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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第64話 馬車に乗って戦場まで行こう


 ヘクター達が翔太の名前を畏まりながらも聞いて来たのでそれを教え城門前に向けて歩き出す。

 ヘクター達の視線を背中に感じつつも、自分を奮い立たせて集合場所のエルドベルグの城門前まで歩を進める。


 今日の城門の門衛は翔太が初日に知り合ったアルだった。もう何度も城門を出入しているので自然と仲良くなっていた。


「アルさん、こんにちは」


「ショウタ、魔物討伐か? でも今メガラニカで問題が発生しているらしい。城門前は冒険者でいっぱいだ。あまり邪魔にならないようにな」


「うん。気を付けるよ。ありがとう」


「ああ、今日も良い冒険を!」


 アルはいつも通り最高に良い人で気持ちの良い笑顔を翔太に向けてくれる。少しほっとした気分になり、集合場所に向かった。

 集合場所は見渡す限りの人で溢れかえっていた。人混みが苦手な翔太は冒険者達から少し離れた木の根元に腰を掛けて目を閉じる。


               ◆

               ◆

               ◆


 どうやら眠ってしまったようだ。眼を開けると30台程の馬車が城門前に止まっているのが見えた。馬車の前にヴァージルがいて冒険者達を先導していた。


(結局、来てしまったんだね)


 翔太は舌打ちをして、まずレイナとフィオンを探した。まだやることが残っている。レイナ達はすぐに見つかった。レイナが手を振ってきたので、手を振り返す。実際にはとてもそんな気分ではなかったのだが……。

 翔太の真の敵はオークと言うよりオークに協力している人間だ。この者達はどこで仕掛けてくるのかが全く読めない。人間と言う高い知能を持つ者の相手がこれほど厄介だとは思わなかった。

 もっとも、翔太はもうレイナについては殆ど心配していない。むしろレイナがやり過ぎて戦争が勃発する事の方が気がかりだったりする。レイナは初めての大規模戦闘に興奮して、ウズウズしている様子だ。


「レイナ、程々にね。今の君が本気になったら一瞬で全ての戦闘が終了しかねない。あまり無茶苦茶しないように」


「任せておいて。メガラニカについたら暴れてやるわ。見てなさいよ! オーク!」


(駄目だ。僕の言っている意味が全く通じていない。相変わらず人の話を聞いてもくれない。

 でもこれだけは伝えなきゃ)


 レイナに真面目に聞いてほしくて、レイナの頭に手を優しく乗せる。

レイナは翔太の意を決したような面持ちをみて、驚いてきょとんとする。

 翔太の手がレイナの頭に乗せられている事に気付き、気持ちよさそうに目を細める。そして、頬をホオズキのように染めながらも翔太を見上げてきた。


「レイナ、次からいう3つの約束事だけは絶対に守ると僕と約束して」


「う……ん」


 レイナは恥ずかしそうにも頷く。


「一つ目だよ。フィオンの言う事を良く聞くんだ。絶対に独断専行しては駄目! わかった?」


「わかった」


 やけに素直なレイナにほっとしながらも、次の言葉のために口を動かす。


「二つ目。何があっても、そのガントレットを外しちゃだめ。仮に僕やフィオン、ディードが人質にとられても。絶対に外しちゃダメ。いい?」


「……うん」


 この問は少し躊躇したが結局頷く。優しく頭を撫でてやる。再びレイナは眼を細める。まるで猫のようだ。


「三つ目。もし、自分の身に危険が迫っていると認識したら、何よりもまず自分の命を優先すること。躊躇せずに、ガントレットの全ての機能を全力で使うんだ。後始末は僕やフィオンがするからさ。わかった?」


「うん!!」


 元気よく頷く。これでもうレイナは心配いらない。心配し過ぎのきらいもあるが策はいくら立てても悪いものではない。翔太はディードに近づき小声で囁く。


「ディード、君は今日、レイナのお目付け役だよ。レイナが暴走しそうになったら、フィオンにすぐに伝えるんだ。わかったね?」


「ワォン!」


 わかったという仕草で、ディードが吠える。フィオンに目で合図をすると親指を立ててくる。任せろということだろう。

 胸を撫で下ろし、馬車に冒険者が全員乗り込むのを待っていた。単にヴァージルと同じ馬車に入ろうと思っただけなのだが彼女は翔太が馬車に入るまで入るつもりはないらしい。仕方なく30台の馬車のうち一番小さな馬車に潜り込んだ。


(馬車の中で襲われる事はないと思う。ヴァージルさん、ただでさえ目立ってる。僕なら他人に構っていられない戦場で襲う。敵も同じだよね)


 だが、そんな翔太の心配も杞憂だったようだ。ヴァージルは翔太と同じ馬車に乗って来た。胸を撫で下ろす。

 馬車の中は思ったよりも広く10人の冒険者が座っていた。翔太が座るのは馬車の一番隅だ。

 馬車が走り出す。あと45分程度でメガラニカまで着く。

 眼を(つぶ)っていると、突然声を掛けられた。


「君がショウタ・タミヤかい 僕はフローラ・マグネス、よろしくね」


 眼を開けると会議室で見た純白の鎧を着用した栗色の髪の女戦士が手を差し出していた。突然の事で戸惑いっていると彼女の隣から声がかかる。


「お嬢様、規律と言うものがございます。そのように平民に気安くお声を掛けては困ります」


 20代前半ほど、黒髪騎士風の美しい青年だった。黒髪ショートカット、女豹のように無駄のないスラリとした肢体は男性というよりもむしろ女性を思わせた。

 口調や話す内容はボリスと似ているし身体は非常に華奢なのだが、彼が発する威圧感や佇まいはその強さが別次元だと翔太に教えてくれる。一定の強さにならなければゴブリン程度の力にしか感じない翔太が強いと感じるのだ。異世界で会った人間のなかでは最上位に位置する実力はあるだろう。アントンやデリックに次ぐ力を持っていると思われる。


