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僕と俺の異世界漫遊記  作者: P・W
第一部 覚醒編
21/285

第20話 面倒事を引き受けよう



 オークメイジ共を倒したおかげでさらにレベルアップしたらしく、体内で力が縦横無尽に暴れまわり翔太を別の生き物へ作り変えていく。全身から玉のような汗が噴き出てくるが、今度は活動に支障が出るほどきつくはなかった。

 翔太の額に浮かべる多量の汗に心配するレイナの頭をポンポンと掌でバウンドさせ安心させる。

 フィオンも翔太に直ちに聞きたい事があるようだったが、翔太が助けた女の子に抱き付かれてそれも難しそうだ。助けた翔太に眼中なくフィオンに頬を染める少女は、『イケメンに限る』という切ない現実を翔太に実感させた。

 戦闘を終えたエレナが強張った顔で、翔太のところにやって来て胸倉を掴んできた。


「ショウタ、あれはどういうことだ?」


 翔太はエレナのいつもの奇行に理解が追い付かず、鳩が豆鉄砲を食ったような表情をする。それはハワードも同じらしく慌てて止めに入る。


「姫様! 助けて頂いた恩人にいささか礼を欠きますぞ!」


「五月蠅い、黙れ! 私は答えろと言ったのだ! 早く答えろ!」


 ハワードを怒鳴りつけ、翔太の胸倉をグイグイ引っ張る。苦しくはないが、相手が相手だけに力ずくで引き離すわけにもいかない。困った。

 レイナが険悪な目をエレナに向ける。フィオンは例のごとく面白がっている様子であり、ニヤニヤと頬を弛めている。

 後で翔太が助けた少女にフィオンが宿泊している宿と部屋を教えてやろう。うん。そうしよう。


「あれって何です? もっと具体的に仰ってください!」


「お前がオークを一撃で縦断した馬鹿げた力と先ほどの出鱈目な魔法の事だ」


 翔太自身この数日間の驚異的な力の上昇の理由が掴めているわけではない。翔太も理解していない事は答えろと言われても答えようがない。

 だが魔法は答えてもさほど問題はない。素人の翔太でさえも見ただけで簡単に理解できたのだ。一流の魔法使いなら誰でも気がつく事だろう。翔太が使った魔法はオークの稚拙な魔法構成を最適化したに過ぎないのだから。


「力は答えられませんが、魔法なら答えられますよ。それで構いませんか?」


「ホントですか? ぜひ教えてください!」


 エレナを突き飛ばして、ブラウン色、ショットカットの美しい女騎士が翔太の胸倉をつかんで頭をガクンガクン揺らす。家臣が王女様を突き飛ばして良いのかとも思ったが、目を血走らせた数名の野獣が翔太を取り囲んでいた。どうやら逃げられないらしい。溜息をついて頷く。


「わかりましたから、手を離してください。苦しいです」


 胸倉を掴んだ女騎士は、火が出るように全身真っ赤になり慌てて手を離す。


「私はメリリース・サッカレーと申します。今は聖王騎士第四師団に所属していますが本来の専門は魔法です。ビフレスト王国、宮廷魔導士の地位も得ています。

 先ほど魔法、あれほど強力で精錬された魔法を私は見たことがありません。高名な魔導士の方であるとお見受けいたします。いずこで魔法を習得なされたのですか?」


 次から次へと答えにくい事を聞く人達だ。次にどう答えるかを思案しているとフィオンから助け舟が出された。


「俺はフィオン・ダブリン・ヤルンヴィド。ショウタの師は俺と同じだ」


 フィオンの発言により、騎士達に騒めきが小波(さざなみ)のように広がっていく。エレナがそれを制し、フィオンに向き合い恭しく礼をする。それは翔太の胸倉を掴んで声を張り上げていた人物とは思えないくらいの優雅な立ち振る舞いであった。


「これは失礼をいたしました。フィオン殿。私はエレナ・ミルフォード・ビフレストと申します。以後お見知りおきを」


 騎士達もエレナに習って頭を下げる。フィオンが王族なのは知ってはいたが、王族であるエレナが畏まる姿を現にこの目で見ると翔太とは生きている世界が違うのだと心底実感する。


