、私は学院長のルキアシスだ。さて早速だが君達三人には実力試験をやってもらう」

 学院長のルキアシスと名乗る女性が言い終わった直後ルードリッヒがもの申した。

「失礼ですが学院長、なぜ僕たちは最後だったのですか?」

「ん? 特に理由はないが、そうだなしいて言うなら私が直接見たかったってだけだ。最後になってしまったのはあれだ、ちょっと今日中に処理しないといけない書類が山積みだったからだな」

 この学院長は悪びれる様子もなく言い切った。ただ忙しかったから俺達が最後になったと。

「他の人にこの試験をまかせることは?」

「今言っただろう? 私が直接見たかったって」

 だめだ、この人にはきっと何を言っても通じないだろう、これは早々に諦めた方がいい相手だ。俺はそう思いこの学院長を追求するのを諦めた。

 しかし諦めきれない者もいた。ルードリッヒである。

「そんな事で僕たちをまたせたのですか? 彼女なんて合格が間違っていたんじゃないかって不安にしていたのですよ? そこの彼だって」

 ん? 俺不安に軟化してなかったけど勝手に仲間に入れられている気がする。

「彼って誰だ? ここにいるのは君と女子がふたりだよな?」

「学院長彼は男ですよ、僕も驚きましたが……」

「はっはっは、お前冗談がうまいな、私はそんな事では騙されないぞ」

 何だろう? 今日だけで三回も女子と間違われる。なんか無性に腹が立ってきたのは気のせいじゃないと思う。

「俺は男ですよ!!」

「はっ、お前までそうやって私をだまそうとするなんて、そういうなら証拠を見せてみろ」

「証拠ってなんだよ!!」

「お前が男だっていうなら脱げばいいだろ! そうしたら否応なしに男とわかるじゃないか、脱げ!!」

「そんな事できるかっ」

「いいから黙って脱げ」

 そう言った学院長は俺に高速で迫る。

 気づいた時には俺の後ろに回り込まれていた。

 早すぎる、最初の一瞬以外、眼で追う事すらできなかった。

 そして気づいた時には俺は下着ごとズボンを下ろされていた。ちゃんとベルトもしていたのにもかかわらずだ。

 そして運悪く俺の目の前にいたのはタチアナシスタであった。

 下着ごとズボンを下ろされ、すっぽんぽんになってしまった俺の下半身を見てしまったタチアナシスタは一瞬で顔をゆでだこのように赤くして悲鳴を上げる。

 そして会場に悲鳴と同時にバチンっという音が響き渡った。


―――


 今日は何てついてない日なんだろう……

 俺は目の前で泣きながら何度も何度も謝るタチアナシスタと「まあその、すまん」という学院長を見ながら大きなため息をつく。

 俺が悪いわけではないのに、少女から平手打ちを貰い、年齢の分からんかなりムカつく学院長には剥かれ踏んだり蹴ったりである。

 だが一番解せないのはルードリッヒである。

 何故ルードリッヒが顔を赤めるのか謎である。

 そんなこんなで気を取り直した俺達は実力試験なる者を行う事となった。

 時間はもう昼も過ぎ、もうじき夕方となるであろう時間だと思う。

「それじゃ、ちょっと余計に時間を食ってしまったが実力試験をはじめようと思う」

 いけしゃあしゃあと言い出す学院長、お前が余計な時間を取ったんだと言ってやりたい気分だ。

「そうだな試験内容は、殺し合いでもしてもらおうか」

「はぁ?」

「えっ!?」

「ふぁっ?」

「冗談だ、そこまで驚いてくれると嬉しくなるな」

「おい、学院長ふざけるのもいい加減にしろよ?」

 宇宙のように心の広い俺もさすがにこの学院長に対してはイライラを隠し通すことが出来なかった。ついつい本気で文句を言ってしまった。

「おい、男女、殺気が駄々洩れだぞ」

「あんたがふざけ過ぎるからだろっ」

「それと私は学院長だ、口の利き方には気を付けろ」

 言葉と同時に頭に衝撃が走る、まったく視認できなかったが、どうやら頭をはたかれたらしい。

 俺が頭を抱えてうずくまっていると学院長が改めて試験内容を発表した。

「実力試験はお前たちの使える最大級の魔術で私を攻撃する事だ。各自攻撃できるのは一度だけ、時間はいくらでもかけて良い、本気でこい」

 そう言い切った学院長に口を開くのはやはりルードリッヒであった。

「いくら学院長でも僕の事をなめすぎですよ、僕はこう見えても上級魔術を扱うことが出来る。本気で魔術を放ったら人一人の命なんて簡単に奪うことが出来るのです」

