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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第5話 城塞都市に入ろう

 

 街までの道中魔の森で様々な魔物に襲われた。ブヨブヨした液体、醜悪な小人、豚頭の魔物、巨大な蝙蝠(こうもり)等である。それに対しレイナとフィオンは一刀のもとに切り伏せていく。武術に素人の翔太にもレイナとフィオンがその道の一流の使い手であることはわかった。彼女らの姿を翔太は憧れにも似た感情をもって眺めていた。その視線がくすぐったいのか、レイナは少し顔が赤いようだ。それが原因だろうか。フィオンに気を抜くなと何度も注意されていた。



 翔太は街までの道中レイナとフィオンからこの世界のことについて簡単に聞く。この世界には剣はもちろんのこと魔法やスキルというものがあるらしい。地球でファンタジー系のゲームをやり込んできた翔太はこの事実に興奮を隠しきれなかった。自分も魔法やスキルを使えるようになるかもしれない。それは幼い頃に空想をしたが叶うはずもなかった夢だ。

 魔法とスキルについてのフィオンの説明は翔太を一方で落胆させ一方で歓喜させた。


 まず魔法は【魔力】がなければ使うことができない。そして【魔力】があるものはこの世界では限られている。特に上位の魔法を行使し得るだけで実戦経験がなくとも主要各国の宮廷魔術師への任官が確定するほどのものらしい。

 翔太は自分が特別な存在だと思ったことは生まれてから一度もない。それは自分が異世界に来たからといって変わるものではない事もわかっている。むしろすべてにおいて平均以下の才能しかない翔太に【魔力】があるとはとても思えなかった。だからこの時点で魔法の取得は早々に諦めていた。

 だが一方でこの世界のスキルはかなり特殊らしい。どういう仕組みかは未だに解明されていないが魔物との戦闘、対人戦闘などにとどまらず、商売、日常生活などにおいても、何らかの切っ掛けがあるとスキルを取得することが可能ということだ。そしてその得られたスキルは使用することにより強化し、さらに独自の進化をさせることができる。

 ここでのポイントはそのスキルの取得やスキルの進化は完全に【才能】に依存し、【才能】がなければ一切取得も進化もできないということだ。だがこの【才能】は【魔力】と異なり、ほとんどの者が少なからず【才能】をもつ。翔太にも何かしらのスキルを取得し扱うことができるはずなのだ。この事実は翔太を高揚させた。

 次に翔太を興奮させたのが冒険者ギルドの存在だ。これは翔太にとって異世界なら当然あってしかるべきものだ。

 異世界を冒険者として探索し、様々な場所を見、いろいろな人と出会う。それも子供に諦めた夢の一つだったから。

もっとも、今回それはあくまで付録だ。元の世界に柚希、雪、日葵を帰さなければならない。それは今の翔太の唯一と言ってよいほどの義務だ。その義務を全うするためには冒険者になるのが一番。だから冒険者ギルドの存在は翔太の心を海のように沸き立たせた。

 だがその冒険者になるのも簡単ではなかった。登録費用に結構なお金がいるらしいのだ。それを聞いて頭を抱えていると、フィオンが願ってもない提案をしてくれた。


「元の世界に戻る方法を探すなら、やっぱ一番いいのが冒険者だよな。冒険者ならば、旅をしながら情報を収集できる。金なら心配するな。貸してやるよ。俺はAクラスの冒険者として結構稼いでいるからな。そのくらいの金、屁みたいなものだ」


 正直、この申し出は願ったり叶ったりだった。冒険者にでもならなければ、この世界の一般常識も、コネもない翔太には金を稼ぐ手段がない。それでは困る。元の世界に戻る方法と柚希、雪、日葵を探すどころか自分の命を繋ぐことさえ危うくなる。冒険者となることはこの異世界で生きていくための最低限の条件なのだ。


「本当にありがとう。感謝します。この恩は決して忘れないよ。借りたお金も必ずすぐに返します」


「ああ、金はいつでもいいよ。お前さんもこれから大変だろうが(くじ)けずに頑張んな」


「はい!」


 翔太が礼を言うとフィオンは翔太の背中をバンバンと叩きながら、相変わらず清々しい笑顔を翔太に向けてくれた。





 街が見えてきたのは、魔の森でレイナ達と知り合ってから5時間後だった。高い城壁に囲まれた街が《城塞都市エルドベルグ》。ここビフレスト王国において魔の森から出るモンスターの防波堤となっている重要都市らしい。

