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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
72/285

閑話 レイナとショウタ(1) フィオン


 閑話ですので時間のない方は読み飛ばしください。

 フィオンは命よりも大切な姪――レイナ・シンクレア・ヤルンヴィドと共に今魔の森に来ていた。

 兄であり、獣王でもあるグラディス・シンクレア・ヤルンヴィドは冒険者として好き勝手生きていたフィオンを呼びつけある事を命じた。それはレイナに冒険者としてのイロハを教えることだ。勿論当初は断った。冒険者は甘い職業ではない。昨日元気に話していた者が次の日死んでいる事なんてざらだ。

 レイナにもしもの事があったら保護者役のフィオンは確実に殺される。ヤルンヴィド王家だけならまだいい、獣王国全体を敵に回しかねないのだ。それほどレイナは獣王国にとって特別な存在だ。

 獣王グラディス、王妃、フィオンの他の兄弟姉妹達、レイナの兄と姉たち、獣王国最強の四獣将はレイナをとにかく猫可愛がりしている。だが、一番質が悪いのが発明王――レナルド・ダンクワースだ。この爺さんの溺愛振りは常軌を逸している。

 過去、レイナが幼少時にある組織から誘拐されそうになった事があった。その組織は、アースガルズ大陸でも有数の裏ギルドであり、人身売買、麻薬、密輸、暗殺などおよそ外道な事で手を染めていないものはない巨大組織であった。

 この組織は人間の小国を次々に裏から支配し、遂に獣王国まで手を伸ばそうとした。その手始めがレイナの誘拐だったのだ。だが、この組織は誘拐対象を間違えた。おそらくレイナ以外を誘拐の対象としていたら獣王国でもある程度の幅を利かせる事が出来ただろう。だが、最も愚かな罪を犯した組織はレイナの誘拐を決定してからたった数日でこの大陸から永遠に消滅することになる。

 レイナの誘拐計画が暴露されたのは密告だった。密告を受けて怒り狂った獣王国の幹部達がその組織の壊滅の大号令をかけた。勿論獣王国に潜伏していた組織の構成員は役人、市民、他の裏組織の者達からも狙われることとなり全て摘発、処分された。ここまでならば、まだそこまで珍しくはない。獣王国の象徴のような王女を殺そうとしたのだから。

 だが、数日のうちに他の全ての国々でも同様の事が起こる。激怒した発明王が他国の七賢人に圧力をかけた結果だった。七賢人同士でどういう取り交わしがあったのかは分からない。だが、かなり無茶をした事が窺われた。七賢人は発明王を含めて自己中心主義の権化のような者達だ。お互いアクが強すぎて主張が一致することなどほとんどない。それにもかかわらず、七賢人全てが組織の撲滅を世界に宣言、その結果呆気なく組織はアースガルズ大陸から駆逐されることになる。

 仮に道中レイナに傷一つつけようものなら、発明王にくびり殺される。だから、グラディスの命を全力で断った。だが、結局レイナに弱い発明王にまで命じられ止む無く悪夢の冒険へと旅立つこととなる。

 そして、今レイナはフィオンの期待を裏切らず魔の森中域で迷子になってしまっていた。神獣であるディードも一緒であることが唯一の救いである。

心中泣きべそをかきながらも周囲を探す。レイナはディードと共に居た。ほっと胸を撫で下ろす。そしてフィオンは不思議な少年と出会ったのだ。


               ◆

               ◆

               ◆


 最初この不思議な少年――ショウタ・タミヤと言う人物を見たときのフィオンの印象はパッとしない平凡な少年であった。話を聞くとこの少年は異世界人であるらしい。

 師匠――ノア・アズマを思い出し懐かしくなり、思わず冒険者になるよう勧めてしまった。だが、異世界人も師匠のように規格外な存在ばかりではないことを思い出し後悔する。少なくともショウタは戦闘に才能がありそうにはとても見えない。だからショウタがある程度一人で冒険者として自立するまで面倒を見てやろうと思う。