「口だけは達者なようだな、そんなもの試してみないと解らんだろうがっ」

「おい、ルードリッヒ、俺からやらせろ、この馬鹿学院長に目にもの見せてやる」

「おい、また頭はたかれたいのか? ……まあ今回は良いだろう、じゃあ男女お前からだ」

「怪我しても文句言うなよ?」

 どうやら俺はこいつに敬意を払うという事をしたくないようだ。

 取り合えずこいつの強さは異常だという事はあの動きを見て理解できた。おそらく俺が詠唱できる上級魔術をつかっても傷一つつける事は出来なと思う。

 詠唱できる魔術ではな……

 上級魔術を行使するので他の二人には離れてもらった。

 各自が防壁魔術を使えるので見える位置にいるのだが、この学院長には一泡吹かせたい。

 俺は人目を気にせず無詠唱で魔術を放つことにした。

「おい、レネちょっと力を貸してくれ」

『見ていたから話しは大体わかったよ。力を貸すのは良いけど多分あれには通用しないよ』

「はっ? まじで?」

『うん、あれは規格外』

「ま、まあやれるだけやってみるよ……」

「おい、準備が出来たらいつでもいいぞ、さあお前の力見せてみろ」

「後悔するなよっ!」

「後悔させられるものだったらさせてみるがいい」

 言質は取った、俺は本気であいつをぎゃふんと言わせて見せる。

 そう決心しつつ、遣う魔術をイメージする。

 威力はこの際だから俺が扱える最大級、範囲は極小範囲でいい、魔術はまあ殺してしまったら後味が悪いので水、それを凍らせる。この世界には回復魔術も存在して、最高位などになると切り落とされた腕位なら再生できるから腕位なら奪ってしまってもいいだろう…… 多分。

 なので温度だ、確か絶対零度とかいうのがマイナス二百七十三度とかだったはず、それって何でも凍る温度っていわれてるはず。それに液体窒素だかはそれ以下の温度でああれだけ凍るんだ、きっと強いに違いないはず。だがどうやってそれを再現するか。

 液体窒素の方が現実出来であろうか? 確か空気中に含まれる酸素の割合は二割程度であとは窒素のはずだし。それを集めて、原理などわからん! ここはもうこの世界の不思議パワーにかけるしかない! って事で「レネ頼んだ」

『まあ、なーんとなくだけど理解したよ、多分再現できると思う』

 レネの返事を聞いた俺は腰に差していたブロッサムパターンを左手に持ち正面で構えた。

 イメージは出来た。

 学院長の左腕を中心に極小範囲で球状に囲み捉える。見た目はもうそのままでいい。

 そして俺は魔術名を考えそれを口にする。

 多分何かの漫画かアニメで出てきた名前だろうが咄嗟に思いついたのがこれだったので仕方ない。

「アブソリュート・ゼロ」

 俺の放った魔術はイメージ通り具現化する。

 学院長の左手部分に青白い球が生まれた。

「おい、それはちょっと危なすぎるぞ」

「はっ?」

 さっきまで俺の目の前にいた学院長は俺の真横にいた。

 もちろん魔術はさっき学院長が居たところで発動してしまっている。

「それもなんだよお前、無詠唱とかありえないだろ? あれはもう魔術なんかじゃないな、別の何かだ、それにあれ私じゃなかったらきっと死んでるぞ?」

「あんただから使ったんだよ、まあ全く効果なかったようだけど……」

「まあ少しは驚いた、合格だ。って合格も何もないんだけどな、はははっ、後お前エレクレールだっけ? フィアに人前では無詠唱で魔術を使うなと言われなかったか?」

「フィア先生を知ってるのか!?」

 懐かしい名前に驚いていると、さらに驚きの情報が入ってきた。

「フィアは私の弟子だ、前に手紙を貰ったからお前の事は知っていた。無詠唱で魔術を扱えるとんでもない生徒だと書いてあったよ。おそらくここに来ることになるだろうか面倒を見てくれともな」

「そうですか……」

「なんだ? 急に態度が変わったな」

「フィア先生の師匠になる人でしたら、俺もそれなりには敬意を払わなければいけないかなと」

 まあそれだけが理由ではない、俺はこの人の凄さを完全に理解したのだ。

 今の俺では、いや今後成長しても多分この人には届かないであろう事も。

 だがしかし、ものすごく疑問もある。この人はフィア先生の師匠だといった。

 確かフィア先生が俺の家に家庭教師として着てくれたのは二十四歳の時だったはずだ。フィア先生は魔族とドワーフのハーフで見た目は子供っぽかったけどかなり年上だった。

 そんな人の師匠であるこの学院長は一体幾つなのだろう?

