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帰宅・そして不良再び

翼はお昼のそうめんを食べ終わったあと、少々考えごとをしていた。

(俺……いつまでここにいるんだろう。お昼もごちそうしてもらっちゃったし、今帰ったら失礼かな?つーか……俺、ここからうちまで帰れるんだろうか……?)

頭を抱え、少しどころでなく悩んでいると、一つの答えに思い当たった。

「あっ!そっか!」

「な、なにがよ。ビビるじゃない、いきなり!」

いきなりだったのでその場にいたよしみに不審に思われた。

「あ、悪ぃ。いや、よーく考えてみると俺が道に迷ってたってことを思い出したんだ」

「はあ?なにそれ?」

「うーん、実は……あっダメだ。これ言っちゃいけない気がする。いや、やっぱ何でもない!」

なにかをいい淀む翼を見て、よしみはさらに不審感を募らせた。

「……あんた、なんか隠してるでしょ?っていうか絶対隠してる。なんなのよ!白状なさい!」

「ホント!大したことないって!だから気にすんな!な?」

翼は必死にはぐらかそうとしている。それを見たよしみはいきなり立ち上がり、外に出た。

「……あくまでだんまりを決め込むつもりね。だったら……無理矢理吐かせるまでよ」

そして、まだ緑色のネコじゃらしを一本引っこ抜く。

(ネコじゃらし……ま、まさか!?)

よしみは翼に近づくとネコじゃらしを首筋でさわさわ~と動かした。

「うおっ!?お、お前っ!かなり悪趣味だぞ!」

ぞわぞわと悪寒を感じつつも、翼はネコじゃらし攻撃をペシペシと払う。

「あんたが正直に全てを話せばしなかったわよ?」

それを苦にもせず、よしみのネコじゃらしは、だんだん首筋から顔に上がってきていた。

「だ、だからって、……普通、ほぼ初対面の奴にこんなことするかっ!?」

「えっ?でもあたし、初対面の不良、殴って一発KO勝ちよ?」

(だからっ!それはおかしいからっ!)

くすぐったさに耐えきれず、ついに翼の方が折れた。

「……だーっ!もう、くすぐったいわっ!言うから!それを今すぐやめろっ!」

「最初から素直になってりゃよかったのよ」

よしみはニヤリと笑いながら言った。

「実はな……俺、勝手に病院を抜け出してきたんだ」

「えっ?病院って……翼くん、入院してたの!?」

昼食の片づけを済ませてみちるが会話に加わった。

「うーん?ちょっとよくわからん」

「なによ、その曖昧な答えは」

「あ、いや、多分そうだったんだろうとは思うんだ。でもな、記憶がないんだこれが。こまった、こまった」

「困ったって……あんま困ってる感じしないんだけど」

「記憶がないって、いつ頃の?」

心配そうな表情でみちるが翼に聞く。

「えっと、確か15日の夕食まではばっちり覚えてるからー、3日前からかな。あー、でも今日の朝まで意識無かったしな。どうだろうな?」

「意識無かった……?って!あんた、ちょっとやばいんじゃないの!?不良とケンカなんかして、大丈夫なわけ?」

「いやー……たぶん、二人に見つけられてなかったらずっとあそこで倒れてたと思うな」

「3日前……あ、そうだ!まさやんに聞いてみよう!まさやんと同じクラスなはずだよね?」

「まさやん……?ああ、北村か。うん、同じだけど、そんなに話さないぜ?」

「もしもし?秋山ですけど、あ!まさやん?」

みちるは翼の言葉をスルーして、電話をかけ始めた。

「ちょっと聞いてもいい?まさやんのクラスに、山下くんっているよね?……え?一昨日から来てないの?その前の日は?あ、そう……、ありがと。……あのね、うちに山下くんがいて……、あ、うん。わかった、じゃあね。」