 手始めにガルトのおやっさんのところで、ショウタの武器を調達することにした。おやっさんをショウタと対面させる。ショウタをみると、最初胡散臭そうにしていたが、途中から目の色が変わり、ショウタをベタベタと触り始めた。これはおやっさんが興味を持つものに対してしてしまう悪癖だ。異性にすれば間違いなくセクハラで衛兵詰所に突き出されているところだろう。

 おやっさんは、触り終えると、ショウタに幼い頃から武術をしていなかったかを聞く。そんなはずはない。筋肉の付き方から立振る舞いまで全て素人同然だ。寧ろ見た目は素人以下だろう。


 だが、おやっさんはフィオンと反対の認識をもったようで、黒色の刀と漆黒のローブを携えてきた。フィオンは自分の声が震えるのを感じた。この武器と防具はともに、【希少級(レア)】だろう。

 このアースガルズ大陸では、【上級(ハイ)】以上の武具は超高級品だ。【希少級(レア)】は貴族出身の一流の冒険者が数人持っているに過ぎない。事実、フィオンの愛刀も【希少級(レア)】だ。もっとも同じ【希少級(レア)】であっても目の前の黒刀はフィオンが持つ刀とは次元が異なりそうだ。しかもタダでショウタに与えるつもりらしい。ここまでガルトが執着する人間には初めて会った。

このときフィオンは初めてショウタという少年に疑問を持ったのだ。


               ◆

               ◆

               ◆


 次の日、当初魔の森でのショウタは初心者冒険者そのものだった。スライムすらおっかなびっくり倒す。ゴブリンを殺して胃の中のものをすべて吐き出す。これはフィオンも過去に通った道である。平凡な少年が必死で足掻く様はフィオンに独特のノスタルジーを覚えさせた。

 だがそれもレベル3のショウタがゴブリンを蹂躙することで呆気なく吹き飛んだ。

 師匠といい、発明王といい、ショウタといい異世界人の出鱈目さ加減はどうにかならないものだろうか。


 その日の午後、弟のマクドナフがアームレスリングにでるというので応援に行く。驚いたことに、ショウタが選手として参加していた。事情を聴くとエミーという迷子の少女にせがまれて出場するはめになった事がわかった。いつも、レイナに振り回されているフィオンはショウタに親近感を猛烈に覚える。


 ヴァージルもショウタと一緒であり、おまけにヴァージルの許嫁――ブルーノにも絡まれているらしい。面倒事に巻き込まれやすい奴である。

 だが温和なショウタにしては珍しく激怒していた。どうやら、エミーという少女をブルーノが害そうとしたらしい。ヴァージルにすら不信感を持っている様子だ。ヴァージルは違うと言っても聞く耳すら持たない。

 フィオンは過去にヴァージルからブルーノの事は相談を受けていた。

 なんでも、ブルーノはヴァージルにとって弟のような存在であり、恋愛感情を持てない。どうすれば、傷つくことなくヴァージルを諦めさせることができるかという事だった。きっぱりと傷をつけないで諦めさせるのは不可能だと教えてやったのだが未だに言えずにいるらしい。


 ブルーノは如何にも人間の貴族らしい青年だった。フィオンは血統で威張り散らす者は好きではない。レイナも同じらしく、ショウタを罵るブルーノに掴みかかろうとする。そんなレイナを押さえるのは本当に苦労した。

 ショウタの試合を見たがふざけた怪力だった。ボブという者はフィオンから見ても力だけならかなりものだ。それが台に腕ごとめり込まされている。

 ブルーノが出てきて紆余曲折はあったが、ショウタは景品である精霊のペンダントをエミーという少女にあげてしまった。数千万Gもする腕輪をだ。そして精霊のペンダントの精霊はまさかの光の精霊だった。

 ショウタと関わってまだ2日だ。だがもう何度驚いた事か。やはり異世界人は訳がわからない

 

 マクドナフにショウタは勝った。開いた口が塞がらない。マクドナフは、フィオンの兄弟姉妹の中でも【才能】だけなら、獣王――グラディスに匹敵するのだ。マクドナフの今のレベルは20弱だ。だからショウタが勝ったのも無理になら頷くことができる。

