第36話 昇格試験を受けよう(1)
今日は午前10時からギルドの昇格試験だ。翔太はよほど緊張していたのだろう。午前5時頃には意識が完全覚醒していた。
5時ではジャンとルネもまだ起きてはいまい。二度寝をしようとしたが一向に眠れない。仕方ないので着替えて都市の中を散歩でもすることにした。
今の季節は初夏、ほぼ翔太の元の世界にいた頃と一致する。
初夏の朝は涼しくとても気持ちが良い。背伸びをしながら都市の中を歩き回る。まだ店が閉まっているメインストリートをブラブラと歩き回っていると向こうから5人の冒険者らしきパーティーが来るのが分かった。
(へ~、こんな朝早くからのクエストもあるんだ。ん? あれって全員エルフ?)
まだ彼らとの距離はかなり遠かったが翔太の人外の視力により耳の先が尖っている完全武装をした者達が翔太の方に歩いてくるのが見えた。エルフ達が向かう方向からして都市の城門まで移動するつもりだろう。
ラシェルのときのようにあまりジロジロみては怒られる。とできる限り視線を合わせないように努力する。だが彼らが翔太の横を通り過ぎるとき思わず呟いてしまった。
「あっ!」
とんがり帽子にブカブカの黒マントを着た魔法使いのエルフの少女――ラシェルがいたのだ。
どうやら背丈の小さなラシェルは他のエルフ達の陰に隠れて見えなかったらしい。エルフ達が一斉に翔太を見る。
「ラシェル、この人間お前の知り合いか?」
ラシェルと同様の長い金髪の美しい青年がラシェルに問いかける。
「知らない」
翔太はラシュルから聞いた話の内容を思い出していた。人間とエルフは仲が悪い。お互い憎しみ合っていると言っても過言ではない。ラシェルが人間である翔太と知り合いならば彼女の立場を悪くするかもしれない。だから――彼女を無視するように歩き出す。
「いくぞ」
ラシェルに声を掛けた青年の声がしてエルフ達が遠ざかっていくのが気配でわかる。一息ついて宿屋に戻る。
まだまだ時間がある。そこで今まで中止していた『七つ迷宮』の実験を再開させる。エレナに1000万Gを払うめどが立ったことにより、売り払う必要がなくなったからだ。
今日は財布の中に入っていた診察券等のプラスチックを指輪の宝石部分に接触させる。魔法のようにプラスチックのカードは指輪に吸い込まれてしまう。
『七つ(セブン)の迷宮』はまだ説明書の最初の方しか読んでいない。だが今日は試験でソワソワして集中できそうもない。読むのは後日にすることにする。
午前6時にキャメロンを出るとジャンとルネが待っていたので遊ぶ。
今日は食堂で『紙相撲』をした。
モーズリーが不要となった紙を持っているというのでありがたく使わせてもらった。
『紙相撲』は翔太が小学校のときに流行った遊び。意外にこの歳になっても楽しめるものだ。ジャンとルネも目を輝かせて喜んでいた。
いつの間にか翔太達の周りには冒険者の人盛りができており、周囲から歓声まで聞こえてくる。この世界には遊びなど皆無だ。この手の遊戯でも彼らにとってはまたとない娯楽なのかもしれない。
気が付くとフィオンやレイナまで混じっていた。
モーズリー、ジャン、ルネ、フィオン、レイナと翔太で少し早い朝食をとる。
レイナはジャンとルネが心底気に入ったようで今日、遊ぶ約束をしていた。レイナは末っ子らしい。彼女にとってジャンとルネは新しくできた弟妹のようなものなのかもしれない。
朝食後、自室へ戻り時間を潰す。
現在、午前9時5分。少し早いかとも思ったが冒険者のギルドハウスに行くことにした。
宿屋を出るときにフィオンに口を酸っぱくするくらい手加減だけは絶対に忘れるなと念を押される。
緊張している翔太としてはフィオンが翔太の試験の合格より相手に手加減できるかの方を心配していることに若干の納得のいかなさはあったが我慢した。
レイナはフィオンの隣で見送ってはくれた。だが、昨日の夜の食堂での一件以来あまり翔太と目を合わせてくれない。翔太はそれを寂しく感じながらもギルドハウスへ向かった。
