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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
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第19話 王女様を助けよう

 10分くらい進むと多数の金属音と怒声が翔太達の耳に飛び込んでくる。


「フィオン、誰か戦闘中みたいだね。こういう場合どうすればいいの?」


「助けに行こう。勿論、様子を見ながらだがな」


 やはりレイナはふくれっ面だ。翔太と目が合うとプイッとあらぬ方向を向いてしまう。これ以上の不和は戦闘に支障を生じる。翔太はレイナに近づく。


「な、なによ!」


 翔太の真剣な顔にビクッと身を震わせる。レイナの頭に右手をそっと乗せる。


「レイナ、もう怒らないで。僕を許してほしい」


「べ、別に怒ってなんか……」


 レイナは真っ赤になって俯き翔太と目を逸らせてしまった。


「おい! 今は戦闘中だぞ! いちゃつくのは後にしろ!」


「わかったよ。フィオン」


 フィオンに素直に頷く翔太。勿論、いちゃついているつもりは蟻んコ程もない。


「いちゃついてない!」


 冷静な翔太に対し、レイナは赤い顔が燃え上がり全身発火状態だ。こんなレイナは小動物みたいで癒されるが今はフィオンの言う通りそんな場合ではない。

 



 

 フィオンの後に続き周囲に気を配りながら進むと木々が切り倒されたサークル状の開けた場所に行き着いた。

 サークルは広大であり、小さな村くらいあるかもしれない。

 数メートルある見張り台と、数十軒ものログハウス風の建物が見える。

 普段ならばこの風景には趣を感じるはずだが、建物の半分からは炎と煙が立ち込め周囲には血の匂いが充満している。

 

 丁度、サークルの中心の広場のような場所で、二つの集団が睨みあっている。

一方は、豚頭の集団である。数十匹はいる。そのうち5匹は明らかに他とは異なる装備をしていた。

 5匹のうち2匹が茶色のローブを着用し、短杖(ワンド)をもっている。オークメイジと言うやつかもしれない。

 他の2匹のオークは銀色のフルメイルをしており、ナイト風だ。

 最後の一匹が、今この場に存在するオークの中で一番巨大な体躯をしている。装備も純白のフルメイルに、巨大なメイスを持っており、他のオークとは一線を画している。

 もっともそれはあくまで見た目上であって、翔太にはスライム程度の脅威にしか感じられない。

 

 もう一方は翔太が昨日会ったばかりの者達――ビフレスト王国第一王女エレナ・ミルフォード・ビフレストの御一行だった。

 状況が全く読めないので様子を見る事にする。


「この女の命が惜しければ、剣を捨てろ!」


 巨大なオークがエレナ達に命令する。高校生程のブラウン色の髪の少女が人質とられているようだ。


(アホですか……剣を捨てろと言われて捨てる馬鹿がどこにいる? まあ、仕方ないか。所詮豚だし)


「どこまでも卑劣な魔物め! その娘を解放しろ!」


(こ、このテンプレ発言何? どこぞの時代劇じゃあるまいし、『解放しろ』なんて言ってもするわけないじゃん)


 両者は大真面目らしく一歩も引かない。


「剣を捨てろ。最後通告だ。十数えるうちに剣を捨てなければこの女を殺す」


 エレナは泥沼に落ちたように悩んでいる様子だ。

 このエレナの表情をみたとき猛烈な悪寒が全身を走り抜ける。それは馬鹿の顔だったからだ。巨躯のオークが7ほど数え終えたときにエレナが遮った。


「わ、わかった。剣を捨てる。だから、その女性を解放しろ!」


「8、9……」


 巨躯のオークは数を数え続ける。嫌な予感しかいない。そろそろ助けよう。オークを駆逐しようと黒刀を抜こうとするが、一歩先に事態は動く。


 ガッシャ――ン


 エレナが剣を捨てたようだ。オーク達はニヤニヤと醜悪な顔をさらに醜く歪めた。


「その他の奴らも剣を捨てろ!」


 巨躯のオークはとどろくような大声を上げる。


「ハワード、お前達も剣を捨てろ!」


 エレナの命には逆らえないのだろう。ハワードは苦渋の表情を浮かべながら剣を地面に放り投げる。その他の騎士達もそれに習った。

 翔太はエレナの馬鹿さ加減に心底呆れていた。今の状況で剣を捨てることは部下に死ねと命令するようなものだ。そんな命令をする方も従う方も正真正目の大馬鹿だろう。

 

 オーク達はエレナとエレナの部下の女性騎士の身体を興奮気味にジロジロ見て身体の一部分を膨らませていた。大方、エレナと女騎士の身体を蹂躙するところでも想像しているのだろう。

 エレナと女騎士もそのオーク達の様子を見て、これから自らがされるだろう事がわかったのか顔面が蒼白となっていた。


(あのオーク共はレイナの教育上よろしくない。さっさと殺そう)


『フィオン、取り敢えずあの人質の子助けてくるよ! レイナをお願い!』


 フィオンの耳元に口を近づけ小声で(ささや)くと、翔太の意図を瞬時に理解し頷くフィオン。


(さすがはフィオン。わかってらっしゃる)


 翔太はレイナの頭に手を乗せ、とても自然な裏のない微笑を浮かべる。刀を鞘から抜くとレイナは頬を紅色に染めながらも驚きの表情を浮かべ、翔太のローブを掴もうとするが、それよりも先に翔太は移動を開始していた。

 人質は純白のフルメイルを着ている巨躯のオークの隣の雑魚オークが抑えていた。翔太は気配を消して、オーク達の後ろへ移動する。


(後方に見張りすらないとは……やはり、オークはオークだね)


 刀を上段に構えたまま地面を弾丸のように疾駆し、巨躯のオークの脳天から垂直に叩き落とす。


 ドゴォォォォォ――ンッ!