 マクドナフのレベルが低いのにも頭が痛くなる理由があるのだ。マクドナフはフィオンの兄妹の中でも末っ子である。それ故にフィオンの父母から殊の外溺愛されており、18歳になるまで剣に触る事すら許されていなかった。

 18歳になってからのマクドナフはグラディスに徹底的に鍛えられた。加えて様々な全国の武術大会に出場し、実力をメキメキと蓄えていった。ついにレベル20代に到達しハイビーストへ進化を果たし、フィオンの兄――グラディスと同様の【才能】となる。その頃のマクドナフは覇気満ち溢れていたいのだ。もっとも、フィオンの父母はマクドナフの身体に刻み込まれた無数の傷跡を見て悲鳴を上げていたが……。

 だが、そのマクドナフの覇気にも陰りが見え始めた。マクドナフが強すぎたのだ。マクドナフがまだ低レベルなのにもかかわらず、どのような大会に出ても全て優勝。全力を出せば相手を殺してしまう。その事実はマクドナフから徐々にやる気を奪っていった。

 今回マクドナフはショウタというライバルを見つけたからだろう。依然の覇気が戻っていた。レベル上げも再開するに違いない。

 まさか、グラディスがマクドナフに大会の出場を命じたのも全てこれを計算したうえでの事だったのだろうか。グラディスは昔から、先を見通す事にかけては気持ち悪いくらいの才能がある。

 すべてグラディスの計算かと思うとフィオンの中から、どす黒いものが愚痴として多量に吐き出される。ショウタがそれを見てドン引きしていたが、今のフィオンの置かれている境遇からすれば当然なのだ。許してもらおう。

 発明王はアホだ。それを今回痛感した。『七つの迷宮(セブンラビリンス)』というふざけたアイテムが優勝賞品だったのだ。七つの小世界と人工的に精神生命体を作り出し子供の遊び相手をさせるなど、頭のネジが飛んでいるとしか思えない。あの爺さんは一体何をしたいのだろうか。これは後でグラディスに告げ口すべきことであろう。


               ◆

               ◆

               ◆


 ショウタは本当に異世界人なのだろうか。この頃頻繁にその疑問に突き当たる。

 まずその疑問に最初にぶち当たったのは、オーク達に行使したショウタの魔法だ。おそらく土魔法であると思う。一瞬で地面から出た細い棘にオークメイジが串刺しになった。驚くことに、ショウタはこの凄まじく強力な呪文をほぼ無詠唱といって良い状態で唱えていた。

 獣王国は魔法を使える者は限られている。王族でもグラディス、レイナ、マクドナフが使えるに過ぎない。従って、フィオンも魔法は使えない。その魔法が使えないフィオンにもその魔法の異常さは分かった。

 驚きはまだ続く、魔法をオークが使うのを見ただけで取得したというのだ。さらに自分なりのアレンジを加え強力無比な新たな魔法を開発していた。ショウタは誰でもできると考えているようだが、冗談じゃない。そんな馬鹿げた事は理不尽の現身たるグラディスでも無理だ。仮に可能だとすれば魔法に特化したエルフ国の七賢人の一人――『魔法王』か、『エルダーエルフ』くらいだろう。

 魔法を使えないフィオンでさえも僅かな嫉妬を覚えるくらいだ。魔法を使えるレイナはショウタに対し強烈な憧れと共に強い嫉妬を抱いている様子だ。


 幼少から物語の中の英雄や勇者に憧れていたレイナには仕方のない事だと思う。

 レイナは自らの気持ちを抑え切れないのか、ショウタに冷たく当たっている。ショウタはそれに振り回され終始アタフタしている。口を出そうとも思ったが、当人達で解決すべきことであると思い直しそのままにしておくことにした。


 すいません。今朝からどうも調子が悪く、今日はここまでの投稿となります。

 明日の朝一にでも投稿します。予定通り進まず申し訳ありません。

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