「ああ、よろしく頼む」


 フィオンの簡潔な挨拶にも眉一つ動かさず、エレナはフィオンに尋ねる。


「フィオン殿と同じ師とは、ビフレスト王国の英雄――ノア・アズマ様ですね?」


 ビフレスト王国の英雄との言葉にフィオンは眉を僅かに(ひそ)める。


「そうだ」


「なるほど。アズマ様の弟子でしたか。それならば、あれほどの力を持ったとしても納得できます」


 フィオンの頷きでエレナと騎士達は勝手に納得してくれた。これは非常に助かる。


(ノア・アズマって、日本人だよね。フィオンの師匠らしいし一度ゆっくり話してみたい)


「そうだ。ショウタは俺の(おとうと)弟子(でし)だ。だからあまり、ちょっかいを出してほしくはないんだがな」


 フィオンの言葉に翔太から魔法を教われないと思ったのかメリリース達に動揺が走る。


「それは困る。一度は引き受けたのだ。是非教えてもらいたい」


 エレナの焦ったような声色からもここで断ると後々、重くのしかかってきそうだ。エレナは王族と言うだけあって、平民にしか見えない翔太がエレナに奉仕するのは当然の義務とみなす風潮がある。断れば変に恨まれるだろう。

 それに先ほどの魔法など、誰でも思いつく簡単な事柄だ。断ることのデメリットの方が遥かに大きい。


「一度は引き受けてしまいましたし、それくらい教えますよ」


 フィオンに目で礼をすると、フィオンは肩を竦めていた。


「では今日は皆も疲れているし、明日私の館に来てもらえないだろうか?」


(嫌だよ。煩わしいのは早く済ませたい)


「いえ、たいして手間がかかる事でもないので僕的には今ここで説明したいです」


 翔太の言葉に、フィオンとレイナを含めたこの場にいる全員が困惑の表情を示した。

 エレナとメリリース達の無言の圧力を受けて、ハワードがため息を吐きながらも翔太に頭を下げて来た。


「ショウタ殿、恥を忍んで私からもお願いする。皆今日の戦闘で疲れていて、魔法に集中できそうにないのだ。せっかく教えていただくのだから万全の体調で望みたい」


 ハワードに頭を下げられると心苦しいものがある。

 ハワードはエミーの件で非常に気配りの利く実直な人物だとわかっている。なんせ、貴族でもない怪しすぎる翔太を馬鹿にせずに一人の人間として接してくれたのだから。それにエミーの事を大切に思う仲間という意識も強い。彼には迷惑をかけたくはない。


「わかりました。明日の午前中にエレナ様の屋敷に伺わせていただきます」


「礼をいう」


 ハワードに代わってエレナが頭を下げた。王族が頭を下げるのがよほど以外だったのか、フィオンとレイナも目を丸くしていた。

 




 話が粗方済んだので翔太はギルドカードをポケットから取り出しステータスの確認をする。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ステータス     ショウタ タミヤ

レベル        10

才能         ――

体力         97

筋力         99

反射神経       99

魔力         96

魔力の強さ      99

知能         94

 EXP     98/100

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

スキル



―――――――――――――――――――――――――――――――――――


(100以上が1つもないけど能力値って99が最高なのかな? でもさすがにレベル11で全ステータスが最高値なんて馬鹿なことはないよね。それじゃあレベル11以上の人は全員全ステータスカンストしていることになるだろうし。ギルドカードの存在する意味もない。あと1レベル上がればすぐにわかるか……)


 今日はもうレベル上げの目的を達したことをフィオンに伝えると、フィオンは頷き、今日の冒険の終了を宣言した。レイナもエレナ達と関わって疲れたのか文句は一言も言わなかった。

 




