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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第44話  冒険者ギルドの支部長に報告しよう

 ステータスとスキルを確認し今後の成長計画を立てていたらエルドベルグについてしまった。

 翔太の腕時計の針は17時ジャストを示していた。

 都市に着くと冒険者ギルドに直行する。チェスが受付でヴァージルと少し話をすると、すぐにヴァージルが血相を変えてギルドの奥の部屋へ姿を消す。今までの話の流れからデリックに報告しに行ったのだろう。


(デリックさんに報告しに行ったんだよね? ヴァージルさん、コカトリスロードのときと同じくらい慌てた。チェスさんの言う通り本当に大事らしいや)


 すぐにチェスと一緒に支部長室へ呼ばれた。部屋内には部屋の主デリックと長髭の貴族のような男バリーがいた。デリックとバリーの対面に翔太とチェスが座り、ヴァージルがデリック達の後ろに控える。

 デリックは苦虫を噛み潰したような顔をしていたが、一方バリーはよほど心が騒ぐのか、早く話せとチェスをせかしている。

 チェスが凡そあった事を忠実に話始める。話が進むにつれてデリックは徐々に重苦しい雰囲気になっていったが、最終的に事件が無事解決したと聞いて心底安堵したような表情となった。これに対し、バリーは終始少年のような笑みを浮かべながら話に聞き入っていた。 

 チェスが最後まで話終わると、デリックがチェスに聞く。


「まさかスカルスネイクの討伐でバジリスクがでるとはな……だいたいスカルスネイク50体だと? 馬鹿馬鹿しい。どこの世界にDクラスの昇格試験で50体ものスカルスネイクを狩る者がいる?」


(チェスさん! やっぱりDクラス相当じゃなかったんですね?)


 翔太が非難じみた眼でチェスを見ると彼は慌てたように取り繕った。その取り繕った内容が翔太には許容できなかったが。


「デリックさん。ショウタちゃんがいるじゃないっスか。ショウタちゃんもノリノリで倒してましたよ。

 一緒についてきた街の女の子なんて『遊んでないで早く終わらせろ!』なんてお茶目な独り言、呟いてましたもん」


(ノリノリじゃありません! 多分……それにしても、アレシアさん。そんな事呟いてたんですね……)


 翔太のそんな心の悲鳴にも似た呟きもそっちのけでデリックはチェスを問いつめる。


「一緒について来た街の女の子? どいう事だ。俺は聞いちゃいないぞ。まさかお前民間人を巻き込んだのか?」


 しまったという、いかにも大袈裟なジェスチャーをチェスがする。全員から呆れの入った眼で注目され、悪乗りが過ぎたと思ったのかもしれない。急に真剣な顔になった。


「翔太ちゃんの護衛スキルも見たかったんですよ。スカルスネイク程度なら何匹いようがいざとなれば僕が守れますし」


(嘘だ。絶対嘘だ。アレシアさんを連れて行った方が単に面白くなりそうだったからだ。そういう人だこの人!)


「チェス、お前という奴は……まあいい。それでバジリスクの王は、お前からみてどの程度の強さの魔物だった?」


 チェスは困惑気味のこの男にしては珍しい表情をした。


「ん――比較対象がいないからね。少なくともコカトリスロードなんてレベルじゃなかったよ。通常のバジリスクの数倍の体躯があるのに隠密スキルを持ってるし……」


「お、隠密スキル? バジリスクがか?」


デリックが一驚する。そんなデリックを一瞥しつつ、チェスは弾むような声色で話を続ける。


「そう。隠密スキル。僕でさえかなり接近されるまで気付きもしなかったしね。

次に、僕も怯むくらいの、しかも振動つきの威圧の咆哮を上げたかと思えば、高熱の炎弾を吐くし、挙句の果ては隕石の召喚まで。ありゃあSSSクラスが全員集合して初めて討伐可能な正真正銘の化物だよ」


 デリックとヴァージルは顔を壮絶に顰める。おそらく、コカトリスロードよりも強い魔物など想像すらしたくないのだろう。


「それほどか……。確かにコカトリスロードは俺と剣帝さえいれば十分勝負になる相手だ。灼熱の石化するブレスと竜巻さえ防げばあとは通常よりも少し巨大なコカトリスにすぎないからな。

 だが、バジリスクの王がそれほど多彩なスキルを持つとすれば、俺と剣帝でも勝負にもならないだろう。

 バジリスク自体の討伐推奨クラスはS+、それらを11体も配下としている。

このような戦力下手すれば魔軍の一軍にも匹敵しかねん。メガラニカやエルドベルグなどの地方都市など一瞬で壊滅だろうな。今日ショウタが昇格試験でクエストを受けていたから助かったわけか。もしショウタの試験があと2~3日遅かったら――」