「すみませんが学院長っておいくつなのですか?」

「おまえな、女性に歳を聞くもんじゃないぞ、まあお前が思ってる事も何となく解るけどな。ちなみに私の種族だけ教えておいてやる。私は吸血種族だ」

「へ? 吸血種族って吸血鬼ってやつですか?」

「ん? なんだそのキュウケツキっていうのは? よくわからないが、人の生き血を吸って生きる種族だな」

「ってことは俺の事も食事に見えてるなんて事は無いですよね?」

「ああ、私は超越種だからな、血はうまいと感じるが吸わないといけない訳ではないよ」

「それなら何も問題はないですね、って俺が思っていた吸血鬼って陽の光とかに弱いという認識だったんですけど……」

「あまり好きではないが、別に弱いなんて事は無いぞ?」

「それは超越種ってのと関係があったりするんですか?」

「いや、超越種は関係ないな、血を吸わなくても生きていけるってだけだ。それと元々吸血種族は長寿だからな、私の見た目がこんななのもそのせいだ。だから年齢はきくな」

「わ、わかりました……」

「それじゃお前の試験はこれで終了する」

 そう言い、学院長は俺を残しルードリッヒとタチアナシスタの所へと向かった。

 二人は長い時間をかけ詠唱し得意とする魔術を学院長へと放つが、学院長はよけるでもなく、軽く手を振って魔術を打ち消して終わりだった。それを見た俺達がポカーンとしてしまったのは仕方のない事だろう。上級魔術を手の一振りで消し去ってしまうのだ。ありえない話である。

 結局のところ何を見たかったのかが全く分からない実力試験だった。

 結果は明日、陽が昇り切った頃ここに張り出されるので確認に来いと言い残し学院長は去っていった。

 取り残された俺達は、そろって「「「かえろうか」」」といい会場を後にした。

 学院の正門までは無言だった。まあそろいもそろって学院長に手も足も出なかったのだ、無言なのも頷けるというもの。

 門を出た俺達は、「じゃあ、また」「またあしたね」「同じクラスになれることを願っておくよ」と言い別れたのだった。


 クラス発表当日、俺はメルと待ち合わせをして会場へと向かった。

 昨日集まった会場はすでに人であふれていてクラス分けを張り出されている掲示板の見える位置に辿り着くまで結構大変だった。

 遠巻きにルードリッヒを発見したが声を掛けるのも面倒だったので結局声を掛けずにいた。

 自分の受験番号と名前を探してみる。


 ……

 …………


「あった」

 俺の受験番号と名前は二組の欄に書かれていた。一クラスは三十人前後で全部で十クラスだ。

 ルードリッヒやタチアナシスタの名前は無い。

 二人の名前を探してみると一組に書かれていた。

 あれ? なんで俺だけはぶられてるんだろ?


 そんな事を思っていると、また会場に声が響き渡る。

「各自自分のクラスを確認できたと思う。それがこれから諸君が学院を卒業するまで所属するクラスとなる。この中には途中で断念する者も居るだろう。だができるなら卒業してもらいたい。それと各クラス専用の量の準備が出来ているので、寮へ移る者は受付へ申し出るように」

 それだけを言い終わると声は聞こえなくなった。てかこの声よく聞くと学院長だ。どこで喋ってるのか分からなかったが、昨日あれだけ聞いた声なので間違える事は無いと思う。

 そういえばメルのクラスは何クラスだったんだろう?

