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鳴神の娘  作者: かざみや
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最終章 「絆を絶つ者」 十一話(完)

 少彦名を見送った斐比伎は、里へ戻り、そのまま王の御館の建加夜彦の部屋へと向かった。

「……父様、ご気分はいかが?」

 部屋の中へ入り、父の傍らに座る。

 順調に回復を進める建加夜彦は、まだ床につくことを義務づけられてはいたが、既に半身を起こせるほどにはなっていた。

「ああ、大分いい。……里の様子はどうだ?」

「みんな元気よ。工事の音で、里中うるさいわ」

「政のほうはどうだ?」

「まだ慣れないわ。……でも、みんながよく助けてくれるから」

「そうか」

 建加夜彦は娘を見ながら、嬉しそうに笑った。

「……ねえ、父様。もうすぐまた、父様が私を拾った日が来るわよ」

「ああ、そうか。……もう、そんなになるか」

 建加夜彦は、感慨深そうに頷いた。

「もう、十七か……そういえば、少し大人びたな。今年は、何を祝いに贈ろうか」

「……お祝いを頂く代わりに、お願いがあるの」

「なんだ?」

 自分を見つめる建加夜彦の瞳を、斐比伎はじっと見返した。

「お元気になったら、斐比伎を妻問いしてくださいね」

「……」

 建加夜彦は、面食らったように目を瞠った。やがて、きまり悪そうに瞳を逸らし、己の解けた髪を掻き揚げる。

「そういうことは、あまり女のほうからは言わぬものだが……」

「そうですね。でも、私ははじめから異端の娘ですから」

 恥じる様子もなく、明るい声で斐比伎は言う。

「……ね、建加夜彦? お願い、きいてくれますか」

「……」

 建加夜彦は、しばらく照れたように右手で口元を押さえていたが……やがて斐比伎の方を向き直り、微笑んで言った。

「……お前が願うならば、どんなことでも」




 ――後日。

 宮殿を消失した大和は、一時都を移し、第三皇子白髪を大王(第二十二代清寧天皇)に立てた。

 しかしこの大王には后も御子もなかった為、皇統は彼の代で絶えてしまった。大和では後継をめぐって激しい諍いが起こり、それはやがて周辺豪族を巻き込んだ内乱となって、大和自身の弱体化を招いた。

 一方、加夜の女首長となった「大吉備津姫」は、里の復興に力を注いだ後、吉備五氏族を統一し、吉備王国全土を統べる初代の女王となった。

 この女王のもと、吉備王国は力を蓄え、やがてその勢力を全国へと拡大していく。吉備は求心力を失った大和に代わり、新たなる豊葦原の盟主として、その地位を揺るぎないものにしていった。

 吉備に偉大なる発展をもたらした女王は、死後その功績を讃えられ、後の世の人々に守護神として祀られた。

 

 吉備の中山にある「吉備津神社」の祭神には、今も「大吉備津彦」と並んで「大吉備津姫」の名が刻まれている。




真金吹く 吉備の中山帯びにせる

       細谷川の おとのさやけさ      (古今和歌集)






【完】


長い話をここまでお読みいただき、ありがとうございました。

「すごいウソ」と「なんでもあり」の、古代ファンタジーでした。

よろしければ、感想などお聞かせいただけると、とてもうれしいです。


元々連載用ではなく一気読み長編用に書いたものなので、どこで切るか色々と試行錯誤の連続でしたが、こういう投稿の仕方もあるのだと、勉強になりました。


ヒビキのお話はここで終了ですが

(それからもずっと幸せに暮らしました…的な、その後です)、

「淡海」「鳴神」を含めたマイ古代ワールドは全てどこかで繋がっており、様々に展開していて、共通して出てくるキャラも幾人かいます。

(完成済み長編が殆どです)


次回の投稿作は、終わりでもスクナヒコナがチラッと言っていた、神代の物語になります。

スクナヒコナと相棒の大国主の美少年がダブル主役で、苦労しながら地上を平定したり、高天原と戦ったりするコメディです。

ヒビキの本当のお父さんも登場します。


しばらく期間をおいての投稿となると思いますが、またお会いできましたら、ご覧いただけると幸いです。


それでは、ありがとうございました!

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