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お人好し・翼

「あああ……俺はなんてお人好しなんだ……」

翼は家に戻り、とりあえず気絶している男をソファに寝かせた。

「……あ、そうだ」

翼はこの人をどうするべきか散々悩んだあげく、はっと思い立って電話機に手を伸ばした。

二人と別れる際に電話番号を教えてもらっていた。メモ用紙を手にボタンを押す。

『はい。秋山です』

電話に出たのはたぶんみちるの父親だ。

「あ、山下と言いますが、みちるさんはいますか?」

『……娘とは、どうゆう関係で?』

やばい……厳しい系か……?

「学校の同級生です。ちょっとみちるさんにお話したいことがあるので……」

『……ちょっと待っててください』

保留の音楽に切り替わったが、みちるはなかなか電話に出なかった。

「あれ……?よしみにかけた方がよかったかな……?」

三分ほど経って電話に出たのはみちるではなくよしみだった。

『もしもし?あんた、どうしたの?さっき別れたばっかじゃない』

「ん?お前、まだみちるのうちにいたんだな。まあいいや、ちょっとうちまで来てくれないか?」

『構わないけど、ちょっと時間かかるわよ?』

「それでもいいよ。来てくれれば」

『わかった。で、家どこ?』

「桜マンションの二階の203号室。」

『ふーん。じゃあ、みちると一緒に行くから』

「ああ。待ってるぜ」

電話を切ると翼はおもむろにクローゼットを開けた。

「えと……確かここに突っ込んどいたはずなんだけど……あれ?こっちだったか……?」

ゴソゴソとクローゼットを漁っていると人の動く気配を感じた。振り向くと男が頭を押さえて呻いていた。

「う……いててて……。はっ!血だ……」

翼はクローゼットに突っ込んであった救急箱を引っ張り出すと戸をバタンとしめた。

「あ……。君、本当に匿ってくれたんだね!ありがとう!」

男は翼と目が合うと血を垂れ流したまま笑顔でいった。

「あ、あの~、その血どうにかしましょうよ……?救急箱持ってきましたから」

「あ、そうだね。血だって出しっぱなしじゃもったいないもんね」

男は微妙にテンションが高いが、貧血気味らしく、動く気力はないみたいだ。ソファにすわり、翼が救急箱の中を漁っているのを見ていた。

「結構いろんなもの入ってるね。よくケガしたの?」

「中学の時は毎晩のように父親と大ケンカしてましたから」

「へえー。不良少年?タバコ吸ったり?髪の毛染めたり?」

「違いますっ。タバコ嫌いですし、髪は地毛です」

翼は男の質問に律儀に答えながら、包帯や、ガーゼを取り出した。

「これ、地毛なんだあ!遺伝とか?」

男は翼のオレンジ色に近い髪の毛を見ながらさらに聞く。

「さあ?どうなんですかね?両親の髪はこんなんじゃないです。手、邪魔ですよ。どかしてください」

「あ、ごめんね。……うわっ、手が血だらけ……」

翼は男の頭の傷を消毒しながら、自分の髪と男の髪を見比べた。

(俺の髪って、明らかに黒じゃねえもんなあ。……すっげー目立つよな)

傷にガーゼを貼っているとチャイムが鳴った。

「あ、来たかな。そうだ。あなた、手洗ってきた方がいいですよ。洗面所はあっちです」

「ん、わかった」

翼は立ち上がり、玄関に向かう。男も言われた通りに洗面所に向かった。

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