「どう?雅姫、なんて言ってた?」

「3日前は普通に来てたって。でも、次の日から何の連絡もなしに休んだって。あ、翼くん、終業式の配布資料あとで学校に取りに行けってさ」

よしみの言葉にみちるは答えた。

「ん、わかった。……うーん、3日前……3日前……。たぶん、3日前なんだよ。警察の人も3日前のこと訊いてきたし……。なんなんだ?わっかんねえなあ……?」

翼は独り言のように呟く。

「そういえば翼くん、胸のあたりに包帯巻いてあるよね?それが病院にいた原因かな?と私は思ったんだけど、どうかな?」

みちるは聞く。

「んー……たぶんそうだなー、これな、刺し傷っぽいんだよ」

「あ、あんたまさか……!女癖が悪くて、二股掛けてたらばれてナイフで……!!」

「俺は女癖は悪くない!!……でも、誰かに刺されたのは確かなんだよなあ」

「えっ!やっぱ刺されたの?あんた、恨まれるような事したんじゃない?」

「そうなのかなー……案外。嫌だなー、それ」

「でも!翼くんは恨まれる人間じゃあないよ!……たぶん」

「あ、でも一部の先生には髪色のことで目ェ付けられてたな」

「先生が生徒刺すわけないでしょ」

「あ、そだな。あ゛ー……もう。誰だよ!……あ、俺そろそろ本当に帰らねえとだ」

翼はいきなり立ち上がってそう言った。

「なによ、急ね」

「でも、翼くん迷ったって言ってなかった?」

「適当に行けば帰れるかなと思ってる」

「そか、じゃあ、気をつけて帰ってね」

みちるは意外とあっさりしている。

「じゃあな。そうめんありがとう。ごちそうさまでした」

翼はみちるの家を出たのだが……彼はまだ気づいていなかった。彼らの執念深さを……。


翼はすたすた歩いて例の公園近くまでやってきた。そこには、先ほどの不良が仲間を連れてたむろしていた。

(うわ……やばいなこれ……このままスルーできればいいけど……)

翼は見知らぬ振りをして通り過ぎようとした。が、

「てめぇ……さっきはよくもあんだけやってくれたよなあ?」

あっさりと見つかってしまった。

「えっ!?何の話?」

胸ぐらをしっかり掴まれ、逃げられない状況の中でしらを切り通そうとする翼。

「ふっ……ざけんなっ!!てめぇのせいで俺の奥歯が……」

「そんなこと言ったら、俺だってお前等のせいで死ぬかと思ったんだぞ!」

思わず口を出してしまってから失言だということに気づいた。あわてて口を押さえるが、もう遅い。

「ふふふ……肯定したな……。俺たちはお前のせいで苛立ってんだ!その鬱憤を晴らさせてもらうぜ!」

その声を合図に取り巻きの不良が翼を囲む。

「う、うそだろっ!?それってひきょっ……!」

  ガツンっ!!

後頭部に衝撃を受ける。硬いもので頭を殴られ、翼はその場に倒れた。

意識を失う前に見たものは、鉄パイプを持った男が自分を見下ろし、ニヤリと不気味な笑みを浮かべるところだった。


「……ん?」

みちるたちは夏休みの宿題を早速始めたところだった。ところが、何かを感じて顔を上げた。

「みちる……?どしたの?」

「……すっごい、嫌な予感がする……」

よしみが不思議そうに聞く。と、みちるはいきなり立ち上がった。

「やばいっ!急いで翼くん捜さなくっちゃ!」

「はっ?なに?どういう事よ!?」

みちるはすでに家を飛び出そうとしている。

「だからっ!話を聞きなさい!」

よしみはそれを止め、問いただした。

「急になんなの?詳しく言いなさいよ」

「……勘。何となく、やばい」

みちるは曖昧に言う。よしみは頭に「?」をたくさん浮かべていた。

「とっとにかく!早く翼くん、捜しに行かねばっ!」

ばっ!と、家を飛び出すみちる。それをよしみは必死に追いかけた。


二人は公園に差し掛かったところでぐったりと倒れている翼を発見した。

「翼くんっ!!」

みちるが声を掛け、よしみは翼の肩をバシバシと叩く。だが、完全に気を失っているらしく、反応はなかった。

「こりゃ、完全に気ぃ失ってるわね……」

「ど、どどどっどーしよう!!」

翼は、どうやら後ろから殴られたようだ。そのあと、蹴飛ばされたり、踏んづけられたらしく、跡が服に残っていた。

「あんた、動揺してる場合じゃないわよ!さっさと救急車呼びなさい!!」

「わ、わかった!」

若干、挙動不審のみちるはあわあわしながら電話を掛ける。

よしみは倒れている翼の頭の横に座った。そして、

「翼!つばさ!しっかりしなさいっ!!」

大声で怒鳴ったが、意識が戻る様子はなかった。

「ちっ……。やっぱダメか。……頭殴られたみたいね。下手に動かすとあれか……」

気を失っている翼の様子を観察するよしみ。そこへ電話を終えたみちるがきた。

「よしみ!あと五分くらいしたらくるって!」

「5分ね。……頭殴られてるみたいだから下手に動かすとヤバイわよね」

「うん……」

「まあ、救急車来るまで待ってましょ」


しばらく待っていると救急車が到着した。

「君たちはどうする?付き添うなら乗ってもらいたいんだけど」

「すいません!乗りますぅ!!」

二人は急いで救急車に乗り込んだ。

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