 隣にいるメルにクラスを訪ねた。

「メルは何クラスだったの?」

「私はエレク君と同じ二組でした」

 満面の笑顔で答えるメル。同じクラスで俺も嬉しく思うのだがますますこのクラス分け側かr無くなったのだった。

 その後受付に領へと移るための申請をして学院を去った。

 その足ですぐ宿へと戻り、今日から領へ移ることを告げる。

 女将さんは「寂しくなるね」と言ってくれて俺も少し寂しく思った。

 何気に長く滞在していたからこの宿にも愛着というものがわいていたしね。


 そして荷物をまとめて学院の寮へと向かった。

 学院の寮は学院の敷地内に併設されていた。

 この王都に着て、大きい建物は王城などで見てきたが、この建物も近くで見るとかなりものだ。

 寮は学年等関係なくクラス事に用意されている様で、ニクラスの寮と安直な名前が書かれた表札のようなもので判断するだけだった。

 寮の中に入ると真ん中に受付があり、左右に上り階段があった。

 受付に今日から入寮することを告げると、この量の説明をしてくれた。


 説明によると左右で男子棟と女子棟で別れているらしい。

 原則的に異性の棟へ入るのは禁止で何らかの理由で入る際は許可証を取る必要がある。

 門限は特に定められてはいない。

 使用人は一人まで可で、使用人の場合に限り異性の入棟は可能とする。しかしその場合すべての責任は主にある物とし、何らかの問題が発生した場合には自己解決することとする。

 使い魔は申請が必要である。

 寮で夕食をとる場合は三の鐘まで。

 入浴は棟の浴場を三の鐘まで使用可能。

 遅れてやってくるアンもどうやら同じ寮で生活できるようだが、この説明を聞く限り同じ部屋になるという事だろうか?

 少しうれしいが、俺の精神が持つかどうか少しばかり不安である。


 説明を聞き終わった後、受付の人から部屋の鍵を貰い部屋へと向かった。

 俺にあてがわれた部屋は四階である。部屋と部屋の感覚は結構離れている感じで部屋は割と広くとられているのかもしれない。

 少し期待を込めて扉に鍵を差し込みまわす。

 カチャリと鍵の外れる音を聞いて扉を開いた。


 扉を開いてまず驚かされた。

 そのまま部屋になっている物だと思ったのだが、まず目に移りこんできたのは廊下だったのだ。何と言うかマンションのようである。

 あまり長くない廊下を進む。

 正面に扉が見える。廊下の左右にも右に一つ左に二つ扉がある。

 左側にある一番手前の扉を開いてみる。

 部屋だった。簡素なベッドが置いてあり。とりあえず置きましたと言わんばかりの収納箪笥と一脚のイスとテーブルが置いてあるだけの部屋である。これは使用人用の部屋って感じなのだろうか? 解らないが一通り部屋を見回してから部屋を出た。

 そして次に来るのが右側の扉だ。同じように扉を開くと、これは…… トイレと仕切られた水場であろうか? 恐らく洗濯などをする場所って事なのだろうか? この世界では入浴は一般的ではないのでもしかしたら身体を拭いたりする場所という事も考えられる。

 だが俺の場合アンと二人で生活することになる為、そういう事ならちょっと不便かも知れない。

 この部屋の事はアンが来てから聞いてみたりすることにして、残りの扉に向かう事にした。

 次に来た左側の扉を開けると、そこは簡易的なキッチンと呼べる部屋だった。

 お茶などを準備するための場所になるのだろう。それと簡単な調理位ならできそうだ。

 そしていよいよ正面の扉である。

 期待を込めてゆっくりと扉を開いた。


 うん、分かってた。最初に見た部屋を見て何となく解ってはいた。

 部屋に入ると最初に見た部屋のように簡素なベッド、それに最初の部屋よりは立派な収納、それと机に椅子。それとは別に四脚の椅子とテーブルが置いてあるだけであった。

 広さは最初の部屋が六畳程だとするとこの部屋は十畳と言ったところだろうか?

 窓から差し込む日差しで部屋は十分に明るい。

 これはカーテンなどを準備する必要がありそうだな。

 なんと言うか2Kの賃貸マンション的な造りだった。


 部屋の確認を終え荷物をとりあえずとして部屋の隅に置いておく。

 装備なども外しテーブルに無造作に置いた。

 そして椅子に腰かける。

「うん、まあ生活できないって歩ではないな。宿よりは使い勝手がよさそうだし。それにしてもすべての部屋がこの仕様だとしたら結構お金がかかってそうだよな。この学院大丈夫なのかな?」

 誰も居ないので独り言であるが今思ってる疑問を吐き出してみた。

 まあ今日はもうこの後の予定等は無いので少し周りを見て回ったりして過ごせばいい。

 その様に考え、少し休憩することにした。

少し長めですが、一番最初に書いていたものを少し手直ししての投稿になります。


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