 落雷のような轟音はオーク共の聞くに堪えない笑い声を掻き消す。

 巨躯のオークは血飛沫を撒き散らしながら、人形のように力を失って左右に分かれ地面に叩きつけられた。

 刀を振り切った翔太は巨躯のオークの直ぐ左にいた人質の女性を押さえているオークの頸部を左手で後ろから掴み力を込める。翔太の左手がオークの頸部にまるで豆腐のようにめり込んでいき首は呆気なくドスンと地面に落ちた。


 ブシュゥ――


 オークの切断された頸部から血が雨の様に吹き出し地面と人質の少女に降り注ぐ。

 人質の少女を抱き寄せ脇に抱えて、フィオンの下まで高速移動する。


「フィオン、この子をお願い」



 フィオンは目を丸くして翔太を見ていたが直ぐに覚醒し女の子を翔太から受け取る。


「お、おう。ちょいまて、ショウタ、大丈夫か? すごい汗だぞ」


 巨躯のオークを殺したとき未だかつてない程の力が湧き上がり翔太の身体を暴れ回っていたのだ。

 取り敢えず少し休むために地面にペタンと腰を下ろす。それを見たレイナは翔太が怪我をしたと勘違いしたのか翔太にポーションを無理やり飲ませようとしてきた。


「ありがとう。レイナ。でも心配いらないよ」


「そんなわけないでしょ! あんた顔真っ青よ」


 レイナは動けない翔太の背中を左腕で支え、右手に持ったポーションを翔太の口に近づける。


(この子は……僕と知り合ってまだたった3日程度なのに)


 翔太もう動けるという意味も込めて足に力を込めて立ち上がる。足がゲタゲタと大笑いしているが気付かれない様に息を整え戦況を確認する。


 翔太が人質を救出してから戦況は一変していた。

 元々、エレナ、ハワードとオーク共の間には決して埋められない力の差があった。それこそ人質でもとらない限り太刀打ちなどできない程に。それに加え、ボスらしき巨躯のオークが突然真っ二つになったことにより、オーク達は完全に恐慌状態に陥ってしまった。烏合の衆と化した50匹近くいたオーク共は、エレナ達の凄まじい制圧能力の前にすでに20匹程に数を減らしている。


 だが、オーク達も最後の抵抗をみせる。

 オークメイジがブツブツと呟きながら杖で地面を叩く。するとエレナのいる地面に漫画等でよく目にする魔法陣らしき陣が出現する。

 すると、エレナの前方の地面の土が急に盛り上がり、いくつもの太い棘となってエレナに迫る。もっとも、その地面の棘の速度は遅く、エレナはそれらを余裕をもってバックステップで交わす。

 どうやらあのオークメイジのせいでオークの本陣に切り込むのに多少戸惑っている様子だ。


 だが今翔太はエレナを気に掛けている場合ではなかった。摩訶不思議な魔法という現象が翔太の目の前に横たわっていたからである。

 オークメイジが地面に魔法陣を出現させ、エレナのいる地面が棘の様になるまでの一連の事象を翔太も見ていた。

 翔太の目に入った視覚情報は脳へ届けられる。驚いたことに翔太の脳はその魔法の構成と骨子を解析しつくし、さらにより効率が良いように最適化させてゆく。解析が済んだ後、今の魔法がいかなる奇跡によるものかが理解できていた。


(あれは土壌にある岩石や生物の死骸などの有機物を一度分子レベルまで分解し、その分子同士を再びくっ付け再構成し直して固体化させる魔法。あの魔法陣は土壌の分子レベルまでの分解と固体化を一度にやっているらしい。

 では魔法の発動の仕方は? 魔法陣に描かれている言葉が効果に対応している。つまりその言葉が呪文なわけだ。その言葉の完全な発現を世界に願う事が魔法の発動)


 翔太はオークメイジの一匹に絞って狙いを定める。魔法の発動を支配する言葉による効果の発現さえ願えば魔法は完成する。

 しかも、オークメイジの呪文はほとんど余分な言葉ばかりで構成されていた。それを抜き出し最適化し直せば言葉はほんの数個に過ぎない。演唱などそもそも必要はない。だが、やはり魔法と言えば呪文だろう。雰囲気もまた大事なのだ。


「大地が抱く鋭い棘――《大地の鋭棘(グランドスピン)》」


 翔太が魔法の発動を願う言葉を発すると、オークメイジの足元に魔法陣が輝く。


 ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ドスッ! ズギュ! ドシュ――! 


 次の瞬間、地面から数百もの細く長い棘が高速でオークメイジの全身に迫り串刺しにする。オークメイジはその針の凄まじい力で空中へ身体を持ち上げられてしまった。

 突然オークメイジが串刺しになった事でオーク達は混乱しているようだ。周囲をキョロキョロと見回している。


 だがそうしている間にも、翔太の無慈悲な魔法の発動が完了する。

 地面から無数に出現した死を体現したような鋭利で長い棘は、残りのオークメイジと十数匹のオークを串刺しにし、真っ赤な血の薔薇を地面に咲かせる。

 オーク達は遂に戦意を喪失し逃げ惑う。そんなオーク達をエレナ達が駆逐するまでそう時間はかからなかった。

 



 お読みいただきありがとうございます。

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