後日譚8 うちの娘が同姓の友達と口付けをしているのを見たので、エロ先生とやらを社会的に抹殺することにしました
「ごめんなさい、もう一つお菓子を出すのを忘れていたわ」
そう言って娘の部屋のドアを開けたら、娘と友達の唇がくっついているのを目撃することになった
<ガシャン!>
手に力が入らなくてもっていたお盆が斜めになった
そして御盆からお皿とシュークリームが落ちる音が遠くに聞こえた
それほど茫然自失したということかしら
かろうじて残っていた意識で全然関係ないことを考えたのだがこの時は気が付ていなかった
なぜなら目の前が真っ暗になったからである
佐藤良子(47)
初めての気絶だった
結婚して18年
一人娘がすくすく育つことだけが生きがいだった
世の中には反抗期というのがあり
「クソババア」
などと母親に向かって言う子供がいるそうだ
だがうちの娘は自分でお弁当を作り、家事の手伝いもしてくれるという理想の娘に育っていた
けっして自分のおかげだとは思わない
できるかぎり話を聞き、反対するときは頭ごなしに怒ることはしなかった
まあ納得いかなくても世の中の女子高生がそうだと言えば親の方が折れるのは溺愛だと言われればそうかもしれないですけどね
今日も学校の友達が遊びにきてと微笑ましい学生生活を送っていた
そう思っていた
だが娘が同姓の友達と口を付けているのを見てそれが幻想であったことにようやく気が付いた
まあその代償は人生初の気絶なのであったのが良かったのか悪かったのかはわかりませんけどね
倒れた母親を介抱したのは娘とその友達でした
それを知らされたのは気絶からの昏倒が醒めた夜遅くになってからでした
「・・・ママ、ごめん・・・」
娘が血を吐くような感じで謝ってきました
ですが
「うん」
とも
「いいえ」
とも言えませんでした
理性ではわかっているのですが感情が納得いかないのです
後になって帰宅した父親が娘から聞いた話を聞かされました
なんでも『エロ先生』などというふざけた名前の作家がいるんだそうです
学校でお互いに好きになった女子高生の話だとか
同性が好きだというのは昨今の風潮では普通になってきてはいるものの実際に目をすると非難されることの方が多いこの日本
好きだけれど気持ち悪がられて嫌われるのが嫌なので相手に気づかれないようにしよう
お互いにそう思っている相思相愛な二人の女子高生が主人公だとか
学校帰りにふざけたふりをして手をつなぐだけで幸せ
「テストの点が悪かったので慰めて~」、と落ち込んだふりをして抱きつき相手の体温を感じるだけで幸せ
帰りの電車で隣同士に座るだけで幸せ
「昨日テスト勉強をして寝不足なの」と言って肩にコテンと寄せる頭の重さの分だけの幸せ
色々な幸せがあり、女子高生がキュンキュン(死語)しているそうだ
そしてそれに勇気づけられて告白して両想いになったそうだ
娘の幸せが母親の幸せ
だから娘の意見は尊重する
だがこの行き場のない怒りは元凶となった『エロ先生』とやらに向かわせて貰おう
ネットで調べるとアンチが多数いるらしい
明日から合流して絶版にするとともに社会的に抹殺してやろう
そう決心した
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個人の指向に文句を言う意図はありません
ただふと『私のゴーストがささやいた(て)』頭に話がうかびました
ちなみに娘さんが言っているのは1巻の前半です
後半から10巻まで
クチュクチュとした水音が聞こえるだとか
「は・・・」といった甘い吐息が聞こえるだとか
彼女の唇は甘かっただとかの完全な百合百合ボンバーな内容です
後に母親が読んで娘が同姓の友達に走った理由を知って殺意をこめて社会的に抹殺する活動に勤しむのは別の話です




