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SS-2

洗礼式のちょっと前から洗礼式後のお話です。

所々の補足はあるかも知れませんが物語の進行上読まなくても大丈夫なようにしております。


後半は行方不明になっていたアンの下着の行方ですのでスルーしたい方は

※――――――――――

移行はスルーなさってください

 とあるメイドの混乱 アン其の二


 私がこのフォールダイン家に着てそろそろ三年過ぎた頃でしょうか?

 とても働きやすい環境で私はとても仕事に恵まれていると感じています。


 このフォールダイン家の跡取りであるエレク様に家庭教師としてフィア様がいらっしゃってからもう二年近くになり、エレク様は幼いのに中級魔術を扱えるようになっています。

 これははっきりって物凄い事なのですが、弟のルシオ様も中級魔術を使えるというのですからもう驚きを通り越してしまいました。

 貴族というのはきっと私が思うよりも凄い人種だったのです。


 この二年を振り返りますと、やはり一番上に来るのはエレク様でしょうか?

 魔術の訓練など真面目に取り組んでいて凄いと思います。

 しかしですが根本はやはりエレク様、多少大人びて見える時があったとしても子供らしさもちゃんと残っているのは安心です。

 家安心ではありませんね…… 何せ私は苦労してますので。

 エレク様もルシオ様も私にとても気さくに接してくれるのは大変うれしいのですが時折あるエレク様の悪戯だけはどうにも困ったものです。

 エレク様はあれですね、結構好色の気があると思います。あの御年でこれですので将来どうなるかメイドの分際ですが少々心配になります。

 エレク様の御年を考えると興味を持つ年齢ではあるのかもしれません。

 ですが、私が同じような年齢の頃周りの子たちを見てもそこまで興味を持ってる子がいたかというと…… いなかったような気がします。

 多少大人びた面を持つエレク様ならではなのかもしれませんね。

 そしてエレク様は下着が大好きなようです。

 私達メイドの下着を持っていく悪戯をたまにするので間違いありません。

 あれ? そういえば他のメイド仲間達からこういう話を聞いた事はありませんね。

 まあそれは今は良いでしょう。ですが後でメアリに聞いてみましょう。


 その下着好きなエレク様ですが、何故洗う前の物を持っていくのでしょうか?

 選択後の物だったらそこまで気にしないという事は無いですが、洗う前の物よりはまだましだと思います。

 ひょっとしてエレク様は……

 いけません、遣える方に対してこのような事を考えるなど、メイドとしてあってはいけませんね。

 しかしながらエレク様にはすこし変なところがあるのかもしれません。

 でもどうしましょう。私の下着や他のメイド達の下着で……

 この事は考えないようにしないと今後エレク様とどう接していいのか分からなくなりそうな気がします。この考えは危険なので封印決定ですね。


 そうそう、私は現在エレク様専属のメイドとなっております。

 ルシオ様にはメアリがつくことになっています。

 はっきり言いましょう。私ルシオ様の専属になりたかったです。

 ルシオ様ははエレク様と悪戯したりしますが、大体がエレク様が主犯です。

 ルシオ様は兄のエレク様と遊べることがうれしいようでエレク様にそそのかされては一緒に悪戯をしてくるのですが、ルシオ様お一人の時なら素直なとても良い子なのです。

 なのでルシオ様の専属でしたらどれだけ気楽にお仕事ができるかと思うと……

 でももう決まってしまったので文句は言えません。

 お給金も専属手当がつくので増えましたしね。

 しかしメイドをしてるとお給金使う機会があまりなく、実家に大半を仕送りしているのが現状です。私の家は別に貧しくはないですが少しでもお金があるに越した事は無いでしょうから。


 さて、今日もお仕事頑張りましょう。


―――――


 エレク様の洗礼式が一ヶ月後に迫りました。

 この私もここ最近忙しく動いています。

 ルード様よりエレク様の書いた手紙の確認などを申し付けられたりしました。その確認作業が思ったより大変でした。

 何十通もある手紙に間違いなどないか一通ずつ目を通したりしました。

 しかしエレク様は一体どこでこのような教養を身に着けたのでしょうか?

 普段のお勉強など私達メイドはよく目にする事がありますがこのような事を勉強しているところは今まで見た事が無いのですよね。

 それなのにあの完璧な手紙には驚かされました。

 はっきり言って確認の必要性はありませんでしたね。

 エレク様の洗礼式に着る服も完成して本日無事に届きました。

 これで六歳のお披露目の準備はほぼ完ぺきでしょう。


 そうそう、そういえばメアリにエレク様の悪戯を確認したところメアリは被害にあっていないという事じゃないですか!?

 メアリが言うにはそのように接してもらえるだけ懐いているんだよって事でしたが、私からすると納得のいくことではありません。

 確かに辛く当たられるよりはましですよ?

 ですが私の女としての羞恥心は如何しろというのでしょうか?