◆
◆
◆
ギルドハウスには試験40分ほど前に到着した。
ギルドハウスの2階が試験場となっているらしい。
ギルドハウスのドアを開けてハウス内へ入ると一斉に翔太に注目が集まった。昨日ネリーがギルドの受付で奇声をあげたり、フィオンやレイナと支部長のところに連れていかれたりとかなり悪目立ちしたためだと推測される。
支部長は史上4番目のSSSクラス冒険者であり簡単には会える人物ではないらしい。それが冒険者になりたて数日の新人がギルド支部長のところに連れていかれたのだ。それは注目もされる。
(この視線みんな僕を見てるよね。嫌な視線も感じる)
翔太へ向けられる視線で一番多いのは昨日のドタバタ騒ぎについての好奇心から来る視線だろう。
だが数ある視線の中でもヌメッとした嫌な感じの視線を感じ思わずそちらを向いてしまう。そこには銀色の高そうな鎧を着た金髪の青年が立っていた。普通の冒険者と比べてかなり良い身だしなみをしている。エレナやブルーノと同様、人を寄せ付けない雰囲気を纏っていることからして貴族だろう。貴族からも名声を求めて冒険者になる者は多いらしいし。
金髪の青年は翔太に射るような眼差しを向けてくる。流石にこれほど憎まれるような事をした覚えがない。首をかしげながらも、試験会場がある2階へ歩を進める。
2階は修練場となっており、闘技場に似せて作ってあるのだろう。2階は4つの部屋からできており、その一つ一つの部屋はとても広い。各部屋の真中に巨大な円柱状の石作の床があり、この石づくりの床は周囲の木製の床よりも一段高く作られている。おそらくこの円上で試験をするのだと思われる。
「よう。来たなショウタ!」
「はい。おはようございます」
2階に上がるとエルドベルグの支部長デリックが声を掛けて来たので翔太も挨拶を交わす。
周囲を見渡すがデリックとヴァージルに加えて、2階には十数人がいた。翔太の試験官とギルドの幹部達であると思われる。
昨日、支部長室を出る際にデリックにできる限りギルドで目立ちたくはないと伝えておいた。悪目立ちしてエレナのような実力行使に出られることを防ぐためだ。見物人が少ないのもこの翔太の要望を叶えてくれたのだと思われる。
「デリック。この少年が例のコカトリスロードを倒した者か? 冗談だろ?」
長い髭を生やしたいかにも貴族のような豪華な服装をした50代前半くらいの男性がデリックに問う。周りの幹部の人も同意見らしい。翔太を疑わしそうな目で見ていた。
「ああ、フィオンが言うから間違いはない。奴は嘘などつかん」
「ふむ……」
納得ができないのか翔太の全身をジロジロと見回す。デリックが視線を長髭の貴族から翔太に移動させる。
「ショウタ、さっそくだが今から試験を始める」
翔太は頷いてヴァージルから試験についての簡単な説明を受けた。説明の内容は次の通りであった。
試験内容はシンプルで試験官と戦う事。勝負は円状の床から相手を外に出すか相手を戦闘不能又は降参させること。だが相手を殺したり重症を負わせたりしたら当然失格となる。試験官に勝てば合格であるが、必ずしも勝てなくても試験は合格する。これは試験官自身が冒険者の中でも歴戦の兵であるため、そもそも試験を受けるような者が試験官に勝つことを想定していないからである。
なぜかフィオンは翔太が試験官に重症を負わせて失格となる可能性が高いと考えていた節がある。かなりしつこく手加減は忘れるなと念を押された。当然のごとく、刀の使用とスキルの使用は禁じられた。また、素手で相手を殴ったり蹴ったりするのもできれば止めておくようにアドバイスされている。
(刀もスキルも使用不可。拳も蹴りも直接当てては駄目。どうやって戦えと? 相手をこの円から外に出すことを最優先で考えるしかないか)
フィオンの無茶な指示にうんざりしながらも、円状の石床の上に登り所定の白線まで移動し試験官と向き合う。試験官はスキンヘッドの屈強な男だった。翔太の体躯の1.5倍はある。