 エルドベルグを丁度円状に取り囲んでいる城塞はおよそ10階建てのビル程もある。よくもこのような高い城塞を作ったものだと半分呆れながらも、フィオンに連れられエルドベルグ内に入る唯一の城門に近づいていく。


 そこには2人の門衛が翔太達を迎えてくれた。


「よお、アル、久しぶり。元気にしてたか? 今度も無事帰ってきたぜ」


「ああ、フィオン、元気で何よりだ」


 どうやら、アルという門衛はフィオン友人らしい。お互い肩を叩いてその無事を喜び合っていた。門衛――アルは翔太に気付き話かけて来る。


「レイナさんもこんにちは。少年は始めましてかな?」


 レイナがアルに見惚れるような良い笑顔で挨拶をする。翔太も挨拶をすると、フィオンが翔太について説明を始めた。


「こいつは、俺と道中で知り合った少年だ。どうしても冒険者になりたいというからこの都市に連れて来たんだ」


「ヘ~、冒険者志望? すごいじゃないか。冒険者は決して楽な仕事ではない。大変なことも多々あると思うが頑張れよ。応援している!」


 フィオンの知り合いはみんな良い人ばかりなんじゃないだろうかと思うくらい、優しくアルは翔太を励ましてくれる。アルに次ぎに門を出入するときは冒険者のギルドカードを提示するように指示されて都市の中に入る。手続きが簡略化されるらしい。





 翔太の腕時計の表記がこの世界でも使えるなら今現在18時20分である。夕日の光が金色の矢のように大気を貫いて都市に降り注いでいるところを見ると凡その時刻は正確なようだ。

 城塞の内部は独特の活気に包まれた場所だった。多くの人が行き交い、売り子の女の子が通行人に買いませんかと大声を張り上げる。メインストリートの両脇にはいくつもの店が並び、メインストリートと直角に交わるストリートには様々な屋台らしきものが立ち並び客を誘う。翔太があまりの人の多さに呆然としているとレイナが得意そうに説明をしてくれた。レイナの得意そうな仕草が微笑ましく、また顔に笑みが浮かびそうになるのを抑えつつ翔太は聞き入った。


 まず城門からまっすぐ伸びる大通りがメインストリートであり、その突き当りの城のような建物が領主の館である。

 そして、メインストリートを複数のより小さなストリートが直角に交わっており、街をいくつかの区画に分けている。まず領主の館に一番近い区画には貴族達が済む上流区、そして次にこの都市のメインとなる冒険者と商人が住む区画である中流区、最後は貧民や風俗店、奴隷店が立ち並ぶ区画である下流区がある。翔太はレイナに下流区は物騒だから絶対に行ってはならないと念押しされる。確かに、今の貧弱な翔太がそんな治安の悪い場所に行けば荒くれ者達の恰好の餌だ。絶対に行かないと心に誓った。

 ちなみにこのエルドベルグが他の都市より規模が大きいのにも理由がある。

ここエルドベルグはビフレスト王国においても魔の森という大陸でも有数の強力な魔物が出現する地域に密着して存在し、その強力なモンスターから人間を守る砦のような重要な役目を果たしている。

 加えて魔の森の存在から冒険者の数も他の都市とは比べられないほどのものであり、魔の森から冒険者が持ち込む様々な薬草や、特殊な魔物の部位は、それらを材料にして高級な武具やアイテムを生み出し日々都市を発展させている。これが主な理由らしい。





 メインストリートを領主の館に向けて歩いて行くと一際大きな建物が見えて来た。その建物は小さなデパート程の4階建ての大きな建物だった。

 フィオンの後に続いて建物の中に入ると酒場や武器、防具を売っている店、何かのアイテムらしきものを売っている店、魔物の特定部位やアイテムの材料らしきものを買い取る店等が立ち並んでいた。そして中央のカウンターには数人の受付嬢が気持ちの良い笑顔を振りまき来客者に対応をしている。


「あそこが冒険者の受付カウンターよ。あそこで冒険者の登録をしてきなさい」


「うん。ありがとう」


 レイナの言葉に満面の笑みで答える翔太。そのまるでお姉さんか何かのように翔太に甲斐甲斐しく世話を焼くレイナに心の中で感謝しつつ翔太は受付のカウンターに向かって歩き出す。






お読みいただきありがとうございます。

 またまたギリギリの投稿となってしまいもし訳有りません。明日からは22時に投稿させていただきます。

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