 そして、これを聞いて思い出したくない事を思い出しました。

 私は以前、エレク様に湯あみを覗かれたことがあるのです。

 その時は気が動転してものすごい怒ってしまいました。

 あの時は『ああ、私のメイド人生終わった』と思ったものです。

 しかし奥様から「悪いのはエレクです。きちんと叱ってくれてありがとう」というお言葉を頂きました。

 これがきっかけで私がエレク様の専属になったようなものですが……

 それにしてもエレク様が他のメイド達には悪戯していないという事は解せません。

 なんで私だけ恥ずかしい思いをしないといけないのでしょうか?

 私もメアリのようにステキな身体でしたらまだしも…… って違う違う!! そんな事は今は関係ありません。

 これは専属になった事をうまく利用してエレク様を正しい方向に進むようにしなくてはいけないかもしれません。

 はぁ、やっぱりルシオ様の専属でしたら良かったのに……


※――――――――――


 エレク様の洗礼式が無事におわり私が決心してから数日経ちました。

 なかなか言い出す機会が見つかりません。

 そんなこんなで私は今エレク様のお部屋の扉の前にいます。

 今日は、朝食の後いつも通り魔術の訓練、ルシオ様とのお勉強を終えたエレク様はお部屋にこもりました。

 恐らくこのようにお部屋にこもっている時に隠れてお勉強なさっているのでしょう。

 しかしエレク様に物申さないと気が済まないメイドがここにいます。このようにお部屋にこもられた時はある意味良い機会だと思います。

 一応差し入れという事でお茶と果物をご用意させていただきました。理由づけも完璧です。

 私はエレク様の部屋の扉をノックしました。


「エレク様、差し入れをお持ちしました」

「わっ、ア、アンか、ちょっと待って、今行く」


 ドタバタと物音が聞こえます。

 暫くすると扉が開きました。そこには焦った表情のエレク様。

 お勉強をしていたのではないのでしょうか?


「エレク様、お勉強をしていると思い差し入れをお持ちしましたが、お忙しかったでしょうか?」

「い、いや大丈夫だ」

「では、失礼いたします」

「あっ、ちょ、今散らかってるから……」


 確かにお部屋は少し散らばっていますね。この際ですお部屋のお片付けをお手伝いしますか。


「おきになさらず、お部屋のお片付けはお任せください」

「えっと、その、大丈夫!! 部屋の片づけは得意だからさ」


 なんかちょっとここまで焦った感じで言われると怪しく思ってしまうのが人間というものです。

 ここは失礼にあたるかも知れませんが突入してみるべきでしょうか?

 いえ、突入あるのみです。もうエレク様に散々振り回された私にはある意味怖いものはありません。

 流石にお仕事を辞めさせられたらどこかで泣いちゃうかもしれませんが……


 そう決心した私はエレク様のお部屋に少し無理やり入ります。

 エレク様が「ちょっ、まっ」と焦っているのも何だか楽しい気分ですね。


 私がエレク様の部屋の中に入りまず目に入ったのが布の端切れです。

 これは紙が高価なため無駄に使うことが出来ないという事で古くなり使えなくなったシーツ等をエレク様が欲しいといったものです。そこには色々な物が書いてありました。

 エレク様はルシオ様が喜ぶ玩具を考えるのがお好きなのできっとそういったものでしょう。

 それが結構机の上、床に散らばっているのです。

 床に落ちているのは大きく×と書かれていたりするところを見ると没になったものでしょう。

 それにしてもこれだけの物を考えられるなんてやはりすごい方です。


 そして次に気になったもの、それは机の上に置いてある木箱でした。

 今まで何度もエレク様の部屋に入ったことがありますが、あのような木箱は見たことがございません。そして閉じられた箱から白い布がすこしみえています。

 あの箱はもしかしたら思いついた玩具でこれだといったものを保存しておく箱なのでしょうか?

 確かエレク様は設計図と仰ってましたね。

 箱に視線を送っている私にエレク様が声をかけてきました。


「な、な、何か気になる物でもあるの?」


 どうして焦っているのでしょうか?

 もしかしてあの箱には恋文などが入っていたりするのでしょうか?