「俺は、ダンカンだ。クラスはB。よろしく頼む」
ダンカンは不機嫌なしわを眉間に作りながら翔太に挨拶を求めてきた。
ギルドの幹部達がそろい踏みしていることから、翔太が大貴族の息子であり、そのコネを使って昇格試験に合格しようとしているとでも思っているのかもしれない。
「ショウタ・タミヤです。よろしくお願いします」
差し出された手を取り握手を交わす。苗字の存在を聞いたときダンカンの表情はさらに険しくなった。どうやら貴族と勘違いしているらしい。ブルーノのような者からは平民と問答無用で見なされ冷遇される。
一方平民であると思われるダンカンからは貴族ということで不正を働くと勘違いされる。まさに翔太は踏んだり蹴ったりの状態だった。
そんな二人の間にある一方的な確執を尻目に、ヴァージルは翔太とダンカンに向き合う。
「今からショウタ・タミヤ様のGクラス昇格試験を始めます」
「始め!」
ヴァージルの掛け声とともに、床を蹴りあげ地を這うように疾駆する。スキンヘッドの男――ダンカンの左腕の直ぐ傍を高速で通り過ぎ、背後に回り込む。ダンカンは両手に握り締めている剣をピクリとも動かすことができず立ち尽くしていた。
(ありゃ~簡単に背後をとれちゃったよ。手加減、手加減……)
翔太が無防備なスキンヘッドの男の背中を最大限手加減しながら軽く押す。背中を押されたダンカンはまるでトラックと正面衝突したかのようなあり得ない速度で床を転がり、円から落ちても暫らく転がり続け壁の近くに来て初めて動きが止まった。
試験場は時間が止まったかのように物音一つしない。誰も彼も目の前の非現実な出来事に声も出ないらしい。当然だ。自分でやった翔太でさえも自分の出鱈目さにドン引きしていたのだから。
(軽く背中押したつもりだったのにこの威力、フィオンがあれだけ念を押すはずだよね。殴ったら上半身が粉々になりそう)
放心状態からいち早く覚醒したヴァージルが急いでスキンヘッドの男の傍へ行き無事を確かめる。どうやら無事らしい。擦り傷はあるが重症というほどの事はないのだろう。今ポーションをヴァージルから受け取り飲んで回復している。
ほっと一息ついている翔太の耳にも場外からの声が聞こえて来た。どうやら幹部達の声らしい。興奮しているらしくかなりの音量であったので翔太の人外の聴力でなくても十分聞き取ることが可能だった。
「ダンカンは確かBクラスの冒険者ではなかったか?」
「そうだ。それをたった一撃で……」
「一撃か……。あれはそもそも攻撃だったのか? 私には背中を押したようにしか見えなかったが」
「確かにな。ダンカンの背後に移動するまでの諸動作も全く見えなかった。どれほど鍛えればあんな真似ができるというんだ?」
「コカトリスロードの討伐は真実だったということか……」
幹部の人達から少し離れた場所でもう一組の話し声も聞こえてくる。翔太が声の方に視線を向けると長い髭の貴族のような男とデリックの会話だった。長い髭の男は翔太を無表情で凝視していた。
「おい、デリック!」
「なんだ?」
「あれは一体なんだ?」
「コカトリスロードを倒した少年だが」
「お前……その話まさか本当のことなのか?」
「ああ。もっと冷静になって考えてみろ。俺がお前らに嘘をつくメリットがあるか? だいたい嘘をつくならもっと皆が信じやすい嘘をつくさ」
長い髭の男はデリックからその言葉を聞くと初めてその表情のない顔に明確な感情を浮かべた。それは狂喜だろうか? 翔太は自分を見る長髭の男を見て背筋が寒くなるのがわかった。
「くくくっ。かっはははっは――――――!」
「バリー?」
狂ったように笑う長い髭の男――バリーを見て、デリックでさえも引き気味で戸惑いがちにその豹変の原因を探ろうとしているようだ。その場にいる全員がその狂ったようなバリーの姿を呆気にとられていた。
