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見出された運命の先に  作者: イミティ
第3章 迷宮国家ヴァルンバ
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第27話

 昨日はギリギリで執筆が間に合わなかったので結局今日になりました( ̄▽ ̄;)

 でもそのお陰か、今日だけでもう一話書くことが出来ました良かったよ。



 一応オークやブルボアとの戦闘も慣れてきていたので、その日は俺が多少動揺を残していたのもあり、夕方前という早い段階には迷宮を出ていた。

 実際のところ戦闘に支障は無いが、確かに意識を取られてしまっている。万が一の誘発が普段より高まっている以上、一度切り上げるべきだと判断し、何より俺も早いところクリスに報告をして方針だけでも聞きたかったのだ。


 他国の勇者らしき人物に対してこちらはどういう対応を取るべきか……そこが明確になるのに早いに越したことはないだろう。


 「───納品を確認致しました。こちらをお受けとりください」

 「ありがとうございます」


 また、迷宮から帰ってきたら魔石を売るというのを習慣化させるために今日も直接探索者ギルドへ。

 終わりは早かったとはいえ、昨日とは違い今日は朝から行っていた。群れを作るゴブリンの出る第一層よりは全体的な魔物の数が少ないイメージだが、魔石の数自体は昨日とさほど変わらない。


 しかし、受け取った袋の重みは明らかに違う。


 中を見てみれば、なんと金貨が二枚ほど入っていて、銀貨も数枚、銅貨は数十枚とバラけてはいるものの見ただけで昨日よりも圧倒的に高い金額なのがわかる。


 大体迷宮内に居たのが六時間程度と考えると……今日は時給換算で4000円を超えているようだ。


 これは果たして俺達の魔物を倒すペースが早いのか、魔石自体の換金率がとても高いのか。

 両方な気もする。


 一日の稼ぎとして相変わらず十分な金額を受け取ってギルドの外へと出れば、ルリが袖を引いてきた。


 「……トウヤ、この後、クリスと話す……?」

 「ん、そのつもりだが……あぁ、そういうのは全くないから安心してくれ」

 「……そういうわけ、じゃ、なくて」


 と、てっきり迷宮の中で少し話したことを気にしているのかと思ったら違う様子。首を振ったルリに、じゃあどうしたと問いかける。


 「……少し、行きたいところが、ある。クリスと、話すなら……その間に、行っと、こうかなって、思って……」

 「行きたいところ? 別にそんな気を使わんでも、俺も一緒について行って問題ないところならついて行くが」

 「……トウヤが、居ると、ちょっと困る、から……」


 果て、これはもしや自立だろうか。今までベッタリだったルリに自立心が芽生えたのだろうか。

 一瞬そう考えるが、そもそもルリは一人で十分問題ない能力を持っている。王城の司書というある意味凄い職業をしていたぐらいなのだから、自立心云々以前の話だろう。


 それはともかく、これがどこか恥ずかしがるような感じなら何か俺にサプライズでも考えているのかと思考できるのだが、そうでは無い様子。


 それにしては、ルリはどこか無表情だ。


 行きたいところがあると言うよりは、行かなければならない場所があると言った方が良いような……そしてそこに俺が行ってはいけないらしい。


 「……一応聞くが、一人で平気なのか?」

 「……ん。平気、だけど。なんで?」

 「いや……」


 もしこれが本当に単純に行きたいところがある、という話なら俺も素直に送り出すが、そうじゃないとなると、仮にも家族という関係で通している俺としては心配にもなってしまう。


 けれど、俺にルリを止める権利はない。そもそも今まで行動していたのはルリの善意による部分が大きく、単に少し離れることを俺の感情で抑えるのは良くないだろう。


 それにそもそもルリは心配するほど弱くなく、むしろ俺より圧倒的に強いのだから、俺がルリを心配するのもそういう意味では不必要だ。


 「……分かった。俺は宿に戻ってるが、何かあったらすぐに言えよ? 連絡手段は無いかもしれないが、適当に魔法でも撃てばすぐ分かるから」

 「……心配、しすぎ」

 「心配しない方がおかしいだろ」 


 実力を信用して心配しないとか、そういう話はある。友人に対してならそれで正しいかもしれない。

 だがルリとは少し違う。仲間というにはあまりにも近くて、そんな距離感の相手だからこそ無条件の心配がある。


 ルリは微かに顔を逸らして「……そう」と呟き、頷く。


 ただ心配はしても、あくまでそれだけ。既に行く場所の位置も分かっているのか、宿とは逆の方向へと迷いなく歩いていくルリを見送って、俺は久しぶりの一人となりながら帰路へとついた。

 普段は常にルリと一緒に居る。少しの間離れるというのはあるが、それも長くて数分程度。手洗いや着替え、体拭きとかそういった時ぐらいで、逆に言えばそれ以外は一緒と考えれば如何に長いかが分かるだろう。