 でもエレク様が外の女性と知り合う機会などほぼありませんのでその線はあり得ないですね。


 そこで私は思い出しました。

 今まで消えて行った私の下着の事を。


「エレク様、そちらの箱は何が入っているのでしょうか? 以前お部屋の掃除で入った時は無かったものですが」

「そ、そ、その箱は何でもない、何でもないんだ!!」

「あっ、ひょっとして、完成した設計図なる物を入れとく箱でしょうか?」

「あ、ああ!! そうなんだ設計図を保存しておくための箱だよ」


 これは、ひょっとしたら当たりな気がしますね。

 私は未だ手に持っていたお茶と果物が乗ったトレーを部屋の隅にあるテーブルに置きに行きました。

 そしてテーブルにトレーを置いたその足で箱が乗ってる机の方に移動します。


「それはとても興味あります。見せてください」


 ここで私は満面の笑みで楽しみだという事をせいいっぱい表現しながら向かいます。

 私だって女です。多少の演技は出来るのですよ。


 箱に近づくにつれ、さらに慌てるエレク様。普段悪戯されている私は今楽しくて仕方ありません。

 ちょっと日ごろの仕返し気分でした。

 しかし、そんな私に対しエレク様は何を思ったのか突然謝りだしました。


「ごめんなさい、ごめんなさい!! 俺が悪かったのでその箱は空けないでください」


 ……流石にここまで言われると開けるわけにはいきませんね。

 しかしながら今日の私はどうかしていたのでしょう、言おうと思ってなかったことを口にしてしまいました。


「エレク様、お聞きしますがあの箱の中身は何でしょうか? 今まで隠してきた私の下着ですか?」


 言った後に、はっとなった私ですが、もう口に出してしまいました。これで違っていたら私は何をやっているんだってことになりますよね・

 しかしながらその心配は杞憂に終わりました。


「ハイ、ソウデス」


 いつもと違う感じの抑揚のない返事があの箱の中身が私の下着という事を認めてしまいました。

 エレク差を見ると何処を見ているともわからない表情です。

 眼に輝きが灯っていませんね…… あれは見たことがあります。

 そうです、お店などに売られてるお魚の目。

 さて、それが解ったところで私はドウスレバイイノデショウ?

 あっ、エレク様の喋り方がうつってしまった気分です……


 まあここはもう、思い切っていくしかありませんかね…‥ 一応当初の目的としてエレク様を正しい道に戻すという事も重要な私の役目ですから。


「エレク様、箱に入れておくほど私の下着は大事な物なのですか?」


 アレ? 私は何を聞いているのでしょう?

 私が言おうとしているのは今後こういうことはやめましょうねだったのに…… アレ?

 エレク様も私の発言にポカーンとしています。

 ある意味このような顔をするエレク様は貴重なのでこれはこれで良いとしますか?

 少しして気を取り直したエレク様が慌てて私に言いました。


「そ、その、ちがくて、あっ、でも大事じゃないと言ったら嘘になるけど、そ、その、うわーーーーーーーーん!!」


 エレク様は泣き出してしまいました。

 このように泣きじゃくるエレク様も初めて見たような気がします。なんか今まで見たエレク様とは違い年相応という感じがしますね。

 今日はいつもと違うエレク様をたくさん見た気がします。

 しばらくしてエレク様は泣き止みました。

 そして箱を手に持ち私に渡してきます。


「ごめんなさい。かえします……」


 と謝罪しながら。

 ここでこれを受け取るべき事が私の本来のするべき事なのでしょう。

 しかしあれだけ泣きじゃくる程大事にしていてくれたということに取り上げる事に罪悪感を覚えなくもないです…‥

 あれ? これ私とエレク様どっちが間違っているんだろう……

 私はどうやら混乱しているようです。

 とりあえず私は箱を受け取り箱を開きました。


 そこには行方不明になった私の下着と文字の書かれた端切れがありました。


・日付、初めてアンに下着をとる悪戯をした時。走り方が独特て面白いメイドさん。ちょっとかわいい。

・日付、二回目の下着をとる悪戯をした時。顔を真っ赤にして追いかけてきたかわいい。

・日付、三回目の悪戯。下着ばかりじゃ飽きられるかも? でも今日の反応もかわいいかった。

・日付、四回目の悪戯。今日はいつもと違いぷんすかしてた。それもかわいいかった。

・日付、五回目の悪戯。今回のは生理中だったようだ。さすがに悪い気がする。そういう事もあって追いかけてこなかったのかな? 体調悪かったなら悪い事をしたかも……


 中には私に悪戯をしたときの日付と、私の反応、それと私がかわいいという事が書いてありました。

 何でしょうこうちょっとキュンとしちゃいました。

 エレク様のような子供にもかわいいと言われれば嬉しい物なのですね。

 私はそっと中身を戻し、蓋を閉じました。

 そしてエレク様の方に向き合います。

 エレク様は眼を瞑り、顔を真っ赤にしてプルプル震えていました。

 私は箱を足元に置き失礼かもしれませんがエレク様の頭に手を置き撫でました。

 あっ、凄い髪がさらさらしていて羨ましい…… おっと違います。私はここで何を言うべきなのでしょうか? 正直こんな事初めてなのでどうしていいのかわかりません。

 そしてどういう対応が正解なのかはっきり言ってわかりません。

 でも私は自然と口が開いていました。


「大事にしてくださっていたのですね。これは見なかったことにしておきます。でも今後はこのような事は控えてくださいね。後かわいいと思ってくれていた事は凄く嬉しかったです。本当は専属になった私が正しい道に導いてあげるべきなのでしょうが、私にはどうすればいいか分かりません。なのでこれは二人の秘密です。私も誰にも言いませんので……」


 私は撫でていた手を離し、部屋を後にしました。

 無言でプルプル震えているエレク様を残して。

気付くと1000VPです。

皆様アクセスして頂きありがとうございます。


評価もいただけてありがたく思っています。

別にこれは1000超えた記念とかではないのですが何となく1000超えて嬉しかったので書いた感じです。

所々暴走した部分もございますが今後も楽しんでいただければと思います。

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