 エルドベルグの宿屋キャメロンに帰り、簡単なミーティングを行う。

もっとも、ミーティングといってもほとんどが翔太の魔法の件だった。


「ショウタ、お前魔法が使えたんだな」


「僕も今日それを知ったよ」


「…………」


 翔太のこの言葉に暫らくフィオンとレイナは絶句していた。


「え? 魔力持っていれば誰でも魔法使えるんだよね? オークでさえも使えるんだしさ」


 フィオンとレイナは互いに顔を見合わせ呆れたように答える。


「そうだ。魔力があれば使える。だがそれは各国の魔法学院等の専門機関で相当の知識と経験を得て初めて使えるものだ。見ただけで使える代物では決してない」


「そうかな。魔法陣と魔法の発動の効果を見たらあれくらいできて当り前だと思うけど?」


 フィオンは心底呆れたのか肩を竦めると翔太を神妙な顔で見つめる。


「ショウタ、その発言は他ではしない方がいい。ほぼすべての魔法使いを敵に回すことになる」


「な、なぜ?」


「魔法陣と魔法の発動の効果を見ただけで皆が魔法を使えたら魔法ギルドや、魔法学院なんていらないだろう? それは、本来血の滲むような努力をして初めて辿り着く極地なんだよ」


「そうなのかな……」


 翔太の納得がいかない様子をみて、フィオンはまるで独り言のように言葉を紡ぐ。


「昨日と今日で感じた事だが、ショウタは普通の異世界人ではないな。師匠もショウタ程出鱈目ではなかった……と思う。

 ショウタ、お前はそこをまず理解しなければならない。ショウタの力を知れば誰もが今日のビフレスト王国の王族のように自分の陣営に取り込もうとするだろう」


「エレナさん達、僕を取り込もうとしてたの?」


「気付かなかったのか? そうか、だからあれほどすんなり明日の訪問を了承したのか」


「取り込まれたら不味いことは何となく勘でわかるんだけど、具体的にはどんな弊害があるの?」


「一つの組織に所属すれば、入ってくる情報も制限されるし、行動も著しく制限される。ショウタには、すぐにでも調べなければならない事と探さなければならない人物がいるんだろ? なら一つの組織に所属するは悪手だな」


 確かに日葵達を探し出し地球に返すことは今の翔太の最大にして唯一の命題だ。一つの組織に所属すれば個人よりも多量の情報には接することができるかもしれない。だがその代わり、日葵達がいる場所が分かっても迎えに行けるとは限らない。所属する組織の敵国に居たりすれば迎えに行くなど無理に決まっているからだ。

 それに情報が必ずしも多量に手に入れられるかと言えばそうとも限らないだろう。所属した組織は翔太に地球に帰ってほしくはないはず。ならば情報を制限されることも十分あり得る。


「そうだね。その通りだ。フィオン、ありがとう。十分気を付けることにするよ」


 翔太は大きく頷き、ためになるアドバイスをしてくれたフィオンに心から感謝した。





 フィオンは初めての冒険で疲れもたまっているだろうからと明日の冒険は休みにしてくれた。

 レイナには魔力があるので明日今日の魔法をレイナに教える事となった。レイナの飛び上がって喜ぶ姿を見て翔太はほっこりとした気持ちになる。朝と比べると翔太に対する態度もやや和らなくなっていた。




 部屋へ行き『魔物全集編』を読む。レベルアップの際の【知能】の上昇の恩恵で、前にも増して読むのが早くなっていた。数十分で、分厚い本をすべて読み切ったときは自分の事ながらドン引きした。翔太は今日の魔物についての情報をもう一度頭の中で思い返す。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


〇オーク 討伐推奨クラスG~D

■形態:豚の顔面をした亜人

■生息地:洞窟、廃坑等

■性質:夜行性、集団で群れる

■対策:通常粗末な武器や防具がほとんどであり、魔法を使えるほどの知能は持ち合わせていない。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 人質の少女を押さえつけていたオークと、翔太が魔法で殺した十数匹の雑魚オークがこれだろう


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


〇オークジェネラル 討伐推奨クラスB~A

■形態:オークの欄を参照

■生息地:オークの欄を参照

■性質: オークの欄を参照

■対策:高度な知能もち、剣術スキルや、魔法を使いこなす。装備している武器や防具も高性能なものが多い。


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 翔太が刀で縦断した巨躯のオークと、魔法で串刺しにしたオークメイジ2匹がこれだ。もっとも翔太にとっては、雑魚オークとの差が全く判別つかなかったのだが。

 ここまでベッドに横になって考えていると凄まじい睡魔が翔太を襲いそのまま意識を深い闇へと落とす。



 お読みいただきありがとうございます。

 《虚弱~》の更新は明日にはしようと思います。それ以降は当分は大幅な加筆はないので、また1日1話ペースを保てると思います。

 ただ、出来なかったら本当にすいません。

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