「デリック! お前は嬉しくはないのか? アズマが姿を消してから最弱の種族と言われ続け負け続けた人間という種族に、他種族を圧倒する可能性を有する者が出たのだ。これを喜ばずにいつ喜ぶ?」
「バリー! ここは冒険者ギルドだ。人間という種族のためだけの組織ではない。その幹部が不用意な発言は慎め」
バリーの発言にデリックは顔を顰めながらも事態の収拾を図った。バリーも自分の発言がこの場にふさわしくない事に気付いたのだろう。直ぐに頭を下げて全員に謝罪をした。もっとも顔は笑ったままで反省の様子は微塵も感じられなかったが……。
気を取り直して次の試験となる。次はFクラスへの昇格試験である。ヴァージルがゴホンと咳払いを一つして、緑髪の長身でヒョッロとした男の前に移動する。
「ではジェイクさん。Fクラス昇格試験を開始いたします。準備をお願いできますか?」
緑髪の長身の男――ジェイクの顔は幽鬼のように真っ青であり、ガタガタと小刻みに震えている。
「ジェイクさん?」
ジェイクの様子にヴァージルが驚いて尋ねるが返答はない。全員の視線がジェイクに集中する。そのほとんどが同情と共感の視線であったが……。
「わ、私は試験官を辞退させてもらう。先刻の試合、ショウタ殿の動きに私は全くついて行けなかった。ショウタ殿の相手として私は相応しくない」
翔太の試合を既にみた幹部達もジェイクを責める者はいないようだ。辞退は呆気なく認められた。
Fクラス昇格試験の試験官を次のEクラス昇格試験の試験官が兼ねることになった。それで本当にいいのかとも思ったが、試験場にいる者は誰もこれに反論はしなかった。
試験官は如何にも軽薄そうな優男であった。紫がかった黒色の髪、長身で身体に接着するような無駄のない銀製の鎧をしている。その鎧の隙間から見える鍛え抜かれた屈強な肉体とその独特な威圧感により、彼が先ほどのダンカン試験官とは比較にならないほどの手練れだと翔太にも判断できた。
翔太と優男の試験官が所定の位置に着く。
「僕はチェス・オールディス。よろしく!」
いかにも軽薄そうな笑顔を顔に張り付けながら握手を求める。翔太もその手を握り返す。
「ショウタ・タミヤです。よろしくお願いします」
このチェスという男、先ほどから翔太を観察して来ているわけだが、その蛇のような眼光は、正直悪寒さえ覚える。とっとと試験を開始してもらおう。
早く開始するようヴァージルに目で訴えかけるとヴァージルもこの翔太の必死の訴えに気付き、試験開始直前の型通りの言葉を述べ始めた。
「今からショウタ・タミヤ様のFクラス昇格試験を始めます」
ヴァージルは手を上空へ上げ、振り下ろす。
「始め!」
翔太は前回の試験のときと同様に床を蹴って高速で背後に移動しようとしたが、チェスの右脇に差し掛かったとき、チェスは翔太の動きをとらえ、右手に持つ剣を左から右に横一文字に一閃し翔太を横断しようとする。
風を切り裂き高速で翔太の胴を切断せんと迫る剣を、身を翻すことにより間一髪でさける。僅かに態勢を崩したその隙を狙いチェスは上段から力をためた剣を垂直に振り下ろしてきた。
ヒュッ――!
剣は風切音を上げながら高速で翔太の頭蓋を襲う。振り下ろされる剣もただの剣ではなく、金色のオーラを帯びバチバチと帯電していた。加えてその剣撃は翔太がこの世界に来て見たどんな剣よりも速く鋭かった。
その剣をバックステップすることにより避ける。その瞬間、身体の中に力が発生し暴れ回るのを感じた。どうやらスキルを獲得したらしい。
(この人、正気? 僕じゃなかったら死んでたよ)
心の中で毒づきながら、スキル獲得の際の負荷に耐える。だが、負荷は翔太の身体の自由を制限するほどではなかった。
翔太は優男の試験官――チェスをみる。翔太のバックステップにより翔太とチェスの距離はかなり開いている。
(やっぱりEクラスの試験官だけあって強いや。でもこの試験官の強さはだいたいわかった。確かに素手で殴ってはいけないけど、言い換えれば殴らなければ何してもいいんだよね?)