 その点今回はどのぐらいかかるか分からない。少なくとも俺は、確かな落差に寂しさを感じている。


 あぁ、やっぱり一人よりも二人の方が楽なのだと、痛感している。


 「……ルリが帰ってきたら、ちょっとくっつこう」


 どうやら人肌の温もりを求めているのは俺も同じのようだ。ルリとしばらく一緒に居たからか、思った以上に孤独への慣れを無くしている。

 ルリか拒まないのなら、今日は俺の方からスキンシップをとってみてもいいのかもしれない。




 ◆◇◆




 宿の部屋へと戻って、俺は例の連絡用の魔道具(マジックアイテム)を取り出す。

 あれ以降連絡が来たことは無いのでクリスがどの時間帯に連絡できる状態にいるのか正直分からないが、魔道具へと魔力を流すと、数度それが震え、すぐに例のビデオ通話形式となった。


 映し出された画面の中には、少し驚いたようなクリスの顔が見える。


 『───こんにちは、トウヤ様』

 「あぁ、こんにちは。ところで、どうしてそんな驚いてるんだ?」


 連絡に出る時間が明らかに速かったことから考えても、理由としては分かっているつもりだが。


 『丁度トウヤ様に連絡を取ろうとしていたのです。そしたらタイミング良く……』

 「そういうことか。ちなみに内容は?」

 『お先にトウヤ様からどうぞ。こちらは単なる状況報告のようなものですので』


 俺の方もクリスに先に言わなければならないという意味では急ぎでは無いが、お互い急ぐ必要がないなら俺からでもいいだろうと判断し、迷宮内で日本人と思わしき人物達を見かけたことを話す。


 そうすれば、たちまちクリスの顔には神妙さが差していき、やがて顔つきは完全なる王女のものとなった。


 『……なるほど、内容は理解致しました。トウヤ様が連絡をしてきたのは、私に判断を仰ぐため。となると、まだ接触はしていないということでよろしいですか?』

 「あぁ、多分顔も見られてない。誰かいた事ぐらいは気づかれてるかもしれないが、そのぐらいだと思う」

 

 黒髪黒目となると向こうとしても目を引いたかもしれないが、俺が居たのは通路の角だ。意識していない限り、戦闘中にそう見えるものでもない。


 『確かに、それは良い判断でした。私が考えるところ、もし彼らが魔道具によって姿を変えているのだとすれば、常時身体に影響を及ぼす魔法効果を伴った魔道具となると高額なものとなります。国から支援を受けている可能性は高く、そうなれば勇者という可能性も十分あり得るでしょう』

 「他国も勇者を召喚してたってことか?」

 『魔王に関連する神託は我が国の神殿が受けたものですが、他国に情報が渡っていないことはそれこそ無いでしょう。勇者召喚は儀式魔法───個人で扱うことが不可能な、大規模かつ事前準備が必要な魔法のことです───の一つで、様々な条件の元多数の触媒を消費し一流の魔法師を大量に用意して初めて行うことが可能な、非常に使用が難しい魔法ですが、術式さえ分かればあとは揃えることは決して不可能ではありません』

 

 つまり、魔法自体は使用可能ということか……。


 「……その魔法、一度は使えたんだからもう一回使えたりしないのか? 例えば俺達の他に改めて勇者を呼んだり」


 ふと、勇者召喚のことで気になったので俺は話が逸れていることを自覚しながらも聞いてみる。

 元々気にはなっていたのだ。勇者召喚という魔法があって俺達が呼び出されたのなら、再度使えば更に異世界人を呼び出すことが出来るのではないかと。


 もちろんどんな理由があれこれ以上呼ばないで欲しいが、可能性があるのかどうかは確認しておかなければならないだろう。


 術式さえわかっていれば他は揃えるのは不可能ではないとなると、十分有り得そうなものだが……。


 画面の向こうで、クリスは首を横に振った。どうやら無理な様子。


 『そのお話はイツキ様にも聞かれることがありましたが……結論から言えば、連続での使用は不可能です』

 「連続での使用は無理なんだな。理由としては?」

 『幾つか要因はありますが、最も大きな部分をあげるならば地脈の不活性化にあります』


 地脈、という単語に俺は首を傾げて見せた。言葉としては聞いたことはあるが、この世界での地脈の意味がわからない。

 クリスはしっかりと俺への補足説明を開始した。


 『地脈と言うのは、言ってしまえば大地を流れる魔力の道のことです。正確に言えばその中でも特に流れる魔力が大きく膨大なもののことを地脈と呼びます。地下水脈と似たようなものですね』