(今気付いたけどこの世界の人達って美男美女ばかりだよね。元の世界でも普通以下の僕ってこの世界ではどう見えてるんだろ? 怖い。マジ考えるだけで怖い)


「ロニー、冒険者に貴族も平民もない。僕はいつもそう言ってるだろ?」


「それを私は納得していません」


 フローラはロニーから再び目を逸らし翔太に視線を向ける。

 フローラがいつまでも差し出した手を引っ込めないので仕方なく翔太は手を軽く握り返して挨拶をする。


「ショウタ・タミヤです。ショウタとお呼びください。よろしくお願いします」


 翔太がフローラの手を握り返したときロニーの眼光が一際厳しくなったので慌てて眼を逸らす。


「うーん。君がダンカンさんや、ジェイク殿より強い? 悪いがそうはみえないな。

 君、知っているかい? ジェイク殿はAクラスではあるが、実力はSの上位に匹敵するんだ。

 彼は竜人だから特殊スキルで【竜化】すればSSクラスの僕でもかなり手こずる相手さ」


 フローラが心底不思議そうな顔で尋ねてくる。


「いえ僕も初めて知りました。ジェイクさんはあの場を治めるためにあんないい方しただけです。僕自身、それほど自分が強いとは思っていません」


 これは事実だ。実際に今の翔太程度の力の持ち主など世界には腐る程いるだろう。バジリスクキングなどの存在が良い証拠だ。

 もっとも翔太の力が人間種としては異常な領域にまで突入していることも十分理解はしている。おそらく今向かっている戦場に翔太の敵はいないだろう。


「私もそう思いますよ。お嬢様。ダンカンもジェイク殿もあの殺伐とした空気を換えるために発言なさったのでしょう。

 彼らが発言しなければ私が注意をしていました。ボリスは貴族の面汚しです。あれでは威張り散らすのが貴族ととられてしまう」


(このロニーと言う人、自分が貴族であることを強調はするけど、ボリスとは根本的に違うんだね。強さも誇りの高さもすべて)


 ブルーノ、エレナ、ボリスの考え方が一般の貴族の考え方だと思っていた翔太にとって、同じく貴族を強調するロニーがボリスを非難する言葉を紡ぐのは翔太にはとても意外に思えた。

 翔太がよほど驚いたような顔をしていたのか、ロニーが僅かに怒気をはらんだ表情で翔太に尋ねて来た。


「何をそんなに驚いたような顔をしている? 私の発言がそんなに意外だったか?」


「いえ、そんなことは。ただ貴族の方からそんな言葉を聞くとは思いませんでしたから」


 ロニーは不機嫌そうだが親切に翔太に諭すように教えてくれる。


「ボリスのような奴にあれだけ公然と攻撃されれば無理もないか……。確かに貴族とは平民の上に立つものだ。だがそれは威張り散らす事ではない。

 貴族は常に平民の見本となり、平民に何かの災厄があればそれを打ち払うべき天から与えられた使命をもつ。その使命を全うできない貴族など平民から税をとるだけの害虫に過ぎん。それがあるから平民は貴族を尊敬する。尊敬は――」


「尊敬は強制されるものではない。自然と己から湧き立つものだ。それこそが真の貴族の青い血だろ? 聞き飽きたよ」


 何度も聞かされているのだろう。フローラがロニーの言葉を心底うんざりしたような表情を浮かべながら遮った。


「それはお嬢様が貴族の自覚を持っていらっしゃらないからです」


「なら僕がショウタに話かけても問題はないよな? だって尊敬は強制されるものじゃないんだろ?」


「それとこれとは話が違います。平民の見本に立つ存在だからこそ、毅然とした態度で平民に接しなければならないのです。ですから……」


「ああ、わかった。わかった。肝に銘じておくよ」


 フローラは右手をプラプラ振ってロニーの言葉を強制終了させる。

そして翔太の観察を再開し始めた。


「ん? それって……」


 フローラの視線が翔太の腰の黒刀に固定される。


「これってまさか刀かい? ちょっと見せてくれ!」


 フローラは眼をキラキラさせて翔太に子供のようにせがむ。どうやら見た感じ武器マニアらしい。内心でため息を吐きながら刀を渡す。ロニーも興味があるらしく、フローラの背後から覗き込んでいる。


「な、何この刀、ほとんどミスリル性? しかも、青生生魂アポイタカラがところどころで使われてる? しかも……この印、ガルト作? あのガルトかい?」


 フローラは手を震わせて今までにない真剣な表情で尋ねてくる。


「はい。冒険者登録したときにガルトさんに貰いました」


「はぁ? 貰ったぁ? 駄目だ、話についていけない」


「私も……です。お嬢様」


 フローラは首を左右に振ると、翔太に刀を名残惜しそうに返す。


「ショウタが只のDクラス冒険者じゃないことはわかった。

ジェイク殿より強いというのはまだ信じられないがね。君の実力が知りたい。今度君の戦い方をゆっくり見せてくれ。今回は戦闘でよく見れないと思うしね」


「はい。わかりました」


 そんな事を話しながらついにメガラニカ付近まで到着した。



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