翔太自身自分の口角が吊り上がるのを抑えることができなかった。おそらく傍から見ればかなり悪い笑みを浮かべ得ていることだろう。
翔太の雰囲気が変わったことに気付いたのだろう。チェスの顔には今までとは別の種類の翔太に対する警戒心が芽生えている。先ほどとは纏っている威圧感の桁が違う。
翔太はゆっくりとチェスに近づいていく。剣の射程距離に入っても、警戒してかチェスはまだ様子をみて何もしかけては来ない。翔太は床をかなり強く蹴り、高速で床スレスレを移動する。
そして、右拳を脇まで引き、180度の螺旋回転を加えながら目標であるチェスに向けて拳打を繰り出す。
チェスもさすがである。翔太の速さに反応し右手に持つ剣で上段から垂直に翔太へ向けて振り下ろす。だが振り下ろされた剣を翔太は左手で軽々と掴み取った。
「んなっ!?」
チェスが驚愕の表情を浮かべるが、その表情を掻き消すように翔太の拳が胸部に寸止めではあるが衝突した。
ドンッ!!
その拳が作り出した凄まじい強さの風圧によってチェスの身体は吹き飛ばされそうになったが剣を床に突き刺してどうにかその衝撃に耐えきった。
翔太はチェスに次の一撃を叩き入れて円から落そうと右拳に再び力を込める。
しかし――。
「はい、降参~無理、無理、これ以上は絶対無理! さっきの君の一撃でアバラがヤバイんだからさ。ヴァージルちゃん、ポーション大至急頂ぉ~戴」
確かによく見るとチェスは額から脂汗を大量に流して確かにとても戦える状態ではない。ヴァージルが慌ててポーションをチェスに渡すとすぐに飲み干す。
「いや~君ホント強いな~~。身体がバラバラになるかと思ったよ」
「いえ、そんな……」
翔太が言い淀んでいると、ヴァージルから終了宣言があった。
「ではこれでショウタ・タミヤ様の昇格試験を終了させていただきます」
ヴァージルのこの宣言に不思議に思った翔太が思わず尋ねる。
「え? Eクラスの昇級試験がまだですが、いいんですか?」
この翔太の発言に周囲の視線が一斉にチェスに集まる。
「俺はもう一戦見てもかまわんが」
デリックはチェスを見ながら翔太の問に答える。
「儂も全く構わん。むしろもっと見たいくらいだ」
デリックの言葉にバリーも興奮気味に同意する。すると次々に幹部達も、この場にいる試験官たちも同意していく。みんな目をキラキラさせているのは翔太の気のせいだと思いたい。
「わかりました。ではEクラスの昇格試験を行い――」
「ち、ちょっと待ったぁ!」
ヴァージルの開始宣言をチェスが決死の形相で遮った。
「無理だって。あんなのもう一回やったら僕絶対死んじゃうって」
「大丈夫ですよ。チェスさんはそんなに簡単に死にません」
ヴァージルはにこやかにチェスに親指を突き出す。
「な、何の根拠があって? 絶対君楽しんでるよね? そうだよね?」
こんな二人の様子を呆れたように見ながらデリックが翔太に試験の終了を宣言する。
「こういう訳だ。残念だがお前と戦えるものがこの場にはいない。試験は終了だ。おめでとう! 翔太! お前は今からEクラスの冒険者だ!」
まあ、バリーは『なんだ? もう終わりか?』と心底残念がっていたのだが。
こうして、無事午前中の試験は終了し、翔太はEクラスに昇格を果たしたわけだ。
ちなみに、チェスからラーニングしたスキルは以下の通りであった。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
スキル
『雷光(第3級)』
■説明:武器に雷を纏わせ雷のごとく素早く切りつける。
※命中率向上
※等級が上がるにつれて命中率、速さ、威力が上昇する
■必要使用回数: 0/8
―――――――――――――――――――――――――――――――――――