 「つまり、勇者召喚を行う際にその地脈の力を利用するから、その反動で今は地脈が不活性化していて、連続での使用は出来ないと言うことか?」

 『そういうことになります。例えばトウヤ様方が召喚されたのはこの王城の地下ですが、そこが丁度地脈の部分に当たります。召喚場所が地下にあるのはそのためですね。

 一応再使用可能になるまでの予想期間は百年となっていますから……私が生きている間に会える勇者は、トウヤ様方だけなんです』


 と、少しだけ上目遣いでこちらに告げるクリスに、理解の証拠として頷きを返した。

 勇者召喚もそう簡単なものでは無いらしい。


 しかしながら、その話を聞けば他の地脈を探してしまえば良さそうに思えるが……そんなことに考えが及ばないなんてことはありえないだろう。

 となると、儀式を行うにあたっての場所作りが大変なのかもしれない。例えば魔法陣などを刻むのは時間がかかるし、場所が遠ければ移動も時間がかかるし、用意も難しくなる。


 ともかく俺としては不必要に勇者が呼ばれることは無いと知って安堵しているところだ。


 下手に知り合いが新たに呼ばれでもしたら……。


 「……っと、答えてくれてありがとうな。話を逸らして悪い」

 『いえ、構いませんよ。それで、ヴァルンバ国の勇者に関してでしたね』


 そこでクリスは一度話を区切った。どうやら手元に置いていたティーカップに口をつけているらしいが、俺は急かすことも無く待つ。

 優雅な所作で喉を潤したクリスは、少し微笑む。


 『実は報告に関してもそちらに関連したものだったのですが……とりあえずトウヤ様は、口惜しいかもしれませんが今はまだその勇者と思われる人物達との接触を控えてください。ヴァルンバ国が勇者を召喚しているとほぼ確信できた以上、これは交渉の余地があるかもしれませんからね』

 「交渉……?」

 『少なくともトウヤ様や他の勇者様方にも益のある事です。ただそのためには、一応貴族や王族といった上流階級の方々との交流も最小限に留めてくださると幸いです。それと、出来れば目立つことも避けていただいた方が都合が良いのですが……』

 「それは、黒髪黒目の時点で少し難しいかもな」

 『出来る限りで構いません』


 そういうことならと、俺は頷いて了承する。クリスが俺に伝えようとしていたものや、交渉の具体的な内容に関して気にはなったが、後者に関しては幾つか予想できることはある。

 その中でも勇者を抱えているという情報は脅しには弱いと思われるため、例えば他の国に秘密裏に相互利益となる契約を結ぶとか。


 ただ、確かに他国にルサイア神聖国の勇者が勝手に入り込んでいる状態はあまり宜しくはない。そういう意味では交渉が不利になってしまうかもしれないので、クリスの忠告はしっかりと受け止めておいた方が良さそうだ。


 『交渉の内容がまとまり次第またすぐに連絡致します。予想される内容からすれば、結論までそう時間はかからないかと思いますので』

 「あぁ、わかった。何から何までありがとうな」

 『これも我が国の発展のため。そして……トウヤ様への恩返しの一環ですよ』


 『恩を押し付けてる面もありますが』と、イタズラでもするような少女の笑みで告げるクリスに苦笑いを向ける。

 少なくとも俺がそう感じることは無い。クリスとしても単に場を和ませる意味で告げたのだろう。


 『それでは』と通信が切れ、魔道具は状態を戻した。


 あの日本人達と接触できないのは確かにもどかしいが、クリスにも考えがあるようだし仕方の無いことだと飲み込む。

 どちらかと言えばこの件にメリットがあったこと自体を喜ぶべきだろう。


 今後は見かけたら避けるか、それが無理な場合は即席でも良いので姿を偽った方が良いか。

 俺という例がある以上、髪色を変えただけじゃバレてしまう可能性はあるが、それは少ない。怪しまれてもバレることはないはずだ。


 その時にルリも同じように出来れば、兄妹という話を使って誤魔化すことも出来る。


 「……そう言えばルリ、いつ帰ってくるんだか」


 まだルリと別れてから三十分程度。あの分ではそう早く帰ってくるとは思っていないが、いざ部屋に一人となるとその静寂がやけに強調されるような気がして、それがこの世界に来たばかりの時のように、胸を苦しませる。


 元々、妹達の代わりを求めてはいない。だが実際のところ、ルリのことをそんな風に思ってしまっている面はあるのだろう。


 それが、苦しくて辛い。そしてそれを実感していること自体が、息が詰まりそうになるのだ。


 俺にとって妹は他に居ない。だからルリは妹の代わりではないし、この先も妹の代わりなんて要らない。

 そう、思いたいのに───ルリにどうしても、それを求めてしまっているのが抜けない。


 「……」


 時間はたち、やがて俺はベッドへと横になり、静かに眠りへとつく。

 ルリの帰りを待つことを止めた。いや、本当はこの思考を断ち切りたかっただけなのかもしれない。

 

 ルリは仲間で、とても良いパートナーで、俺に懐いてくれている女の子で……それだけなのだ。

 今はそれを無理矢理結論としよう。


 そうすれば、ほら───また夢が俺に思い出させてくれるだろう。


 幸せと喜びと、そして痛みと苦しみすらも伴って。

 

 一応一話書きだめが出来ましたが、投稿はいつも通り明後日辺りとさせて頂きます。

 これが一時的なものだって知ってるんですよ私は……(震え)


 次回は少しだけ切ない感じです。

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