 デリックは翔太が今日バジリスクの王を討伐していなかったときの悲劇を想像しているのだろう。冷や汗を浮かべながら心中を独白する。


「それでショウタはどうやって討伐したのだ?」


 バリーが目を輝かせて翔太に詰め寄る。正直50代前半のオッサンが目を輝かせている様はかなりのインパクトがある。翔太はゲンナリしながらも説明する。


「雑魚のバジリスクは《破斬》のような長距離剣術スキルと《雷光》のような近接剣術スキルを駆使して倒しました。バジリスクの王を倒したときのことは意識が混濁してよく覚えていないのですが、多分刀で切り刻んで倒したんだと思います」


 この部屋にいる者全員が不思議そうな顔をした。肝心のバジリスクキングを倒したときの事を翔太がはっきりと覚えていなかったせいだろう。


「意識が混濁したというのはどういうことだ?」


(スキルラーニングの事はフィオンに話す事を止められている。でも負荷の事はデリックさんに言っておかないと作戦によっては今日みたいな窮地に陥る。とりあえずレベルの上昇の負荷の話だけ話しておこう。スキルラーニングの件はフィオンに聞いてからの方がいいよね)


デリックの問に翔太は答える。


「そのことでお話があります。僕にはレベルが上昇したときに強力な負荷がかかるようなんです。今回のように意識を失うほどの事もあります。ですからボス戦など強力な敵が相手のときはではできる限りレベルをあげない処置をとってほしいんです。命にかかわりますから」


「レベル上昇の負荷? お前そんなものあるのか?」


 心底不思議そうにデリックが翔太に尋ねる。翔太が頷くと今度はチェスにも訪ねた。


「チェス。お前レベルアップの際そんな負荷あるか?」


「僕にはそんなのありませんよ。まあそう景気よくレベルなんて上がりませんから」


「だよな――」


 デリックもチェスも翔太が言う事が理解できないらしい。それほど信じがたいことなのだろう。


(レベルアップの上昇の負荷って他の人はないの? 僕の予想ではレベルアップの際の負荷は強力な力に耐えられるように肉体が再編成されるためと思っていたんだけど……違ってるのかな?)


 翔太はどうしたものかと考えていたが意外にもバリーが助け舟を出してくれた。


「ショウタにはボス等強力な魔物の討伐をしてもらえばいいだけだろう? 雑魚は他の冒険者が引き受ける。実にまっとうな役割分担じゃないか?」


 その事自体は異論がないらしく無言で全員がバリーの案を肯定した。


「信じられないのが本心だが本人のショウタがいうんだ、そうなんだろうな。

わかった。どのみちショウタにやってもらいたいのは、一昨日のコカトリスロードや今回のバジリスクの王レベルの魔物の討伐だ。雑魚の討伐なんぞではない」


(そう何度もバジリスクキングクラスの怪物が出てきてもらっても困るんだけど)


 翔太は内心うんざりしながらも話に聞き入る。


「それにしても一昨日のコカトリスロードに、今日のバジリスクの王。通常、魔の森の深域にいる魔物の中域、街付近への出没。魔の森で何かが起きているのかもしれんな。今後も警戒をギルド、都市衛兵とで強めていくことにしよう」


 災害指定魔物クラスの立て続けの遭遇。確かに魔物の森中域とメガラニカの周辺の鉱山という違いはある。

 だがそれを偶然で片付けるにしてはあまりにも出来過ぎていた。今後も、しかも近いうちに何か動きがあるのかもしれない。それも未だかつてない程の規模で。

デリックは翔太に向き直る。


「今回のこと本当に感謝する。今後も力を貸してほしい」


 デリックは翔太に頭を深くさげてきた。人から感謝された経験があまりない翔太はあたふたしながらもそれに答える。だがその答えには少しの棘が含まれていたが……。


「いえ、僕も情報を貰うのが前提ですからギブアンドテイクですよ」


 翔太が命を懸けるのは都市を守るなどという崇高なものではない。あくまで情報の収集だ。だからギルドによる情報の取集は決して忘れてもらっては困るのだ。だから念を押す意味も含めてそんな返答をする。


「それは心配しなくてもいい。ギルドが全力で集めることを約束しよう」


「ありがとうございます」


 デリックと翔太によるやや形式ばったやり取りが済んだ後翔太は支部長室を後にする。こうして翔太のギルドクラスはDへと昇格した。



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